ひとりぼっちは嫌だ。
だから一人で誰かを待つのは嫌だ。
だって自分の所に来てくれないかもしれないから。
もしかしたら…自分は捨てられたのか…と思ってしまうから…。
待ちあわせ場所に彼女が居ることに気づくと少し小走りに近づく。
相手は当然怒っているだろう。
でも、それでいい。それでいいんだ。
だって怒ってくれるって事は俺の事を心配してくれたりしているから。
俺を気にかけてくれているから。
だから、いいんだ。何度怒られたって、時間にちょっと遅れて
待ちあわせ場所に行く。
「今、何時だと思っている。」
「だから、悪かったって言ってるじゃん。」
何度も繰り返される会話。
悪いとは思ってるんだ。でも、俺は試してしまう。
お前が俺の事を待っていてくれるのか。
お前を疑ってる訳じゃない。俺が、…弱いだけなんだ。
一人になりたくないから、一人は寂しすぎるから。
お前と一緒に居たいだけなんだ。これは甘えなんだってわかってる。
でも、…お前の強さは眩しいくらいで…。
「一度くらい待ち合わせ時間に現れたらどうだ。」
「…だから、悪いって言ってるだろ?」
きっと、お前は知らない。
俺がお前に感じてるものを。
「まったく…。それで、どうするのだ?」
「今日はボーリングに行こうぜ。」
お前は強いから、簡単に俺を許してしまう。
俺さ、絶対、強くなる。お前に甘えてばっかじゃ格好悪いもんな。
「たまにはもっと生産的な事をしたらどうだ。」
「生産的な事って何だよ。…ってお前の事だから、『学問はいいぞ。
頭に栄養をやるのだ。』とか言いそうだよな。」
「…分かっているではないか。」
でもさ、今はこのままで…。
今日はこのままで居させてくれよ。
たまの休日、うーんと羽根を伸ばそうぜ。
「生産的な事は平日してるから、今日はいいんだよ。ほら、行くぞ。」
「一体いつ生産的な事をしていると言うのだ。そなたが生産的な事をしている姿を
見たこと無いぞ。」
「そりゃ、お前の見てない所でしてるに決まってるだろ。」
お前に隠れてこっそり、強くなってお前を見返してやるんだ。
もう甘えてばっかりの俺じゃないって。
「ほう、初耳だな。詳しく聞かせてもらおうか。」
「秘密だよ、秘密。喋るわけねぇだろ。」
当たり前だろ?お前にふさわしい男になるための努力してます…なんて
言える訳ないだろ。
「…まさか、そなた…。」
「…ん?」
「女にうつつを抜かしておるのではあるまいな!?」
「はぁ?」
俺、そんな奴に見えるのか?
…って言うか、そんな信用ねーかなぁ…。
「お前さー、俺がそんな器用な奴だと思うか?瀬戸口師匠じゃあるまいし。」
「…いや、しかしだな。」
「ああ、もうそんなのいいや。早くボーリング行こうぜ。」
「誤魔化しておるのではないだろうな。」
「…ちょっとは信用しろよ。」
「ふん…。」
ま、いっか。師匠が言うにはさ、こう言うのって軽いレクリエーション
なんだってよ。それだけ、コイツとも親密になったっていう事で、
納得しておくか。
…でも、やっぱ酷いよな。俺、別に他の女子に興味ねーんだけど…。
やっぱ、コイツには言わなきゃわかんねーかな。
なあ、待っててくれるか?
いつか俺が強くなるまで。
いつものように待っててくれるか?
それでさ、追いついたら…やっぱ怒られるのかな?
それも、いいか。
待っててくれよな、俺が強くなるまで。
……一人という寂しさに打ち勝つまで。
<あとがき>
久しぶりの滝川×舞です。この二人と言えばラブコメなのですが、
ちょっとだけシリアスを混ぜてみました。舞姫の強さって憧れませんか?
そんな強さに憧れている滝川にしてみたのですが…。
あ、一応この二人は付きあってます(笑)
舞姫の監視(笑)の目を盗んで浮気なんて器用な真似が滝川に
出来るとは思えませんね。…というより、滝川は彼女が出来たら、
彼女一本でしょう。彼女の尻に敷かれてそうだし(苦笑)