少年、多いに悩む




売店でヤキソバパンを買い、ハンガーへ行こうとした途中だった。
何故か整備主任の原に話があると言われて会議室へと連れて来られた。
しかも何故か自分には座るようにと言ったのに原は座らずに立ったまま
何か考えている。

「お、俺、何か…」
「滝川くん、明日映画観に行くんですってね?」
「へ?あ、はい…」
難しい顔をしているのでてっきりこの前の被弾について何か怒られるのか
と思ったのだが、どうやら違うらしい。でも何故自分が映画を観に行く
事を原が知っているのだろうと首を傾げていると、突然隣の椅子に
座り真剣な表情で見つめられる。
「あ、あの〜…」
「その後の予定、決めてないの?」
「え?」
「あのね、そりゃあマニュアル通りの男なんてつまらないわよ?
でもあんまり計画性がないのもどうかと思うのよ」
「は、はぁ」
熱弁を振るう原にとりあえず頷く。何故、急にこんな事になったのか
よくわからない。

「それにね、明日はクリスマスなのよ?クリスマス、わかるわよね?」
ただその剣幕に押されるようにして頷くしかない。実際分からないとか
分かるとかどうでもいいのだ。ここは穏便に済ます為に頷かなければ
ならない事を滝川はこれまでの小隊生活内で一応学習していた。
「男を上げたいと思わない?」
「…上げる?」
「もう、馬鹿ね。こういう時こそチャンスでしょ。大体女の子だって
口にしないだけで待ってるものなのよ?それを分かってあげるのが
男でしょう!」
「そ、そーいうもんなんすか?」
原の熱弁に押されてついついそう答えてしまう。そう言われてみれば
そんなような気がするから不思議だ。大体相手は萌である。普通の
女の子よりも更に言葉が少ない。

「そうよ。大体まだ貴方達手しか繋いでないでしょ」
「な、な、何で知ってるんすか!?」
「見てればわかるわよ。いい?私の言うことをちゃーんと聞くのよ?」
「は、はい!」
すっかり原のペースに乗ってしまい、椅子の上で正座をしてしまう滝川。
「うん、宜しい。まずは映画は何を見るつもり?まさか…貴方の
好きなアニメ映画じゃないでしょうね」
「へ?何かマズいっすか?」
「あー…もう…」
呆れたように原がため息をつく。そしてすぐに彼女は多目的結晶で
何やら情報収集を始めた。
「アニメは却下。これから私が色々アドバイスをあげるから、明日は
ちゃんと男を上げなさい」
「は、はい!」
この後、会議室で延々と明日のデートについての計画が練られ、
終わったのは24日から25日へと日付が変わる頃だった…。