第5回Vリーグ(1998-99)観戦記(決勝ラウンド)

「これは死んだふりか?」(予備戦)
「夢はあっけなく潰えた」(準決勝第1試合)
「フルセットの激戦三たび」(準決勝第2試合)
「全ての終わり」(3位決定戦)
「見よこれが世界のエースだ」(決勝)
「表彰式の主役」
最後に


「これは死んだふりか?」(予備戦)

いよいよ最終戦争のそのまた最後の舞台となった。その初戦は東洋紡と日立の対戦である。この対戦は通常シーズンでは東洋紡が連勝している。

試合前、リューバがアルの前を通り過ぎ、さらに歩いていく。・・・その先にいたのは、ロシア艦隊総司令官、ニコライ・カルポリ閣下に他ならなかった。

ロシアのエースどうしの打ち合いとなったのは必然だけれども、序盤はアル・リューバともなかなか決まらず、一進一退の攻防となる。両チームともブロックでの得点が多くなる。しかし、この段階から、ボールの威力としては明らかにリューバが上回っていた。アルは決めるときも、強打よりも緩急で決めているという感じだった。
東洋紡は福田を2度ブロック、さらにアルのバックアタックで3連続得点、いったんは11-9とリードした。しかし、そこから濱田、森山、村田と、立て続けにアタックミス。労せずして日立が逆転した。さらに、島崎がアルをブロック。その後、村田がツーで打ったらまたネット、最後はリューバに決められた。島崎のブロックからは3連続得点で、このセットは日立の15-11。

第2セットの序盤、ようやくアルに当たりが出てきたかと思われた。しかし、今日は日立のサーブレシーブが乱れず、島崎のトス回しも大筋で安定していたので、日立は簡単にサイドアウトをとってしまう。東洋紡はサーブレシーブのミスなどから失点を重ね、日立7-4とリード。そこから東洋紡は同点に追いつくけれども、 そこから福田とソコロワのアタックで突き放される。さらにソコロワのサーブがリベロ松永を襲いエース、福田がツーで打ちセットポイント。東洋紡は濱田、村田のアタックなどでしのぐが、最後はサーブレシーブのミスからアルが無理して打ったボールが大きくアウト。

第3セットも序盤から東洋紡にアタックミスが相次ぎ、小田、濱田を止めたブロックなどで、日立が7-2とリード。ここで東洋紡、濱田から佐藤に選手交代。(全試合結果を入力したからわかるけれども、東洋紡は極端に選手交代が少ないチーム) その佐藤の奮起で流れが変わり、7-7と一時同点となる。しかしその直後に、東洋紡のサーブレシーブのミス→不十分な体勢のアルのアタックをブロック、日立が再度リード。流れが切れる。多治見のブロックなどで11-7となった後、福田のサーブが3度続けてアルタモノワを襲う。佐藤が無理して打ったアタックをブロック、さらに2連続サービスエース。一気にセットポイント。最後はリューバがハーフスピードで打ったボールが東洋紡コートに落ちて終わり。

この日の東洋紡は全部おかしかった。まずサーブレシーブが悪い、攻撃が単調になり、日本人選手は全くと言っていいほど決まらない。つなぎも悪く、ふらふらと上がった浮き球を簡単に落とすような場面も目立った。これでは昨シーズンの東洋紡である。
そして何より、アルタモノワのアタックに力がない。これがアルだ、というようなアタックはこの試合2,3本しかなかったと思う。

それに対し、リューバは快調だった。
また、島崎もよく頑張り、サーブカットがきちんと返ればセンター線もきちんと使っていた。(相変わらずトスがぶれることはあったが、多治見、江藤もそれをうまくフェイントにもっていったりした)リューバのバックアタックは威力もあるしうまい。バックアタック決定率55.6%はフロックではない。(これでも1位ではない―その上を行くのは当然バーバラで56.2%)

   Toyobo - Hitachi
        0 - 3
1st    11 - 15       25 min.  4-5 10-9 11-12
2nd     9 - 15       32 min.  3-5 7-10 9-12
3rd     7 - 15       18 min.  2-5 7-10 7-12
Total  27 - 45  1 h. 15 min.

とにかく、あまりにもあっけない試合で、気味が悪かった。

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「夢はあっけなく潰えた」(準決勝第1試合)

準決勝の第1試合は、これまで日本で数々の死闘を演じてきた、バーバラとアルの組み合わせとなった。そしてこの対決が見られるのは、今回が最後となるかもしれない。

しかし、この試合に関して言えば、勝負には全くならなかった。バーバラはリーグ戦から痛めていた両足かかとの状態が悪化しており、とてもいつも通りの試合ができる状況ではなかった。バーバラが足を痛めたのは、そもそも1月16日のユニチカ戦。だから、それ以降もかなり多くの試合を全力で戦っていた。
一方のアルは、前日の「死んだふり」が全く嘘のような完璧なパフォーマンスを見せた。いつもの試合ではアルのバックアタックはあまりよくないけれども、この日はそれもなかった。強打に加えフェイントもピンポイントで突き刺さった。

序盤からバーバラのアタックは全く決まらない。東洋紡はブロック、あるいはデンソーのアタックやサーブレシーブのミスにより5-1とリード。この5点に、アルのアタックはまだ含まれていない。デンソーも森山の速攻をブロックしたところから反撃、バーバラのバックアタックによる2点などで同点に追いつくものの、バーバラが決まらなくなると逆にアルのバックアタックで決め返され、9-5東洋紡リード。この後は両チームとも点を取ったり取られたりで13-9東洋紡リードまで試合が進む。その後は、デンソーはバーバラのアタックでサイドアウトはとるものの、相手もアルのアタックで簡単に取り返すためデンソーは得点できない。14点目、15点目はいずれもアルのアタック。

第2セットもバーバラのアタックミス、さらにアルの連続フェイントで東洋紡が3点を先制する。しかし、小野のサービスエースが決まったところから流れが変わり、バーバラのアタックも決まり2-3。さらに、この後バーバラのサーブ順で東洋紡にサーブレシーブのミス、さらにバーバラのバックアタックで逆転。この後はデンソーが逃げれば東洋紡が追い上げるという展開が続いた。しかし、8-7デンソーリードで、東洋紡が小野のサーブを2度続けてサーブレシーブミス。いずれも失点、さらにバーバラのアタックでデンソーが3連続得点。この後バーバラのアタック、アルのアタックミスで13-8までデンソーのリードが広がった。しかし、東洋紡は森山のサービスエースから反撃、バーバラのバックアタックがアウト、さらにバーバラのバックアタックをブロックして3連続得点。さらに、村田のサーブでもデンソーがサーブレシーブのミスを連発、いずれも失点しついに同点となった。しかし、これをバーバラのアタックで何とか切ると、直後にバーバラのアタックが決まりデンソーがセットポイント。3度目のセットポイントで、アルのバックアタックをついにブロック、デンソーがかろうじて1セットを取り返した。

しかし第3セットは開始早々バーバラのアタックがブロックされ、さらにデンソーのミス、森山のサービスエースで東洋紡が4-1とリード。この後もバーバラのバックアタックが2度ブロックされ、森山に再度サービスエースもでて、東洋紡7-3。さらに、村田のサービス順でデンソーが3度続けてサーブレシーブをミス。全部アルのアタックによる5連続得点。最後はラリーが続いたけれども、温水のツーアタックを森山に読まれて終わり。

第4セットはアルのアタックが次々と決まり、一方バーバラあるいはほかのデンソーの選手にはアタックミスが続発、このセットも11-4と東洋紡の一方的な展開となった。この後バーバラのバックアタック、サービスエースでデンソーは2点を返すものの、バーバラのバックアタックがブロックされ東洋紡に12点目。この後アルのアタックによる2点で、ついにマッチポイント。この後小野のサービスエース、アルをブロックするなどでデンソーは3点を返したものの、反撃もここまで。最後はアルのバックアタックが決まって、デンソーの優勝の夢は潰えた。

3-1というセットカウント以上に一方的な試合で、デンソーが上回っていたところは何一つなかった。

    Denso - Toyobo
        1 - 3
1st     9 - 15       21 min.  1-5 6-10 9-12
2nd    15 - 13       26 min.  5-3 10-7 12-8
3rd     5 - 15       23 min.  3-5 4-10 4-12
4th     9 - 15       26 min.  3-5 4-10 6-12
Total  38 - 58  1 h. 36 min.

この試合が終わった後、私は放心状態でふらふらと応援団席を後にした。応援団の方と話をする約束もあったのだが、それもキャンセルしてしまった(本当にごめんなさい。とても落ち着いて話ができそうな状態でもなかったので。)。

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「フルセットの死闘三たび」(準決勝第2試合)

準決勝のもう一方の試合はNEC対日立である。レギュラーシーズンのこの対戦は1勝1敗、それもいずれもフルセットまでもつれている。そしてこの試合も長くもつれた試合となり、しかも逆転に次ぐ逆転の試合となった。

第1セットは、序盤大貫のサーブで日立が崩され、NECが4連続得点。さらに杉山のブロック、大懸のアタックで、8-1とNECが大きくリードした。しかし、NEC10-5から日立が1点ずつ返し、10-9。さらに、11-9NECリードから、田中のサーブでNECが逆に崩された。福田、ソコロワのアタック、ノータッチエース、大懸のアタックミス、津雲のフェイントもアウトで、日立が5連続得点、逆にセットポイント。しかし、これを大懸のアタックで逃れた後、島崎に信じがたいトスミス。これを津雲がブロックし、一気に流れはNECに。13-14となったところで日立はセッターを小玉に交代するが、流れは変わらず。ゴディナにアタックを2発決められてセットポイントを迎えたところで、島崎に戻す有様だった。最後はゴディナの3連続アタック得点で、16-14でNECが取る。

第2セット半ばまでは、第1セット後半猛烈に追い上げた勢いを日立が持ち込んだ。田中のツーアタックが2本決まり、さらにゴディナ、津雲の1レグをブロック、6-1日立リード。この後も多治見とソコロワが大懸・ゴディナ(2本)・津雲と次々とNECの攻撃をブロックし、12-4と大きく日立がリード。しかし、この後日立がゴディナのサーブでサーブレシーブミスを3連発、いずれも失点となり、流れが変わった。この後大貫も連続サービスエース。日立は田中のアタックで14-10で最初のセットポイントを迎えるものの、7度のセットポイントを逃す。この間にNECが日立のミスで追い上げ、リューバのフェイントがアウトしついに2セット連続のデュース。しかし、このピンチを田中のアタックで逃れた後、江藤が大懸をブロック。ここで最後は田中がツーで打ち、苦しみながら日立が16-14で取る。

第3セット、NECはゴディナが決まらず、大懸に頼る展開が続く。それでも、大懸の獅子奮迅の働きで6-4と先行。しかし、その後は大懸とゴディナにアタックミスが相次ぎ、さらにゴディナを3枚ブロックで止められ、8-6日立リード。しかし、NECのタイムアウトの後日立がサービスミス、さらにソコロワのアタックミスでNECが得点、流れは逆にNECに。この後、多治見のアタック、リューバのバックアタックと続けて止めた。さらに、ゴディナのアタック、ソコロワのアタックミスで、一時は13-8とした。しかし、日立もこの後2点を返し、さらに田中のサーブがリベロ遠藤を襲いサービスエース。さらに、次のサーブ順の福田も遠藤を狙い撃ち、サービスエース含む3連続得点で一気に逆転、日立がセットポイントを迎えた。日立の2度目のセットポイントは両エースの白熱した打ち合いとなったが、最後はリューバのフェイントが決まった。このセットは逆転で日立の15-13。

第4セットは、4-3日立リードからコンビミスでNECが失点、さらに大懸を拾って多治見が決めて6-3としたあたりから流れは一気に日立へ向かった。ソコロワのバックアタックで7-3となった後、NECはセッターを大貫から竹下に交代。しかし、大懸のアタックミス、さらに大懸が田中にブロックされ、コンビミスから数えて都合5連続失点。大貫をコートに戻す。この後多治見にブロックが出て、一時は10-3まで日立のリードが広がった。しかし、12-7日立リードから、ゴディナのサーブ順で、大懸の3連続アタック得点、さらにソコロワのアタックミス、その後も流れが止まらず実に7連続得点。大懸のアタックで逆にNECセットポイント。最後は日立がサーブレシーブをミス、リューバが無理して打ったバックアタックが大きくアウトした。このセットも逆転で、NEC15-12。この対戦は三度続けて最終セットに突入した。

最終セット、先にサーブを打ったのはNECだった。まず日立がリューバのアタック2本で2-0、その後NECがゴディナ、杉山のアタックで同点。しかし、江藤の速攻が決まった後、田中のアタックで再度日立2点リード。日立6-4で日立サーブで、ゴディナのアタックがアウト、3点差となった。この後は、日立が多治見などのブロックも出て着実にリードを広げ、日立の一方的展開となった。最後はリューバのアタックがブロックをはじき15-8。

この試合、リューバもまずまずだったし、日立のブロックは、NECのオープン攻撃、センターの速攻、津雲の1レグのいずれにも恐ろしくよくついていた。特に多治見のブロックは鬼のごとくNECコートに次々落ちた。しかし、私がこの試合の陰のヒロインとしたいのは田中シナシナである。日立の中にあっては珍しく小さい選手だが、非常に面白いことをする。この試合ではアタックでもサーブでも実に要所要所でよい働きをした。特に第2セットは、田中で取ったセット、といってよいだろう。

一方のNECは、ゴディナがこの試合を通して今ひとつだった。大懸はよく頑張ったと思うけれども、日立の攻撃力の前にはわずかに及ばなかった。大貫はゴディナ・大懸の両エースに頼りすぎである。この試合についていえば、トス回しでも島崎のほうが(唖然とするようなミスは多いけれども)評価できる。少なくとも、この試合を見ている限りは、大貫を全日本のセッターにする理由はわからない。
それほど打てて高いセッターがほしいなら、本当に島崎を入れたらどうだろう?(暴論)島崎はそこそこまともなトス回しをするときと、全然だめなときとの落差が激しいのだが。正セッターは磯辺で、ワンポイントブロッカーに近い使い方をするとか。(ほとんど冗談なので、あまり本気にしないでください)。

      NEC - Hitachi
        2 - 3
1st    16 - 14       25 min.  5-1 10-5 11-12
2nd    14 - 16       33 min.  1-5 4-10 4-12
3rd    13 - 15       28 min.  5-2 10-8 12-8
4th    15 - 12       20 min.  3-5 3-10 6-12
5th     8 - 15       10 min.  3-5 6-10 7-12
Total  66 - 72  1 h. 56 min.

打ち合いと拾い合い、ブロックの応酬と、いずれをとっても見応えのある試合だった。流れが両チームを激しく行き来し、この試合を要約するのは非常に難しい。アタッカー個人としてはアルが最もすごかったけれども、残念ながら、試合の内容としては、こちらのほうが放送する価値がある。それもノーカットで放送するべきである。

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「全ての終わり」(3位決定戦)

NECは、前日の戦い方からして、バーバラが本調子に戻れば、勝つのはそれほど難しい相手ではないと思われた。しかし、バーバラのけがが、一日や二日で治るもののはずもなかった。バーバラ以外をとればアタックでもブロックでもサーブでもレシーブでも全部格上の相手なのだから、試合に勝てるはずもなかった。

第1セット序盤、ゴディナのサーブでいきなりサーブレシーブが乱れ、エース2発を含む4連続失点。この後、小野の速攻、バーバラのバックアタック、温水のツーとことごとくブロックされ、小野のアタックミスで9-3NECリード。この後、バーバラや草深のアタック、バーバラのブロックなどでデンソーは1点差まで追い上げる。しかし、それから後はサイドアウトはとってもアタックのミスあるいはサーブのミスが出て得点できない。そのようなことをしているうちに、NECに1点ずつ差を広げられる。最後はバーバラのバックアタックがアウトして、15-8でNECがとる。

第2セットも終始NECリードで進む。大貫もこの日はラリー中に小林の速攻を使うなど、前日には見られなかった余裕を見せる。デンソーはバーバラのバックアタックで8-9までは追い上げるけれども、この後大懸のノータッチエース、濱野のアタックがアウトして、流れは完全にNECへ向かう。さらに、杉山に代わるピンチサーバー榎谷のサーブ順で、ゴディナと小林のアタックでNECが3連続得点、セットポイントを迎える。デンソーは水本のサービスエースで1点を返しただけ、最後はバーバラのバックアタックがブロックされて、NEC15-9。

第3セットは苦しい状況の中、バーバラが序盤3本続けてアタックをたたき込む。さらに、バーバラのサーブが遠藤を襲いエース。これに応えるかのように、小林の速攻をブロック、さらに津雲の1レグを2度拾い3度目でブロックするなど、第2セットまでにはなかった粘りも出た。サイドアウトを繰り返しながら、デンソーが8-1とリード。しかし、この流れを変えたのは、9-1になるかと思われた場面で出たバーバラの信じられないようなアタックミスだった。ストレートのコースは十分開いていたのに、バーバラのアタックはサイドラインを大きく割った。このミスによって、デンソーの残り7点への道のりは果てしなく遠いものになってしまった。案の定、この直後にゴディナのアタック、バーバラのアタックミスで2点を返される。NECのミスでデンソーは10-3としたものの、この後デンソーの攻撃がことごとくNECに読まれて立て続けにブロック、サーブレシーブのミスも出てあっという間に11-10まで差を縮められた。バーバラのアタックで12点目、13点めが入っても、1セットをとるまでの道のりが少しも近いものになったとは感じられなかった。とにかく、デンソーはサイドアウトをとるのが精一杯、NECは余裕というのが明らかに感じられた。この後サーブレシーブのミスで13-12、大懸のアタックでついに同点。私はこのあたりでもう、全て終わったと感じた。サイドアウト2回の後、ゴディナのアタックでマッチポイント、バーバラのバックアタックにいったところを杉山にブロックされ、全てが終わった。
8-1リードのところでのアタックミスがなければ、このセットはおそらくとれただろう。しかし、そんなことはもはやどうでもよかったのかもしれない。よしんばこのセットをとったとしても、このときのバーバラのコンディションからして、第4セット・最終セットと連取して試合をものにできる可能性が万に一つもないことは、はっきりしていたと思う。とすれば、このような状況で試合を続けることに意味があるだろうか。さらに言えば、これほどけがが重い状況で試合を長引かせれば、バーバラの選手生命に影響を与えるまでに悪化させてしまうかもしれない。バーバラの選手生活はこの先まだ長い。今真っ先にすべきことは、現在のけがを完全に治すことである。

    Denso - NEC
        0 - 3
1st     8 - 15       25 min.  3-5 8-10 8-12
2nd     9 - 15       24 min.  3-5 8-10 8-12
3rd    13 - 15       33 min.  5-1 10-3 12-10
Total  30 - 45  1 h. 22 min.

この決勝ラウンドは、バーバラにとっては、日本での5シーズンの総決算となるはずの試合だった。
しかしバーバラはおそらく、前半戦、特に金沢での2連戦あたりに、自分の持っている力全てをもっていったのではないだろうか。東洋紡・ヨーカドーとの死闘を経て、沖縄での試合あたりからはだんだん力が落ちてきて、本来の力の半分くらいでやっていたと思う。
そして決勝ラウンドにいたるまでに力を使い果たしてしまった。決勝ラウンドでは、跳ぶ力も打つ力も、全く残っていなかった。それでもひたすら打ち続けなくてはならなかった。結果はあまりにも残念なものに終わってしまった。

準決勝も3位決定戦も試合も、電波にのらなくてよかったと思う。あまりにも哀れだ。

今回の結果に最も悔しい思いをしているのは、バーバラ本人だろう。厳しいことを言うようだけれども、重要な試合にコンディションを維持できないようでは、一流選手とは言えない。また、バーバラだけがけがをしていたわけでもなく、デンソーだけにけが人が多かったわけでもない。これはNECのトレーナーの方が応援ページの掲示板に書き込まれていたことだが、NECにしても大懸もゴディナもけがを抱えており、それもかなり重い状態だったという。もっと言えば、バレーボールという競技で、けがのない選手などいない、と言ってもよい。
とにかくバーバラは相手のブロックに対して素直に打ちすぎだし、ミスも多すぎる。一発で決めることではなく、まず相手のコートの中に入れることを考えてほしい。普段の力が出せなくても、できることはいくらでもあったはずである。
バーバラには今回の経験を糧として、次なる舞台でさらに飛躍してほしいと願っている。

どうあがいてみたところで、バーバラがあの状態では東洋紡にもNECにも勝てるはずがないことははっきりしている。しかし、バーバラがだめなら、せめて、「このチームはバーバラ一人ではない」というところを見せてほしかった。それはすなわち、来シーズンにつながる戦いをすることでもあったはずである。しかし、準決勝でも3位決定戦でも、私にはそれは感じられなかった。
この決勝ラウンドが始まる前、私はデンソーが勝ち抜けるという気はあまりしなかった。後半戦、デンソーが決勝ラウンドを勝ち抜くための試合をやっているとは思えなかったからである。前半戦で問題となったエアリービーズの問題点は、何一つ修正されていなかった。後半戦の四強との対戦は、内容的に勝った試合は一つもなかった。結果だけ見れば、後半戦も7勝2敗だけれども、その内容はアタック力にものを言わせて勝った試合ばかりで、それ以外に見るべきもののある試合は一つもなかった。日本人選手の決定率は高い試合もあったけれども、それもバーバラが決まっているから楽に決められるだけのことで、とてもバーバラの存在から一人立ちできるということではなかった。そして、その悪い予感は全て当たっていた、と言うしかない。

特に温水。セッターとしてもう少し成長していてほしかった。「ネットに近いんだよ!」応援席に入れてもらった準決勝で、いったいこのセリフを何度叫んだことか。バーバラの状態が最悪であることなどわかっているはずなのだから、どうしてトスをもっと散らさないのか。シャットを食らっても決まらなくても、なぜことごとくバーバラのバックアタックにもっていくのか。サーブカットがきちんと返ったときに、どうしてセンター線を使おうとしないのか。とにかくほとんどオープントスばかりで、これではブロックするのも実に容易である。
また、サーブレシーブは東洋紡戦でもNEC戦でも非常に悪かった。東洋紡戦でもサーブレシーブからの失点が非常に多かったけれども、NEC戦ではそれに輪をかけて悪かった。
これはエンドライン側から見たNEC戦ではっきりとわかったことだが、デンソーはブロックも異常に甘い。ゴディナにトスが上がればはっきりとわかるはずなのに、ブロックが完全に遅れている。NECはバーバラにトスが上がった瞬間に2枚、3枚とブロックがついている。
デンソーの選手はどうしてこれほどサーブ力がないのだろうか。それほど強く打っているわけでもないのに、サーブミスが異常に多い。これは昨シーズンと比べても目に見えて、数字に見えて極端に悪くなっている。

これまで、バーバラすなわちデンソーエアリービーズと言ってもよいくらい、バーバラはこのチームにとって大きな存在だった。それだけに、日本人選手だけとなる来シーズンの苦戦は必至であろう。しかし、バーバラあるいはかつて在籍したチェブキナやクズマニッチの残したもの、そして今回の苦い経験を無駄にしない戦いをしてほしい。

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「見よこれが世界のエースだ」(決勝)

確か、世界選手権の日本対クロアチアの試合の観戦記もこのタイトルだったと思う。しかし、今回の「世界のエース」とは言うまでもなくアルタモノワのことである。

第1セット序盤は、多治見がアルのバックアタックと濱田を立て続けにブロック、さらに田中のアタックによる2点で合計4連続得点、日立が6-2とリードした。しかし、この試合で、日立やるではないか、と思わせたのはこのときだけだった。この後、アルのバックアタック2発、さらに村田のライト攻撃で3連続得点、あっという間に1点差。さらにアルのアタックで同点。この後は互いのアタックミスで8-8同点から、アルのアタックでついに東洋紡リード。この後ソコロワのアタックミス、アルのフェイントで3点差。さらに、森山が江藤を止め、アルのバックアタックで13-8。ここで日立は島崎から小玉にセッターを交代。しかし、村田のライトでセットポイント。この後、日立は東洋紡のミスで3点を返すけれども、最後はアルがリューバをブロックして、このセットは15-11で東洋紡。

第2セット、日立は再び島崎先発。その島崎がいきなりミスで東洋紡が先制。この後、アルのアタックが次々と日立コートに突き刺さり、東洋紡にブロックもたびたび出た。東洋紡5-1となったところで、日立は島崎から小玉に交代。しかし、あっという間に東洋紡が8-1とリードした。この後、福田のアタックが完璧にブロックされたと思ったが、わずかにアウト。日立が2点目を返す。この後しばらく流れが変わり、永富に珍しくミスも出て8-6まで日立が追い上げた。しかし、その後アルのアタックで9点めが入ってからは、日立にサーブレシーブのミスやアタックのミスが続出、東洋紡の一方的な展開となった。最後はアルのバックアタックで、あっという間に東洋紡が15-6でこのセットもとった。

第3セットはついに、島崎ではなく小玉が先発。しかし、日立のサーブレシーブのミス、コンビミスなどで東洋紡が4点を先制。この後、日立が2点返し、さらに多治見に完璧なクイックが出たところで、米田監督は小玉を島崎に交代。ようやくコンビがあってきたと思われたところでセッターを交代するのは全く不可解だったけれども、案の定この後アルのアタック、ブロック、日立のミスなどで、9-2とリードを広げられる。ここでセッターを小玉に戻すけれども、すでに手遅れ。この後12-3まで東洋紡のリードは広がった。この後、東洋紡のサーブレシーブのミス、ネットタッチなどで12-7まで日立は追い上げる。しかし、日立に逆にネットタッチ。さらにリューバがブロックされ、いよいよ東洋紡優勝秒読みへ。森山が江藤を止めて、ついに東洋紡のチャンピオンシップポイント。これを一発で決めたのは、アルではなく森山だった。

優勝おめでとう!東洋紡オーキス!!

とにかくこの2日間のアルは圧巻だった!初日のどうでもいい試合などとっとと捨てて、負けてはならない試合に最高のコンディションで臨む、長丁場の国際大会を何度もくぐってきた経験も生きていた。また、永富のトスワークも目立ち、特に村田を非常に有効に使っていた。また、この試合ではスパイクレシーブもよかった。ブロックも非常に多く出たため、相乗効果だったと言えるだろう。
しかし東洋紡は、言われているほど完璧な試合をしたわけではない。特にサーブレシーブは、準決勝、決勝とも返球率60%前後に過ぎなかった。ここでも永富のはたらきが大きく、多少のミスなら修正して完璧なトスを上げてしまう。そしてアルタモノワにつなげば何とかなってしまう。

一方の日立は、この日はとにかくセッターが悪かった。準決勝までは島崎はそれなりに頑張っていたけれども、この日は全くだめで、センター線を使ってもほとんど決まった場面がなかったと思う。そのためにトス回しも単調になり、東洋紡に完璧に読まれてしまった。

   Toyobo - Hitachi
        3 - 0
1st    15 - 11       26 min.  2-5 10-8 12-8
2nd    15 -  6       18 min.  5-1 10-6 12-6
3rd    15 -  7       22 min.  5-2 10-3 12-3
Total  45 - 24  1 h.  6 min.

日本リーグ以来の歴史を振り返ってみれば、優勝のチャンスを一度目でものにしたチームなど、皆無と言ってよいのではないだろうか。戦力的には優れた選手がそろっていても、コンディションの維持、プレッシャーとの戦い方など、経験しなければわからない部分が足りないから、結局は伝統チームの壁に跳ね返されることになる。優勝できるチームと言われながら2位あるいは3位に終わるようなことを、最低一度、普通は2,3年以上続けて(ひょっとするとその間に大きく順位を落とすこともあって)、ようやく優勝にたどり着くものだと思う。現在は名門に数えられる、日電・ヨーカドー・ダイエーあたりのチームが初優勝したとき(チーム名は当時)にしても、いずれもそうだったと思う。そして今回の東洋紡も、またしかりである。
しかし、デンソーに次のチャンスはなかった。こう考えてみて悔やまれるのは、第1回Vリーグのあとの入れ替え戦で降格、実業団リーグで過ごした1年である。

今回の決勝ラウンドの試合方式は、多くの疑問点を残した。これは実際に試合が行われる前からわかっていたことのはずだが、初日の試合は両チームとも真剣にやらないのではないかということ。それなら、初戦の組み合わせを1位対4位、2位対3位として行うトーナメントのほうがすっきりしている。これは第1回Vリーグの決勝ラウンドの方式であり、他国のリーグ、あるいは他の競技の決勝ラウンドでも非常によく行われる。特に、今回の決勝ラウンドでは、初戦東洋紡は試合を投げていると思われるような戦いぶりだった。そして、開始時刻が早く通常シーズンでの対戦成績も悪いデンソーとの試合をあえて選択する理由もあったのだ。もし、バーバラのけがが非常に重いことが何らかの形で漏れていたとすれば、NECよりもデンソーと試合をしたほうが勝つ可能性が高いことははっきりしている。もう一つの理由は、これは私が唱えた説ではないのだが、東洋紡がNECのジャンプサーブを恐れたのではないかということである。東洋紡の最大の弱点はサーブレシーブにあり、この決勝ラウンドでもバーバラなどのジャンプサーブで崩される場面が少なくなかった。NECは大貫、ゴディナ、大懸を初めとして、強力なジャンプサーブを打つ選手が多い。通常ピンチサーバーの高橋をスタメン起用することも考えられる。東洋紡は通常シーズンNECに連勝しているが、いずれも安井の退団前である。リベロ松永を狙い撃ちされると分が悪いと踏んだ可能性は十分ある。
通常シーズンの順位が決勝ラウンドでの有利不利にほとんど反映されなかったことも問題である。それどころか、順位に直接関係しない初日の試合が格好の練習となって、3位・4位チームにむしろ有利になると思われかねない結果となった。決勝ラウンドの方式は非常に頻繁に変更されるため方式を理解した上で戦う必要があるとはいえ、これはおそらく誰にも予期できない結果だっただろう。初日のしかも夕方に試合をするのはハンデとなる、と誰もが考えただろうからである。
3位決定戦を行う必要があるかどうかも疑問である。これは特に男子の松下に顕著だったのだが、準決勝で敗れたショックが見え見えで、ちぐはぐなプレー、ミスが実に多かった。

今回の決勝ラウンドで、皮肉にも、前回までのステップラダーの長所が明確になった。まず、いずれのチームも1試合敗れた時点で優勝の可能性がなくなるため、どの試合も真剣勝負であり、敗れた時点で順位確定という点でも明快である。また、通常シーズンの順位が決勝ラウンドの有利不利に影響するという点では、公平な方式である。
この方式が改められたのは、上位チームに有利すぎる傾向があったからだった。これは、通常シーズンと決勝ラウンドの位置づけに関わる問題である。決勝ラウンドは上位4チームが対等な関係で戦うものとするのか。それとも、通常シーズン4位以内のチームには逆転優勝のチャンスを残すが、通常シーズン首位のチームが優位に立つようにするのか。前者のほうが決勝ラウンドの興行としては盛り上がるかもしれないけれども、通常シーズンが単なる予選となってしまうおそれがある。後者のほうが、通常シーズンの一試合一試合が重みを持ってくるけれども、決勝ラウンドでの逆転というスリルはなくなるかもしれない。
いずれにせよ、今回の方式はおそらく今回限りだろう。どちらにしても中途半端だからである。

Vリーグは10チームに増やされたことだし、いっそのことプレーオフ4チームでなく6チームで行ってはどうだろうか。そして次のような組み合わせの変則トーナメントにする。

1回戦
第1試合:3位対6位、第2試合:4位対5位
準決勝
第1試合:1回戦第1試合の勝者対通常シーズン2位、第2試合:1回戦第2試合の勝者対通常シーズン1位
決勝
準決勝の勝者どうしで決勝

当然ながら、1試合でも負ければ優勝の可能性はなくなる。また、通常シーズン1位チームでも2試合を勝たなければ優勝できない。(3位以下のチームは3試合連勝で優勝)

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「表彰式の主役」

表彰式の主役はやはりバーバラである。とにかく、獲得した個人表彰が6つ。もちろん史上空前である。今回の表彰式で、バーバラ以外に3度名前を呼ばれた選手はいない。
これまで日本リーグまたはVリーグで1シーズンに獲得した個人表彰の最多は、きちんと調べたわけではないけれども、4つだと思う。(MVPまたは敢闘賞)とベスト6と部門賞2つ、これで4つである。(日本リーグ時代の特別賞については、手元の資料にも記入されていないのでわからない。これがあると表彰5つの可能性もある。)ここでいう部門賞とは、スパイク賞、猛打賞、ブロック賞、サーブ賞、サーブレシーブ賞の5つをいうことにする。この部門賞の大きな要点は、個人集計の各部門の1位選手に対する表彰ということにある。レシーブ賞を部門賞に含めないのもそのためである(日本のリーグではdig*の集計はない)。バーバラは、部門賞がスパイク賞・猛打賞・サーブ賞の3つ。それに加えて最多得点賞。ベスト6にも当然選出。さらに、特別賞を受賞した。その理由は、「日本のリーグに5年間在籍し、日本のバレーボールのレベルアップ、ファンサービスに貢献した」ということである。これで合計個人表彰6つ。バーバラの獲得した6つの中に、MVPまたは敢闘賞は含まれていない!
* digとは、スパイクレシーブおよびつなぎをいう。
猛打賞(アタック最多決定数)と最多得点はほとんど同じタイトルのように思われるかもしれない(最多得点を部門賞に入れていないのもそのため)。しかし、そのように考えてみれば、これまでの表彰4つの例にしても、MVPまたは敢闘賞に選出されてベスト6に選出されないということはあまりない(もちろん例外はある)ので、これは重複する内容の表彰だと考えることができる。また、アタック最多決定数と最多得点は、必ずしも同一の選手にはならない。例えば、今シーズンのV1リーグでは、猛打賞は東北パイオニアのユディーだが、総得点についてはJTのナターシャのほうが明らかに多い(アタック得点もナターシャのほうが多く、ブロック得点ではナターシャが大きく上回る)。

MVPは優勝チームの選手から、敢闘賞は2位チームの選手から選ぶのが普通だけれども、このことについて明文の規定はないと思う。実際、日本リーグの初期には、3位チームの選手からMVPあるいは敢闘賞が選出された例、あるいは2位チームの選手からからMVPが選出され優勝チームの選手からは敢闘賞が選出された例がある。だから今回のバーバラをその例外にしてもよかったような気がする。

ベスト6は次の6選手である。上位6チームから1人ずつ選出となっているけれども、これは単なる偶然であろう。

イエリッチ(デンソー)
アルタモノワ(東洋紡)
ソコロワ(日立)
ここまでは当然だろう。
大懸(NEC)
四強チームの外国人エースのうち、ゴディナ一人だけが落ち、代わりに大懸が選出された形になった。NECの場合、攻撃ではゴディナが中心でも守備では大懸のウェートが非常に大きい。また、NECが準決勝で敗退したのはゴディナが十分はたらかなかったことが大きな要因である。このことがこの選出に影響したと思われる。ゴディナか大懸のどちらを選出するのが妥当かは、微妙なところであろう。
吉原(オレンジ)
今シーズンは結局外国人エースの戦場と化し、センタープレイヤーは目立たないシーズンだったと言える。それだけ、センターの選手を選ぶには決め手に欠く。四強チームからあえて選ばないのならガビーにしてもよかったと思う。そうなるとベスト6のうち4人が外国人選手ということになるが、今シーズンの状況を考えたらそうなっても(さらに、大懸の代わりにゴディナが入って6人中5人(!)ということになっても)仕方がないと思う。
磯辺(ユニチカ)
順当である。四強には東洋紡の永富以外めぼしいセッターがいないことはあるけれども、チームの順位にとらわれずに正しい選出をしたことは評価したい。


この最終戦争は、一方の主役であるアルが優勝を手にして幕を閉じた。しかし、優勝というタイトルはなくとも、Vリーグ開始以来の5年間、特に第3回から最終戦争に至る3シーズンの間、このリーグを最も大きく動かしていたのは常にバーバラだった。エアリービーズというチームは、もともとは下からはい上がってきたチームである。上のチームを見渡せば、日本代表を何人も擁し、外国人選手も世界大会でメダルを獲得したような選手ばかりである。そのようなものは何もないチームを引っ張って、並外れた力で割って入り、道を切り開いた。それはVリーグの歴史を作り替えることでもあった。

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最後に

NECとの試合が終わった後、私は放心状態でしばらく体育館内をふらふらして、その後席に戻った。
この日はアリーナ自由席で観戦していた。アリーナ自由席はエンドライン側、しかも後ろ半分なのでコートからの距離はかなりある。試合を見るのにはあまり都合のよい場所ではない。しかし、アリーナのエンドライン側というのは、関係者が適当に座ることが多い場所である。

・・・・・!!

私が陣取った席の2列か3列前に座っていたのは、ほかでもないバーバラと妹のベスナだった。
今シーズンはアリーナでの観戦も少なくなかったので、選手をすぐそばで見たことも多かったけれども、これ以上驚いたことがあるはずもない。

Vリーグのプログラムにサインをしていただき、写真撮影にも応じていただいた。
これで気持ちの整理が少しついた。
辛い負け方をした後なのに、快く(かどうかはわからないけれども)応じていただいたことに、本当に感謝します。一生の思い出になります。

その直後、「選手がいやがっているから」ということで、近くにいた係員に追い払われてしまった。
何だよそれは!いつバーバラにそんなこと聞いたんだおまえは!?
世界選手権のとき、私の座った近くにロシアの選手がまとまって座り、セット間ともなればひっきりなしにファンがサインや写真撮影を求めたけれども、係員が別にそれを追い払いに来るようなことはなかった。
確かに、けがのために本来の力を出せずに負けた直後である。選手にとってはサインに応じたりするのはいやなものかもしれない。しかし、それに応じることもファンサービスの一つではないだろうか。例えば、世界選手権のときのパスカルにしても、最後の試合で勝って終わることはできなかったけれども、だからといってサインや写真撮影をいやがることはしなかったはずである。
納得のいかないものが後に残ってしまった。

「無名の私を世界でも指折りのアタッカーに育ててくれた」(毎日新聞記事による)と語ったバーバラ。お願いだからそんなことを言ってくれるな。こっちが泣けてくるから。こちらのほうが、これまでたくさんの感動を与えてくれたことに対して、ありがとうと言う以外に何もできないのに。

Thank you, Barbara!!