日本→フランス→イタリア→マルタ


平成15年12月21日(日)

 今日からまたヨーロッパに行く。ヨーロッパの最後の未訪問国であるマルタとボスニア・ヘルツェゴビナを訪れることと、あと、アイルランドの妹の家のパソコンがまた壊れたので、修理に行くことが目的である。朝、普通列車で岐阜を出発、青春18切符を利用して成田空港に向かう。成田空港午後10時発のエールフランスAF273便でパリまでの予定なので、時間は充分あるが、昨日の大雪で岐阜は積雪15センチ、ダイヤの遅れも予想されたので、少し早い目に出発することにしたのである。

出発当日、岐阜は大雪。

 予想通り、15分ほどダイヤが乱れている。東に行くほど雪は少なくなり、豊橋を過ぎると雪はなくなった。浜松、静岡、富士を通過。富士山が綺麗に見える。熱海、大船を通過。成田空港に行くのに、大船で乗り換えようかとも思ったが、そのまま東海道線で行く。ほどなくして臨時停車。人身事故らしい。30分ほど停車。早い目に出て来ているので、まあ、少しぐらい遅れても大丈夫。やっと出発。でも、横浜を過ぎて再び臨時停車。今度は信号機の故障らしい。また15分ほど停まる。日本の電車が、3回も遅れるのは珍しい。これも、後から考えると、今回のトラブル続きの旅行を暗示していたようにも思える。成田空港、午後7時半到着。早い目に出てきたが、丁度良い時間ぐらいになった。

岐阜の大雪が嘘のように、富士山がきれいに見えた。

 今回の旅程は、成田からパリ、ローマを経由してマルタまで、マルタからローマを経由してクロアチアのスプリットまで、さらにクロアチアのザグレブからパリを経由してアイルランドのダブリンまで、そして、アイルランドのケリーからフランクフルトまで、最後に、フランクフルトからパリを経由して成田までとなっている。

 このうち、最後の方のフランクフルト→パリの区間は、発券後に、私が予約したフライトが航空会社の都合で欠航となってしまった。そのため、出発の数日前に旅行会社から、

「一つ後のフライトに振り替えますので、成田空港で受け取る航空券がステッカー処理されていることを確かめてください」

との連絡を受けていた。しかし、実際にカウンターに行ってみると、案の定、渡された航空券はステッカー処理されていなかった。事情を話すと、係員の男性はすぐにエールフランスの事務所に連絡を取ってくれて、では調べてみますということになった。しかし、待てど暮らせどエールフランスからの返答はない。航空券受け渡し窓口の男性が、再度問い合わせてくれたが、エールフランスからは、「今調査していますのでお待ちください」との返事。1時間近く待って、やっと、「ステッカー処理が必要です」との返答が来た。その男性係員が私の航空券を持ってエールフランスの事務所まで行ってくれ、ステッカー処理をしてくれた。

 結局、こんなことで、待合室に行ったのは出発の直前になってしまった。私はよくこのエールフランスの夜行便を利用するのだが、エールフランスのこの便だけ、日本を出発後、東に進路を取り、アラスカから北極の上を超えてヨーロッパまで行くので、成田からパリまで14時間のフライト。日本を夜出てヨーロッパに朝着くので、ホテル代は助かるし、朝一番のヨーロッパ各地への便に接続するので、時間が有効に使えるのでありがたい。エールフランスだけが、わざわざ遠回りをしてまでこんな便を飛ばしているのは、ニューカレドニア及びタヒチからフランスに行く旅客の接続のためだろうと思う。

北極点の真上を越えてヨーロッパに向かう、エールフランス273便、成田空港発パリ行き。


平成15年12月22日(月)

 フランス時間の午前4時半、定刻にシャルルドゴール空港に到着。ローマ行きに乗り継ぐために、一度フランスに入国する。シェンゲン協定により、EU内の最初の国で入国手続きを取る。乗り継ぐのはパリ午前7時発のローマ行きAF1204便である。今日は、このエールフランスAF1204便でローマまで行き、ローマで昼12時発のアリタリア航空に乗り継いで、マルタのバレッタまで行く予定になっているのである。

 しかし、ここで問題が起こった。荷物のセキュリティーチェックで、私の荷物は機内に持ち込めないと言うのだ。私が持っているのは小さなバックパック一つであり、成田でのセキュリティーチェックでは特に問題なかったが、ここでは、カウンターで預けるように言われた。荷物を固定するためのチェーン鍵がセキュリティーチェックに引っかかると言うのである。私の荷物は小さなバックパック一つなのだから、できれば預けたくない。係員と押し問答したが、ダメ。最後には、セキュリティーの責任者と言う人まで出てきて、荷物を預けるようにと言われた。チェーン鍵ぐらい放棄して荷物を持ち込めば何の問題もなかったのだが、私は、荷物を預けることにした。これが、大きな間違いの元であった。

 セキュリティーで、3番カウンターに行くように言われたので、3番カウンターに行くと、2番カウンターだと言われた。それで2番カウンターに行くと、今度は1番カウンターだと言われた。それで1番カウンターに行ったが、3番カウンターだと言われた。それではぐるぐる回るだけである。事情を話すと、それなら、「特別にここのカウンターで手続きをしてあげましょう」と係員は言ってくれた。後から考えると、私の荷物だけ別カウンターで預けることになってしまったことも、悪かったのかもしれない。さらに悪いことに、私の航空券は、パリ−ローマと、ローマ−マルタで別々になっている。パリ−ローマはここで搭乗券が出るが、ローマ−マルタはここでは搭乗券が出せないので、ローマで再度手続きしてほしいと言う。しかし、係員は気を利かせて、荷物をマルタまで通しで送ることにした。これが、後で事態を更に悪化させることになったのである。少し心配になったので、

「搭乗券はパリ−ローマなのに、荷物はパリ−ローマ−マルタで大丈夫でしょうね」

と聞いてみたが、係員は、

「心配要りません。むしろ、その方が安全です。最終目的地のマルタが書かれていますから、途中で何かトラブルがあっても、とにかく最終目的地が書かれておれば、マルタまでは届きます。それに、佐納さんはエールフランスのエリート会員になっておられますから、ご搭乗はエコノミーでも、荷物はビジネスクラスと同様の扱いになりますから、運送記録がきちんと残ります。大丈夫です」

と言う。念のため、荷物にきちんと「ローマ経由マルタ」と書かれた細長いストリップが取り付けられるのを確認しておいた。

 でも、ローマの空港はよく荷物が無くなることで悪名高い。荷物を預けてしまってから、少し後悔し始めた。でも、私のバックパックには貴重品は入っていないし、まあ、心配することもないだろうと思うことにした。

 待合室で搭乗を待つが、いつまで経っても搭乗が始まらない。電光掲示板には、「ローマ行き、DELAY」と出ている。係員に聞いてみると、ローマの天候が悪く、天候の回復待ちで、出発の目処は立っていないと言う。おいおい、そんなんじゃあ、昼のマルタ行きに接続できないかもしれないではないですか。いやな予感である。

 3時間近く待たされたが、目の前に止まっているローマ行きの飛行機に、コンテナの積み込みが始まった。荷物を積み始めるということは、もうすぐ出発だろう。順々に積み込まれて行くコンテナを見ていると、何となく、自分の荷物はあの中にないような気がしてきた。まさか、そんなこともないだろう。きっと大丈夫だろう。でも、第六感と言うやつだろうか、荷物はもう私の手元には戻って来ないような気がしてならなかった

 朝10時まで待って、「ローマの天候が回復しましたので、当便出発いたします。どうぞご搭乗ください」のアナウンスがあり、搭乗開始。でも、この時点で、ローマでのマルタ行きへの接続は怪しくなっていた。パリからローマまでは2時間かかるので、朝10時に出発するということは、昼の12時に到着するということだ。でも、マルタ行きの出発時刻も12時なのである。それでは接続できない。ただ、一つ望みは、12時発のマルタ行きは、私の予約した便名はアリタリアだが、共同運航便で、実際の運行はエアマルタなので、マルタから飛んできて折り返す便である。ローマ空港の天候が悪いのなら、エアマルタの到着も遅れているかもしれない。それなら、運良く接続する可能性はないこともない。

 ところがどうしたことだ。せっかく搭乗が始まったのに、当分出発しないだろうと勝手に思った乗客数名が現れず、我々はずっと機内で待たされた。1時間半も待たされて、11時半出発。こりゃ、マルタ行きへの接続は絶望的だろう...

 飛行機がいつ出発するかも分からないので、朝食も摂らずにずっと待っていたのだが、本来は朝7時の飛行機なので、積んでいる機内食がごくごく軽い朝食だけ。すきっ腹を抱えて、ローマに到着した。午後1時過ぎ。着いてみると、ローマは悪天候どころか、快晴の穏やかな日である。気温も、16℃もある。

 ディスプレーの表示を見ると、エアマルタは案の定、定刻昼12時に出発してしまっていた。それゃそうでしょう。こんな穏やかな天気では、離着陸に何の支障もない。これで、今日はマルタには行けなくなってしまった。

 ローマに着いて、まずやることは、予約の変更である。今日のマルタ行きに接続しなくなったので、明日の便に予約変更しなければならない。それで、乗り継ぎカウンターに行ったが、カウンターは目を血走らせたイタリア人たちでごった返していた。どいつもこいつもカウンターにへばりついて、係員と延々もめている。係員の方もてきぱきと仕事をするわけでもなく、だらだらと相手をしているから、一人一人に途方もなく時間がかかる。一時間以上待たされて、やっと順番が来たかと思うと、

「これは一度外に出て、ティケッティングの窓口に行ってください」

の一言で終わり。あーあ、一体何のために一時間以上も血眼のイタリア人たちと張り合いながら列に並んでいたのか。

 外に出るためには、一度荷物のピックアップ場を通らなければならない。それならついでである。パリで預けた荷物を、今のうちに取り返しておこう。そう思って、荷物カウンターで聞いた。すると、 LOST AND FOUND に行けと言う。それで LOST AND FOUND に行った。ここも殺気立ったイタリア人たちに占拠されていたが、何とか掻き分けてカウンターの所まで行く。係りのお姉さんは、私の航空券の番号をガチャガチャと入力して、

「佐納さん、あなたの荷物は約20分で、向かいのターンテーブルに出てきますので、しばらくお待ちください」

と言った。それで、ターンテーブルのところに行って、出てくる荷物を見ていた。

 このターンテーブルは紛失した荷物専用の出口で、大勢の人がターンテーブルを取り巻いていた。この人たち皆、ロストバゲージか?時々ターンテーブルが回って荷物が少しだけ出てくるが、待っている人の数に比べると、出てくる荷物の数は少ない。こんなんで大丈夫かいな?ほんまに私の荷物は20分で出てくるんかいな?いささか怪しい...

待てど暮らせど、荷物は出てこない...

 30分待ったが、私の荷物は出てこない。1時間経ったが、やっぱり出て来ない。もう一度カウンターで聞く。同じお姉さんが、端末をパカパカと叩いて、「ちょっと処理が遅れています。もうすぐ出てきます」の答え。本当でしょうね。

 それから更に1時間待ったが、やっぱり荷物は出て来ない。もう一度聞く。「もうすぐ出ます」の答え。分かりました。あと一時間だけ待ちましょう。

 結局、3時間半待ったが、私の荷物は出て来ない。カウンターの人が変わったので、いち早く、その人に聞きに行く。さっきまでのお姉さんはダメだ。新しい人は、私の航空券に張られたクレームタグの番号をパカパカと入力し、

「佐納様、あなたの荷物は、そもそもパリから届いておりません。まだパリにあるか、もうマルタに行ってしまったか、どちらかです。とにかく、あなたの荷物はここにはありません」

と言うではないか!悪い予感は的中した。やっぱりロストだ

「でも、私がパリから乗ってきたエールフランス機は4時間も遅れて、昼のマルタ行きに接続しなかったんですよ。どうして、荷物がマルタに行くことがあるんですか?」

と聞いたが、その時、係員のお姉さんは、少し面白いことを言った

「佐納さんが乗ってこられたAF1204便は、パリで出発が遅れることがあらかじめ分かっていました。しかも、ちょうど、マルタ行きの接続が微妙になるぐらいの時間遅れることが予見されました。そのような場合、乗り換え空港で、人間はギリギリのタイミングで乗換えができたものの、荷物の積み替えが間に合わず、人間だけが目的地まで行って、荷物が途中の乗り換え空港で取り残されることがあります。そのような事態を避けるために、そのような場合、乗客の経路とは無関係に、荷物だけは別ルートで目的地まで運送することが良くあります。ですから、佐納さんの荷物は、パリからミラノ経由でマルタに行った可能性があります。もしそうだとすると、佐納さんの荷物は既にマルタに到着しています。ただし、コンピューター上には何の情報も記録されていないので、これは単なる一つの推測でしかありませんが。」

でも、パリのカウンターの係員は、私の荷物はビジネスクラスと同じ扱いになるので、コンピューター上に記録が残ると言っていた。話が合わない。

 とにかく、3時間半も待って荷物が出てこないということは、今日の受け取りは絶望的だ。一度外に出て、明日の便への振り替え、それから、今晩のホテルを要求してみよう。天候不順で遅れた場合の対応はまちまちで、ホテルを取ってくれる航空会社とそうでない航空会社とがあるが、言ってみるだけ言ってみよう。

 とにかく外に出る。喉が渇いたので、売店で水を買うと、お釣りをごまかされそうになった。何度も抗議して、やっと正しいお釣りをもらう。それからアリタリア航空のカウンターに行く。チケットを提示し、パリからの便が遅れたために接続できなかったことを告げて、明日の便に変更してもらおうとする。すると、カウンターの若い男性の係員は、

「君の航空券は、パリ−ローマとローマ−マルタの2冊に分かれている。従って、何らかの原因で接続できなくても、それに対して航空会社は何の責務も負わない。なぜなら、2冊の航空券は互いに無関係な別の航空券である。だから、申し訳ないが、アリタリア航空は君に対して、何もしてあげることができない。分かったかね?分かったら、どいてどいて、次のお客様が待っているんだ。我々は忙しいんだ」

と言うではないか!そんなアホな話はない。確かに私の航空券は2冊に分かれている。しかし、それは、以下のような事情があってのことだ。すなわち、私は成田−パリ往復の国際線長距離航空券を購入した。その場合、往路、復路各一区間ずつ、ヨーロッパ内のフライトが無料になる。それで、往路はパリ→ローマを、復路はフランクフルト→パリをつけてもらったのである。次に、マルタとクロアチアとアイルランドに行くため、スカイチームのエアパスと言うものを購入した。これは、日本からヨーロッパまでスカイチーム便の国際線長距離航空券を所持している旅客に限り、やはりスカイチーム便を利用してヨーロッパ内を3区間以上旅行する場合に購入できる割安な航空券で、日本からヨーロッパまでの国際線長距離航空券とペアで使うものである。実際、私が所持している2冊目の航空券の券面には、1冊目の航空券番号が記入されている。国際線長距離航空券を所持していることが、エアパス発券のための条件になっているからだ。つまり、2冊の航空券は、確かに物理的には2冊になっているが、実際にはペアで使うものである。私がそう言うと、

「ふーん、君にはこれが一冊の航空券に見えるのかね?どう見ても2冊だと思うけどねー。いくら組み合わせて使う物でも、とにかく2冊に分かれている限り、別々の運送契約と見なされるんだよ。分かったかい?」

とふんぞり返って言う。こりゃだめだ、と思ったが、念のため、ロストバゲージについても聞いてみた。すると

「さっきから言っているように、君のパリ−ローマとローマ−マルタはそれぞれ別々の運送契約なんだ。君は荷物をパリで預けたんだろう。だから、君の荷物については、エールフランスがその責を負うんだよ。アリタリアは関係ないんだ。まあ、エールフランスのカウンターで一度相談するんだね」

と、大体予想通りの答えが返ってきた。

 それで、エールフランスのカウンターに行った。接続できなかったことについては、エールフランスの係員はすぐに対応してくれて、明日のマルタ行きに変更するとともに、今晩のヒルトンホテルを無料で取ってくれた。ラッキー!天候が原因の場合は、航空会社はあまりホテルを取ってくれないのだが、言ってみてよかった。これで、今晩の宿はOK。明日のマルタ行きもOK。ただ、もともとマルタは2泊の予定であったのが、1泊減って、マルタで一晩しかなくなるのが残念であった。もちろん、以後のフライトも全て後にずらせばマルタに2泊できるが、またそれで手違い等が出てくると困るので、やむなくマルタは1泊で我慢することにした。エールフランスの係員は、

「航空券は2冊に分かれていますが、組み合わせて使う航空券ですから、1冊の航空券と同じです。本日接続できなかった補償として、佐納様には、当社持ちでホテルを取らせていただきます。航空会社にとって、全てのお客様は大切なお客様です。誠意を持って対応させていただきます。一方、ロストバゲージについては、規程により、最終目的地にお荷物が到着しなかった場合をロストバゲージとしておりますので、途中乗り換え地のここローマでは何ともできません。もし最終目的地にお荷物が到着しない場合、最終区間を担当した航空会社が窓口となって、ご搭乗区間をトレースバックしながらお荷物を探していきますので、とにかく明日マルタまで行かれて、それでももしお荷物が出て来ない場合、マルタのアリタリア航空オフィスにて、ロストバゲージのお手続きをお願いします」

という返答であった。ほっとした。エールフランスの対応はまともである。念のために言っておくが、上のアリタリアとエールフランスの係員のそれぞれの会話は本当であって、私がエールフランスをひいきしているわけではない。本当に、対応にこのような差があったのだ。

 さて、無事取ってもらったヒルトンホテルは、空港に隣接していた。夕食と朝食も付いている。自費ではこんな所に泊まる事は絶対ない。久々に高級ホテルに泊まることができた。バイキング形式の夕食。レストランの従業員は、えらく陽気であった。いかにもイタリア人。

トイレも超豪華!ヒルトンホテルの客室。

陽気なレストランの従業員たち。


平成15年12月23日(火)

 朝、少し早い目にホテルをチェックアウトして、空港に行く。もしかすると昨晩の間に私の荷物が発見されて、コンピューター上に入力されているかも知れないと思ったからだ。LOST AND FOUND に行くと、年配の係員がいて、また例のようにパカパカとコンピューターの端末を叩き、

「ふむふむ、君の荷物は昨日パリから着いて、今、ここの空港のトランジットエリアにある。マルタ行きに積み込まれるのを待っているんだ。心配しなくて良い。君の荷物はマルタで出てくるよ。安心してマルタまで行きなさい」

という話であった。それならOKだ!

「荷物は昨晩のうちに見つかったんですね!」

と私が言うと、

「いや、違う。コンピューター上には何の情報もない。何の情報もないということは、君の荷物はきっとここの空港のトランジットエリアにあるに違いないということだ。わしはそう思う」

という返事であった。なーんだ、それなら、昨日から全く変わっていない。がっかりした。「コンピューター上に何の情報もない」までの上の句は同じで、その後が、「だから、パリから届いていない」「だから、マルタに行ってしまったのかも知れない」「だから、きっとこの空港のトランジットエリアにある」の三つの違う下の句につながっているだけだ。

「念のために、受け取り手の見つからない荷物を保管してある部屋があったら、見せてもらえませんか。もしかすると私の荷物があるかもしれないし」

「いいでしょう、いいでしょう。ご案内します。でも、君の荷物は多分トランジットエリアにありますよ。紛失物の保管室にはないと思いますけどね」

というわけで、とにかく、紛失荷物の保管室に案内してもらった。行ってみてびっくり。あるわ、あるわ、部屋の中には、受け取り手のない荷物がザクザク。山のように積まれていた。荷物に取り付ける行き先を書いたストリップもちゃんと付いている。それで、荷物は到着フライト毎にまとめられて置かれていた。荷物に付いているストリップの日付を見る限り、ここに保管されているのは最近3日分の荷物だけのようであった。たった3日でこんなに大量のロストバゲージが出るとは、気が遠くなりそうであった。これでは、コンピューターにも入力していないだろう。入力しないと受け取り手が現れないから、余計に溜まっていく。悪循環である。そして最後には廃棄するのか、あるいは期日までに受け取りがなかったということで中身を山分けにするのか、とにかく、尋常ではない大量のロストバゲージが保管されていたのには驚いてしまった

 しかし、そのロストバゲージの山の中に、私のバックパックはなかった。そんなわけで、手ぶらでマルタまで行くことになった。アリタリア航空AZ886便で出発、順調に飛行を続け、一時間ほどで、地中海の真ん中、シチリア島の南にあるマルタ島のバレッタに到着。これでもマルタ共和国というれっきとした一つの独立国家である。

マルタ島が眼下に見えてきた。

 マルタに着いて、ターンテーブルを見ていたが、他の人の荷物は次々に出てくるのに、私の荷物はやはり出てこなかった。それで、まず、ロストバゲージのカウンターに行き、念のため、昨日すでに荷物が届いていないかも確かめたが、届いていないということであった。コンピューター上にも情報なし。それで、ロストバゲージの手続きを要請する。すると、係りの人は、荷物の紛失(LOST)ではなく、遅配(DELAYED DELIVERY)であると言う。一定期間荷物を探して、それでも出てこなければ、それで始めてロストバゲージと認定する、それまでは遅配である、と言うのである。もうだんだん疲れてきたので、はいはいと言っておく。  ロストバゲージのカウンターのエアマルタの係員は、

「午後の、エアマルタ便でお荷物が届くこともありますから、お泊りのホテル名をアリタリア航空のオフィスに知らせておいてください。それに、荷物の遅配の場合、アリタリア航空から日用品のキットの配付がありますので、これもアリタリア航空のオフィスでお受け取りください。」

と言う。それで、空港内にあるアリタリア航空のオフィスまで行った。ホテルは未定であったので、ホテルを確保した後、私がアリタリアのオフィスまで電話で知らせることとし、また、とにかく1日分の日用品のキット(下着や使い捨ての歯ブラシ・歯磨きなどが入っている)をもらった。私自身はロストバゲージは初めての経験(何しろ、いつも機内持込ばかりで荷物をそもそも預けないのだから、ロストになりようがない!)だったが、以前、一日で荷物が出て来ない場合、二日目以降も航空会社の方で補償してくれる、と聞いたことがあった。それで、アリタリア航空の係員に確かめると、

「そんなものはありません。今日お渡しした応急の日用品のキットが全てです」

と言われた。私はそれを素直に信じたために、後に、遅配に対する補償を逃すことになった

 さて、全くの手ぶらでマルタに降り立った私は、とにかくバレッタの市内に向かうことにした。全く完全な手ぶら。パスポートと財布、航空券は内ポケットに入っているが、それが全ての所持品である。あと、ジャケットの外のポケットに入っているデジタルカメラだけ。これが私の現在の所持品の全て。

 市内までは、8番のバスで15マルタセント。1マルタリラが大体340円ぐらいなので、市内までのバスは50円ぐらいということになる。物価は安そうだ。

 市内までは、中世風の趣を残す町と言うか村と言うか、古風な町並みをいくつも通過して行く。これを見るだけでも充分に面白い。サンマリノと似たような感じの町並みだ。

 40分ぐらいかかって、終点、バレッタのバスターミナルに着いた。旧市街の入り口の門はすぐ目の前。それからその辺を適当に歩くが、ホテルを発見することができなかった。それで門の所まで一度戻ると、門の裏手に観光案内所があった。そこで地図をもらい、安いホテルを聞く。近くにゲストハウスがあるというので、のこのこと出かけて行った。

 ゲストハウスはすぐに見つかったが、頑固そうな中年のおばさんが出てきて、「うちは1泊だけの客は泊めない」と言われて、泊まる事ができなかった。それで、近くにあった二つ星ホテルの、ホテルブリティッシュに行ってみた。ここは1泊でもOK。一泊12マルタリラ。4000円ほど。マルタの物価とホテルの設備を考えると、少し高い気もするが、まあ、妥協することにする。ホテルの部屋から、アリタリア航空のオフィスまで電話、ホテル名を伝える。もし、午後のエアマルタ便で私の荷物が到着したら、ホテルまで届けてもらうように伝える。

中世風の面影を残す、バレッタ市内。

同上。

 午後から買い物。まず、かばんを買わなければならない。でも、市内にあるのは、観光客相手の高級バッグを売る店ばかり。結局、路上でかばんを並べて売っている人から、小さなバックパックを買う。次に、クロアチアに行ったら寒いだろうから、これも路上の店で毛糸の帽子を買う。あと、傘も買う。その後、下着数着と靴下を買う。下着を買いに行くと、売っているおっさんがニヤニヤしながらこちらを見ているので、「どうしたんですか?」と言うと、

君、飛行機で荷物がなくなったんだろう。ここに下着を買いに来る外国人は、そうと相場が決まってるよ

と言うではないか!やっぱり、アリタリアのロストバゲージは、日常茶飯事のようである!

 私は空港のアリタリア航空のオフィスの係員の言葉を素直に信じたため、領収書を取らなかった(まあ、全部、露店で買ったものばかりなので、もともと領収書など取れなかったが)。後で分かったことだが、ロストバゲージ当日に買った日用品は、補償の対象外。ロストバゲージの翌日以降(厳密に言うと、24時間を経過した以降)に買った日用品は、領収書があれば、最大200ドルまでなら補償される。でも、ロストバゲージになったら、その当日すぐに、不足している物を買うのが普通だよね。私は当日すぐに買い、しかも領収書がないから、どっちにしてもダメ。

 今日は平日のはずだが、クリスマスが近いからか、午後3時には店がことごとく閉まってしまった。ホテルに着いたのが午後2時ごろだったから、すぐに買い物をして良かった。そうしないと、買えないところだった。明日はクリスマスイブだし、一日移動なので、今日買いそびれると、本当に何も買えないところだった。


 


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