皆既日食を体験しました 2009/08/05




2009年7月22日、東アジアで皆既日食が見られました。
特にトカラ列島の悪石島(鹿児島県)は皆既中央に近く、6分25秒という最長の皆既日食が見られることから、島の人口の4倍以上の人が日食観測のために島を訪れたといいます。部分食は全国で見られることから、マスコミでも大きく取り上げられ、日本全国日食の話題で持ち切りでした。
私は日本を離れ、中華人民共和国、上海市の西、嘉興市で皆既日食を待ちました。観測地となったホテルの駐車場には、200人ほどの日本人が集まりました。
残念ながら当日は朝から厚い雲におおわれ、雨が降ったり止んだりの状態。それでもあきらめ切れず、わずかな期待を抱いて望遠鏡を組み立てたものの、機材はずぶぬれ。
それでも刻一刻と皆既の時刻は近づいてきます。
空は曇り空のまま。太陽を見ることはできません。しかし変化は訪れました。皆既の瞬間が近づくにつれて、初めは少しずつ、やがて急激に暗くなり、あたりは夜のような闇(やみ)に包まれました。
あーっ!というため息とも歓声ともつかない人々の声。ホテルの街灯がともり、ヘッドライトをつけた車が次々と走り過ぎていきます。せわしく動き回る人、空を見上げる人、ビデオカメラであたりを撮影する人・・・・
しばらくの闇の後、再び昼の明るさが戻ってきました。
天岩戸(あまのいわと)の古代神話にもあるように、洋の東西を問わず、古代人は日食に畏怖の念を抱いたといいます。そうか!これが日食の闇なんだ! 当初の目的だった黒い太陽を見ることはできませんでしたが、皆既日食の異様な闇を体験できたことは収穫でした。
ちなみに、皆既日食の観測はこれで5回目。それなら、これまでに皆既の闇を何度も経験したはずだ!というツッコミもあるでしょう。でも違います。これまでの4回の皆既日食では、これほど暗くはなりませんでした。例えて言うなら、灯りがなくても新聞が読める程度の明るさがありました。日食ごとに、皆既の暗さには違いがあるのです。皆既の継続時間が長い日食は暗い(今回の日食がそれにあたる)という知識は持っていましたが、予想を超えた暗さに驚きました。
皆既が終わり、あたりが明るくなったころ、雲間からわずかに太陽が顔を出しました。慌ててシャッターを切りました。現地時刻9時42分31秒(皆既終了から1分40秒後)。この日、私が撮影した唯一の太陽像です。
ある種の満足感と、しかし残念な複雑な気持ちを胸に、中国を後にしました。
次の皆既日食は2010年7月に南太平洋で見られます。
(2009.07.22取材)

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