映画「永遠の0」の感想

何度もHPで取り上げていますが、改めて書いてみたいと思います。

まず書いておきたいのは、特攻を美化とか右傾化という評価は論外。
作品を見ていないか?驚異的な節穴くんです。いや、イデオロギーが根っこの嫉妬
なのかも?(山崎監督への批判の中身が「軽い」だの「中身がない」ですもんね。)

原作は、百田尚樹さんの同名小説。彼が50歳を期に初めて書いた小説だそうです。
内容は、以下にWikinoあらすじを引用しますが、太平洋戦争(本来だったら大東亜
戦争なんですが、真珠湾以降を描いており、映画でも、このように話していました)
の出来事を証言という形で綴ったものです。一部戦記ものなどの寄せ集めだ!との
指摘もありますが、この作品の本質ではないと言えます。原作は、戦後60年経過
し、戦争の事を知っている人々が寿命で亡くなってしまい、日本人の戦争の記憶が
風化、失われてしまうという危機感があったため書かれたといい、ある意味太平洋
戦争の入門書的な側面もあります。ページ数も448ページとなかなかのボリューム
です。僕自身2009年に図書館で借りて読んで、文庫本になって購入しました。
文庫本は故児玉清さんが、あとがきを書いており、結構泣けます。

あらすじ:**************************************************************

大学生の佐伯健太郎と、出版社に勤める姉の慶子は、亡くなった祖母・松乃の四十
九日から暫くした頃、祖父・賢一郎から彼が自分たちの実の祖父ではないことを知
らされる。第二次世界大戦後に松乃は二人の母・清子を連れて賢一郎と再婚してお
り、実の祖父である松乃の最初の夫は、終戦間際に特攻で戦死した海軍航空兵だと
いう。

それから6年後、司法浪人が長く続き人生の目標を見失っていた健太郎は、フリーラ
イターとなった慶子から、新聞社で主宰される終戦60周年記念プロジェクトのアシ
スタントを頼まれる。プロジェクトを進める高山は、神風特攻隊のことをテロリス
トだと語るが、祖父の話もありその考えに釈然としない慶子は、このプロジェクト
に際して特攻隊員だった実の祖父について調べようと決めた。姉弟はわずかな情報
を元にその足取りを追い始める。

厚生労働省や方々の戦友会に連絡を取ったところ、祖父の名が宮部久蔵であり、関
係者9人が存命であることが知れた。その内の一人、戦闘機搭乗員としてラバウル
航空隊で一緒だったという男を訪ねるが、元海軍少尉の男は久蔵について「海軍航
空隊一の臆病者」「何よりも命を惜しむ男だった」と姉弟に蔑みの言葉をぶつけた。
健太郎は元戦友から聞く祖父の話に困惑し、次第に調査を続ける気を無くしていた
が、母から健太郎と同じ26歳で亡くなった父・久蔵がどんな青年だったのか知りた
いと改めて頼まれ、更に手がかりとなる海軍従軍者たちを訪ね歩く。だが、生前の
久蔵を知る者たちの語ることはそれぞれに全く違っており、調べるほどにその人物
像は謎に包まれていた。戸惑いつつも二人は、国のために命を捧げるのが当然だっ
たと言われる戦時下の日本と、そこに生きた人々の真実を知っていく。凄腕の零戦
乗りで、卑怯者と誹られても「娘に会うまでは死なない」と松乃との約束を守り続
けていた久蔵は、どのような生涯をおくり特攻を選んだのか。終戦から60年を経て、
各々の壮絶な生き方と封じられていた事実を明らかにする。

あらすじ:**************************************************************

さて、映画の方ですが、僕は「ALWAYS三丁目の夕日」以来の山崎監督のファンで、
DVDやBDを購入したり映画のエキストラに参加したりしていました。この作品でも
エキストラの一般募集があり、2012年夏、頭を坊主にし、会社を休んで遥々千
葉の果て南房総市へ出かけてきました。空母赤城の真珠湾攻撃とミッドウェー海戦
のロケでした。1シーンですが、ブリッジで双眼鏡を持つ自分の姿が確認できまし
た。なにより実物大の零戦と赤城を見ることができたのは、よかったです。

それから1年半、2013年12月一般公開されました。散々試写会に応募しまし
たが、全て外れ。東京での舞台挨拶のチケット購入も考えましたが、ヤフオクで
数万円で取引されているのを見て諦めました。(笑)仕方がなく松本のシネマライ
ツで1回目を観ました。一回目は、原作との違いとVFXの出来に注意が向けられて
いたように思います。感想として「あの長い原作を非常に上手くまとめており、原
作のコアな部分を失っていない」というものでした。VFXとしては、一部気になる
ところもあり、まぁまぁ程度。構成上仕方がないとはいえ、使い回しのシーンがあ
り、ちょっと損した気分でした。お正月に家族を連れて2回目を観賞。構成がルー
プになっていることもあり、冒頭から作品に没頭できました。2回目は、細かいと
ころが非常に分かり、百田さんのエキストラとか演出の細かいところも気づきまし
た。1回目より星が一つ増える感じで、この作品は2回観ることをお薦めします。

3回目は、零戦と赤城と雲を観たくて出かけました。特に赤城は、子供のころプラ
モデルを作っていたんですが、恰好悪くて好きな船ではありませんでした。映画で
もくもくと黒い煙と海水を吐きながら進む赤城の雄姿が好きになってしまいました。


上が映画で登場した最終型で、下が3段甲板の頃の写真です。

元々赤城は戦艦として建造されたのですが、ワシントン軍縮条約で空母に改造され
ました。当初は3段甲板という特殊な構造でしたが、後に映画に出てくる最終形に
改造されました。3段甲板モデルのプラモデルが近所のスーパーで売っていたので
驚きました。(さらに驚いたのはその2週間後に見に行ったら売れていた事です!)
改造に改造を重ねた事もあり特異な容貌が印象的な船です。なにより甲板の高さが
高い!そのイメージを再現するため、ロケ地は南房総市白浜運動公園の崖の上に設
置されました。(笑)撮影で赤城のブリッジ登ることができましたが、得難い経験
をさせて頂きました。さて、ある意味遊園地のアトラクションのような気分で観に
行ったのですが、次第に内容についても理解が進んだように思います。

4回目は、家族にあきれられながら一人で観てきました。(爆)公開10週目にも
関わらず地方の映画館で1/3程度の入りは、立派だと思います。(この週の興業収
入は第2位でした!)多分映画館で観るのは、これで最後になると思い、割と前の
席を選びました。僕より前にお客さんが一人もいなく、ちょっと貸し切り気分でし
た。(笑)いろいろと粗も目につきますが、日本人が観るべき映画だと思います。
ちなみに文部省選定作品です。

ただ、不満なところが、幾つかあります。

1.特攻が犬死扱いされている
→確かに非人道的な作戦ですが、決して犬死ではありません。
 通常攻撃より大きな戦果をあげています。硫黄島の守備隊の方々と並んで、アメ
 リカ軍に大きな損害を与え、後のポツダム宣言の条件へ影響を与えていると考え
 られます。命を捨てて戦ってくれた英霊に感謝しなくてどうする!と思います。

2.宮部が乱戦になると戦線離脱していた描写
→映画の描写だと軍法会議ものだと思います。多分乱戦から離脱し、同様に離脱し
 てきた敵機を叩いていたと思われますが、妙な誤解を受けそうです。
「井崎!ちゃんと話せ!」と叫びたかったところです。(汗)

3.原作では新聞記者(多分朝日か毎日)のところを健太郎の同級生に変更
→マスコミの扱いは結構重要だと思いますが、朝日新聞が制作に絡んでいるので
 もし影響があったら残念です。

4.一番最初の空母赤城の登場シーンの航跡が不自然
→そこだけですが、残念でした。あと人の大きさが不自然に見えるところもありま
 したが、あそこまで赤城を細かく描いてくれたので満足です。
 (驚くのが、多くのCGモデリングデータが個人の提供だったということでした。)

反対に素晴らしかったところ

1.長い原作を上手く纏めた
→証言者を纏めてみたり、真珠湾、ミッドウェー、ラバウルに絞るなどと工夫して
 ありました。144分という長さが長く感じられない良いバランスだったと思い
 ます。

2.空母赤城の描写
→しつこくて済みません。恰好悪いと思っていた船が格好良いと思わせるほど良い
 出来だったと思います。多分フジミのプラモデルを買ってしまうと思います。(爆)
 参考書(\3980円!)も買わないとまずそうです。(笑)

3.零戦の空中戦の描写
→機体の挙動も操縦の演技もこれまで観た戦争映画でベストの出来だと思いました。
 エンジン音とか機銃の音も良かったと思います。

4.戦争をどろどろに描かなかった
→暗い戦争映画が多い中、「人の生き方」を描いており逆に「戦争について」考える
 機会を観賞した人に与えるという効果があったと思います。ジャニーズ系の俳優が
 出ていることもあり、若い女性のお客さんも多かったようです。

5.戦争で戦った人を描いた
→戦後左巻きで非常識な話を偉そうに話す人の多くが戦争へ行っていない終戦時学生
 とか子供だった世代の人たちだったりします。戦争の話というと暗く酷い時代だっ
 たという情報がほとんどのように思われます。東日本大震災の被災者の方々が震災
 について話をしたくないことと同様に戦地での事を話したくない感情は良く理解で
 きます。しかし戦争の事は、語り継いで行くべきものだと思います。
 その点で原作も映画も大変大きな影響を日本に与えるんじゃないかと思います。

映画のメッセージとして
「愛する人を守るために命を懸けて戦う」(というか?生きて帰る!)
「戦争で生き残った我々は、亡くなった人々の分まで生きなければならない」
「日本という国は、続いているんだ」
などは、心に刻んでおきたいと思います。

個人的には、アヘン戦争あたりからのアジアと日本の近代史を学校でしっかり教えて
頂きたいです。満州や朝鮮がどんな場所だったのか?特に満州などは、国という形に
なっていなかった事などをしっかり理解すべきです。「侵略」って何?と考える事が
できるようになると思います。あと、日中戦争も当初戦争じゃなかった経緯とか共産
党の関与も陰謀論ではなく、考えないとまずいです。中国や韓国の言いがかりにしっ
かり反論できるようにしないといけないですね。

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