白状します…








じっと見てる。それはもう何か言いたそうにずーっと見てるんだ。
いっそ追及してくれれば、そっちの方が楽なんじゃないかなぁ。
だってあんな風に見られてたら、気になるし。
さっきからゲームやってたって集中出来ない。あー、ほら。
またコースアウトしてクラッシュだよ。

いや、別に俺そんなに怖くないけど…でも今みたいな素子さんは
怖いわけで。でも昼間の事はあんまり言いたくないし。
隠し事なんてご大層なモンじゃないさ。でも…隠しておきたい
ことってあるじゃん?

例えば…今年の誕生日プレゼントの事とか。

素子さんの誕生日は年末近くだし、今からだったら半年近いけど
今から準備しないと大したものも買えない。正直俺の給料なんて
あんまりないし。素子さんの方が階級も上だからいいお給料貰ってる
ぐらいだ。だからさ、今からちょっと節約したり、バイトしようかなって。
そんな事はナイショにしておきたいだろ?

…という事で素子さんがどんな風に思ったってこれはナイショなんだ。
知ってるのは速水と茜だけ。あ、あとは味のれんの親父は知ってるか。
味のれんの親父に頼み込んで野菜の皮むきとか(あ、これでも包丁少しは
使えるんだぞ…でも危なっかしいからって皮むき器でやらされてるけど)
後は仕入れの手伝いとか。たまにしか出来ないけど、
事情を話したら親父は協力してくれるって言ってくれて…。

だから最近は素子さんと一緒に帰ったりするのも少なくなった。
きっとだから不審に思ってるんだろうけど…。
無言の重圧って奴?流石にこれはキツイよな。

「…素子…さん?」
「なぁに?」

俺が口を開いたら、素子さんの表情がぱぁっと華やいだ。ああ、
それって俺が話し出すと思ってる…そういう顔。でも、これは言えない。
だからそんな素子さんに気づかないフリをする。

「明日さ、速水んち寄ってから帰るから先に帰っててもらっていい?」

バイトする時に使う『言い訳』はいつも速水や茜が考えてくれる。
自分で考えるって言ったんだけど、それじゃすぐにバレるって二人が
言うからさ。…俺だって自分が嘘つくの上手くないの解ってるけど、
はっきり言われるとそれはそれでムッとしてしまう。そうしたら
そういう所が俺の良い所であり悪い所なんだって、そう言いやがった。
ああ、そうですよ。俺は頭脳戦や駆け引きなんて無縁ですよ。
…でも自分でも自覚してるし…結局二人の入れ知恵に従ってる。

「そう、わかったわ。」

ごめんな、素子さん。俺だって素子さんのそんな顔見たい訳じゃないんだ。
それに今こうして嘘ついてるのも、本当は素子さんが喜ぶ顔が見たくて
やってる訳だし。でも、でも…。

…流石にこれはもう限界だと思う。あーあ、素子さんは狡いよな〜。
だって秘密を秘密に出来るから。相手が俺だったらさぞかし楽なんだろう。

あ、自分で考えてて情けなくなってきた。…ともかく、俺にはこれ以上は
無理だと思う。元々秘密を作るのって好きじゃないし。

考えてくれてた速水と茜!ごめん!

「あ、あのさ素子さん!俺、白状します…」




<あとがき>
滝川に隠し事なんて無理だと思います。きっと話してしまうでしょうね。
もちろん、無言の重圧もそうでしょうけど、自分から話したくなるタイプ
でしょうし。そしてきっと素子さんは真相を知っている筈(笑)
だって奥様戦隊は地獄耳持ちでしょうからね。

1日1作で1週間、達成できたら自分で自分を褒めてあげたい7題・J
配布先:HiSoKa