愛情




壊れないように、そっと、そっと…。
大事に大事にしなきゃ。

だって、一番大好きな…だから。

そんな顔しないで。ちゃんとするから。
笑ってよ。笑ってこっちを見て。
抱きしめて、名前を呼んで。

欲しくて、欲しくて仕方ないもの。
お前達にとってそれって何?

俺の欲しいもの、欲しい言葉なんて一つだけなんだ。
たった一つなのに簡単に手に入らない。

難しいのかな?だってアイツは持ってる。
ほら、あっちのアイツも持ってる。

持ってないのは俺だけだ。

手に入らないような高望みしてるのか?
じゃあ、なんてアイツらは持ってる?

──どうして俺だけ持ってない。

教えてよ。なぁ…。

小さい頃、見たあの笑顔は一瞬だけのもの。
いつだって耳に届くのは非難する声だった。
泣き顔、怒り顔…頭に残るのはそんな表情ばかりで
笑顔の記憶なんてほんの一握りで、数えられるだけしかない。

「ちゃんとやれてるの?」

電話越しの声はずっとずっとかけて欲しかったあの人のもの。

「あなたがちゃんと出来てるか、心配だわ」

その声に俺は頷きながら『大丈夫だよ』と答える。
知ってるんだ。俺といない方が穏やかなんだって聞いた。
俺と居ると駄目なんだって。

「心配しなくていいよ、俺ちゃんとやれてるからさ」

寮の一階にある管理人室の前の電話機の前でぎこちない笑顔を作ると
電話の向こうでは小さく笑う声が聞こえてきた。

「そう、ならいいのだけど…たまには帰っていらっしゃい」

その言葉が決して嘘じゃないのは分かっている。
でも…駄目なんだ。だって、俺が目の前に居たら壊れちゃうから。

「うん、また今度」

俺が欲しいもの、欲しい言葉。
母ちゃんの笑顔、何でもない一言。俺の事を呼ぶだけでもいい。
優しく抱きしめてくれれば、何にも要らないよ。
ずっと優しい母ちゃんで居てくれれば、俺…。

なぁ、俺の欲しいものって難しいものかな…?
─────────────────────語りへ───


ポエム調にお題『愛情』でした。
滝川と愛情という言葉から想像すると、どうしてもお母さんが
関わってきます。切っても切れないんですよね。この子がどうしても
放っておけないのはやっぱりこういう背景も含めてだと思います。
だから、私の中でも特別な子でどんなに好きキャラがフラフラ
していたとしても、多分一番に構ってしまうのが滝川なんです。
…まぁ、それがなくても構ってそうですけどね(笑)
もともと好きなタイプのキャラですから。

今更なのでイベントネタバレも隠しませんが、
滝川の戦死イベント。本当に涙なしでは見られないんです。
多分、これから見る事もないでしょうけど。
もちろん見ようとして見たわけでなく、自分の操作ミスから起きて
しまったのですが、涙が止まりませんでした。

プレイキャラが女子(田辺さんでした)だったので最後の選択肢は
躊躇なくあちらを選択しましたが、その後自分の周りを飛んでいた
青い光にぼう然とテレビを見つめるしかありませんでしたよ。
その瞬間はプレイヤーキャラらしくない行動だったのかも
しれませんが、滝川の為にそう選択してあげたかったんです。

余談ですが、あのイベント。最も似合うキャラがどうしても
同性になってしまうのは私だけなんでしょうか。
速水のあっちゃんか来須しか私には思いつかないのですが…(汗)

このイベントがなくても、母親との設定がなくても
お気に入りはなったと思います。だけど、より一層、
この子が特別な好きキャラになったのは恐らく全部を
含めてかと。