ご飯を食べた後、テレビを見ていた陽平くんが何かを思いついたように
表情が変わった。まるで悪戯を思いついた子供みたいに嬉しそうで
見ているこっちまで笑顔になってしまう。食事の後片づけを終えた
私の方を振り向くと嬉しそうな笑顔から急に真剣な表情を見せた。
「あのさ、もしもの話なんだけど…。」
「もしも?」
私が言葉を繰り返すと律義に頷いて、また神妙に唇を結ぶ。
…何だか、いつもと違う様子は、何かを彼なりに企んでいるに違いない。
「あ、うん。もしも、もしもだよ?俺がさ、そのー、戦闘とかで
怪我したりしたら、素子さんは心配してくれる?」
「…突然どうしたの?」
「いや、そのだから、もしもだよ。もしも。」
珍しく正座をしてまっすぐ見る瞳は私の答えを待っている。部屋の中に
流れるのは時計が時を刻む音とテレビの音だけ。
「…二番機の整備状態は悪くない筈よね。陽平くんは元々士魂号を
大事にしてくれてるし。」
「そりゃ、あいつは俺の相棒だからさ。大事なのは当然だし。」
陽平くんにとって二番機は戦友だって事は解ってるけど、本当に大事なのね。
だから二番機だってその想いに応えてくれてる。陽平くん一人、怪我させる訳
ないんだけど…そう言っても解らないわよね。二番機は…士魂号はちゃんと
君を戦友って認めてるんだけどな。
「そうよね。じゃ、なあに?陽平くんは私を悲しませたいんだ?」
「え?」
はは〜ん、これね?これを言って欲しかったのね?私の言葉に口が笑ってる。
驚いたその表情には笑顔が隠れてる。…って言っても陽平くんみたいな
素直なコが、表情を押し殺せる筈がないんだけど。
「ふーん、陽平くんは私の事なんてどうでもいいのね?」
慌てたように首と手を振る。そんなに振ってると頭痛くなるわよ。
素直な反応ね。…そういう所が良いところなんだけど。
「ち、ちがっ!そ、そういう意味じゃなくて!」
「じゃあ、どういう意味?」
正座をしたまま、上目遣いに見ている陽平くんに腕組みをしながら
首を傾げて見せる。こんな状況になったら、陽平くんは結局、企みを
私に話さざるを得ない。きっと唇を尖らせながら、拗ねたように
話しだすしかない。伊達に年上じゃないのよ、私。
陽平くんの企みくらいお見通しなんだから。
「だってさ、素子さんは俺より年上だし。俺の事よく知ってるじゃん?」
「それで?」
端から見たら、私と陽平くんは姉と弟だって言うかもしれない。
これでも、私たち恋人同士なのよ?
…言っても信じてくれないかもしれないけど。
きっと、そこかな…?
「でさ、俺は素子さんの事好きだけど、素子さんはどうなのかなーって…。」
徐々に語尾が小さくなって、体まで縮こまらせてる。あーあ、これじゃ、私が
陽平くんを叱ったみたいに見えるじゃない。もう、仕方ないコね。
「で?」
「…で、って言われても…。」
上目遣いで私の様子を見てる陽平くんを見てると思い出すものがあるんだけど
…言ったら怒るでしょうね。飼い主に怒られた犬みたいなんて言ったら。
「それで?どう?わかった?」
「う…うん。…えっと…多分。」
あらあら、本当に仕方ないコね。ちゃんと言ってあげないと駄目かしら?
「多分…なの?私、ちゃんと陽平くんの事好きよ。」
「う、うん。」
真っ赤になった陽平くんの頬に唇を寄せるとくすぐったそうに目を細める。
ああ、駄目ね。きっと、私の方が君の事好きよ。そんな風に照れてる君を
見てると私も嬉しくて、自然と笑顔になってしまうから。
ねぇ、もし、もしもの話なんだけど…。
陽平くん以外の人、見られなくなったのって言ったら…
君はどう答えてくれる?
君は私の言葉を信じる?
それとも…信じられないかな?
『もしも』じゃないって言ったら…もっと驚くかしら?
<あとがき>
毎日一作づつ書き上げるお題を借りてきてしまいました。
まだ色々お題に挑戦している最中だと言うのに(苦笑)
そしてこのお題はガンパレではメインでない筈の原×滝川オンリーです。
すいません、友達と話していた君はペット滝川版がやりたいんですよ。
(実は原作もドラマも見ていないのですが)
たまにこういう可愛い滝川が無性に書きたくなります。…何故だろう?
1日1作で1週間、達成できたら自分で自分を褒めてあげたい7題・J
配布先:HiSoKa