「カンタータシリーズに寄せて」本山 秀毅



 バッハのカンタータはバッハの作品の中でも大きなウェイトを占めるものです。声楽、器楽の範疇を超えて彼の音楽語法のあらゆる形を見出すことができます。しかしそれが教会のための音楽作品であることから、われわれの周囲では器楽曲ほど聴く機会が多くありません。聴き手にとっても演奏者にとっても素晴らしい宝の箱とも言うべきカンタータを、連続して演奏していくことを、われわれ「バッハアカデミー関西」は大きな目標としています。



 われわれの取り組みの特徴のひとつは、わたしがバッハ合唱団の演奏活動の中でも続けてきました、バッハの作品とわれわれの距離を埋めるようなアプローチ、すなわち「解説」の充実にあります。解説というと堅苦しい印象をもたれる方もおられるかもしれませんが、わたしは常に実際の音の例を聴いていただきながら、聴き手の皆様とその作品との対話とでも言うべき形をとるように自然なものを目指しています。名前は堅いですが、「ゲシュプレヘスコンツェルト Gesprecheskonzert (対話のある演奏会)」という名称もここからきている訳です。そこでは、バッハが行ったキリスト教的な創作はもちろん、言語や当時の歴史的背景、また皆様の身近に感じておられることとの共通点も織り込み、充実した時間にしたいと考えています。音楽を聴くのに説明は必要ないという立場も理解できますが、解説を聞いた後に音楽に接すると、より深くその音楽を感じていただけるようなものを目指したいと思います。
 もう1つの特徴は、カンタータをそれが作曲された本来の目的にあわせて、教会の暦にしたがって演奏をしていくということにあります。われわれの生活から「季節感」というものが希薄になりつつある現在、毎週の礼拝にあわせて作曲されたカンタータは折々の季節感を備えています。ここでは季節の移ろいはもちろんですが、むしろその中にある精神的な節目も感じていただければと思っています。各シーズンに演奏される彼のカンタータが皆様の生活に彩りと潤いを与えてくれることになれば、それはわれわれにとって大きな喜びになります。



 これから長い道程が始まりますが、真摯にバッハの音楽に向かうという姿勢はいつも忘れず進みたいと思います。皆様の暖かいご支援をどうかよろしくお願い申し上げます。

(2001年2月10日 「バッハアカデミー関西」友の会機関紙への寄稿)




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