風力発電 2008/05/13




ここ数年、環境問題について、特に地球温暖化についての議論が活発になっています。
温暖化の原因は、化石燃料の燃焼によって排出された二酸化炭素だというのがもっぱらの論調です。大気中の二酸化炭素濃度の増加と、地球の気温上昇の間にはかなりはっきりとした相関が認められるようです。二酸化炭素が犯人だ! 確かにそれは間違いではないのかもしれませんが、私のような天邪鬼には、世間の論調は白か黒かと単純化しすぎているように思えます。原因は一つとは限りません。
何かと悪者扱いされる二酸化炭素ですが、二酸化炭素がなければ、われわれ地球上の生物のほとんどは生きていけないことをご存知でしょうか。二酸化炭素は植物の光合成に必要な大切な材料です。また、強力な温室効果によって、今の地球を「生物が住むことのできるほどほどの暖かさ」に保ってくれている命の恩人でもあります。二酸化炭素は、地球にとってなくてはならない大切な物質です。

最近、身近な数人にインタビューしてみたところ、二酸化炭素さえ増加しなければ、今の地球環境は安定した状態を保ったまま、何千年、何万年も続くと信じている人がいることに驚きました。
過去の地球の歴史をひもといてみると、地球の環境はめまぐるしく変動してきました。今から約1万年前に終わった氷河期や、今から約7000年前の縄文海進のころの暖かかった時代を思い起こせばわかります。人の活動のあるなしにかかわらず、地球環境は変動するのが自然な姿といえます(だから二酸化炭素を排出していいとか、温暖化など気にしなくてよいのだと主張しているわけではありません)

今、二酸化炭素を排出しない新エネルギーへの転換が進められています。写真はそうしたものの一つ、風力発電です。千葉県銚子市で撮影しました。銚子市近郊は、海に近いこと、目立った障害物がないことから、1年を通して安定した風が吹きます。国内でもっとも風力発電が盛んな地域の一つです。
風は、太陽放射を源とする自然界のエネルギーです。決して枯渇することのない理想的なエネルギー源の一つといわれています。しかし、残念ながら風力発電によってまかなえる電力量では、われわれが必要とするエネルギーの全てを満たすことはできません。二酸化炭素の排出削減に効果的であっても、切り札ではないのです。削減の道のりはなかなか険しいといえます。
風力発電は、写真のように遠くから見ていると、何とものどかな光景ですが、実際にプロペラを直下から見上げると、その威容に圧倒されます。巨大なプロペラがシューッという風切り音と共に目の前に迫ってくると恐怖さえ感じます。昔、ドン・キホーテという騎士が風車をバケモノだと勘違いして戦いを挑んだという話があります。今の私たちは風力発電について知識を持っていますから、無益な戦いを挑んだりすることはありませんが、その威圧感は相当なものです。
今はこうした光景を「珍しい」と感じていますが、20年後、30年後には、「当たり前」の風景になってしまうのかもしれません。
(2008.05.13)

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