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国宝建築探訪



国宝建築用語解説



柿葺(こけらぶき)

安楽寺八角三重塔の屋根は木を薄く割った柿で葺かれている。それによって繊細で柔らかい姿の塔が 形作られている。



 国宝建築物の説明には名称、規模、階層数、屋根の形式と材料、付属物などが記されている。その中 には特殊な用語もあるので、解説を加えることにする。

 国宝建築物は、寺院の仏堂、神社の本殿、城の本丸のようにそれぞれ施設の中心となる建物が多 いほか、これらの付属的建物も含まれている

 金堂及び本堂(寺院の中心をなす建物で、本尊を安置する堂);東大寺金堂、法隆寺金堂、 石山寺本堂、 当麻寺本堂 など多くの金堂、本堂が国宝建築物である。
 仏殿(禅宗の本堂);功山寺仏殿、 瑞龍寺仏殿 、清白寺仏殿
 阿弥陀堂(真宗の本堂);願成寺阿弥陀堂、金蓮寺弥陀堂、浄土寺浄土堂、 法界寺阿弥陀堂
 観音堂(観世音菩薩の像を安置した堂);永保寺観音堂、 孝恩寺観音堂、慈照寺銀閣
 薬師堂(薬師如来の像を安置した堂)醍醐寺薬師堂、 豊楽寺薬師堂
 開山堂(開山の僧の像や位牌を安置した堂); 永保寺開山堂、東大 寺開山堂
 舎利殿(仏舎利を安置した建物); 円覚寺舎利殿
 太子堂(聖徳太子の像を安置した堂); 鶴林寺太子堂
 地蔵堂(地蔵菩薩を安置した堂); 正福寺地蔵堂
 釈迦堂(釈迦の像を安置した堂); 善福院釈迦堂

 この他仏堂として建築方式の違いなどから次のようなものがある

 八角円堂(はっかくえんどう)(八角形に造られた仏堂);広隆寺桂宮院本堂、興福寺北円 堂、法隆寺西円堂、法隆寺東院夢殿、 栄山寺八角堂
 持仏堂慈照寺東求堂
 住宅風仏堂 高山寺石水院
 楼閣;慈照寺銀閣、 本願寺飛雲閣
 三重塔(さんじゅうのとう)、三重塔婆(さんじゅうとうば)(三層に屋根を積み重ねた形 につくった仏塔);安楽寺八角三重塔、大法寺三重塔、明通寺三 重塔、西明寺三重塔、常楽寺三重 塔、浄瑠璃寺三重塔、一乗寺三重塔、興福寺三重塔、薬師寺東塔、当麻寺東塔、当麻寺西塔、法起寺三 重塔、 向上寺三重塔
 五重塔(ごじゅうのとう)、五重塔婆(ごじゅうとうば)(五重塔は地、水、火、風、空を かたどり、五層に屋根を積み重ねた形につくった仏塔); 羽黒山五重塔 、教王護国寺五重塔、醍醐寺五重塔、海住山寺五重塔、室生寺五重塔、海龍王寺五重小塔、元 興寺極楽坊五重小塔、興福寺五重塔、法隆寺五重塔、明王院五重塔、瑠璃光寺五重塔
 多宝塔(たほうとう)(仏塔の一形式で、上層を円形、下層を方形にした塔身の二重棟をい い、下層屋根上の亀腹(かめばら)が特徴); 石山寺多宝塔、 慈眼院多宝塔、金剛三昧院多宝塔、長保寺多宝塔、根来寺多宝塔、浄土寺多宝塔
 講堂、法塔(はっとう)(禅寺で説法を行う堂、他宗の講堂と同じ); 瑞龍寺法塔、唐招 提寺講堂、法隆寺大講堂
 鐘楼、鼓楼(時を知らせる太鼓をつるす建物); 東大寺鐘楼、唐招 提寺鼓楼、法隆寺鐘楼、法隆寺東院鐘楼
 倉、経蔵安国寺経蔵、東大 寺本坊経庫、正倉院正倉、唐招提寺経蔵・宝蔵、法隆寺経蔵、法隆寺綱封蔵
 庫裏(くり)(寺院で食事を調える建物あるいは住職やその家族の住む場所)、方丈 (禅寺で住職の居室)、僧坊;瑞巌寺庫裏及び廊下、大徳寺方丈及び玄関、 妙法院庫裏南禅寺方丈、龍吟 庵方丈、法隆寺食堂、法隆寺東室
 書院(しょいん)(寺院の僧侶の私室)、客殿(きゃくでん)(客を接待するために 建てられた建物);勧学院客殿、光淨院客殿、龍光院書院、二条城二の丸御殿、本願寺書院、本願寺黒 書院及び伝廊、 観智院客殿、三宝 院表書院
 本殿、拝殿;神社の中心をなす建物で、 住吉神社本殿石上神社拝殿 など多くの本殿、拝殿が国宝に指定されている
 城松本城天守、 犬山城天守、彦根城天守、附櫓及び多聞櫓、姫路城大天守、姫路城西小天 守、姫路城乾小天守、姫路城東小天守、姫路城イ、ロ、ハ、ニの渡櫓
 唐門(屋根が唐破風(からはふ)造になっている門、正面に唐破風を見せる向唐門(むか いからもん)と妻側に唐破風をつける平唐門(ひらからもん)とがある);東照宮正面及 び背面唐門、宝厳寺唐門、大徳寺唐門、本願寺唐門、 豊国神社唐門、 三宝院唐門
 門二王門(仁王像を左右に安置した門)、三門(中央に大きな門、左右に 小さな門を配した門)、楼門(二階造りの門で、下層に屋根のないもの);東照宮陽明門、 瑞龍寺山門、教王護国寺蓮華門、東福寺三門、光明寺二王門、般若寺楼門、東大寺南大門、東大寺転害 門、法隆寺中門、法隆寺東大門、法隆寺南大門、金峰山寺二王門、長保寺大門、石手寺二王門、 崇福寺第一峰門
 回廊、塀;東照宮東西回廊、東照宮東西透塀、法隆寺回廊、 厳島神社回廊

 寺院、神社以外の国宝建築物としては次のものがある

 茶室如庵、妙喜庵茶室 (侍庵)
 能舞台;本願寺北能舞台
 学校旧閑谷学校講堂
 教会 大浦天主堂
能舞台の国宝は本願寺の北能舞台のみである。また、学校の遺構として旧閑谷学校講堂、教会では大 浦天主堂が国宝に指定されている。

 国宝建築物の屋根の造として次のようなものがある

 入母屋造(いりもやづくり)(屋根上部は二方に勾配をもつが、下方は四方へ勾配をもつも の); 国宝建築物の屋根は東照宮本殿、 園城寺金堂などこの 造が一番多い。
 宝形造(ほうぎょうづくり)(隅棟がすべて屋根の頂点に集まるもの);中尊寺金色堂、 願成寺阿弥陀堂、慈照寺銀閣、法界寺阿弥陀堂、鶴林寺太子堂、浄土寺浄土堂、東大寺開山堂、 富貴寺大堂
 切妻造(きりづまづくり)(二方に勾配をもち両端が切れているもの);国宝建築物の屋根 は法隆寺聖霊院、 宇佐神宮本殿などこの 造が入母屋造に次いで二番目に多い。
 両下造(りょうさげづくり)大崎八幡神宮石の間 、輪王寺大猷院霊廟相の間、東照宮石の間、北野天満宮石の間、二条城黒書院白書院間渡廊、本願 寺北能舞台橋掛り、本願寺伝廊、厳島神社本社弊殿、厳島神社摂社客神社弊殿
 寄棟造(よせむねづくり)(大棟の両端から四方に隅棟がおりる形式の屋根); 国宝建築 物の屋根は 浄瑠璃寺本堂、唐 招提寺金堂などこの造が入母屋造、切妻造に次いで三番目に多い。
 撞木造(しゅもくづくり)(屋根の稜線(棟)がT字型になっているもの); 善光寺本堂
 流造(ながれづくり)(神社本殿形式の一つで、屋根前面の流れが長く伸びて向拝(こうは い)となるもの);苗村神社西本殿、園城寺新羅善神堂、賀茂御祖神社東本殿及び西本殿、賀茂別雷神 社本殿及び権殿、宇治上神社本殿、三仏寺 奥院、住吉神社本殿、 神谷神社本殿
 両流造(母屋の前後に庇があり、破風板が合掌形に一続きに作ってあるもの);厳島神社本 社本殿、 厳島神社摂社客神社本殿
 日吉造(ひよしづくり)(切妻造の正面と両側面とに一間ずつの庇をつけ、背面 に縋破風 (すがるはふ)を附けたもの) 日吉大社西本宮本殿/東本宮本殿
 住吉造(すみよしづくり)(切妻造、妻入で屋根は反りがなく、棟に千木(ちぎ)と鰹木 (かつおぎ)を置く; 住吉大社本殿
 春日造(かすがづくり)(切妻造、妻入で正面に階隠(はしかくし)をつけ、棟には置き千 木(おきちぎ)、鰹木(かつおぎ)を置く); 宇太水分神社本殿、 円成寺春日堂・白山堂、春日大社本 社本殿
 大社造(たいしゃづくり)(日本古代の神社建築様式を残すものである);出雲大社本殿、 神魂神社本殿
 神明造(しんめいづくり)(神社本殿形式の一つで、切妻造、平入りで、屋根の反りはなく、 破風は交差して棟上で千木となり、その間に鰹木を置く、伊勢神宮の流れを汲むもの); 仁科神明宮

 国宝建築の建て方の中には次のようなものがある

 懸造(かけづくり)、舞台造(ぶたいづくり)(山や崖にもたせかけたり、谷や川の上に突 き出したりして建てること);石山寺本堂礼堂、清水寺本堂、醍醐寺清龍宮拝殿、 三仏寺奥院
 校倉造(あぜくらづくり)(三角形四角形あるいは台形の木材を井桁に組んで外壁とした倉 造);東大寺本坊経庫、正倉院正倉、 唐招提寺経堂・宝堂
 高床造(たかゆかづくり)(高い柱を立ててその上に床を張った建物);出雲大社本殿、正 倉院正倉、法隆寺綱封蔵など

 屋根は材料や葺き方によって次のようなものがある

 本瓦形板葺(ほんがわらがたいたぶき);中尊寺金色堂、 海竜王寺五重小塔、 元興寺極楽坊五重小塔
 柿葺(こけらぶき)(薄く矧(は)いだ板で屋根を葺く);羽黒山五重塔、大崎八幡神宮、 正福寺地蔵堂、円覚寺舎利殿、安楽寺八角三重塔、瑞龍寺山門、安国寺経堂、如庵、勧学院客殿、光浄 院客殿、高山寺石水院、龍光院書院、本願寺北能舞台(後座)、本願寺黒書院及び伝廊、本願寺飛雲 閣、慈照寺銀閣、南禅寺方丈、龍吟庵方丈、妙喜庵茶室、 室生寺金堂、不動院 金堂、豊楽寺薬師堂
 本瓦葺(ほんがわらぶき)(平瓦と丸瓦を交互に組み合わせて並べる屋根の葺き方);国宝 建築では檜皮葺とともに、 法隆寺の各建物 など多くの建物がこの葺き方をしている。
 栩葺(とちぶき)(厚さ1〜3cm、幅9〜15cm、長さ約60cm程度の割板(栩板)で屋根を葺 くこと);願成寺阿弥陀堂、 光明寺二王門、神魂 神社本殿
 檜皮葺(ひわだぶき)(ヒノキの樹皮を密に重ねて屋根を葺くこと);国宝建築では本瓦葺 とともに、善光寺本堂、 北野天満宮本殿、石の 間、拝殿及び楽の間、本願寺唐門、厳島神社の各建物など多くの建物がこの葺き方をしている。 40年毎に葺き替える必要がある。なお、桧皮については桧皮の話で詳し く述べています。
 銅瓦葺(どうがわらぶき)輪王寺大猷院霊廟 (本殿、相の間、拝殿)、東照宮の各建物
 鉛瓦葺(なまりがわらぶき)瑞龍寺仏殿
 銅板葺(どうばんぶき);瑞龍寺法塔、 大仙院本堂、 観智院客殿、太山寺本堂(兵庫)
 瓦棒銅板葺(かわらぼうどうばんぶき)(銅板葺き屋根で棒状の材を傾斜の方向に一定間隔 に並べて取り付ける葺き方、棒状の材も銅板で覆うので水漏れに強い); 延暦寺根本中堂
 桟瓦葺(さんがわらぶき)(方形で横断面が波形をした瓦で屋根を葺くこと);大徳寺方丈 及び玄関、大浦天主堂
 行基葺(ぎょうきぶき)(本瓦葺きの一つである。丸瓦の下方が末広がりとなったものを用 い、下方に置く丸瓦の細い方を覆うように順々に重ねて葺いたもの;孝恩寺観音堂、 富貴寺大堂

 国宝建築の建物の一部には次のようなものがある

 亀腹(かめばら);白漆喰などで固めて饅頭形にしたもので、建築物の基礎部分 (吉備津神社)、 多宝塔の上下両層の間 (根来寺大塔)、 鳥居の柱脚部などに用いられる
 裳階(もこし);仏堂、仏塔などの軒下壁面に取り付けた庇で 法隆寺金堂、五重塔の初重など
 向拝(こうはい);社殿や仏堂で、屋根を正面の階段上に張り出した部分、参拝者の礼拝す るところ(観心寺)
 閼伽棚(あかだな);水を供える棚 (当麻寺)
 破風(はふ);切妻造や入母屋造の妻側にある三角形の部分、またその斜めの部分に打ち付 けた板、切妻破風、入母屋破風のほか、次のようなものがある
 縋破風(すがるはふ);神社、仏閣などの建築にみられる、本屋根の軒先から一方にだけさ らに突き出した部分の破風で 長弓寺本堂など
 千鳥破風(ちどりはふ);屋根の斜面に設けた小さな三角形の破風で 松本城天守など
 唐破風(からはふ);中央部を凸形に、両端部を凹形の曲線状にした破風で 豊国神社唐門な ど

 寺院の建築様式には次の3つがある

 和様;古代に朝鮮半島や中国から伝えられた寺院建築を基礎に、平安時代末までに日本化さ れて成立した様式で、現代まで続く。 興福寺東金堂 など。鎌倉、室町時代には次の様式との折衷様も現れた。
 大仏様(天竺様);鎌倉時代の初期、重源上人が東大寺再建にあたり中国宋から取り入れた 様式。東大寺南大門、 浄土寺浄土堂 など
 禅宗様(唐様);鎌倉時代に禅宗とともに中国宋から伝えられた様式。禅宗建築に用いられ る。正福寺地蔵堂、 円覚寺舎利殿など

 その他

 地円飛角の構成、室生寺五重塔;屋根の垂木が二段になっていて、下の地垂木が円型、上の飛燕垂木が角型になっているものをいう。 この構成は鎌倉時代以後は使われなくなったので、この構成を持つ建物はそれより古い建物であること を示している。また、韓国や中国の著名な建物はほとんどがこの構成をとっている。しかし、鎌倉時代 よりずっと前に立てられた法隆寺の建物にはこの構成を持つものはなく、一つの謎とされている。



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