第1回V1リーグ(1999)観戦記

大津遠征
NEC関西対武田薬品(1/9大津第1試合)
JT対NTT関西神戸(1/9大津第2試合)
久光製薬対東北パイオニア(1/10小豆沢第1試合)
朝日生命対北越銀行(1/10小豆沢第2試合)
Caution!
この観戦記における試合記録は、現時点では全て私の手元のログによるものであり、公式なものではありません。あらかじめご了承ください。

Notice: 「連続得点」には、失点をしない間に得点を続けること(つまりサイドアウトがあってもよい)を指す場合と、サイドアウトなしに純粋に得点が続くことを指す場合がある。この観戦記では、連続得点という表現は、特に但し書きがない限り、後者のサイドアウトなしに得点が続くという意味で使うことにする。


大津遠征

この大津遠征の最大の目的は、「生ナターリャを見ること」にある。ナターリャ・サフローノワは、バーバラ、アル、リューバ、ゴーシャ(ゴディナ)、ガビーと並び、今シーズン見ておきたい選手の一人である。しかし、ナターリャを見に行くことは、この5人を見に行くこととも全く異なる意味がある。ナターリャはロシアナショナルチームでは控えであり、出場機会はなかなかない。V1リーグの試合など、もちろん放送されるわけはない。したがって、ナターリャが打ちまくるのを見るためには、どうしても会場に行くしかないのである。ちょうど青春18きっぷも2枚残っている。

出発は朝4時10分。最近は青春18きっぷで遠征、座席夜行を利用することも多い都合上、とんでもない時間に列車に乗ることは多いのだが、それでも私にとっては最も早い出発時間である。

恐ろしく寒い日だった。私は普通、窓側の席が空いていれば窓側に座る人間である。しかしこの日だけは、窓側、ドアの近くはできるだけ避けた。それほど寒いのだ。出発時間を寝過ごさないために、もちろんこの日も徹夜である。とても眠いはずなのだが、寒くてとても眠れない。

小田原を過ぎた頃、ようやく日の出である。早川駅(東京側から見て、小田原の次の駅)から真鶴を過ぎるあたりまでは、線路の真下に海が迫っている区間である。この日乗った列車はロングシートだった。初電に近い、しかも下りだから車内はがらがら。窓枠などがじゃまになるけれども、海をパノラマで見られるというのもなかなかおつなものであった。
三島まで下ってくると富士山が見える。しかし、三島・沼津あたりと富士の近くは工場や高い建物が多いため、山を見るのにあまり都合はよくない。沼津と富士の中間あたりは、畑が多く山をじっくり見られる。2年か3年前、昼間に年末年始の帰省をしたときには、富士山にほとんど雪がなく黒い山肌が露出しており、これは相当の異常気象だと感じたものだが、今年はかなり下のほうまで雪化粧していた。
富士を過ぎ、由比あたりでは海岸を走る。しかし、鉄道よりも海岸の近くに国道1号と東名高速が走るため、海が見える部分は少ない。むしろここは、日本の大動脈3本の並走を楽しむ区間である。

さて、寒いことは恐ろしく寒かったけれども、静岡県内は青空が広がっており、雪の降る気配は全くなかった。私は浜松駅で乗り換えをした後ぐったり、気がついたら県境を越え豊橋駅だった。
その豊橋で、にわかに雲行きが怪しくなった。空はどんよりと厚い雲に覆われている。そして、「上り列車は雪のため遅れております」との放送。
やばいよ、これ・・・
そして、乗り換えた新快速列車の窓枠には雪が!!

果たして、豊橋駅を出て少しするとすぐに雪が本降りとなった。この雪は低気圧によるものではなく、寒気、季節風による雪である。関ヶ原付近は、日本海側と太平洋側を分ける脊梁山脈が低くなっているところである。そのため、寒気が強くなると、雪雲が関ヶ原を越えて名古屋、さらにもっと南に抜けてくる。だから、この雪は山に近いから強く降るとかいうものではない。関ヶ原に近くなればなるほどひどくなる。
それでも、名古屋の少し(20kmほど)手前の大府までは、雪煙を上げつつ必死に飛ばし、わずかな遅れですんでいた。しかし、そこを過ぎ名古屋に向かうところで、ついにのろのろ運転に。名古屋を出るときには、10分以上の遅れになっていた。
名古屋は大変な積雪である。ひょっとすると20cmを超えているだろうか?4年ほど前まで名古屋市民であった私が見ても、多分数年に一度くらいしかない大雪である。これほどの雪で、10分20分遅れるだけですんでいるのが信じがたいほどである。東京なら、まず快速の運転をうち切り、各駅停車だけで間引き運転をするところである。
もちろん、この後列車はさらに遅れ、大垣に着いたときには20分遅れになっていた。ここで米原行きに乗り換え。大垣駅での待ち時間は本来20分しかなかったけれども、その列車も遅れているのでもちろん接続はできる。しかし、この時点で、本来の予定通りに到着することは不可能となった。最も雪が厳しい区間はこの先であり、しかも米原から先もまだかなり距離がある。この時点では、第1試合開始に間に合うことさえ絶望かと思われた。

大垣から米原、いわゆる関ヶ原あたりは、もうめちゃくちゃである。こんな雪見たことないよ。(筆者は、日本海側、関東より北に住んだことはない。また、スキーに行ったこともない。)列車のドアが開くと、列車内に雪が舞い込んでくる。

米原には15分ほどの遅れで到着。この区間ではそれほどの遅れは出なかったけれども、予定の列車にはもちろん間に合わなかった。本来の予定では、米原での接続時間は5分しかなかった。しかし、後から考えてみれば、ここでの遅れが最小限ですんだことは本当に助かった。とりあえず直後の出発の新快速に乗り込む。
ところが、彦根を過ぎたあたりで雲が薄くなってきた。これは幸い、と思っていたら、あっという間に雪がやみ、雲が途切れ青空が広がってきた。この激変にもまた驚くしかなかった。季節風の吹き出しの方向、そしてそれが何日も変わっていないことも身をもってわかる。
会場へのもより駅である膳所駅には新快速は止まらないので、その手前の草津で普通に乗り換える。予定より15分の遅れである。空はもはやすっきり晴れていたけれども、恐ろしく風が強かった。屋根からつり下げてある駅名標が大きく揺れている。出発を待つ列車の中まで、冷たい風が吹き抜けていくのだ。
途中、石山駅(だったかな)の前に、NECの大きな建物があった。そして、その隣に「関西日本電気体育館」の文字のある建物が。ここがこの日見に行くNEC関西の所在地にほかならない。この会場は、NEC関西にとってはいわばホームである。

地図を一度見ただけのおぼろげな記憶をたどりながら、京阪電車の踏み切りを越えて、浜に向かう。晴れてはいるものの、湖を越えてくる風は身を切るように冷たい。地図で見たところ、道を間違えなければ10分と少しで歩ける距離と思えたけれども、体育館はなかなか見えてこない。道を間違えたか、すると試合開始に間に合うのはやはり無理だろう、という考えが頭をよぎった頃、湖岸に出てさらに歩いていくと、目の前に体育館が!
当日券とプログラムを買い、体育館内に入ると、すでにスタメンの名前が呼ばれていた。まさしく試合開始ぎりぎり。この大雪の中、第1試合開始に間に合ったことが奇跡的と思われるほどだった。

帰るときも、彦根まで戻ってきたあたりで雪が降り始め、米原では相変わらずの大雪だった。米原−名古屋−豊橋の区間では、ダイヤは終日乱れていた。

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NEC関西対武田薬品(1/9大津第1試合)

リーグが始まる前の予想としては、私は、この会場に見に行くJTとNEC関西が本命と対抗、あるいは久光製薬も優勝争いに絡んでくるかと思っていた。それに対し、武田薬品は昨シーズンプレーオフで優勝しV1に昇格してきたチームである。正直なところ、この両チームには力の差があると思っていたし、だからあまり一方的な展開になってほしくないと心配していた。

試合は序盤から予想以上の競り合った展開となる。それでも、第1セットの中盤まではNEC関西がラリーを制する場面が多く、一時は13-8までNEC関西のリードが広がった。しかし、そこで武田の1番飛田にノータッチエースが出たところから、逆に流れは武田へ。NEC関西はサーブレシーブが少しずつ乱れ、それがラリーの末に失点につながるというパターンが続いた。8番谷口のアタックによる2得点とブロックで1点差、さらに飛田の連続アタック得点で逆転、逆に武田がセットポイントを握る。NEC関西もセットポイントを3度逃れたけれども、このセットは結局このまま武田が15-13で取る。

第2セットも序盤はNEC関西が5-2とリードしていた。しかし、ここから武田は両エースのアタックを中心に追い上げ、7-6と逆転。8-7武田リードの場面で、ネット際の押し合いに武田が勝ち武田に9点めが入ったあたりから、武田の一方的展開となった。飛田のアタックで続けて10点めが入る。サイドアウト2回の後、サービスエース、飛田のアタックの2点、相手のアタックミスで4連続得点、一気に武田のセットポイントとなる。NEC関西はセットポイントを一度逃れるのがやっとで、谷口のアタックですぐに2度目のセットポイント、そして15点めも谷口。

第3セットも、中盤で武田に連続ブロック得点、さらに飛田のアタックで都合3連続得点、武田が7-5とリード。この後NEC関西にミスが連続し、一時は10-7武田リードとなった。このときには、まさか武田のストレート勝ちか、とさえ思われた。しかし、ここで武田は勝ちを意識したのだろうか。武田は、実業団またはV1でまだ1勝もしたことはなかった。両エースにアタックミスが続出し、NEC関西が逆転。武田に珍しくサーブレシーブのミスが出てNEC関西が14点め、この試合初めてのセットポイント。武田はセットポイントを3回逃れるけれども、またしてもミスで4回目のセットポイントを与えてしまい、最後はNEC関西の5番神田に決められた。このセットは15-13でNEC関西が「拾った」。

第4セットは、序盤武田のブロックがよく決まり、さらに飛田のサーブ順でサービスエースなどもあり3連続得点、一時は7-2武田リードとなった。しかし、このあたりから、NEC関西のサーブレシーブが安定し、さらにこれまでしばしば出ていたコンビミスもなくなり、一気にNEC関西の流れとなった。4連続得点→サイドアウト4回→5連続得点、武田のつなぎのミスもあり一気にNEC関西が逆転した。一時は12-7とNEC関西がリードしたものの、それから武田が少しずつ追い上げ12-12の同点に。しかし、NEC関西もここで再度突き放し、ブロックも出てセットポイントを迎えた。セットポイントを迎えてからも武田はなおも粘り、1点を返すけれども、5回目のセットポイントをベテランエースの橋本が決めて、苦しいセットを2セット続けてNEC関西が取った。

これでNEC関西の流れで最終セットに入るのかと思いきや、3-2武田リードの場面で、NEC関西に痛恨のコンビミス。トスを上げたところに誰もいなかった。さらに、次の飛田のサーブ順でNEC関西が崩され、ブロック2発などで武田が一気に5点を連取。10-3と大きく武田がリードし、勝負あり。最後は13番有川が決めて、この長くもつれた試合をものにした。

これまでずっと地域リーグ、4シーズン前に実業団に一度だけ昇格するも1勝もできず最下位に沈んだ武田薬品にとって、これは実に歴史的勝利の瞬間であった。

NEC関西は、サーブレシーブがやや乱れる場面が多く、またコンビミスも出て、それで流れに乗れずに試合を落としたという印象を受けた。今シーズンはチームの中心となっていたベテラン選手2人が抜けたということで、若手中心のメンバーに切り替わっている。ベテランエースの橋本も実際に打つ場面は少なく、若い選手を意図的に多く使おうということがうかがえる。ひょっとすると、昨年のチームに比べて力はやや落ちるかもしれない。

しかしながら、武田薬品は、これが去年まで地域リーグのチームだったのだろうかと疑いたくなるくらいの力がある。
武田薬品、NEC関西、NTT関西神戸、北越銀行といったあたりのチームは、外国人選手を全く使っていないこともあり、似たような印象を受けた。しかしこの中では、武田がもっとも面白そうだと感じられた。というのは、武田のエースの1番飛田、8番谷口は、小柄ながら見かけによらずパワーがあるからである。さらに、飛田はV1の日本人選手としては珍しい強力なジャンプサーブを打つ。この試合でもNEC関西を崩すのに少なからず役に立ったと思う。

スタメンおよびサーブ順(特記なき限り第1セット)
NEC関西: 7 若田 → 1 村川 → 14 松本 → 12 橋本 → 6 桝谷 → 5 神田
武田薬品: 5 加地 → 4 松川 → 1 飛田 → 10 香月 → 8 谷口 → 2 石原

1999/1/9 14:00-
Shiga Prefecture Gym.

NEC Kansai - Takeda
         2 - 3
1st     13 - 15       26 min.  4-5 10-7 12-8
2nd      7 - 15       24 min.  5-2 7-10 7-12
3rd     15 - 13       27 min.  5-4 7-10 12-10
4th     15 - 13       30 min.  2-5 10-7 12-7
5th      7 - 15        9 min.  2-5 3-10 4-12
Total   57 - 71  1 h. 56 min.

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JT対NTT関西神戸(1/9大津第2試合)

さて、いよいよ大津遠征の目的であるナターリャを見る時間がやってきた。

第1セットは前の試合とはうって変わって異常にサクサクした展開となった。お互いに相手の速攻についていけないため、ラリーがほとんど続かず、しかもサイドアウトが非常に多くなる。その中で、先に相手の速攻についていけるようになったのはNTTのほうだった。次第にJTの速攻が拾われるようになり、ブロックもつくようになった。そしてそれがほとんどNTTの得点につながった。11-8NTTリードの場面からは、JTの攻撃がことごとく決まらず、それを逆にNTTの1番川瀬に決め返されるというパターンが続き、13-8に。さらに、NTTにブロックが出てセットポイント。このセットの15点めを決めたのも川瀬。最後の4点はあっという間だった。
このセットは、NTTのスピードとコンビにJTが全くついていけず、止めることも拾うこともできなかった。また、ナターリャも完璧におさえこまれた。ことごとくブロックでワンタッチを取られ、拾われた。ナターリャのアタックが決まったのは、開始早々に2本だけだった。

しかし第2セット、ナターリャがこの試合初めてジャンプサーブを見せ、サービスエースを奪ったあたりから流れが変わった。この後川岡のサーブ順でもNTTを崩し、太田のアタックによる3点、ブロックで1点など、なんと7連続得点。この二人のサーブ順あわせて9点の間は、NTTはサーブミスでしかサイドアウトがとれなかった。この後、18番吉澤のサーブ順でもサービスエース含む3連続得点、さらにナターリャが再度サービスエースを奪い、13-5とJTが大きくリードした。しかし、NTTが2点返した後、長いサイドアウトの繰り返しから第1セット同様の展開になった。NTTが一気に追い上げ、乗松のサービスエースでついに13-13の同点となった。先にセットポイントを握ったのはJTだったけれども、NTTはそれをしのぎデュースに。しかし、NTT18番仁木のアタックがアウトしJTに再度セットポイント。そのセットポイントでも仁木にボールを集めるが、決まらず、逆にJT17番平に決め返されて第2セットは16-14でJT。振り返ってみれば、このセットが試合の山場であった。
13-5から同点までのNTTの8点のうち、同点のサービスエースとJTのミスによる得点以外は全て18番仁木の得点。この追い上げは、仁木がアタックにブロックに大車輪の活躍で生まれたものだったけれども、最後はその仁木が力尽きた。

第3セット前半は、NTTのコンビを封じて、最後はナターリャが決めるというパターンで、8-2とJTがリード。さらに、その後のナターリャのジャンプサーブで、NTTがサーブレシーブのミスを連発、JTが5連続得点。この後、NTTは4点を返すけれども、ナターリャのアタックで14点め、さらに15点めもナターリャのブロックだった。

第4セットは序盤、NTTの7番乗松がJTの速攻を次々止める。ところが、その後は逆にJTのトリプルタワーがNTTの速攻につくようになる。互いに相手の速攻にブロックがついているという展開である。しかし、こうなるとどうにも苦しいのはNTTである。ブロック力では高さがあるJTのほうが上だし、速攻とコンビを封じられてはNTTに逃げ道はない。次第にJTのリードが広がっていった。ナターリャのブロックでセットポイント、そして最後は乗松のアタックがアウトして終わり。

さて、肝心のナターリャは、アタックの威力にしても打つコースにしても何となく物足りなく感じられた。私はバーバラとかアルちゃんとか何試合も見てきたわけだが、物足りなく感じられたのはそのせいばかりではないようだ。彼女の働きについては、JTサポーターの間でも相当不満があるらしい。試合経過を振り返ってみると、第3セットはほとんどナターリャの独壇場に近いのだが。ただし、ジャンプサーブは、Vリーグでも見なかったほど凶悪そのものである。
JTというチームは、ナターリャという大砲がいながら、意外なほどそのナターリャを使わない。できる限り日本人選手をコンビで使おうという姿勢が感じられた。この日、JTのチームでアタックにもっとも活躍していたのは、17番の平である。170cmとこの選手も非常に小柄のエースである。この選手がこれだけ活躍できるというのは、セッターの吉澤がそれだけのトス回しをしているということである。ただし、このようなチームでナターリャが本来の力をフルに発揮できるかどうかとなると、疑問に感じられる。

一方、NTT関西神戸は、川瀬・仁木の両エースがなんと160cm台という超小型のチーム。しかし、コンビとスピードの完成度という面では、V1リーグ8チームの中でももっとも高い部類に入り、この試合でも第2セットまではJTを大いに苦しめていた。

スタメンおよびサーブ順
JT: 18 吉澤 → 10 高橋 → 4 サフローノワ → 1 川岡 → 3 太田 → 17 平
NTT関西神戸: 20 関 → 3 藤田 → 1 川瀬 → 2 青木 → 7 乗松 → 18 仁木

1999/1/9 16:40-
Shiga Prefecture Gym.

       JT - NTT KanKo.
        3 - 1
1st     8 - 15       31 min.  4-5 7-10 8-12
2nd    16 - 14       26 min.  5-1 10-4 12-4
3rd    15 -  6       17 min.  5-2 10-2 12-2
4th    15 -  8       21 min.  4-5 10-7 12-8
Total  54 - 43  1 h. 35 min.

とにかく寒い一日で、ヒートアイランドで暮らしている人間にとっては、体の芯まで凍えてしまいそうだった。古い体育館で照明も暗く色も灰色がかかっていた。しかもエアコンがない。そして何より、客が少ない。かなり大きな体育館だが、応援団以外の観客は本当に少ない。第1試合から少なかったけれども、第2試合になるとさらに数が減った。JTとNTTという親会社は大企業だけに応援団の規模はV並みに大きかったけれども、応援団でもチームの関係者でも会社の関係者でもない観客など、いったい何人いるのだろう?
・・・これら全てが、さらに寒々とした雰囲気を醸し出していた。

しかし、試合はそれを吹き飛ばすくらい熱かった。

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久光製薬対東北パイオニア(1/10小豆沢第1試合)

私も、いよいよ「三度の飯よりもバレーを見るのが好き」という領域に突入しつつあるようだ。誰を見るという当てのないはずの試合までも、「これほど近くで試合があるのだから」という理由だけで、即席に観戦を決行してしまった。小豆沢は、VおよびV1の会場の中で唯一、自転車で行くことのできる会場である。距離的には代々木も自転車で行くことは不可能ではないけれども、そのためには非常に困難な道(交通量が極めて多い)を走らなくてはならないのでとてもその気は起きない。
しかし、とてつもなく寒い大津遠征から早朝に帰ってきたばかりで、その後当然すぐに寝てしまっている。目が覚めたらすでに10時20分。この時点で、自転車以外の方法では11時の試合開始に間に合わない。出発したのは10時半。しかも、会場近辺で道を間違えて、遠回りをしてしまった。会場に着いたのはまたしても試合開始ぎりぎりで、入口近くの席に陣取るとすぐに試合開始だった。
・・・どうしてこういつも、試合開始ぎりぎりになるかなぁ。

この日の会場の小豆沢は、小さく古い体育館で、雰囲気的にはどこかの中学校の体育館(失礼)である。東北パイオニアと久光の試合では、両チームの応援団だけでスタンドの半分以上が埋まっていた。


第1セットは序盤、ユデルキス・バウティスタの強打が炸裂。5連続得点で5-1とパイオニアリード、うち4点がユディーのアタック得点。さらにこの後、久光にミスが連続して出て、さらにユディーのサービスエース。11-3までパイオニアのリードが広がった。しかし、ここから久光がユディーのアタックを拾うようになり、徐々に久光が追い上げる展開となる。さらに、17番谷口、15番楠原、頼亜文と、次々と久光にブロックが出る。パイオニアは、ユディーが後衛に下がりリベロと代わってコートから出たときに、5番関根に代えてコシリを投入。しかしそれも交代早々ブロックされてしまい、効果なし。楠原のアタックで久光が14-13と逆転、セットポイントを握った。パイオニアはユディーのアタックで一度は同点とするものの、頼亜文にブロックが出て久光が再びセットポイント。そして、磯のサーブをユディーと大谷がお見合いしてしまい、サービスエース。16-14で久光が逆転でこのセットを取った。

第2セットはほぼ終始久光のリードで展開する。パイオニアは、点を取るにもサイドアウトにもひたすらユディーという苦しい時間が続いた。葛和監督ではないけれども、「ここで(日本人選手に)一本速いのを流しておいてくれれば」と感じた場面も何度かあった。それでも久光が逃げればパイオニアも追い上げるという展開で、10-10までは競り合っていた。しかし、ここで頼みのユディーがアウトして流れは久光へ。最後もユディーを頼亜文が止めて、15-10で久光が2セット連取。

第3セット、パイオニアはユディーに代えてコシリ・ロドリゲス、さらにここまであまり活躍していなかった8番大谷に代えて6番鈴木、5番関根に代えて16番横山里美を投入した。これがまさに大当たりだった。セット序盤のポイントいくつかを見ただけで、目に見えてパイオニアのブロックが久光の攻撃によくついているのがわかった。コシリのアタックとブロックによる2点などで、パイオニアが4連続得点。この後もコシリの勢いが止まらない。久光は頼亜文に代えて2番山崎、15番楠原に代えて王子凌を投入するけれども、流れは変わらない。鈴木にもアタックとブロックによる得点が出て、11-0とパイオニアが大きくリードする。この後久光は2番山崎のサーブ順でサービスエースなどもあり3点を奪うけれども、その後すぐに4連続得点で、あっという間にパイオニアが15-3でこのセットを奪った。最後はサーブレシーブがダイレクトでパイオニアコートに返ってしまい、それをコシリにたたきつけられた。

第4セット序盤は、久光が5-1とリードしていた。しかし、この後パイオニアのブロックが大爆発する。松崎、横山(里美)、鈴木、コシリ。さらに、コシリと横山のアタックが次々久光のコートに突き刺さった。セット終盤は実に6連続得点の猛攻。このセットも15-5と一方的にパイオニアが取り、試合はフルセットに突入した。

最終セット、久光は頼亜文に代えて山崎を先発させた。その山崎にブロックが出て2-0と久光が早くもリード。このセットは、パイオニアに3,4セットのようなブロックが出なかった。パイオニアはユディーと横山、コシリと関根を前衛と後衛で交代させる(つまり、必ず前衛にドミニカの大砲一人がいることになる)非常体制をしくけれども、追い上げ及ばず。終始久光のリードで最後は王子凌のアタックで決した。

この観戦記を自ら読み返してみて気がついたのは、この試合は東北パイオニア中心に見ていたこと。久光というチームの印象が弱いのである。久光はどの選手でも割と打てるせいかもしれない。内定選手の礒・北島(北島はキャプテン井崎の負傷によりフル出場している)もそれなりの活躍を見せている。アタックの決定本数を見ても、どの選手が特に多いということはない。現役の中国代表である王子凌は、一頭抜けていると感じたが。
この試合、頼亜文は目立たなかった。今のところ、久光は王子凌を入れる体制のほうがよいのではないか。

一方、東北パイオニアは、ドミニカの二人に頼っていることは否めない。とはいえ、思ったよりはよいチームである。第1,2セットを落とした要因として、ブロックがほとんど出ていなかったことがあるけれども、これでブロックが出るようになればV1レベルでは手がつけられないのではないか。爆発力がある。

スタメンおよびサーブ順
久光製薬: 17 谷口 → 12 頼亜文 → 15 楠原 → 6 岩田 → 21 磯 → 16 北島
東北パイオニア: 5 関根 → 3 松崎 → 8 大谷 → 11 バウティスタ → 4 横山美咲 → 2 菊池

1999/1/10 11:00-
Azusawa Gym., Itabashi, Tokyo

Hisamitsu - TH.Pioneer
        3 - 2
1st    16 - 14       30 min.  1-5 3-10 9-12
2nd    15 - 10       23 min.  5-2 10-8 12-10
3rd     3 - 15       14 min.  0-5 0-10 3-12
4th     5 - 15       15 min.  5-1 5-10 5-12
5th    15 - 12       13 min.  5-2 10-6 12-8
Total  54 - 66  1 h. 35 min.

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朝日生命対北越銀行(1/10小豆沢第2試合)

朝日生命には今シーズン、カナダから新戦力が加入。前日には優勝候補の久光とフルセットの激戦を演じたこともあり、上昇ムードのチームかと思われた。

第1セットは、長いラリーを北越の9番斉藤綾が決めて4-4の同点としたあたりから、流れが北越に向かう。直後に2番斉藤香織のノータッチエース。さらに連続ブロックなどで、北越が6連続得点。8-4とリードを奪った。この後北越にサーブレシーブのミスが出るなどで、朝日が9-8まで追い上げる。しかし、そこからは逆に朝日のアタックミス、北越にブロックも出て、北越が5連続得点。一気にセットポイントを迎えた。この後朝日は2点を返したが、最後はブロックで北越の15-10。

第2セットも前半は8-2と北越がリードした。しかし、ここから朝日の18番大原がアタックで3得点。16番井川が軟攻で2連続得点するなどで、朝日が次第に追い上げ、8-8の同点とする。さらに、9-10北越リードから、朝日が3連続得点で逆転。しかし、北越が1点返した後、朝日にアタックミスが出たところから、流れは一気に北越に。古舘のアタック、さらに吉原に2連続サービスエース。最後は4連続得点で、15-12で北越が2セットを連取する。

第3セットは、序盤北越にアタックのミス、ネットタッチが出るなどで、朝日が5連続得点。その後、逆に朝日のアタックミス、サーブレシーブのミスがあり、北越が追い上げる。しかし、5-4まで北越が追い上げたところで、ウェンディにブロック得点。この後、北越にまたアタックのミス、ネットタッチ、コンビミスがでて、10-5と朝日が再度リードする。しかし、その後朝日にアタックミスが出て、流れは逆に北越へ。朝日13番神蔵のアタックミスで、ついに北越が同点に追いつく。さらに、17番江原の2連続アタック得点で北越が逆転。12-10からはサイドアウトが多く長い展開となるが、13-12北越リードの場面で、斉藤綾のアタックで北越がセットポイントを握って、ほぼ勝負あり。最後も斉藤綾のアタックだった。

今シーズンが初めてのV1(旧実業団)昇格となる北越銀行にとって、2試合めにしてうれしい初勝利である。

全体として、ラリーは続くけれども、両チームとも決め手に欠けるという印象を受けた。

朝日生命は、何となくチームとしてのまとまりが悪いと感じられた。サーブレシーブが今ひとつ安定せず、速攻に持ち込めない場面が多かった。コンビがあわない場面も何度かあった。新外国人ウェンディを使う回数も意外と少なかったし、ウェンディにもそれほど迫力は感じなかった。というか、これもまだ合っていないという印象である。ブロックも少なく、この点については最後まで北越のスピードとコンビについていけていない、と感じられた。
この試合を通じて、朝日の流れになったという時間は一度もなかった。それでも何とかセットの中盤までは競り合う、あるいはリードを奪うのだけれども、そこで北越に連続失点を許した。そうなると、見ている側としても、このセットもだめか、という雰囲気になってしまう。
朝日は前日の久光戦でも、2セットを先取ししかも3,4,5セットのいずれも序盤リード(特に、ラリーポイントの最終セットで、一時8-4とリードした)ながら、いずれも逆転されて試合に敗れてしまった。これを悪いほうに引きずってしまったのかもしれない。

一方の北越も、それほど攻撃力のあるチームとは感じられなかった。しかし、コンビとスピードはあるし、ミスは少ない。どこにもぎくしゃくしたものが感じられないというのは、それだけチームとしてのまとまりがよいということである。(これはNTT関西神戸にも言えることである。)NTT関西神戸に近い印象を受けた。サーブレシーブのミスはそれほどなかったけれども、朝日生命には強いサーブを打つ選手はいないので、ナターリャのジャンプサーブのごとき極悪なものを受けるとどうなるかはわからない。

スタメンおよびサーブ順
朝日生命: 18 大原 → 9 安東 → 16 井川 → 17 島元 → 13 神蔵 → 1 ウェンディ
北越銀行: 8 吉原 → 9 斉藤綾 → 5 古舘 → 17 江原 → 2 斉藤香織 → 10 中川

1999/1/10 13:15-
Azusawa Gym., Itabashi, Tokyo

    Asahi - Hokugin
        0 - 3
1st    10 - 15       20 min.  4-5 8-10 8-12
2nd    12 - 15       31 min.  2-5 8-10 12-10
3rd    12 - 15       31 min.  5-0 10-5 10-12
Total  34 - 45  1 h. 22 min.

北越銀行も今シーズン限りでの休部を発表している。V1に今シーズン昇格してきたばかりなので応援の規模は小さく、「ホクギン、チャチャチャ!」「レッツゴー!」の2パターンとシンプルそのものである。しかし一体感は非常に感じられる。まとまりがよくしかも近年著しく伸びてきたチームであり、存続に向けてうんぬんというよりも、このチームを今シーズン限りで本当にやめてしまうのだろうか、と何となく信じられなかった。


この日、大津では2試合ともフルセットの激戦、第1試合開始から第2試合終了まで実に6時間かかったという。
この週の8試合のうち、実に5試合がフルセット、ストレートで決着したのはわずかに1試合のみ。優勝候補と目されるチームのうち、JTと久光は2連勝でスタートしたものの、JTは3-1とフルセット、久光は2試合ともフルセットと、いずれも苦戦の末の勝利。そして、NEC関西に至っては2試合ともフルセットで連敗と、全く予想外の滑り出しとなった。今回のV1リーグは、各チームの力が極めて接近しており、本命も対抗もくそもなしのとんでもない混戦のリーグとなりそうである。


日本のバレーボールは上に行くほど下手になると批判されることがあるけれども、それは一面で真実であると、このV1リーグ観戦を通じて感じた。スピードの追求とコンビを使うことについては、一般にV1のチームのほうがVのチームよりも長けている。ナターリャ・サフローノワがいるJTですら、日本人選手をコンビで使える状況になればそうしており、ナターリャを使うのは「それ以外に方法がない」場合に限られる。私が見る限り、V1の8チームの中で最もオープンバレーなのは東北パイオニアだけれども、それでもVの一部チームに比べればはるかにまともである。
外国人の大砲がいるチームなら別として、V1のチームの日本人エースは、一般に170cmあるかないかである。そのような選手に決めさせるためには、速さと変化を追求する以外に方法はない。そしてこれは、世界の中の日本チームにも言えることである。
そのような小柄なエースを生かさなくてはならない状況でやっているV1のチームから、全日本のセッターを登用するのはいかがなものだろうか。180cmクラスの選手をこれだけのスピードで使えるようになれば、もう少し面白い全日本ができると思うのだが。

しかし、少なくとも来シーズンは外国人選手が禁止されるということで、どのチームもこのチームも、スピードとバリエーションを追求し、ひたすら拾ってつなぐというバレーになってしまうのだろうか。それではやはりつまらないし、世界に通用する全日本もできないだろう。

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