2図

student life




第3章 学生の能力向上と就職支援活動



 就職支援活動の焦点が、単なる企業斡旋から就職指導の実力選抜に対応できるような能力育成に移ってきたが、この章では学生の能力向上の過程について考察する。
大学生活の学習を通じて学生の本当の実力が向上してくれば、将来社会生活における活動の選択の範囲が広がり、自己実現の可能性がより高くなる。
大学の学習による 学生一人一人の能力を向上させる過程を明らかにすることによって、新しい就職支援活動のあり方が明らかになる。

 

(1)入試のシステム


 第2図では、学生の大学入学から就職までの活動の過程についてまとめられている。
図の下には、大学の入学システムが表示されている.。

学生の大学における活動には入試段階の問題が色濃く関連している。

入試段階で将来の人生に対する夢や目的意識が明確になっている学生ほど、大学生活もより目的志向型の学習生活にすんなり入っていくことができ、それによって就職段階で将来の人生設計がより具体的に描かれるようになる。
長い人生のなかで大きな幸せを掴もうとすれば、大学への入学段階で学生が自分の潜在的な能力や特徴をよく分析し、さらに将来への期待や夢をより具体的に描いてそれに相応しい学習の場所を選択することである。

大学も入試の市場において、こうしたしっかりした学習の動機と目的意識を持つ若者の動向をより重視し、自分の大学が提供できる学習機会が、彼らの学習ニーズに十分適応できるかどうか検討し、積極的に彼らのニーズに応えるような入学システムを整備すべきである


(2)大学の学習活動



2図の中には、入学後の学習活動が図示されている。
就職活動に入るまでこの3年間の学習活動は、学生の能力向上の時期である。
就職支援という視点から見ると、この学習活動によって企業の人材ニーズとミスマッチをおこさないような、総合的実力がこの3年間にどのように形成されてきたかが問われる。

この学習活動を教員と職員とが側面から支援することになる。従来のように教師が学生を教えるという視点から、学生が自主的に問題意識に従って学習活動をしていくのを教師が側面から支援していく、という新しい視点への転換が大学教育システムの中で求められている。
本当に実力を習得するには、学生サイドの意欲的な学習活動が不可欠であるからである。

通常大学の学習過程では、幅広い一般教養に関する科目群、基礎的な科目群、より専門的な科目群の中から順次選択しながら4年間の学習を進めていく。さらにより高度な専門応力を習得するためには、大学院教育がますます重要な学習の場になっている。

まずはじめに、大学生活における学習のインセンティブが問題にされる。学習のインセンティブが弱いと、学習活動に本格的に取り組もうと言う意欲が弱くなるり、当然ながら学習の成果も上がらなくなる。

現実には、多くの学生について、大学の学部や学科で専門的な学問を学ぶ意義や目的について必ずしも自覚することもなく、新しい学問の魅力に触れる知的好奇心や学ぶ喜びを失っており、その結果、キャンパス生活の日々をただ楽しくエンジョイしていこうという傾向が見られる。
このような学生は、多くの場合に就職期になって初めて自分の能力形成の欠陥について反省し、志望企業の厳しい能力選抜の壁の前で深く苦悩することになる。企業の人材ニーズとの間にミスマッチが生じて、志望企業へ就職する道が非常に限られてくる。それに伴って、しばしばフリーターとして社会に出て行き、社会経験を積みながら人生の道を探るようになるが、これは明らかに人生の回り道になってします。

就職支援には、入学後の学生に出来るだけ早い段階で人生の生きる目的を意識させ、そのための準備としての学習活動への本格的な取り組みを促進することが重要になってくる。
入学した学部や学科のカリキュラムが主に提供する学問的世界の魅力や面白さを学生に理解させ、その中に引き込んでいけば、自然と学習活動に没頭しようと言う意欲が生まれてくる。

今の学生には具体的な社会問題などに対する潜在的な関心が強く見られる。
大学で学ぶ学問は自分には難しいとして入門レベルで立ち止まってしまう学生でも、その学問の学習の中で社会的な問題の解決システムが具体的に示されると、徐々に学問の世界をより身近に感じるようになり、前向けの気持ちで学習意欲が湧いてくる。
また、将来の就職という視点から見て、自分の将来生きる人生の目的、勤労観や社会的な関心にできるだけ早い時期に目覚めさせることも必要である。

学生に社会的関心を持たせるめには、様々な実践的な学習を大学の教育カリキュラムの中に積極的に取り組みべきである。
講義以外でも、ゼミの調査研究や実地研修などで実践的な学習を経験し、社会的な関心を拡げる
いろいろな実践的な学習の中で、現実の様々な問題について問題発見、問題分析、問題解決の能力が研修鍛練していけば、就職活動においても、様々な分野における企業の人材ニーズに十分対応できるようになる。


(3)総合的能力の形成



ところで、大学で育成される総合的な実力の内容は、単に学業成績の優秀さだけではない。
ここでは、T字型能力と人間性(EQ能力に焦点)について考察しよう。

T字型能力:

自分の専門領域では深くしっかりした学問体系を習得しているとともに、その他の社会活動に関係する分野に関しては,幅広い基礎的な知識や関心(文理融合の知識を含めて)を持っていること。

結局、T字型能力とは、高い専門的能力を軸にして社会問題を自分で総合的に考察判断する能力を指している。就職市場でもこうした幅広い判断力をもった高度専門能力を重視する傾向がつよい。
単なる専門馬鹿ではなく、企業が現実に直面する様々な問題を解決する高い総合的な専門能力こそ、企業がもっとも必要とする人材能力である。

  次に、EQ能力 には心内知性と対人知性とがある。

心内知性;

自分で行動目的を設定し、その達成に向けて自分の心をコントロールして長い期間にわたって集中した思考努力を積み重ねる能力

対人知性:

他人と良好で適切な人間関係を保ち、目的達成に向けて協力していく能力、対人知性には、しばしば企業が欲しがる学生のコミュニケーション能力やリーダーシップが含まれる。

就職支援という視点から、基本的な問題は大学の学習活動の中で、どれだけT字型能力やEQ能力が向上するような学習システムが整備されているかである。後にこの問題を考察しよう。

学生の総合的な実力は、1年からの教育システムの中で鍛練されるが、直接的就職支援として就職部による進路指導が重要である。
特定の分野に就職を希望する学生に対してその関連の就職市場に関する具体的な情報を提供するとともに、学生の適性、志望や能力を踏まえた適切な進路相談や、厳しい就職試験を乗り越えるためのノウハウの提供なども、学生就職支援の活動の重要な一部である。

ただ、就職部が、4年になって就職ノウハウを与えても,厳しい実力主義の選抜試験では、付け焼き刃の効果に終わることもあるが、他方で、学生にどれだけ実力があっても、就職ノウハウが不足していると、自分に適した企業にタイムリーにたどり着かない恐れが強い。
その意味で大学生活の能力育成と就職部による進路指導は車の両輪のように重要な役割を果たしている。

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