平成12年9月3日(日)名古屋空港10時20分発のシンガポール航空SQ981便で出発。シンガポールに現地時刻の15時10分着。36番バスで市内に行き、途中の適当なところで降りて適当に歩いていると偶然にもホテルがあったので泊まる。1泊45S$。夕食5S$。
9月4日(月)シルクエアーのMI498便でトリバンドラムに向かう。トリバンドラムはインド南端の町で、ケララ州の州都でもある。現地時間の15時40分着。インドは、シンガポールと2時間30分、日本と3時間30分の時差がある。この、30分という中途半端な時差は慣れないと気持ち悪い。
イミグレでは、係官が
「入国スタンプはどこにありますか?」
と言う。
「ビザならここにあります」
とそのページを示したが、係官は、
「ビザではなく、入国スタンプです」
と変なことを言う。
「私は今シンガポールからインドに着いたばかりなのですから、入国スタンプはありません。インドの国内線で来たのではありません」
と言ったが、係官は私の言ったことを無視し、
「ビザがあっても、入国スタンプがなければ入国できません。入国スタンプはどこなんですか?早く言いなさい」
と、さらに訳の分からないことを言い始めた。今から入国しようとしているのであるから、そんなものあるわけないではないか。それを押すのがあんたの仕事やがな!
係官の言う「入国スタンプ」とは、「small gift」のことであることは明らかだった。さっさと何か渡してけりをつけるか、分からないふりをして徹底抗戦するか、決めなければならなかった。そういう時は、どれくらいのギフトが必要かを雰囲気から推測して、徹底抗戦する価値があるかどうかを判断しなければならない。まあ、このオッサンなら、大した物をやらなくても良かろう。それなら、徹底抗戦するよりも、何か下らない物でもやって早く出た方が良い。そこで、胸ポケットに入っていたもうインクの出ないボールペンを差し出すと、係官は急ににこにこして、ポンとスタンプを押した。馬鹿な野郎め。書けないポールペンとは思わなかっただろう。こういう時は互いに騙し合いである。旅行者によっては、こういう用途のためにウイスキーのミニボトルに自分のオシッコを入れて持ち歩いている奴もいるというから、係官のほうも大変である。
でも、ボールペン1本で入国できるとは、インドも可愛いものである(もちろん、本当は何もやらなくても入国できないといけないのだが)。アフリカなら、数十ドルはふんだくられているところだ。
まず銀行でチェンマネ。1ドル=44ルピー90パイサのレート。50ドル両替する。
外に出ると、トゥクトゥクの運転手たちが寄ってくる。「市内まで10ドル!」などと勝手にほざいている。無視して歩いていると、「市内に行くバスはないぜ」とか、「お前だけ特別に5ドルにしてやる。これが最終プライスだ」とか言ってくる。「市内まで1ルピー!」と言うと、「OK」と言う。いくらインドの物価が安くても、トゥクトゥクが市内まで1ルピーのわけがない。着いたら10ドルと言い出すに違いない。こんなのは無視。
市内に行くバスはすぐに見つかった。市内まで2ルピー50パイサ。わずか7円である。10ドルとは大違い。しかし、バスは猛烈に込んでいた。乗った瞬間、あちこちから手がするすると伸びて来て、ポケットの中を探ってくる。ほとんど全員がスリだ。荷物をガードしながら乗る。
市内までは、バスで30分近くかかった。安ホテルはあちこちにあるが、最近はホテル代に前ほどシビアでなくなったので、Fort View Hotel という名の中級ホテルに泊まった。税込みで1泊243ルピー。
夕方、その辺をぶらつく。レモンジュース3ルピー。そのあと、店でバナナ24ルピーを買う。50ルピー札を出したら、お釣りは23ルピーしかなかった。3ルピーごまかされた。
トリバンドラム市内の様子。ヒンズー寺院が見える。
9月5日(火)郵便局に行って家に葉書を出した。8ルピー。10ルピー札を出したら、お釣りをくれない。文句をっても知らん顔。何度か言って、やっと2ルピー返させた。郵便局でもお釣りをごまかす。
昼食41ルピー、夕食37.50ルピー。インターネットカフェ15ルピー。1日中、ただ市内をぶらついていただけ。バナナを昨日の倍ぐらい買ったが、なぜか昨日の半額ぐらいだった。
揚げ物の屋台。
9月6日(水)今日はモルジブに移動する日である。出発準備を整え、部屋でくつろいでいると、ベルが鳴った。ベッドを修理するらしい。ホテルマンと大工とが入ってきて、ベッドを一度解体し、それから釘を打ち直したりボンドで補強したりしている。もうすぐチェックアウトするのだから、何も今しなくても、もうちょっと待てばいいのにね。
空港へはトゥクトゥクで行った。50ルピー。空港に10時30分着。飛行機は12時55分発だが、チェックインはすでに始まっていた。時間に余裕があるので、階上の展望レストランで食事。客は私1人だけであった。ベジタブルビリヤーニと紅茶で108ルピー。ここのレストランはウエイターが良く教育されていて、客は気持ち良く食事ができる。でも、ウエイターの英語は極端に訛っていて、非常に聞き取りにくかった。
空港のセキュリティーチェックは異様に厳しい。インディアンエアラインズIC963便は、12時50分にトリバンドラムを出発、約1時間のフライトでモルジブのマレ空港に13時20分に到着した。インドとモルジブとの間には、30分の時差がある。つまり、モルジブは日本より4時間遅れである。
入国の際、入国カードに宿泊予定ホテル名を書かなかった。どこの国でも、入国カードに宿泊予定ホテル名を書く欄があるが、普通は適当に書いておくのに、それを書かなかった。すると、係員は、
「ホテルの予約なしに来たのですね」
と言う。仕方なく、
「はい、そうです」
と答えた。すると係員は、
「パスポートをここで預かります。今からロビーに出て行って、旅行会社でホテルを予約して、それから再び戻ってきなさい。そうすればパスポートは返します」
と言うではないか。
ロビーに出る前に、空港内の銀行に行ってチェンマネしようとする。トリバンドラムでインドルピーを再両替するのを忘れて、持って来てしまったのでここで換えようとする。ところが、ここの銀行は、米ドル以外の通貨は替えないという。仕方なく、10ドルだけ両替。120ルフィー。
ロビーに出て行くと、いるいる、自称旅行会社社員という男どもがわんさかいる。そいつらが私に引き寄せられるように寄って来て、
「イミグレでパスポートを預かられたんだろう。うちと特約のホテルに泊まるなら、パスポートを取り返してきてやるぜ。1泊100ドルだ」
などと口々に言って来る。値切ると、
「ふん、パスポートが戻ってこなくても良いのかい、ジャパニーズ野郎」
などと逆に脅迫してくる。どいつもこいつも観光客ずれしていることが見え見えで、感じが良くない。
とにかく、1人の男とホテル代の値段交渉をする。30ドルまで下がったが、男は、金は先払いだという。要するに、30ドルを今払わなければ、パスポートを取り返してやらない、と言うのである。渋ると、デポジット5ドルでもいい、と言い出した。もちろんドルは持っていたが、インドルピーがあまっていたので、インドルピーを渡そうとすると、インドルピーは受け取らないと言う。まあ、銀行でも受け取らないくらいだから、当然か。でも、こっちもドルはないと主張して、押し問答の末、インドルピーで200ルピーをデポジットとして払うことで納得させた。
とりあえず合意に達したので、このオッサンは、旅行会社の名刺を取り出し、裏に何やらホテル名を書き込んだ。それを持って、イミグレに戻る。今度はパスポートにスタンプを押してくれて、パスポートが返却された。こうなったらこっちのものだ。200ルピーはもったいないが、あのオッサンは気に入らないのでついて行く気はない。
すばやく渡し舟の乗り場に向かった。モルジブはサンゴ礁の国で、小さな島が無数に集まって一つの国になっている。空港自体が一つの島で、首都のマレがそれに隣接する別の島になっている。マレ島は空港島から見える距離にあるのだが、とにかく別の島なので、渡し舟で行くのである。
渡し舟は約5分でマレ島に到着。 渡し舟は1人10ルフィー。5分ほどでマレ島に着いた。船を降りると、また、客引きが待っていて声をかけてくる。
そいつらを無視して歩き始める。手当たり次第にホテルに当たるが、どれも満室。市内をあっちこっち歩いて聞いて回るが、空き部屋がない!何しろ、マレ島は直径わずか2kmの小さな島で、端から端まで歩いても20分もかからない。そんな小さな島だから、ホテルの数も知れている。これはもしかすると本当に空き部屋がないかもしれないかもしれない。
狭いマレ島の中をさらに1時間近くさまよって、最後の最後に1軒だけ、空き部屋のあるホテルを見つけた。一泊40ドル+税金10%で、合計44ドルだという。高いけども仕方ない。これを断ると、もう空き部屋はないかもしれない。
昼から、島の中をいろいろ見て歩く。Tシャツ35ルフィー。ミネラルウォーター10ルフィー、絵葉書2ルフィー50ラーリ、日本までの切手代10ルフィー。モルジブは物価が異常に高い。空港で10ドルしか替えなかったから、明日空港島に行くための渡し舟代10ルフィーを差し引くと、もうほとんどお金が残っていない。夕食代もない。結局、夕食は、スーパーで6ルフィーのパンを買って食べる羽目になってしまった。
マレの魚市場。
本当に美しいモルジブの海岸。
2 ページ目へ