第6章 教員の役割ーつづき(3)F 就職活動の支援システムこれまでの就職誌支援の活動の内容は、大学教育の中で学生の実践的能力の育成しながら、長い目で見た学生の就職活動の支援をしようというものであった。教員によるこうした間接的な就職支援活動に対して、直接的な就職支援活動が期待されている。 一般に教員は学生の就職活動に対する関心は弱く、就職部に任せる問題であると考えている。就職期になると就職活動に追われる学生が授業の教室に現れないために、学生の就職活動は大学本来の教育活動を阻害するものという意識もしばしば見られる。 実際は、多くの場合に就職活動を通じて学生は見違えるほど社会人として成長するものである。 また、学生の就職活動の重要性を認めて、学生の就職活動の支援をしたいと思っても、現実にどのように支援すべきかノウハウを持っていない教員も多く見られる。自分の専門領域の問題にあまり関係がないので、責任を持って若い学生の人生航路の選択に積極的に関与していくことは慎むべきという考えも見られる。 したがって、教育を通じた間接的な就職支援に興味があっても、学生個人の就職活動に直接関与することは教員によっては非常に難しい仕事である。しかし、実際に相談に来る学生は非常に多く、すべて門前払いで済ませられない問題でもある。学生の方でも良く教員の特徴を観察していて、あの先生は相談しても相手にしてくれないと口コミニュースによって、相談に訪問する教員を選別している。 学生の将来に対して教育責任を持つ同じ教員でありながら、積極的に就職相談(広い意味での人生相談)を引き受ける教員と忌避する教員とがある現状は決してノーマルなものとは思えない。就職相談は単なる教員の個人的な趣味と見られるならば、大学全体としての就職支援活動は組織的に広がって行かないであろう。 以下、教員の直接的な就職相談について検討してみよう。相談のケースによって大きく異なるので、ここでは基本的な問題点のみを取り上げる。 (1)就職相談学生の就職指導は、一般に就職部が行っているが、教員も就職部と連携を取りながら、積極的に担当している学生の就職相談に乗ることが望まれている。 学生の就職相談では、基本的には二つの問題が取り上げられる。一つは、学生の個性や希望・適性がどの辺にあるのかという、自己分析の問題、二つは志望する分野の業界研究・企業研究の問題である。 就職相談は、自己分析の結果と、業界・企業研究の結果とをうまくマッチングさせることである。学生の企業選択のミスマッチングを防ぐためには、教員の就職相談が非常に大きな力になる。 (a)自己分析への助言 ー 学生の学習活動の観察と「学生カルテ」 就職活動の開始に当たって、学生は必ず自己分析を求められる。自分の個性や適性がどのようなものであるか、明確に認識しなければ、どのような分野に進んだ方がより自分の人生の充実に繋がってくるかが、業種や企業の選択ができないからである。 大学生活の中で学生と日常的に接していると、教員は学生の個性や適性について観察する事ができる。その観察結果にもとづいて学生の特徴について、指導者としての意見を率直に述べることができる。 さらに、重要なポイントは、ゼミなどの集団活動の中で学生がどのような考え行動し、どのような成果を上げてきたかを、実践的教育の中でチェックしていると、就職相談でも学生の自己分析に対して非常に有意義な助言を与えることができる。 学生は、しばしば学生時代の学習活動について自覚的に振り返ることなく、夢中で時間が過ぎてしまう傾向がある。長い時間にわたって学生の側で見ている教員が、学生に対し学習成果を問いかけることによって、立ち止まって自分の今までの学習活動について静かに自省し、これまでの学習活動を通じて、何が成果として自分の体の中に残っているのか、まだ何が足りないのかを発見することができる。 こうした示唆を与えることができるのは、日常的に学生の学習活動を親身になって観察し助言しているからである。 教員の就職相談には、日常的な密のコミュニケーションを通じた学生観察の積み重ねが不可欠である。 医者が患者の病状を記入するカルテがあれば、いろいろな医者がそのカルテを見ながら適切な処置をすることができる。同じように大学でも、個々の学生について「学生カルテ」が整備されると、3年間の学習活動の中で出会った教員から種々の観察結果がファイルされることになる。 就職相談の際、担当の教員が、学生カルテを見ると、これまでの学生の活動ぶりが明らかになるとともに、学生を指導した様々な先生から寄せられたカルテ内容を総合的に判断して、より一層的確に学生の特徴や適性を把握し、より適正な助言を与えることが出来る。 高度情報化社会では、学生の学習活動を把握するのに、単に成績表だけでは不十分であり、「学生カルテ」の作成が重要な課題になる。 企業人事部も、大学の教員が長い時間をかけて育ててきた学生たちの成長記録について、積極的に活用するようになるであろう。 (b)業界研究・企業研究への助言 ー 学内就職情報ネットワーク 教員の専門分野によって異なるが、一般に業界研究や企業研究について、学生の的確なアドバイスを送ることは非常に難しい仕事である。 一般的な業界や企業の特徴については、特に社会科学系列の教員は相当知識を持っているが、企業の採用状況や希望する人材能力などについては、毎年新たに情報が追加されており、教員が個人的に情報収集することは困難である。 したがって、企業訪問などで業界や企業の情報をファイルしている就職部と、教員との間で常時緊密な連絡を取れるような学内就職情報ネットワークを整備すべきである。 学生が相談に来た時に、その情報ネットワークによって、問題の企業や業界について的確な情報を手に入れることができるならば、学生の特徴・意向を十分把握した上で、企業とのマッチングの可能性について的確な助言を与えることができる。 情報ネットワークの内容については、就職部で研究し情報の整備を蓄積していくことが望まれる。もちろん、企業のホームページなどで企業の情報が豊富に得られるが、就職部は、どのような学生をどのような業界・企業に送り込みたいのかを十分研究して、就職相談の教員に情報を提供すると共に、指導している教員の相談にも積極的に応じられる体制を作るべきである。就職指導に関しては、特に、業界や企業の研究の側面で、教員支援の体制を本格的に構築すべきである。 相談に来た学生に対して、直接就職部に行くように指導するのがもっとも的確な指示である場合もある。しかし、学生の特徴を長年の指導の中で熟知している場合には、就職部の助言を得ながら、教員が就職指導を行った方が学生にとってより親切になることもある。先生には自分のことをよく知って貰っているという気持ちがあって、それだけ素直にアドバイスを受け入れると思われる。 (2)就職ガイダンス ー キャリアアップ支援就職部は活発に就職ガイダンスを行っている。したがって、教員が改めて就職ガイダンスを行う必要性がないのかもしれない。 しかし、教員による就職ガイダンスを次のような意味で非常に重要になる。 就職支援活動の中心が、企業斡旋から人材能力の育成にシフトしてくると、教員による長期間にわたる能力育成の過程が問われるようになる。その際に、就職支援には、能力育成の努力を積み重ねると同時に、学生に徐々に社会的な関心や職業意識を育てていかなければならない。 授業の中で積極的に職業観や社会的な関心などについて学生に問いかけ問題点を取り上げることは、学生の社会的な成長にとってにとって非常に有意義なことである。しかし、講義の内容によっては必ずしもこうした話を期待することはできない。 そこで就職ガイダンスの中で教員が、学生の心身の成長に会わせて、職業観、企業社会の動向や種々の進路の可能性、さらに様々な企業が望んでいる能力や技術などについて、種々の就職情報を与えることは、長い目で見た就職支援活動になる。 就職部の就職ガイダンスが、就職活動直前の学生に就職ノウハウを与えることに重点が置かれるのに対して、教員の就職ガイダンスは、新入生の時代から始め、年々学生の成長に会わせて、自分の将来の姿をよるくっきり描くことが出来るように、話の内容を具体化していくいことになる。 教員による就職ガイダンスは、学生のキャリアアップのための就職指導ガイダンスである。学生がキャリアアップのために、どのような学習活動が必要かというような情報も含めて、学生の意識も能力も徐々に社会活動発展していくように導いていくためには、ガイダンスを通じて学生に情報を与え、問いかけていくことが不可欠である。 (3)能力育成プログラムすでに見たように、就職支援活動の重要な柱として、正規の授業の中で将来企業社会で求められるもろもろの能力を養成していくことが必要である。ただ、教育システムには、学問体系の知的継承という大学本来の機能が強く重視されるために、学生の実践的な能力の育成プログラムは、学部の授業と離れた別の組織で希望者を対象に行うケースが出てくる。 場合によっては、学部の正規の授業では時間的に制約が厳しいために、能力育成プログラムを別に設定して全学共通に希望者が自由に履修するというシステムも重要なものになる。卒業に必要な単位の取得と関係ないが、積極的に学生の学習意欲を大学組織として受けとめて、新たな教育サービスを学生に提供する。 専門的な能力育成プログラムには、指導教員として外部の専門家を多く動員し、小人数でより効率的な能力育成の教授法を採用することが、その成果を高めるために不可欠である。 就職支援という視点から見て、次のような能力育成プログラムが重要である。 ・コミュニケーション能力育成プログラム ・プレゼンテーション能力育成プログラム ・問題解決能力育成プログラム ・キャリアアッププログラミングの講座 ・TOEICなどの会話力養成特別プログラム ・HP作成など高度な情報処理教育の特別プログラム (4)就職委員会教員組織の中で学生の就職問題を扱う機関として就職委員会が設置される場合がある。就職委員会は、学部の学生の就職問題について検討し提言し、就職支援に関するもろもろ行事を実施する場所である。 しかし、学生指導を全教員が行っている以上、特定の教員が就職問題に特化するという体制は必ずしも望ましいものではない。学部内では、就職問題は就職委員会が担当すればよいという、安易な空気が出てくるからである。実際、ゼミ指導などを行っている教員は、しばしば学部の就職問題に関係している。 一般に就職委員会は、就職問題に関する学生への情報伝達を行うのが主な機能である。各年次別の就職ガイダンスなどを通じて、学部学生に将来の進路に関するもろもろ情報を早い段階から提供していかなければならない。もちろん、就職部との緊密な協力活動が不可欠である。 学部の教員の就職問題に関する問題意識が、非常に弱い場合には、就職委員会の役割はそれだけ重要になる。 学生への情報活動と同時に、教員への情報活動の仕事が大きなウエートを持っている。 まず就職市場の動きに関して、絶えず新しい情報を教授会メンバーに提供し、より多くの教員が、学生の就職問題に真剣に取り組むような体制を整備しなければならない。教員がこうした就職情報を豊富に受けることによって、就職問題への関心と理解が深まり、学生との就職相談に当たっても、より具体的で適切なアドバイスを与えることが可能になる。 さらに、人材育成を通じた就職支援活動という視点から、学部の教育体制について絶えず改善の工夫をすることが不可欠であるが、就職委員会は、学部教育システムと就職市場(企業社会)の動向との接点に配慮しながら、教育システムの改革の努力を積み重ねていかなければならない。その際、就職委員会による新しい就職市場の分析成果は、学部の就職戦略の決定にとってもっとも重要な情報になる。 特に、就職市場の動向に十分配慮しながら、社会的な問題を視野に入れたカリキュラム内容の改革と、新しい実践的教育手法の導入がこれからの学部改革の柱になる。 就職委員会にとって、就職部の支援などを受けながら、人材育成を通じた就職支援の体制を発展させることがもっとも重要な仕事である。 実際、多くの教員はほとんど就職支援という意識がなく、就職委員会が学部教授会をリードして、制度的な改革を積み重ねて行くべきである。 トップに戻る アンケート調査就職支援活動の内容大学の各組織において展開されている進路就職支援の活動について伺います。各組織が行う様々な支援活動がいつ頃から実施されているのかの問題を取り上げます。また、大学内では学部によって取り組み状況が相当異なると思いますが、全学でもっとも活発なケースについて支援活動の実施状況をまとめて下さい。 以下に掲げられた様々な支援活動の例示を見て、1、2年の低学年から実施している長期的な支援活動には、◎(うち特に重要な活動には◎◎)、3年生の春頃から実施している支援活動には◯(うち特に重要な活動には◯◯)、4年の就職期に実施される支援活動には▲を記入して下さい。現状だけでなく、今後の活動の展望についても同様に記入して下さい 1、2年の低学年から長期的に実施; ◎実施 、◎◎特に重要な活動
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