3図

strategy




第4章 就職支援に関する基本戦略の策定

(1)基本戦略策定の枠組み



大学全体として就職支援活動を組織的に展開していくには、大学の人材育成と就職関する基本戦略が明確にされていなければならない。
就職支援の問題は、長期的に見て全学的な組織で取り組むべき極めて重要な課題であるからである。取り組みに当たってその拠り所になる基本戦略が十分描けれていないと、教育現場における効率的な支援活動とその成果を期待することができない。

3図には基本戦略の意思決定システムについてその流れが示されている。

就職活動は外部の環境変化と密接に絡んでいるために、戦略の策定に当たって外部環境の変化と就職市場に関する情報を収集し分析することがまず不可欠になる。この情報分析は、主に就職部や就職委員会の担当する仕事である。

ここで明らかになった情報は、学内の情報ネットワークを通じて常時戦略決定に関与する組織に流されていなければならない。
もちろん、これらの組織は外部情報を提供するだけでなく、学内の議論の中で提起される諸問題についても、外部環境との関連を常時調査して学内組織にフィードバックしなければならない。

基本戦略の策定に関係する組織構造は、基本的には学長、学部長の教学執行部とその傘下の教授会、さらに理事会、職員部長会と教育関連の職員組織である。これらの組織はしばしば就職支援問題について、情報を入手するだけで、積極的に新たな戦略を策定することがなく、就職部任せに終わることがある。

しかし、就職支援活動の中核は人材育成のシステムであり、これはまさに教育機関として大学が全学で取り組むべき問題である。
そうした視点に立てば、就職支援に関する戦略の策定という仕事は、こうした戦略部門の本源的な重要機能になる。大学中枢部の就職支援に関する戦略的な活動抜きにしては、新しい時代の就職市場で多くの学生の幸せを掴むことは難しくなる。

ここでの戦略策定には、外部社会の動きや就職市場の情報を十分取り入れるだけでなく、その大学の基本理念や経営環境も考慮してスピーディーな意思決定を進め、就職支援関するに関する総合的な戦略を策定することが求められている。

こうして具体的な戦略が策定されると、戦略の実施機関として関連する組織構造の再構築を行い、それぞれの現場で支援活動が展開される。さらに各組織の活動についてパフォーマンスの評価があり、それが再び戦略策定のプロセスにフィードバックされて、外部の情報と会わせながらさらに新しい就職支援活動の戦略に発展していく。


(2)情報過程



就職支援問題は、外部の企業社会の動きと密接に関係しており、環境変化に関する情報が重要である。
また、就職市場において、自分の大学で育ててきた学生の実力がどのように評価され就職の実績に結びついているのか、そこにどのようなミスマッチが生じているのか、具体的な情報を収集し分析して、意思決定の場に正しく提供していかなければならない。

情報収集の担当組織として就職部や就職委員会の機能は非常に重要である。従来は就職実績や企業の採用動向などの具体的な情報については、就職部などではかなり体系的に進められていた。

実力選抜の時代では、企業の人材ニーズや、大学が養成してきた人材能力の質の内容、および、そこでのミスマッチ等に関する情報分析が、就職支援の戦略策定において極めて重要になってくる。
さらに、将来の企業の人材ニーズの動向を見るためには、グローバルなレバルで社会経済の環境変化の展望そのものまで的確に把握して行かなければならない。

就職部が単なる就職斡旋機関である場合には、必ずしも要求されなかったような、就職問題の高度な専門的能力、すなわち、外部社会の動向と人材育成との関連に関する情報分析の能力が、これからますます重要になってくる。
就職部は、外部社会に対する大学の情報機能を果たすべきであり、その専門的機能を高めるために就職部の人材養成が強く求められている。
もちろん、こうした情報を学内の戦略決定機関に常時流して行くだけでなく、就職支援の現場組織として学生に対しても出来るだけ早い段階で情報を伝達し、双方向の交流を通じて就職指導していくことも、不可欠である。

 大学では就職に関する問題については、しばしば就職部のレベルで処理すべき問題と考えられている。
しかし、実際には前述のように全学的な組織で人材育成を進めていかなければ、その効果は限られたものになる。どのように就職関連組織以外の組織を巻き込み、就職支援活動を全体的に活性化していくかが非常に重要な問題である。
就職部がどれだけ豊富に情報を分析し、的確に対応策を提起しても、その他の組織が積極的に参加しなければ、その貴重な情報は馬の耳に念仏に終わる危険性が出てくる。

全学的な意識レバルを上げるには、学内の危機意識が不可欠である。

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4図

supporting  system


第5章 就職支援の組織構造


次に、就職支援に関する大学の基本戦略にしたがって必要な組織が形成され、組織的な活動が展開されている。

4図には、大学システムを支える組織とその内部資源、組織的な活動の流れが示されている。

(a)就職支援の組織構造

大学の組織は、教員、職員それぞれに構成されている。ここでは大学の組織の中で特に就職支援に関連する組織に着目する。

大学の組織構造は、戦略決定に関連した組織と、実際に業務を遂行する現場組織に分かれている。

就職支援という視点から見て、意思決定に絡む組織として重要なものには、理事会などの法人組織と、学長・学部長などの教学トップの意思決定組織、それを支える学部教授会、大学院の委員会がある。

意思決定に参加する重要な職員組織としては、部長会があるが、就職支援問題については、教学と一体化したトップ組織が重要な位置を占めている。就職支援のための人材育成の問題は、教学だけでなく職員も同じレベルを責任を果たさなければならないからである。

就職指導の現場の責任機関として、就職部は職員組織であり、教授会は学生の教育責任を担っている。就職部の提案や情報提供が教、授会の就職戦略の意思決定にとって不可欠の要素であり、また、就職部の就職指導は、まさに教員の教育活動の延長線上に位置づけられている。
したがって、両者の間で恒常的に密な協力関係を構築しなければならない。

各学部の就職委員会と就職部との合同作業が第1段階の協力関係になるが、全教員が就職問題に関連しているので、さらに広い範囲の協力関係を組織的に維持する工夫が不可欠である。
組織活動の融合化には、学部事務室の中に就職部とクロスした組織を組み込むとか、就職に関する教授会の意思決定には、就職部長が常に参加して就職戦略を議論し決定するなど、組織的な一体化・融合化を促進する工夫が望まれる。
定例的に教授会メンバーと就職部員とが話し合うための組織の整備も、今後期待されるものである。


学生の就職指導に関連する現場組織には、就職部以外に学生部、学部事務室などがある。
特に学生の就職支援の新しい組織として、インターン支援組織、キャリアアップ支援組織が上げられる。

インターン支援組織は、学生のインターン活動を支援するために、外部の企業や公的機関の中からインターン受入先を探して、インターン情報を学生に継続的に提供する組織である。現場におけるインターン活動の具体的な内容に関して、先方の企業や公的機関と折衝するが、志望学生の紹介や引率の仕事だけでなく、場合によっては、学生のインターン活動の成績記入なども、依頼していかなければならない。
現在、インターンの受入先が学部学生の場合に非常に限られており、しかも、企業の戦略として一方的にインターン学生受入活動を展開している。人材育成の一環としてインターン活動の積極的な活用という、大学側の強い要望を伝えてインターン活動の内容のレベルを高めながらも、新たなインターン企業の開拓が何よりも重要な作業になる。

キャリアアップ支援組織は、低学年の段階から学生の就職意識・勤労意識を高めて、将来の進路に向けた学習活動を展開できるように、さまざまな就職ガイダンスの活動を展開する組織である。
就職部は、就職期を迎えて実際に就職活動を始めようという学生の具体的な指導が中心になるが、キャリアアップ支援組織は、学生の大学生活のより長期間にわたって、将来の進路に関する様々な情報の提供や進路学習の指導相談に当たることになる。

その意味で、各学部の教育システムと密接な関係があり、場合によっては、全学共通の就職進路に関するカリキュラムの設定とその実施にも責任を持つようになる。(国際)公務員受験の志望学生は、低学年からそのための系統的な学習活動始めることが必要になるが、まさにキャリアアップ支援組織の活動の一環になるであろう。マスコミ受験志望の学生に対しても、同じように長期の学習指導体制が必要になるが、キャリアアップ支援の対象の一つになる。

後述の「学生カルテ」の作成は、キャリアアップ支援組織が中心になって、ゼミ指導教授など学生の成長に密接に責任を持つ教員との協力体制を構築すべきである。相談に来た学生について、どのようにキャリアアップが進んでいったかの記録は、この組織の活動記録と成果の評価にとっても重要なものになる。

(b)組織間の情報ネットワーク

すでに見たように、就職戦略の意思決定の組織と、現場の実施組織との間では、常に情報ネットワークで結ばれて、現場と戦略部門との情報交流による、問題解決が不可欠である。組織間の情報の流れがよりスムーズに行くような、学内イントラネットの構築と、現場における就職情報活用のソフトを蓄積していかなければならない。

特に、学生の就職実績については、大学の教育システムの評価にフィードバックさせなければならない。大学の教育の成果として、そこで育った学生がどのような進路をとっているか、その実績に関する正確な情報は、大学の意思決定組織にとってもっとも基本的な情報であり、それを抜きにして大学教育の改革について新しい方向性を見つけることは困難である。

意思決定の情報過程として、すでに説明したが、大学の就職支援の戦略の策定には、意思決定組織に絶えず就職担当の現場組織からの情報が入らなければならない。その際、就職部や就職委員会は情報を生のママに伝えるというのではなく、豊富な情報を収集しながらそれをその大学独自の視点から分析し、根本的な問題点を探り、新しい戦略策定に向けて問題提起を続けることが求められる。
就職問題は、全学的な努力による学生育ての問題であり、ますます全学の組織間のイントラネットの活用が重要になる。情報の共有化を積極的に測り、社会的な変化により迅速に的確に対応できるように、組織の活力を高めて行かなければ、学生が就職市場で苦しい状況に追い込まれてします。

就職部やキャリアアップ支援組織などで、個別の学生の就職指導においては、学生の成長記録が重要な参考資料になる。目の前の学生の言い分を聞くだけでは必ずしも学生の内的な成長の跡までは捕まえきれない。大学生活の長い時間にわたって、いろいろな先生や指導者がいろいろな側面から、学生の今までの活動記録や実績を整理して記入していると、それらの情報を総合しながら一人一人の学生に対して内容の濃い親身の相談指導が可能になる。

特に、ゼミ担当の教員と就職指導担当の職員との間の、学生個人に関するきめ細かな情報交流は、学生の就職支援に当たって、非常に重要なものになる。
教室で常時学生の活動状況を観察してきた教師の個人情報と、企業の現場に関する情報を豊富に持っている就職担当の職員の情報とがうまく結合されて、就職相談指導に生かされると、学生の就職活動のミスマッチの問題はかなりの程度に解決できると思われる。

学内の情報ネットワークの中に、当該学生の「学生カルテ」が蓄積されていると、指導に関連するどの組織においても、学生の活動実績を的確に把握してより親身に相談に当たることが可能になる。
もちろん、学生個人の情報は、プライバシーの保護の観点から情報ネットワークの中で慎重に管理されなければならない。

(c)組織間の資源配分

就職支援に関連する各組織には、それを支える諸々の資源が配置される。
資源には、人的資源、物的資源、金銭的資源、情報的資源の諸要素に分かれる。大学は、外部の財用役および金銭・情報の市場と就職市場から資源を調達し、大学の組織内の資源配分が行う。

特に人的資源は、就職市場から採用され、組織に配置されて組織的な活動を支えて行くが、その中で研修や経験を通じて人材の質的な向上が重要な課題になる。
組織に配分された資源の量的質的状況によって、就職支援のための資源の活動能力が大きく左右される。

組織的な就職支援活動には、大学としては優れた資源を蓄積し、適切に配置することが必要である。
その際、大学全体として利用可能な資源に一定の制限があるために、その制約の中で就職支援に関連する部署にどのように資源を配置するかが問題になる。

大学の各組織における活動を通じて、学生の就職活動が支援され、その成果として、学生はそれぞれ就職市場を経由して企業社会の新しい職場に進んでいく。


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アンケート調査


就職支援の組織構造


  就職支援という新しい戦略にそって大学の組織がどのように再編成されていますか。 就職支援を進めるに当たって、例示のような組織が設置されている場合には◯、その組織が、学内で特に重要な支援活動を行う場合には◎を付けて下さい。現状だけでなく近い将来に重要になる組織についても同様に記入して下さい。


◎特に重要な就職支援活動をする組織 、
◯ 支就職援のための組織が設置されている


{意思決定に絡む組織}


@理事会などで就職支援問題の担当組織
A学長・学部長会などで就職支援問題の担当組織
B教授会の中での就職支援問題の担当組織
C職員幹部会などの就職支援問題の担当組織
D外部有識者を入れた就職問題支援組織

{現場の組織}


E就職部の中で学生就職支援のための特別な組織
F 教員の就職部長が置かれていますか(イエスならば◯)
G就職部以外の学生関連の部署における特別な就職支援組織
H就職支援について就職部とその他組織との話し合いの組織

進路就職指導委員会;

I全学レベルの委員会
J学部レベルの委員会  

K教員・職員の恒常的な話し合いのための組織
Lキャリアアッププラニングに関して学生との相談交流の組織
M学生のインターン支援のための専門組織
Nその他の新しい組織( )



 組織間の就職情報ネットワーク


就職支援に関する情報的資源は、支援活動を支える重要な役割を持っています。まず(A)就職部や就職委員会を中心にした学内での就職情報の交流、つづいて(B)外部組織、すなわち、企業人事部や就職専門機関などと、学内の各組織との就職情報の交流を取り上げます。ここでは交流情報の内容よりも、就職情報のネットワークが、組織間で張られているかという問題について、伺うことにします。

 列挙した各組織から、就職部や就職委員会との間で情報交流のネットワークが整備され、継続的な情報交流がなされている場合には◯、特に緊密な情報交流のネットワークが整備されている場合には、◎を付けて下さい。
同様に、企業人部など外部組織との間で、情報交流のネットワークが整備され、継続的な情報交流がなされている場合には●、特に緊密な情報交流のネットワークが整備されている場合には*、を付けて下さい。
現状および近い将来の見通しについて記入して下さい

非常に緊密な情報交流;◎ 就職部との間、*外部組織との間

継続的な情報交流;◯就職部との間、●外部組織との間




{重要な意思決定組織の情報ネットワーク}


@理事会
A学長・学部長会
B教授会
C職員幹部会
D外部有識者を入れた就職問題支援組織

{現場組織の情報ネットワーク}


 就職部以外の学生支援組織

E学部事務室(授業管理の現場組織)  
F大学院事務室(大学院学生の相談指導機関)
G国際交流センター(留学生支援機関)
H学生相談室など
Iビジネスインターン支援機関

J学部レベルの教務委員会
K広報部
Lゼミなどの小人数の教育組織 
M教員個人
N就職支援について教職連携の話し合い組織

O学生個人個人とのインターネット上の交流  
P父母(父母会などを通じた組織的な交流)
 その他

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