Emotion & Commotion
エモーション・アンド・コモーション


ジェフ・ベック先生の7年ぶりの新譜です。
早速ヘビロテ状態の毎日ですが、来日前ということで感想などを書いて
見たいと思います。個人的な感想は、一言で言うと"Where Were You"路線で
"Blow By Blow2"を作ってみました。という感じです。(笑)
みなさん意味不明ですよね。では、解説しましょう!

もともと先生は、トリッキーなフレージングの妙を強調したプレイが身上だった
と思いますが、ギターショップくらいから難度の高いハーモニックスを使ったり、
異常に難しいトレモロアームを使用した音程のコントロールでメロディを奏で、
同時にボリュームとトーンを操るという前人未踏の世界へ10年ほど前から突入して
いました。また、前3枚のアルバムは、プロツールスを使用したデジタル編集を
全面に出した刺激的なものでした。今回はその反動ともいうべきアルバムになって
いると感じます。

多分このアルバムのテーマは、「ソリストとしてのジェフ・ベックをアンサンブル
の中で輝かせる」だと思います。誰もがオーケストラとの共演の曲が多いのに驚い
たことでしょう。逆にネットに流れたマーラーの5番やライブで演奏している"Mna
Na Heireann"は、今回は収録されませんでした。あまりこれ一色にするとバランス
が取れなくなるという事情なんだと思います。ライナーノートには、これまでで
初めてギターに進化の無かったアルバムだと書いてありましたが、ある意味これま
でにないくらいシビアな演奏だったと個人的には、思っています。ここまでがっぷり
オーケストラと共演すると特にピッチ(音程)の整合に注意が必要になります。
少なくとも僕が聞く限り大きな破綻も無くアンサンブルが成立している演奏能力は
やはり素晴らしいと思います。

では、曲ごとの感想を書いてみましょう。

■Emotion & Commotion / Jeff Beck

1. Corpus Christi Carol
 Pete Murray [KeyBoard & Orc Arr]
「ストリングスと先生のギターのみの曲。これまでだったらアルバム最後を飾る
べき曲です。これからアンサンブルの綱渡りをやるという宣言と思われる曲です。」

2. Hammerhead
Alessia Mattalia [Dr]
Tal Wilkenfeld [Bass]
Jason Rebello [KeyBoard]
Pete Murray [Orc Arr]
「ワウのリフで始まるこの曲は、ヤン・ハマーとジェイソンが作ったそうです。
ライナーにサメのイラストがありますが、本当はヤンの頭、つまり広大なおでこ
を誇るあの頭を描写したのではないか?とこっそり妄想しております。振り返る
とナディアなんかも生ストリングスを使いたかったんだろうなぁと感じます。」

3. Never Alone
 Vinnie Colaiuta [Dr]
Tal Wilkenfeld [Bass]
Jason Rebello [KeyBoard]
 Luis Jardim [Per]
 Steve Lipson [Programing]
Pete Murray [Orc Arr]
「ジェイソンのコミットにより出来上がった曲。彼は昔のマックス・ミドルトン
に近い役割を果たしているように感じます。控えめな性格でたっぷりな才能と能
力を凄く先生は、気に入っているようです。」

4. Over The Rainbow
 Pete Murray [KeyBoard & Orc Arr]
 Steve Sickwell [Conductor]
「ライブでは既におなじみの曲。ハーモニックスとバイオリン奏法のトーンが
美しい演奏です。エリックとの競演では、彼が歌を歌っていてびっくりしました。
先生のギターの音色が、アルバム"JEFF"あたりからちょっと変わって来ているよう
に感じていますが、スローな曲で特に感じます。」

5. I Put A Spell On You - Beck, Jeff & Joss Stone
 Clive Deamer [Dr]
 Pino Palladino [Bass]
 Pete Murray [KeyBoard & Orc Arr]
 Steve Sickwell [Conductor]
「数年前から女性シンガーをバックアップしたいという発言が続いていましたが
その路線でロニースコッツクラブでも歌ってました。恐ろしいことに大した先生
の見せ場なしという曲です。(大汗)」

6. Serene
 Vinnie Colaiuta [Dr]
Tal Wilkenfeld [Bass]
Jason Rebello [KeyBoard]
 Luis Jardim [Per]
 Steve Lipson [Programing]
Olivia Safe [Vocals]
「所謂スムースジャズ系の曲です。こういう軽い曲で先生のギターが、軽く歌う
ような曲は、他人のアルバムではやってましたが、自分のアルバムではあまりな
いですね。"Two Revers"なんかも淡々としていながら結構激しいですが、この曲
には、その手の激しさがありません。みなさんがBGMと指摘する所以ですね。」

7. Lilac Wine - Beck, Jeff & Imelda May
 Earl Harvin [Dr]
 Chris Bruce [Bass]
 Pete Murray [KeyBoard & Orc Arr]
「イメルダと共演したハウ・ハイ・ザムーンは素晴らしかったです。
こちらは、非常に地味な演奏と歌で、多分以前ならアルバムに収録されなかった
曲だと思います。インストだと退屈に聞こえたというコメントは、プロデューサ
ーの問題だと思います。そのあたりのバランスで悩んだような選曲です。」

8. Nessun Dorma (トゥーランドットより「誰も寝ちゃいや〜ん」)
 Pete Murray [KeyBoard & Orc Arr]
「このアルバム最大の冒険。”オペラの歌をギターで演奏する。”です。
やりたいことは、よく分かりますが、残念ながらギターでやる必要なしです。
哀しみの恋人達などは、オリジナルのボーカルバージョンを圧倒的に凌駕して
いましたが、そこの域まで行っていません。我々先生のファンの求めるものは
この程度では、満足しないんです。ただ、ライブで生音を聴いてみないと分か
らない部分もあるので、今月のライブに期待しています。(実は"Were Where
You"は、89年にギターショップトリオで生で聞くまでその凄さが分かりませ
んでした。)」

9. There's No Other Me - Beck, Jeff & Joss Stone
 Vinnie Colaiuta [Dr]
Tal Wilkenfeld [Bass]
Jason Rebello [KeyBoard]
 Luis Jardim [Per]
 Steve Lipson [Programing]
「Joss Stoneが主役の曲です。最後のこれからギターで盛り上がるぞ!って
ところでフェードアウトするってアリですか?川崎さん?このあたりが、今回
のアルバムの象徴するところのように思えます」

10. Elegy For Dunkirk - Beck, Jeff & Olivia Safe
 Pete Murray [KeyBoard & Orc Arr]
Olivia Safe [Vocals]
「このアルバムの本来のラストを飾る曲。映画音楽を思わせる、ヨーロッパの
冬の風景に似合いそうなアンサンブルで、何故か映画「トゥモロー・ワールド」
(Children of Men)の一場面が蘇えったりしました。涙が出るほど美しい曲
だと思います。」

11.Poor Boy, Jeff & Imelda May
 Stephen Rushton [Dr]
 Ian Jennings [Bass]
Darrel Higham [Guitar]
「先生の趣味の曲です。本当にイメルダのこと好きみたいですね。おやじの
アイドル?(笑)友人のatsuu.さんがボーナストラック要らないと言ってまし
たが、"Elegy For Dunkirk"で美しく終わっていればという気持ちは良く分か
ります。できれば、この曲の前に15秒ほどインターバルがあると良かった
ですね。」

12.Cry Me A Rever
 Earl Harvin [Dr]
 Chris Bruce [Bass]
 Pete Murray [KeyBoard]
「何故、この曲が本来のアルバム収録曲にならなかったのか?
多分全体のバランスの問題だと思いますが、もったいなく感じます。
スローナンバーで聴く先生のギターのタッチがたまりません。」

【Producer】
Steve Lipson
Trevor Horn(executive)

曲ごとに振り返ると結構辛口になってますね。
正直刺激が足りません。デジタル3部作の後ですから、仕方がないかもしれ
ませんが、"Blow By Blow"のようにもう少しバラエティに振ってもらった方が、
良かったように思います。ともあれ、ライブでどのような演奏をしてくれるの
か?大変楽しみです。

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