スコーピオンの封印・9
コンコン!午後11時を廻った時だった。私たちがシャワーを浴びてベッドに潜り込んでいた時のこと。もう眠るだけと思っていたけど、ここで私たちはヒカルくんから、思いもよらないことを聞かされる。
「はーい。」
と言いつつも、私はレンズから外の様子を見る。そうしないと外人が入って来て、襲われる確立が高いからだ。そーいう人がいて、犯された日本人は多いって言うからね・・・。
レンズをのぞいてみると、ヒカルくんに間違いなかった。ガチャリ!カギをあけて、ドアを開けると、ヒカルくんが私に向かってこう言い出したのだ。
「今からヴィクトリア宮殿に行こう。」
「えっ?だってヴィクトリア宮殿はもう閉まっているはず・・・。」
「2人に見せたい物があるんだ。今日行かないといけないんだ。早くしないと手遅れになってしまう。」
「先輩、どうしたんですか?」
「絵里奈ちゃん、君も来てくれないか?」
私たちは顔を見合わせ首をかしげた。まぁいい。とにかくヒカルくんが来てくれっていうから、行くことにしましょう。それに旅費とドル代がタダの理由もわかるかもしれないからだ。私たちは服に着替えて、ヒカルくんの運転で一路ヴィクトリア宮殿へ。
バスでぐるり回れることは知ってたけど、まさか宮殿の中まで入れるとは知らなかった。鉄でできた扉が自動的に開いた。でもここの館長さん、私たちが来ることを知ってるのかなぁ?たぶん知ってると思うけど・・・。
「ヒカルくん、ここの館長さんは私たちが来ることを知ってるの?」
「知るワケないよ。」
「えっ?先輩!ヒカルくんの目が!?」
ヒカルくんがクルリと私たちに顔を見せた時、なんとヒカルくんの目は、グリーンになっていたのだ!えっ!?だってさっきホテルにいた時は、グレーだったのに!どうしてグリーンに!?一瞬怖くて後ずさりしてしまった。
確かステージで、ライトに当たっている時はパープルに見えるのに、どこからグリーンが出て来たんだろう。これって一体何を意味しているんだろう。ヒカルくんは抵抗なく奥へと進んで行く。
私たちもおそるおそる行ってみることにした。宮殿の奥には、大きな深めの壷があって、その後ろには臺(だい)みたいなものが置いてあった。でも私には見えたのだ。なんと剣なのである。それも、刃物の部分がなんと水晶なのである。あんなに大きな水晶を見たのは初めてだ。
「怖がることはないよ。2人とも、おいで。」
「う、うん・・・。」
ヒカルくんの迫力に、私たちはタジタジ・・・。臺の前に立って見ると、止め金の所には、さそりの絵が型どられていた。さそり?さそりとヴィクトリア宮殿とは何の関連があるのかしら。
「確か、女神ちゃんはさそり座だったよね?」
「うん。」
「間違いない。君はスコーピオンの生まれ変わりだ。」
えーーーーーーーっ!?スコーピオンの生まれ変わり!?一瞬、背筋がゾッと来た。ヒカルくんの話によれば、大昔、ヴィクトリアがハワイに訪れた時、一匹のさそりを好んでいた時かあったらしい。ところがそのさそりは、ヴィクトリアの優しさにもかかわらず、毒でヴィクトリアを病にかからせたと言われている。
それを見兼ねた勇者・アルテとヴィクトリアの侍女・シルクという人を見届け人として、横になっている短剣で、さそりを殺したらしい。ようするに成仏していないっていうことね。そこで、来世の私がここに連れて来られたっていうワケ。
「この短剣はスコーピオンにしか、動かせないと言われているんだ。もしこの剣を動かすことができたら、スコーピオンだ。」
「わかったわ。やってみる。」
私は汗ばんだ手をズボンで拭いて、横になっている短剣を持ってみた。すると、なんと軽々と持てたのであるる。そして、まるで生きているかのように水晶が光り出したのだ。そして、私がつけているブルートパーズの石の部分がモールス信号のように光り出したのである。
ヒカルくんの右手の中指につけているシトリントパーズも光っている。あともう1つ、絵里奈がつけているガーネットのペンダントヘッドが光っていたのである。これって、一体どういうことなの?
「ヒカルくん、これって・・・。」
「『持てた』ってことは、間違いなくスコーピオンだ。その剣を、この壷に入れて。それからその指輪とペンダントヘッドも入れてくれる?」
「わかった。スコーピオンの霊が成仏してないなら仕方ないよね。それに、早く天国に返してあげたいし・・・。絵里奈、いい?」
「はい。『何を言われても驚きません』と言った以上、驚きませんよ。」
私たちはうなづいて、私は指輪を。絵里奈はペンダントヘッドを入れた。それに続くかのようにヒカルくんが指輪を入れた。するとどうだろう。壷の中が少しずつ光を増して来たのである。
そしてその光が大きな1本の柱になり、吹き抜けを突き抜けたのである。その光の中に、ブルーの光が入っていた。スコーピオンの魂である。その魂だけが吹き抜けを飛び出して、空へと上って行ったのである。
「すごい・・・。」
「あのブルーの光が、スコーピオンの魂なんだ。」
「なんてきれいなんだろう。まるで大きなマリンブルーみたい。」
「・・・・・・。」
絵里奈は黙ってその光を見ていた。なんだか不思議。私に、こんな力があったなんて知らなかったわ。今まで見たことがないマリンブルー。もしこれを密蔵者が見たら、飛びつくにちがいない。
その後、さっきまで柱になっていた光は、私たちの身体を包んで行った。その後の記憶は、はっきりしていない・・・。