槍術
よく晴れた日だった。鍛練場には多くの兵達の声が響いている。 「どうだ趙雲、手合わせをしないか?」 「構わないが…。」 馬超の申し出に頷こうとしたその時、自己鍛練を行っていた兵たちが 急にざわついた。視線が一点に集中しており、鍛練場の入口付近に人影が ある。しんとした鍛練場に普段聞きなれぬ声が響く。…軍師殿の声だ。 「好きに使うといいでしょう。兵たちも声をかければ、手合わせくらい してくれる筈です。」 「…はい。」 静かな落ち着いた声の後に少年のような声が続く。天水で我が軍へと降った あの者の声だ。 「…あれが、軍師殿の後継者か。」 「ああ、知略・槍術ともに大したものだ。」 隣にいる馬超の声に頷くとまっすぐと彼の者を見た。背を向ける師へ頭を 下げている。彼の者が我が軍に加わってから、初めての事だ。軍師殿は常に 彼の者を側に置き、手放した事がない。その為、同じ陣営に属していても 一言も言葉を交わしたことない程だ。 「…姜維と言ったか。」 突然隣の馬超が声を張り上げた。当然兵たちは身を引き、入口付近に居る 姜維の視界に入る様に道を作る。 「馬超。」 「…俺に任せておけ。」 何を任せておくのか…恐らく、馬超は姜維にきっかけを作ったつもりなのだろう。 未だ軍師殿以外と口を聞いた事のない姜維へ会話のきっかけを…。 「馬将軍…お初にお目にかかります。姜伯約と申します。」 所在なげにしていた瞳が凛と前を見た。 「実に良い所に来た。今丁度手合わせの相手を探していた所だったのだ。 …趙雲と互角に戦ったそうだな?」 「趙将軍から御聞きですか…。」 「兵達の間でもその話で持ち切りだ。お前と趙雲、そして俺と誰の槍術が 一番か…とな。」 姜維の反応を楽しむように馬超が言葉を紡ぐ。事実、馬超の言葉は兵の間で 噂に昇っている事だ。天水の戦いに参加していた兵たちは私と彼の一騎打ちを 目の前にしている。互いに不本意に終わった一騎打ちとは言え、姜維が 優勢だったのは己自身が一番知っている。決着を付けたいと思うのは 武人として…当然の事だ。…が今は隣に居る馬超を押さえる役に回らねば ならないようである。 「一番であるか、そうでないか…比べても仕方ない事だと思いますが。」 「ほう。何故だ。俺はお前の槍術を見ていない。どうにも評価出来ぬだろう?」 「…正直に仰れば宜しいではありませんか。」 にこりと笑う姜維に周りの兵たちが首を傾げた。 「ふっ…流石、俺がお前と手合わせをしたいという事が分かるか。」 「馬将軍は初めに仰っておられたでしょう。『手合わせの相手を探していた』と。」 姜維の答えに満足そうに笑うと馬超が練習用の槍を投げる。 「ならば、相手をしてもらおうか。」 「…承知しました。」 こちらに笑って見せる馬超に私は諦めたようにため息をついた。どうやら、私に 見届けろと言いたいようだ。 「いざっ!」 互いに距離を測る。じりじりとすり足で常に移動しながら出方を待つ…。 初めに攻撃に移ったのは馬超だ。2合、3合…。防御の構えを崩さない 姜維に苛立ったように何度も馬超が振りかぶる。隙を見て、突くが、 綺麗に払われる。その繰り返しだった。 「両者、退くんだ!」 私の声に馬超が睨みをきかせた。姜維の方はあっさりと退くと馬超に頭を下げる。 「…姜維、何故自ら仕掛けなかった?」 「残念ながら防戦一方です。…それに…。」 「それに、何だ。」 姜維は笑いながら紅くなった手の平を見せた。 「限界だったようです。」 「…お前はまず体力づくりからだな。全くせっかく白黒つけるつもり だったのにな。」 「申し訳ありません、馬将軍。」 「改まって呼ぶな。普通にしていればいい。」 「私もだ、姜維。」 馬超と私の方を驚いたように見ていると嬉しそうに笑った。…笑うとまるで 少年のようだな…。 「わかりました。馬超殿、趙雲殿。」 この後、互いの槍術について夜まで語り合ったのは言うまでもない。 |
姜維語り第二弾です。今回は槍術ですね。 蜀には姜維を含めて3人の槍使いが居るわけですが、誰が好きとか、そういう感情を 抜いても私は彼が一番使い易いです。初手が早くて、無双が使いやすくて、 連撃をするのに非常に楽なんですよ。まぁC4は…むにゃむにゃ…(笑) あの「とぉーー!」という高音は可愛いのですが、やっぱり通常6撃目もやっぱり 使いにくい訳で…(苦笑) 彼はチャージラッシュが好きです。連撃からも繋げやすいですし、 何だか一生懸命な感じで好きなのです。初手の早さとジャンプ攻撃が 2回出来るのはやっぱり若さ故なのですかね? 前回のSSもどきの中でも言っているのですが、姜維の基本動作は 『払う』だと思うのですよ。通常6撃目は典型的で分かりやすいと 思いますが、チャージラッシュもそうですよね。 ちなみに孟起殿が『突く』、趙雲は『叩く』が基本だと私の中では 認識されています。 『突く』『払う』『叩く』というのは槍の3大基本動作だという事を どこか(笑)で見たことがあります。なので3人共この動作を 使っているのですが、どこに重点が置かれているかというと上記の ようだと私は思うのですよ。 スピードの姜維、力の馬超、バランスの趙雲というのが基本動作以外の 3人の槍術の特徴ですかね。…何となくキャラの性格も表している 気もしますが…(苦笑) 無双乱舞もダッシュ攻撃も結局姜維の動作に慣れたお陰で 他のキャラが使いにくくなってしまいました。…趙雲の ダッシュ攻撃…何故私が使うと一部隊全員に当たらないのだろう…? |