オレンジ色の夕焼けが広がった空間。ただ広いその空間に一人立っていた。
──ここはどこだ?
周りを振り返っても何もない。あるのは、延々と続く夕焼けだけ。
一体どこに立っているのかもわからない。だって足元にも夕焼けは広がって
いるのだから。
──…ああ、そうか。士魂号が夢を見せてくれてるんだ。
納得しながら、ただ目の前に広がっている夕焼けを見る。いつもは寂しいと思う
夕焼け。だけど今は寂しさを感じなかった。明確な理由はわからない。
本物ではない筈の太陽の光か、それとも精神的なものか。とにかく温かみを
感じていた。
「本当はゆっくりしてもらいたかったんだけど、ごめんね」
声が響いてくる。その声は同じくらいの年の女子の声。姿は見えないけれど、
彼女のことはよく知っている。相棒、それが彼女だ。
──何?どうしたんだよ。
姿が見えない相棒へ自然と声をかける。こんな風に彼女から声を書けてくる事は
珍しい。いつもはこちらから話してばかりで、彼女を聞き役にさせてしまっている。
「うん、ちょっと特別」
特別だという言葉に首を傾げる。確かにこの状況は特別だ。何故なら外は
整備士たちが取り囲んでいる筈で、正真正銘戦闘中なのだから。神経接続を
繋げたままパイロットの自分は待っている間に休息を与えられているのだ。
目を瞑った途端にこの夢の世界へと連れられてきたのは間違いなく相棒の
仕業である。
──特別って何?
何処か照れたような笑い声が聞こえてくる。何故、彼女が笑うのかわからずに再び
首を傾げた。
「知ってるんだよ、ちゃんと」
何を知っていると言うのか、わからない。そもそも、最初に謝った彼女が今度は
楽しげに笑っている。言われた事を全部まとめて考えてみても答えは出て来ない。
「だって今日は特別だから」
また同じ言葉だと顔を顰める。夕焼けの中に何度も笑い声が響いてた。女子特有の
笑い声だ。
「まだ、わからない?」
頷き返すと仕方ないと呟く彼女の声が聞こえてくる。そして次に聞こえてきたのは
何故か歌声。自分の他にも小隊内には3人のパイロットがいるが、相棒たちと
会話したという話は聞かない。まして歌うなんてもっと聞いたことがない。
もし相棒が自分のためにバースデーソングを歌ってくれたと言ったら、笑うかも
しれないし、もしかしたら怒るかもしれない。そんな相棒はいないと。
でも、今ここにいるのだ。そんな相棒が。自分のために歌う相棒が。
「誕生日、おめでとう」
そして歌い終わった相棒がかけてくれた言葉にお礼を言おうとしたところで、
外界から自分へとコンタクトがとられた。夕焼けが消えていき、彼女の声も
小さくなる。現実の世界へと覚醒すると視界に広がる士魂号のコクピットの中で
一人、ありがとうと呟いた…。
<あとがき>
何度目かもう数えるのを止めてしまいましたが、誕生日SSです。今年は
カップリングものでなく士魂号と滝川のお話。以前のお題の中でも言って
いますが、2番機は何となく女の子のイメージなんですよね。