追いかけるのはいつも


追いかけるのはいつも自分だった。

小さい頃は母ちゃんを追いかけては怒られた。泣きながら追いすがるから、いつも近所中に泣き声が響いてて、父ちゃんは笑って仕方ない奴だなって抱きしめてくれたけど、母ちゃんはいつも……怒ってた。

大きくなっても、俺はいつも何かを追っていた。

今だってそうだ。何も変わっちゃいない。
小隊に居る先輩が、来須先輩が恰好良いから……俺の理想だったから目で追って、足で追って…。

だから、追いかけられる事なんて今までなかったんだ。
隠れんぼだって得意だったから、見つかった事ないし。 (しかもそのまま寝ちゃって、皆に忘れられた)

こんなの初めてなんだ。だから、どう反応していいのか、よくわからない。

なぁ、どうして俺なの? 俺なんてフツーの学兵だよ?
そりゃ、あの芝村がいる小隊にいて、珍しい人型戦車に載ってるよ。
でもさ、別に俺じゃなくてもいいじゃん? 壬生屋だって、速水に芝村だっているんだから。

だから、聞いてみたんだ。
この前から俺を追ってきてるガキんちょに。

「なぁ、何で俺なの?」

そうしたら、大きな目をくりくりさせて、嬉しそうに笑ったんだ。

「だって兄ちゃんはパイロットなんだろ? すげーじゃん」

ああ、何だろう。何て言ったらいいのか、わかんねーや。
だけど、凄く嬉しかった。そして、その反面恥ずかしかった。

「そっか。ん、サンキュ」
がしがしと頭を撫でてやると嬉しそうにまた笑う。

多分、俺もあんな風に先輩たちを見てるんだろうな。
ただ、ひたすらに強い何か憧れて……。



<あとがき>
追いかけると言ったら、滝川の得意分野ですよね。来須の追っかけをしてる訳ですが、されるとどう反応するかなーと書いてみました。…意外とこの滝川はクール(?)なような…。

お題に基づいて書いていますが、雰囲気はその時、その時で変えるつもりです。CPものになることもあれば、ギャグ風味もあるでしょう。とりあえずの共通点はやっぱり滝川ですが(笑)