WIRED THE STORY


75年5月、彼は、少々戸惑っていた。                     
新作「BLOW BY BLOW」が、チャートの上位にランクされたのだ。       

母国英国における最初の批評は、厳しいというか、彼自身に対して敵意に満ちたもの
だった。彼は、チャートの上位にランクされている自分のアルバムに赤丸で囲みその
批評家へ送りつけたりしている。                       

このアルバムは、彼にとっての初のゴールドアルバムとなり、最終的に全米4位まで
セールスを伸ばす事になる。ニューアルバムが、6週間で売り切れ、昔のアルバム 
"TRUTH"や"BECK OLA"まで、売れている事実に面喰らってしまった。      

ナーラダ・マイケル・ウォルデンは、ビリー・コブハムの後任としてマハビシュヌ・
オーケストラへドラマーとして加入し、パワフルでテクニカルなドラマーとして鳴ら
していた。彼との出合いは、ニューアルバムのプロモーションツアーの最中だった。
マックス・ミドルトン(Key)、ウィルバー・バスコム(B)、バーナード・バーディー
(Ds)を率いた彼のグループは、全米をジョン・マクラフリン率いるマハビシュヌ・
オーケストラとのジョイント・ショーを15回行い、アンコールでは、ジョンとの
ギターバトルも見ることが出来た。その後、ウエザー・リポート「ブラック・マー
ケット」に参加、アレサ・フランクリンとホイットニー・ヒューストンなどのプロ
デュースで成功することになる。                      

彼がまだ、BB&Aのメンバーだったころ、スイスでのマハビシュヌ・オーケスト
ラのコンサートのバックステージで初めてヤン・ハマーと会話を交わしていた。マ
ハビシュヌ・オーケストラ解散後、グループ結成の誘いを申し込んでいたが、「休
養が欲しかった」という理由でグループ結成は、実現しなかった。その後、アルバ
ム「BLOW BY BLOW」を手にヤンのホーム・スタジオを尋ねセッションを行い、
次のアルバムへの参加について話をしていた。                

75年9月、アメリカ、日本などのツアーが、終了すると間もなく、前作と同じく
ジョージ・マーチンをプロデューサーに迎えニューアルバムのレコーディングを
開始した。「(前作)以上のものが果たして出来上がるだろうか?」というプレ
ッシャーが、彼にのしかかっていた。彼は、次のアルバムもインストゥルメンタ
ル・アルバムにすることに決めた。                    

メンバーは、マックス・ミドルトン(Key)、リチャード・ベイリー(Ds)、ヤン・ 
ハマー(Key)、ウィルバー・バスコム(B)、ナーラダ・マイケル・ウォルデン(Ds・
P)、エド・グリーン(Ds)しかしながら、彼自身は、プレッシャーのためか、積 
極性を失いつつあった。"Led Boots"は、マックスが、ジェフの家へ向かっている 
途中に思い付いた曲だった。(マックスは、自分のグループ「ハミングバード」の 
3枚目で最後のアルバムである「ダイヤモンドの夜」でこの曲をカバーしている) 
この曲のバッキングトラックが完成しているにもかかわらず、ギターパートのイン 
スピレーションが、わかず行き詰まっていた。そんな状況を打破したのは、ヤン・ 
ハマーの参加だった。ヤン自身もジャズ・プレーヤーというレッテルに行き詰まり 
を感じており、この二人がぶつかり会うエネルギーこそが、このアルバム「WIRED」
の生命であると言える。アルバムには、クレジットされていないが、このアルバムの
8曲中6曲のミックスなどもヤンが、行っている。ヤンは、プロデューサーのジョー
ジ・マーティンが、ベーシックトラックのプロデュースと2曲のミックスしか行って
いないにもかかわらず、自分のクレジットがないことに怒りを露にした。(ただし、こ
れは、LPのみの話であり、CD化された際、正しくクレジットが直されている)また、
ナーラダは、ヤンのミックスの最終的なサウンド・クォリティには、満足していない。
ナーラダが提供した、"Sophie","Come Dancing","Play With Me","Love Is Green"
について、プレイはグレイトだが、音が薄く鮮明さに欠けるとコメントしている。  

ヤンは、マハビシュヌ・オーケストラでのジョン・マクラフリンの実験的なギターサ
ウンドに不満を持っていたが、ジェフのギターサウンドは、絶賛している。「ジェフ
とは本当にやりやすいよ。やつのサウンドは、実にクリアーだからね。それにやつは、
バンドをちっとも乱さない。つまりやつは、ロックギターというものをよく知ってい
るからね。」その後、ジェフは、ヤンのグループとツアーを行うことになる。   

1976年5月アルバム「WIRED」は、発売され、驚異的なセールスを記録する。

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