98年世界選手権観戦記・準決勝ラウンド(福岡)

福岡到着までのあらすじ
「初戦はやや期待はずれ」(11/7第1試合)
「女王完勝Part I」(11/7第2試合)
「ベスト8への道は険しく」(11/7第3試合)
「女王完勝Part II」(11/8第1試合)
「福岡最大の死闘」(11/8第2試合)
「大番狂わせ」(11/8第3試合)
「短くも熱き戦い」(11/9第1試合)
「傷だらけのベスト4」(11/9第2試合)
「最後のチャンスはどちらに」(11/9第3試合)
Notice: 「連続得点」には、失点をしない間に得点を続けること(つまりサイドアウトがあってもよい)を指す場合と、サイドアウトなしに純粋に得点が続くことを指す場合がある。この観戦記では、連続得点という表現は、特に但し書きがない限り、後者のサイドアウトなしに得点が続くという意味で使うことにする。


福岡到着までのあらすじ

私は福岡へ行くとどのチームが見られるか、そしてそのチームは今大会以外の機会で(来年のワールドカップなど)見られる可能性があるかどうかをいろいろ検討した。この時点での結論は、「イタリアは、福岡で見ておかなければ見る機会がないかもしれない」。(クロアチアもそうなのだが、あそこはバーバラ以外無理して見に行く気はあまり起きない。キリロワがけがとあってはなおさらのこと。)もちろん、この時点では、予選B組から上がってくるチームとしては、キューバ、アメリカ、イタリアを想定していた。
そして、福岡行きを決行。「ミスター夜行高速バス」となり福岡→大阪の1週間の観戦ツアーを計画した。

福岡の会場のチケットを購入したのはなんと11月3日。すでに予選ラウンドが始まっている。それにもかかわらず8日の日曜日以外はどの席でも空いていた。この時点で、観客の入りということについてはかなり不安な状況である。

クロアチアは最も重要な初戦の韓国戦をフルセットの末落とすという最悪のスタート。さらに、その次の中国戦もフルセットで敗れてしまう。福岡行きのツアーを組んで本当によかったと思った。
バーバラの大阪行きは極めて厳しくなる。当初の計算では、イタリアは「楽に勝てる相手」でベスト8は「五分五分」だったのだが、そのイタリアが急激に力を伸ばしており勝ちの計算できる試合が全くなくなった。特に、イタリアが7,4,3でアメリカを粉砕したのは(その時点では)度肝を抜かれた。この後、アメリカの試合を見た人から証言を得る。現在のアメリカは極めて弱いチームなので、クロアチアの出来不出来にかかわらず勝てるだろうとのこと。ブルガリアに勝てるかどうかすらわからないということで、これにもまた驚く。と言っているうちに、本当にブルガリアが勝ってしまった。

日本は予選リーグを順当に3連勝。それにしても、アナウンサーが絶叫するのもうっとうしいけれども、アイドルが「日本がんばれ〜」ときゃーきゃー騒ぐのは私にとっては我慢ならないものがある(ファンの方、ごめんなさい。)。生理的に受け付けないようなのである。やはりこれは、私にとっての原体験があのアトランタ五輪世界最終予選だからなのだろう。

夜行高速バスを利用するのは初めてだが、その初めてのがいきなり東京→福岡という最もヘビーなもの。10時に消灯、窓のカーテンを閉めたばかりでなく、座席ごとにカーテンで隔離されてしまうので、寝られないと悲惨きわまりない状態になる。案の定、12時頃までは全く寝られない。時間が経つのが恐ろしく長く感じられた。どこを走っているか見当でもつけば少しは面白いのだが・・・。光の明るさと色が変わるので、トンネルの中に入ったときだけは分かる。世界選手権ガイド(月バレ臨時増刊)を読むにも、揺れる車内で長時間下を向いていると気分が悪くなる。日本の高速道路はほとんどの区間がカーブで、そのため高速バスはよく揺れる。
消灯時間中も、乗務員の休憩あるいは交代のためにほぼ1時間ごとに停車がある。12時半頃から4時半までは、うつらうつらしてはそのたびに目を覚ました。この停車時間には乗客は外に出られないけれども、乗っている側にとっても大切な時間である。長時間全く体を動かさずに寝ていると、腰などをまともに痛める。だから停車時間中に体を動かし、姿勢を変えることは大切である。

この長いバスの旅のハイライトは、翌朝8時半頃に訪れた。山口県の山間部を5%の急勾配と350〜400m半径の急カーブで抜けていくと、突然目の前が開けて巨大な吊り橋が。ちょっと大きな川くらいの水路を、無数の船が往来している。
ついにやってきたのだ、九州に・・・。


「初戦はやや期待はずれ」(11/7第1試合)

イタリアは男子バレーで世界の頂点に君臨する一方、女子についてはこれまで目立った実績がなく、そのため国際大会などで見たこともないチームだった。しかし、昨年あたりから急激に実力を伸ばし、ベスト8争いの焦点となるチームの一つと思われた。そのため、イタリアというチームにはかなり興味もあり、世界四強の一角を相手にどれだけの試合ができるだろうかと期待していた。しかし、試合結果はやや期待はずれなものに終わってしまった。

第1セット、開始早々中国がSUN YueのアタックとHE Qiのサービスエースなどで3連続得点。その後もブロック、QIU Aihua, LI Yanのアタックなどで一方的に差を広げていく。イタリアはこのセット、LI Yanのアタックミスとトグットのアタックによる3点のみ。最後もブロックで15-3。

第2セットも、トグットのアタックミスで中国に2点が入ったあたりから中国が次第に差を広げていく。7-4中国リードとなった後、LI Yanのアタック、ブロック、SUN Yueのサービスエースなどで5連続得点。この後は、このセットの前半はベンチに下げられていたイタリアの11番ミフコバがバーバラばりの孤軍奮闘を見せ、3点を返す。しかし、アタックをたたきつけるのもミフコバでサーブで崩せるのもミフコバだけでは、たかが知れている。最後はQIU Aihuaのサービスエースで中国15-8。

第3セットも中国にブロックが次々出てリードを広げていく。7-4中国リードからは、イタリアにアタックミスが相次いだこともあり中国が一気に差を広げる。4連続得点→(サイドアウト2回)→2連続得点→(イタリアが1点)→2連続得点で終わり。

中国の完勝でそれ以外何もなし。攻守両面でイタリアを圧倒した。この日は中国のブロックがイタリアの攻撃によくついていた。イタリアは、ブロックにつかれて強打できないためやむを得ずフェイントをするという状況が多発した。第2セット終盤は、イタリアは正セッターの7番カッチャトーリと控えセッター14番ロビアンコを何度か交代させるなどするけれども、効果なし。第1セットと第3セットはあっという間に終わってしまった。中国のアタッカーとしては、11番のSUN Yueより12番のQIU Aihuaが目立った。
注: この観戦記では、中国の選手はやむを得ずアルファベット表記で統一します。(読みを変換しても出ない字が多すぎるため)なお、韓国選手はカタカナ表記で統一します。

スタメンおよびサーブ順(第2セット)
中国: 11 SUN Yue → 1 LAI Yawen → 12 QIU Aihua → 2 LI Yan → 5 WU Youngmei → 7 HE Qi
イタリア: 14 ロビアンコ → 2 リニエーリ → 4 レッジェーリ → 3 トグット → 12 ピッチニーニ → 9 ガラストリ
イタリアの場合、いずれのセットもサーブ順はセッターが最初である。この試合は何度かセッターを交代したが、これ以降の試合は全時間セッターカッチャトーリで通した。

1998/11/7 12:30 -
Marine Messe Fukuoka

      CHN - ITA
        3 - 0
1st    15 -  3      18 min.  5-1 10-2 12-3
2nd    15 -  8      27 min.  5-2 10-4 12-4
3rd    15 -  5      17 min.  5-2 10-4 12-4
Total  45 - 16  1 h. 2 min.

この試合を見ている限り、イタリアはそれほど強いチームとは思われなかった。しかしイタリアの本当の力は、この次の日からいやというほど思い知らされることになる。

気になったのは、土曜日の試合にもかかわらず会場はがらがらということである。特に、両エンドの側にはほとんど客が入っていない。バレーボールページの掲示板に、大量のチケットを売りさばかなくてはならず困ったというようなメッセージが何度か寄せられたけれども、日本チームのこない会場のチケットを売りさばく人の苦労が思いやられる状況である。
全日本の試合でないとこんな感じなのだろうか。そうだとしたら全く由々しきことだが・・・。

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「女王完勝Part I」(11/7第2試合)

韓国は先に中国を倒していることもあり、もう少し接戦を期待していたけれども、韓国の守りもキューバには全く通じなかった。
第1〜第3セットとも、展開は非常に似ている。セットの最初はサイドアウトの繰り返しとなり、しかも最初の得点は韓国に入る。しかし、キューバが2点目を取るとそこからいともたやすく抜け出し、気がついてみると韓国の点は全然増えていないのにキューバの得点ばかりが増えている、という感じだった。第1セットはキューバのアタックミスにも助けられ11-7までいったけれども、第2セット以降は全くのキューバの一方的展開となった。
韓国はとにかく、自力で得点した場面がほとんどない。それだけではなく、サイドアウトも半分近くがキューバのミスによるものである。特に第2セットは、試合ログの韓国側は限りなく白紙に近い。

スタメンおよびサーブ順(特記なき限り第1セット)
キューバ: 2 コスタ → 8 ベル → 10 トレス → 12 アゲロ → 1 ルイザ → 14 フェルナンデス
韓国: 3 カン・ヘミ → 15 チャン・ソヨン → 8 チョン・ソンヘ → 10 パク・スジョン → 11 ホン・ジヨン → 4 ク・ミンジョン
キューバのこのスタメンはほぼ不動のメンバーといってよく、誰が最初にサーブを打つかという違いしかない。

1998/11/7 15:00-
Marine Messe Fukuoka

      CUB - KOR
        3 - 0
1st    15 -  8      26 min.  5-1 10-4 12-7
2nd    15 -  2      18 min.  5-1 10-2 12-2
3rd    15 -  5      23 min.  5-1 10-4 12-4
Total  45 - 15  1 h. 7 min.

第1試合よりも観客は増えたけれども、両サイドの座席がそこそこ埋まった程度で、両エンドの側はほとんど空席のままだった。

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「ベスト8への道は長く険しく」(11/7第3試合)

あの衝撃の日からは2年以上、このページを公開してから10ヶ月、ついに生でバーバラを見る機会がやってきた。

クロアチアの準決勝ラウンドの初戦は、大方の予想(私も含め)を外し予選ラウンドでアメリカを下したブルガリアである。しかし、キューバ、中国は別格として、それ以外にもクロアチア、イタリア、韓国とそろったこのグループは激戦区、これらのチームとブルガリアとは大きな差があると思われた。もちろんクロアチアにとっては、絶対に負けてはならない試合、それも簡単に勝たなくてはならない試合である。

しかし、ふたを開けてみれば事前の予想を裏切り、クロアチアのとった3セットのうち2セットがデュースにもつれる熱戦となった。しかも、この2セットはいずれもブルガリアにセットポイントがあった。

互いに高さはあるけれども守備は今ひとつ不安定なチームのため、試合は全体に荒っぽい展開になる。いずれのセットも、序盤は片方のチームが突っ走り、ほとんどサイドアウトなしで5〜6点を入れてしまう。しかし、どのセットも一本調子のままでは行かない。流れが相手に行けば、あっという間にその差も追いつかれ、あるいは逆転されてしまう。
クロアチアとブルガリアは、「うまい」チームとは言えない。しかし、バーバラ・イエリッチとアントニナ・ゼトバが今大会最大級の打ち合いを展開、そしてそれを止めるブロックがあり、迫力満点の試合となった。また、サーブで崩されると容易に連続失点してしまうため、セーフティリードがなく、見る側にとっては非常に面白い試合だったことは確かである。
これまで2試合一方的な試合が続いたため、もちろんすばらしいプレーに対しては相応の拍手が送られるけれども、場内は静まりがちだった。しかし、この試合ではもちろん大いに盛り上がった。

第1セットはクロアチアが先に走った。チェブキナのブロックによる2点などで、6-1とリードする。しかし、そこからしばらくサイドアウトが続いた後、パショバのサーブで一気に崩される。セッターリヒテンシュタインがトスをミス、ソコロバ*1にアタックを2発続けてたたき込まれ、さらに2連続ブロックを食らい5連続得点であっという間に同点。この後は長いサイドアウトを繰り返しながら9-9までもつれた試合が続く。しかし、そこから先はバーバラのバックアタック、クズマニッチ、レトのサービスエースなどで、クロアチアが着々と加点。最後はバーバラのバックアタックが決まり15-9で第1セットはクロアチアが取った。しかし、このセットだけでブルガリアのブロックは5発。次のセット以降非常に不安を残す内容となった。
*1 ソコロバと表記した場合は、ブルガリアのNo.4 Vania Sokolovaのことである。ロシアのNo.5、Lioubov Sokolovaは「ソコロワ」。人名の表記は難しい。文脈上混同することはまずないから心配ないのだが。

第2セットは一転、ブルガリアが9番ベチェバのサーブ順で4点を取り5-0としあっという間にタイムアウトを取った。クロアチアは一時は7-1までリードを広げられるけれども、そこからリヒテンシュタインのサーブで崩すことに成功する。相手のアタックアウト2回、サービスエース1回、バーバラのアタックで4連続得点。しかし、ブルガリアはブロックなどで再度突き放す。10-6ブルガリアリードから、シドレンコ、リヒテンシュタインのサーブ順で2点ずつ返し、同点に。この後クロアチアはチェブキナ、ブルガリアはゼトバのブロックで1点ずつ、なおも同点。ここから先クロアチアはバーバラにボールを集める。しかし、ブルガリアのエース、ゼトバも一歩も譲らない。緊張する打ち合いが続く。クロアチアはバーバラのアタックで1点リード、しかしブルガリアはバーバラを止めて同点とする。さらにブロックで得点し再度1点リード。クロアチアはシドレンコのアタックで追いつくも、ブルガリアにまたもブロックが出て、ブルガリアのセットポイントを迎える。二度のセットポイントを何とかしのいだ後、レトのアタック、ブルガリアのアタックミス、チェブキナのブロックで3連続得点。このもつれたセットをものにした。

第3セットは、序盤に2発のブロックを食らい0-4とブルガリアにリードを許す。さらに、得点機でベチェバに次々とアタックを決められ、1-9までその差が広がる。この後バーバラのアタック2発、ブロック2発で4点を返すものの、この後またもブロックで追加点を許してしまう。5-11となったところでクロアチアはたまらずキリロワ投入。しかしこのセットは流れは変わらず。最後はまたしてもブロックで11-15。
キリロワは金属製のサポーターをつけてのプレーである。そのことは事前に知っていたけれども、実際に見ると痛々しいとしか言いようがない。

第4セットは、チェブキナのサーブで崩し幸先よくクロアチアが5-1とリード。しかし、7-3クロアチアリードからブロックとベチェバのアタックで2点差に。ここでクロアチアは再びキリロワを投入する。それでも流れは変わらず、バーバラ、シドレンコのアタックのミスで失点を重ね、7-8と逆転を許す。しかし、9-9となった後、バーバラのアタック2発と相手のアタックミスでクロアチアが3連続得点。3点差のままクロアチアが14-11でマッチポイントを握った。
しかし、それをゼトバのアタックで切られた後、ブルガリアのサーブで崩された。チャンスボールを与えてしまい鋭いアタックをたたきつけられ、あるいは難しいトスをバーバラが無理して打ちブロックに引っかかった。連続4失点で14-15と逆転、逆にブルガリアのセットポイントを迎えた。この間場内の歓声は加速度的に大きくなり、ソコロバにチャンスボールをたたかれて迎えたブルガリアのセットポイントでそれは最高に達した。このときは、クロアチアの夢はここで潰えるかと思った。しかし、ここでかろうじてシドレンコでサイドアウトを奪った。
そしてチェブキナのサーブ。ボールのコースは見えなかったけれどもブルガリアチームから「アウト、アウト」の声があがった。私は思わず頭を抱えてしまった。しかしボールはコート内に落ちていた。サービスエース。
これで再度流れはクロアチアのものとなった。なおも続くチェブキナのサーブで、ブルガリアのサーブレシーブはいずれも乱れた。返ってきたチャンスボールをバーバラが2本連続でたたき込み、この大熱戦にきりをつけた。

この日はバーバラの調子は悪かった。ブロックに引っかかる率が非常に高く、これが苦戦の大きな要因となった。ブルガリアのブロックは実に22発。もちろん、その全部が全部バーバラのアタックではないけれども、どれほど少なく見積もっても半分よりは多い。サーブも2回ほど失敗したあげくジャンプサーブをやめてしまった。

ブルガリアは、思ったよりもよいチームだった。クロアチアよりははるかに「うまい」バレーをする。つなぎも決して悪くはない。2年前の五輪最終予選では高いトスのオープン攻撃に固執するチームだったらしいけれども、そのような面は今は影も形もない。センター線を使った移動攻撃・速攻も多く、あるいはおとりで跳ぶなどのコンビネーションも頻繁に使う。Aクイックなんて、なんて高度な戦術を使ってくるのだこの連中は!
(クロアチアはたまに移動攻撃あるいは平行がある程度で、コンビネーションはないに等しく、もちろんなんとかクイックなどあるはずはない。キリロワならついてくるアタッカーがいればやってくれるかもしれないけれども、リヒテンシュタインにそれができるようになるには百年くらいかかりそう。)

スタメンおよびサーブ順
クロアチア: 10 リヒテンシュタイン → 7 クズマニッチ → 8 イエリッチ → 1 レト → 11 チェブキナ → 3 シドレンコ
ブルガリア: 7 マリノバ → 9 ベチェバ → 11 パショバ → 3 ゼトバ → 8 ウズノバ → 4 ソコロバ
クロアチアのサーブ順は常にセッターからである。リヒテンシュタインに代えてキリロワ、レトに代えてアンズロビッチ、シドレンコに代えてアンズロビッチという交代があったけれども、その場合もこのサーブ順は不変である。

1998/11/7 18:00-
Marine Messe Fukuoka

      CRO - BUL
        3 - 1
1st    15 -  9       24 min.  5-1 10-9 12-9
2nd    16 - 14       30 min.  0-5 6-10 12-11
3rd    11 - 15       26 min.  1-5 5-10 6-12
4th    17 - 15       27 min.  5-1 10-8 12-9
Total  59 - 53  1 h. 47 min.

キューバ戦の後帰った客もいたけれども、新たに中学生などが入ってきたため、観客の数はさほど減らなかった。そして、その来場した生徒が、クロアチアを応援するグループとブルガリアを応援するグループに別れていた。

驚いたことに、クロアチアの私設応援団(?)が会場に駆けつけていた。もちろん、応援しているのは日本人である。赤と白の市松模様の服を着ており、「クロアチア、クロアチア、おっ!」という感じで応援しているのである。これには驚いた。韓国や中国だと在日の方による大応援団が編成されるけれども、日本人による応援団があるのは私の見た中ではクロアチアだけである。

試合の開始前と終了後には、バーバラの周りに人垣ができ黄色い声があがっていた。バーバラさまはもはや立派なアイドル(?)だ。
(そして追っかけの一人になってしまった私)

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「女王完勝Part II」(11/8第1試合)

この試合、在日の方による中国の大応援団が編成され、会場内には何枚もの中国国旗が掲げられた。打倒キューバにかける並々ならぬ思いを感じさせられた。しかしそれもむなしく、キューバはいとも簡単に中国を退けた。前日の韓国戦とほとんど同じような感じ、中国のほうがほんの少し長く粘ったという程度に過ぎなかった。試合展開としても、第1セット、第2セットは昨日の韓国戦とほとんど同じ。序盤はサイドアウトの応酬になるけれどもそこからするすると抜け出すのは必ずキューバ。
第3セットは第2セットまで、あるいは前日の韓国戦とはやや違った展開となる。序盤はキューバが6-0とリード。しかし、7-1キューバリードから、キューバのアタックミス2回、WU Yongmeiのブロック、サービスエースで7-5と中国が追い上げる。中国はこの後もLI Yanのアタック、WU Yongmeiのブロックなどで食らいつくものの、キューバはトレスが鬼のごとくブロックをたたき込み突き放す。終盤、中国は13-11まで追い上げるものの、その直後にルイスのアタックでサイドアウト、フェルナンデスのアタックでマッチポイント。中国のアタックミスで試合終了。

第1セット後半、驚いたことに、SUN Yueを引っ込めて代わりに15番のWANG Linaを入れた。SUN Yueは第2セット以降も出場しなかった。特に調子が悪いとは思われなかったので、ひょっとしたら次の試合以降に温存しておくためだったのかもしれない。(そもそも、彼女がアタックを打った場面がほとんどないし、彼女の調子がよければどうにかなるという相手でもない。)

準決勝ラウンド、キューバの試合を見て感じたことは、現在のキューバの攻撃に守ってつなぐバレーではおそらく対抗し得ないということである。将来そのようなチームが出現しないとは断言できないけれども、少なくとも現時点では存在しない。キューバに対抗するためには、打ち合いで食らいつくしかない。取られても取られても取り返す。そしてその間に神がかり的なブロックを次々たたき込むしかない。
そのように考えれば、準決勝ラウンドまでの6試合で唯一キューバからセットを奪ったのがブルガリアであったという事実は、必ずしもキューバが手を抜いたためとは言い切れない。ブルガリアは、準決勝ラウンドF組5チームの中でも、高いアタックとブロックがあり、さらにクロアチアと比べると攻撃の幅がある。

スタメンおよびサーブ順
キューバ: 14 フェルナンデス → 2 コスタ → 8 ベル → 10 トレス → 12 アゲロ → 1 ルイザ
中国: 5 WU Youngmei → 4 ZHU Yunying → 11 SUN Yue → 9 LI Yizhi → 12 QIU Aihua → 2 LI Yan

1998/11/8 12:30-
Marine Messe Fukuoka

      CUB - CHN
        3 - 0
1st    15 -  6       22 min.  5-2 10-4 12-4
2nd    15 -  8       27 min.  5-2 10-5 12-8
3rd    15 - 11       27 min.  5-0 10-6 12-8
Total  45 - 25  1 h. 16 min.

これを見る限り、キューバの優勝の確率は、極めて高いと思われた。ロシアでも厳しいだろうと感じられた。

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「福岡最大の死闘」(11/8第2試合)

このイタリア戦は、クロアチアにとって最大のカギとなる試合である。この試合に勝たなければ、ベスト8の望みは絶たれる。イタリアは、この世界選手権の予選では7,8,6で難なく粉砕した相手である。そのことからすれば、それほど心配しなくてもよい相手のはずである。しかし、福岡に出発する前からこの試合は非常に不安に思われた。その理由の一つは、クロアチアにけがをしている選手が非常に多く、特にキリロワがフル出場できる状態でないこと。もう一つは、1月の予選のときに比べ、イタリアが格段に強くなっていること。前哨戦の8月のワールドグランプリでは、アメリカ、韓国、日本と、ベスト8争いのライバルをすべて下している。
そして、その心配は前日のブルガリア戦を見てさらに現実味を帯びてきた。イタリアはブルガリアを難なくストレートで下しているのである。

不安は第1セットから見事に的中してしまった。バーバラが打っても打ってもブロックでワンタッチを取られる、拾われる、しかも拾われると必ず相手のアタックにまでつなげられてしまうのである。サーブで崩したと思っても同じである。簡単にサイドアウトを取られてしまう。一方、クロアチアのブロックは、イタリアの攻撃に全くついていけない。ブロックで立て続けにシャットを食らい、2-7とクロアチアがリードされたところで、たまらずセッターをキリロワに交代した。しかしそれでも流れは変わらない。ブロックでシャットは食らう、それをいやがってバーバラがアタックをうかしてアウトする、最悪のパターンが続きあっという間に2-12に。その後、バーバラのアタックが少しずつ決まるようになって追い上げる。しかし、シドレンコのアタックがやはりアウトして7-14で最初のセットポイントを迎える。その後、相手のアタックミスなどにも助けられ10点まで追い上げるけれども、最後はバーバラのアタックがミスしてこのセットを落とす。

第2セットはキリロワが先発。さらに、レトに代えてアンズロビッチを入れた。とにかくこの試合に勝たなければベスト8の望みが絶たれるクロアチアは、非常体制に突入。キリロワはこのセット以降ずっと出ずっぱりだった。しかし、序盤はイタリア・ミフコバのサービスで簡単に崩される。アタックがアウト、ブロックでシャットを食らう、サービスエースを浴びるという、失点パターンの見本市で、ミフコバがサービスをアウトしてくれるまで4連続失点。ところが、相手のアタックミスで2点を返し、流れは逆にクロアチアへ。バーバラがバックアタックを2発決めて2連続得点で同点、それからサイドアウトをはさみ、ブロック2発、さらにここまで全くいいところなしのシドレンコがアタックを2発決めた。この試合初めてクロアチアの4連続得点。ところが、それが止まるとクロアチアは簡単に崩れてしまう。ブロック2発にミフコバのアタック、コンビミスで4連続失点、あっという間に同点となった。さらに、ブロックとトグットのサービスエースでイタリアが10-8と逆転。しかし、クロアチアもすぐに追いつき、さらにシドレンコのアタック、キリロワのサービスエースでクロアチアの12-10。バーバラのアタックミス、ピッチニーニのブロックなどでイタリアが逆転、13-12。シドレンコのアタックでクロアチアが同点。どちらがセットをものにするか全く分からない状況が続く。この重要な場面で、チェブキナにブロックが出て14-13でクロアチアがセットポイント。これをバーバラが一度で決めて第2セットはクロアチア。このセットは、得点につながる場面でシドレンコがアタックを決めていたのが目立った。

第3セット、序盤はキリロワのサーブで珍しくイタリアが崩れる。アタックミスが2度、サービスエース、バーバラのブロックで都合4連続得点。この後は互いに相手のアタックミスで得点をもらうパターンが続く。そして、7-5クロアチアリードで、イタリア12番ピッチニーニのサーブで最悪のパターンが起こった。サービスエースを2発、さらに連係が乱れて反則、無理して打ったアタックがブロックに止められるなどで、あっという間に5連続失点、逆転を許す。この後、このセットはバーバラのアタックがことごとくイタリアのブロックにシャットされる。二度目のテクニカルタイムアウトの後だけで、イタリアのブロックはなんと5発。最後もミフコバのブロックでこのセットは15-8でイタリアが取る。
この時点で、クロアチアのベスト8の可能性は極めて低くなった、と思われた。

第4セットの序盤は長いサイドアウトの応酬となり、両チームが1点ずつ取ったところで早くもローテーション1周。4-3のイタリアリードから、クロアチアにまたしてもサーブレシーブから崩れる最悪の形が出る。サービスエース、反則、バーバラが難しいトスを無理して打ったらアウト、これで連続4失点で8-3イタリアリードとなる。このときは、クロアチアの世界選手権は福岡で終わり、と本当に確信した。この後はまたサイドアウトを何度となく繰り返しながら、9-6イタリアリードの後に、奇跡が起こった。
これまでイタリアのスピードとコンビネーションにほとんどついていけなかったクロアチアに、突然の4連続ブロック得点。あっという間に10-9と逆転する。同点になった後、チェブキナのブロック、クズマニッチのサービスエースなどで、さらに3連続得点で13-10とリード。最後はチェブキナとバーバラのアタックによる連続得点で、このセットは15-12で取った。
しかし、これでもまだ試合に勝てるとは思えなかった。フルセットの試合はこの大会すでに3試合目で、昨日も厳しい試合を戦っている。バーバラの疲労も極限に近づいているはずである。しかもここまでのフルセット2試合はいずれも負けている。

最終セットはクロアチアが先にサーブを打った。ミフコバのアタックにより、最初の得点はイタリアに入る。しかし、バーバラがきっちりお返しをして同点。さらに、イタリアに反則、アタックミスが出て、クロアチアが3-1とリード。この後、バーバラのアタックで、クロアチアが5-2とリードを広げた。しかし、イタリア・レッジェーリのアタックで5-3とされた後、最も恐れていたブロックを食らう。さらに、アンズロビッチとシドレンコのアタックが相次いでアウト、さらにピッチニーニにアタックを決められ、5-7と逆転される。しかし、クロアチアも、チェブキナの速攻で切った後ブロックのお返しをして7-7と同点。ここからはお互いにミス(アタック、サーブ、反則)が続けて出る。10-10の同点から、バーバラのアタック、さらにチャンスでクズマニッチの速攻が決まり再びクロアチアが2点リード。両者1点ずつとった後チェブキナのブロックでクロアチアが3点にリードを広げ、さらにマッチポイントを迎えた。最初のマッチポイントはトグットのアタックで切られるけれども、これで相手のサーブになる。サーブはきっちり返った。
バーバラに来い!!
私は心の中で叫んでいた。しかし、キリロワはシドレンコにトスを回す。
なぜだ!?
しかし、シドレンコがここで、かつて世界のエースと呼ばれた意地を見せた。ボールは、ブロックにかすりもせずイタリアコートに突き刺さった。


とにかく厳しい試合だった。万事休すと何度思ったことか、数え切れない。

バーバラの調子は前日に輪をかけて悪かった。バーバラのアタックがブロックされ失点となったことは数え切れないほどである。
というより、イタリアのブロックは実によくクロアチアの攻撃についている。バーバラのアタックに対してはコース・タイミングとも完璧に読んでおり、ブロックに当たらずにイタリアコートに落ちたボールはほとんどなかったほどである。バーバラ以外のシドレンコ、チェブキナ、クズマニッチなどを使う攻撃もよく止めていた。この試合がベスト8へのカギを握ると見て、徹底的に研究したことがうかがえる。

クロアチアが勝ったときには大きな歓声が沸き上がった。
その一方で、イタリアには顔をおおう選手も・・・。表情までは見えなかったけれども、泣いていたのではないだろうかと私は思っている。この試合に負けたことにより、イタリアのベスト8の可能性はほぼなくなったと思われた。そのことは、選手自身が最もよく分かっていたはずである。

1998/11/8 15:00-
Marine Messe Fukuoka

      ITA - CRO
        2 - 3
1st    15 - 10       27 min.  5-2 10-2 12-2
2nd    13 - 15       26 min.  4-5 10-8 11-12
3rd    15 -  8       21 min.  3-5 10-7 12-7
4th    12 - 15       29 min.  5-3 9-10 9-12
5th    12 - 15       13 min.  2-5 9-10 10-12
Total  67 - 63  1 h. 56 min.

この試合が終わった後、私は近くの席にいたクロアチアのファンの方と、このグループの状況についてしばらく話をした。この試合の勝利によって、クロアチアのベスト8はほぼ確定した。クロアチアが次の日のキューバ相手にストレートで負けたとしても、韓国がイタリアにストレートで負けなければ、イタリアが得失セット率でクロアチアを上回ることはない。
韓国とイタリアは、8月のワールドグランプリで対戦しており、このときはフルセットでイタリアが勝っている。最近急激にイタリアが力を伸ばしていることもあって、勝負は五分五分と思われた。しかし、順当にいけば韓国にはベスト4がかかる。まさか、イタリアにストレートで負けるようなトロいまねはしないだろう。そのような話をしているうちに次の試合開始が近づいてきた。もちろん、この会話には重大な前提がある。しかし、その前提は次の試合であっけなく崩れることとなる。

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「大番狂わせ」(11/8第3試合)

先の話の前提というのは、もちろん、韓国がブルガリアに負けるはずはない、ということである。この時点では、韓国は最低でもベスト8でこのまま勝ち続ければベスト4、さもなければ中国がベスト4で、ベスト8の最後の1チームはほぼクロアチアで決まったという状況に思われた。クロアチアのファンとしては、とりあえずイタリア相手に1セットは取ってもらわないと困る、ということで、この試合くらいは楽に勝ってほしいと考えていた。
ところが試合は第1セットから全く予想もしない展開となった。

ブルガリアはこれほど強いチームだったのか。韓国がどうかしてしまったのか。ゼトバ、ベチェバ、ウズノバと、ブルガリアのアタックが気持ちのいいように韓国コートに突き刺さる。ブルガリアにはミスが出ない。サーブレシーブも前日と違い、全く乱れる気配がない。3連続得点、3連続得点、1点、2連続得点(それぞれ間にサイドアウト2回)とあっという間にブルガリアがリードを広げる。こんなはずではない、と呆気にとられている間に第1セット終了。この間わずか18分ほど。
もしこのまま順当に勝ち進めば、韓国はベスト8ではなくベスト4に進出できるわけである。もたもたしている場合ではない。

第2セットも、ゼトバ・ベチェバのアタックが次々決まり、ブルガリアリードのまま試合が進む。一時9-4とブルガリアがリードするけれども、ブルガリアにミスが続いたこともあり、韓国が9-8と追い上げる。その後、12-10ブルガリアリードの場面で、韓国にようやくブロックが出る。それも2発連続で同点になる。さらにゼトバのアタックミスで逆転。このセットはこのまま韓国が逆転で取った。

これで韓国ペースになるかと思われたけれども、第3セットでその予想はまた裏切られる。序盤は点を取ったり取られたりで接戦だったものの、7-5ブルガリアリードから、
サイドアウト2回→3連続得点(ゼトバにアタックとブロック、韓国のアタックミス)
→サイドアウト4回→3連続得点(サービスエース、ゼトバのアタックなど)
→サイドアウト2回→1点(韓国の反則)
あっという間にブルガリアに7点が入り、14-5でセットポイントを迎える。韓国は1点を返しただけで、最後はエースのゼトバに決められ15-6。

このセット間にいろいろ考えていたところ、「もしこのままブルガリアが3-1で勝てば*1、クロアチアのベスト8が決定する」という結論に達した。その場合は、もし翌日のイタリア対韓国戦に韓国が負ければ、韓国が落ちるということである。逆に、このようなほうほうの体でフルセットに持ち込んで韓国が勝ったとしても、イタリア相手に1セット取ってくれるかどうかも怪しいものである。
私はバーバラのファンであり、他競技の選手のお気に入りはロシア・ウクライナの選手が多い。だから韓国とブルガリアのどちらかといえば、本来ブルガリアの応援に回りたいところである。かといって、韓国があまりにもふがいないと困るということで、やや落ち着かない気分で試合を見ていた。
しかし、これで心おきなくブルガリアを応援できるわけである。Hurray Bulgaria, Go Antonina*2!!
*1 後で整理して考えれば、フルセットまでもつれたとしても、ブルガリアがこの試合に勝ちさえすればクロアチアのベスト8決定だった。
*2 ブルガリアのエース、No.3 Antonina Zetovaのこと。

第4セットの前半は、この試合初めて韓国リードで進む。韓国にブロック、ゼトバ・ベチェバに相次いでアタックミスが出るなど、韓国が4連続得点で8-2とリード。しかし、ここからこの日のブルガリアは両エースのアタックで簡単に取り返してしまう。4連続得点ですぐに2点差、さらに、サイドアウトを挟みながら得点を重ねて逆転、9-11とした。その後いったんは韓国が12-11と逆転する。しかし、12-12からサイドアウトを繰り返した後、ブルガリアがブロックで大きな1点を入れる。サイドアウト2回の後、ブルガリアに再度ブロックが出て、ついにマッチポイント。韓国もマッチポイントを3度しのいだものの、最後はゼトバのバックアタックが韓国コートに突き刺さった。

ブルガリア、会心の大勝利!!

前日の試合で、ブルガリアは予想したよりいいチームという印象を受けたが(前日の試合もあと少しで勝てた)、これには本当に驚いた。
単に高いだけではなくいろいろな戦術を持っている。この日のブルガリアは、アタックの得点の割合が非常に多い。それだけ韓国のブロックを振り切り、守備網を寸断していたのだ。守備面でも、思ったよりよくつなぐチームである。これは、うまいとは言えないまでもまともなセッターがいることが大きい。さらに、前日多かったサーブレシーブのミスもこの日は少なかった。
内容的にも完勝で、フロックでは絶対できない勝ち方である。こうなるとイタリア戦のストレート負けは実に惜しまれる。

一方、韓国はこの敗戦でクロアチア戦・中国戦の勝利も帳消しとなってしまった。全てが白紙に戻ってしまい、ベスト8進出さえも翌日の試合にかけなくてはならなくなった。

ブルガリアの選手は長身でしかも線が細いので、全員がファッションモデルのよう(笑)。結構かわいい選手もいる。ラブラブ、ブルガリア(おいおい)。

スタメンおよびサーブ順(第3セット)
韓国: 7 パク・ミキョン → 8 チョン・ソンヘ → 3 カン・ヘミ → 15 チャン・ソヨン → 4 ク・ミンジョン → 10 パク・スジョン
ブルガリア: 7 マリノバ → 9 ベチェバ → 11 パショバ → 3 ゼトバ → 8 ウズノバ → 4 ソコロバ

1998/11/8 18:00-
Marine Messe Fukuoka

      KOR - BUL
        1 - 3
1st     5 - 15       18 min.  2-5 2-10 3-12
2nd    15 - 12       28 min.  2-5 8-10 9-12
3rd     6 - 15       22 min.  4-5 5-10 5-12
4th    12 - 15       27 min.  5-2 9-10 9-12
Total  38 - 57  1 h. 35 min.

このブルガリアの勝利で、このグループは何が起こってもおかしくない、と思われた。この日に確定していたのは、キューバのグループ1位、クロアチアのベスト8以上。全てのチームにベスト8の可能性が、ブルガリア以外の全チームにベスト4の可能性が残っていた。しかし、数字的に可能性はあっても、何が起こってもおかしくないという気持ちにはならない。そのような気持ちになった理由は、このブルガリアの勝利により、キューバを除く5チームに大きな力の差がないことがはっきりしたからである。ブルガリアが韓国にこれだけの内容で勝ったことは、すなわち、翌日の中国戦にもわずかながら勝つ可能性があることを意味したからである。

後から考えてみれば、どのみちかなうわけのない相手である中国から2セットを拾えたのはまさに僥倖であった。その2セットがあったから、セット率で優位に立ち、1試合を残してベスト8を確定できたのである。この日が終わった時点で、このグループは何が起こってもおかしくないと思われる状況だったから、後のない戦いからいち早く脱することができたのは本当によかった。イタリア・韓国・ブルガリアと争いながらキューバと試合をしなくてはならないとなれば、まさに崖っぷちである。

この日の時点での星取表
青色の試合結果は予選ラウンドの対戦結果を持ち越ししたもの
CUB CHN KOR ITA CRO BUL Game Set Point
Won Lost Won Lost Ratio Won Lost Ratio
Cuba




O3 15-6
15-8
15-11
0
O3 15-8
15-2
15-5
0
O3 15-7
15-9
15-11
0



O3 13-15
15-6
15-8
15-8
1
4 0 12 1 12.00 193 104 1.86
China
X0 6-15
8-15
11-15
3




X2 13-15
15-17
15-6
15-10
9-15
3
O3 15-3
15-8
15-5
0
O3 9-15
15-5
15-4
12-15
15-11
2




2 2 8 8 1.00 203 174 1.17
Korea
X0 8-15
2-15
5-15
3
O3 15-13
17-15
6-15
10-15
15-9
2








O3 15-12
7-15
15-12
9-15
15-11
2
X1 5-15
15-12
6-15
12-15
3
2 2 7 10 0.70 177 234 0.76
Italia
X0 7-15
9-15
11-15
3
X0 3-15
8-15
5-15
3








X2 15-10
13-15
15-8
12-15
12-15
3
O3 15-12
15-10
15-6
0
1 3 5 9 0.56 155 181 0.86
Croatia




X2 15-9
5-15
4-15
15-12
11-15
3
X2 12-15
15-7
12-15
15-9
11-15
3
O3 10-15
15-13
8-15
15-12
15-12
2




O3 15-9
16-14
11-15
17-15
1
2 2 10 9 1.11 237 247 0.96
Bulgaria
X1 15-13
6-15
8-15
8-15
3




O3 15-5
12-15
15-6
15-12
1
X0 12-15
10-15
6-15
3
X1 9-15
14-16
15-11
15-17
3




1 3 5 10 0.50 175 200 0.88

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「短くも熱き戦い」(11/9第1試合)

前日にクロアチアがベスト8以上を確定していたことで、気楽に見られる試合となった。結果は予想通りキューバのストレート勝ち。しかし内容は意外と接戦だった。

第1セット前半は、フェルナンデスのアタック、トレスのブロックなどでやはりキューバが抜け出し、9-3とリードする。しかし、そこからバーバラにブロック2発、さらに相手のアタックミス2回で4点を返す。この後11-7となるけれども、チェブキナのアタックで1点返した後、バーバラにブロックが出てクロアチアは勢いに乗り、バーバラがアタックを2発決めて4連続得点で同点とした。しかし、ここでベルにアタックを決められた後、いきなりサービスエースを食らってしまうのが悪いところ。その後、トレスのサービスに完全に崩され、バーバラが無理して打ってアウト、サービスエース2発で15-11。

第2セットは、キューバのアタックミス、さらにネットタッチも出て、1-5とクロアチアリード。そこからクロアチアのブロックが奇跡的な大当たりを起こす。バーバラに始まり、チェブキナ、リヒテンシュタイン(2発)、アンズロビッチ。途中アゲロの猛烈なジャンプサーブに崩され4連続失点、6-6の同点に追いつかれても、クロアチアの勢いは止まらなかった。6-7クロアチアリードとなったところでキューバはルイスを投入、それでも流れは変わらず。6-12までクロアチアのリードが広がり、会場も大興奮となった。しかしここで、クズマニッチのアタックがアウトして7点目を献上したのがケチのつきはじめだった。その後コスタのサービスに完全に崩され、あっという間に9-12。クロアチアはタイムアウトを取るもなおも止まらず、11-12となってからようやくクズマニッチでサイドアウトを取るが、得点はできず。トレスのサービスエースで同点、ベルにブロックが出てついに逆転。この後キューバのアタックが2発続けてアウトして、クロアチアにセットポイントが転がり込む。しかし、フェルナンデスで簡単に切られ、ベルのアタックであっけなくデュース。最後はまたしてもサービスエースで16-14。

第3セットはキューバの一方的展開となった。またしてもトレスのサービスでクロアチアの守備は完全に崩壊した。サービスエース2発、チャンスボールを与えてフェルナンデスに決められること2回・・・で、実にサイドアウトなしの7連続失点。12-2まで点差が広がった。この後、14-3でキューバの最初のマッチポイントを迎える。それをバーバラのバックアタックで逃れた後、相手のアタックミスなどで3点を返すものの、反撃もそこまで。最後はまたしてもサーブレシーブをミスして終わり。

キューバはクロアチアのサーブレシーブを崩し、クロアチアはブロックでキューバのアタックを止めての得点が多く、両チームとも連続得点が非常に多い試合となった。そのため、試合時間は極端に短い。しかし内容は濃い試合だった。

クロアチアにとって致命的だったのは、サーブレシーブの悪さ。あの下手くそさは特筆に値するレベルである。キューバのサービスエースは何と11発。トレスが一人で7発。ここまでくるとあきれるしかない。
とにかく組織プレーに全くなっていない。同じボールを2人で受けようとして交錯したり、サーブを受けようとしている選手の目の前に別の選手が入ったりするなど、ボーンヘッドが続出。これではサーブ自体は威力がなくても簡単にエースが奪える。

なお、クロアチアはこの試合、3セットともセッターはリヒテンシュタインで通した。キリロワは会場に姿を見せていたけれどもサポーターを着けておらず、上半身ジャージ姿で、最初から出場予定がなかったことをうかがわせた。
試合終了後、ミレーヤ・ルイスが旧きライバルであるそのキリロワに声をかけていた。

スタメンおよびサーブ順
キューバ: 2 コスタ → 8 ベル → 10 トレス → 12 アゲロ → 1 ルイザ → 14 フェルナンデス
クロアチア: 10 リヒテンシュタイン → 7 クズマニッチ → 8 イエリッチ → 6 アンズロビッチ → 11 チェブキナ → 3 シドレンコ

1998/11/9 13:00-
Marine Messe Fukuoka

      CUB - CRO
        3 - 0
1st    15 - 11      21 min.  5-1 10-7 12-11
2nd    16 - 14      23 min.  1-5 6-10 6-12
3rd    15 -  6      16 min.  5-2 10-2 12-2
Total  46 - 31  1 h. 0 min.

キューバは中国・韓国を完全に封じた一方、ブルガリアに1セットを落とし、クロアチアとも1,2セットと接戦となったことは興味深い。鋭いアタックと高いブロックがあればキューバに対抗しうることがよりはっきりとした試合だった。ロシアとの決勝が実現すれば、勝負はわからないと思われた。

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「傷だらけのベスト4」(11/9第2試合)

この試合、私は本気でブルガリアを応援していた。この福岡で、ブルガリアはいっぺんで気に入ったし、もしこの試合にブルガリアが勝てば、本当にどうなってもおかしくないという状況に突入するからだ。
とはいえ、世界四強の一角である中国に対し、ブルガリアは本来4位枠で、予選ラウンド突破さえ難しいと言われていたチームである。そのことから言えば、中国が手こずるはずはないくらいの相手なのである。

しかし、第1セットは私の期待を裏切らず、息詰まる熱戦となった。序盤はブルガリアのアタックが中国のブロックにつかまり6-2と中国リード。しかし、今大会のブルガリアはこれで自滅しない。SUN Yueのアタックアウトとベチェバのアタック2発で3連続得点、さらにサイドアウトの後ゼトバのブロック、マリノワのサービスエースで逆転する。中国たまらずタイムアウト。しかし、ゼトバのアタックでブルガリアはさらに1点を追加する。
この後は息つまる接戦が続く。お互いに簡単にコートにボールが落ちない。ブルガリアのポイントにはつながらなかったものの、ブルガリアの選手が足でボールを蹴り上げ、それがつながるという驚くべき場面もあった。しかし、地力でははるかに上である中国がじわじわと追い上げる。ブロックで11-10と逆転。この後は、長いラリーを中国のSUN YueまたはWU Youngmeiが制する場面が増える。最後はやはりSUN Yueのアタックで15-12。しかし、このセットを取るのに中国は実に34分を要した。

第2セットも前半は接戦となった。第1セット同様、序盤に中国にブロックが出て6-2と中国リード。しかし、ここからブルガリアはまだ抵抗を見せる。ベチェバのアタックによる2連続得点。8-4と差を広げられた後、ゼトバがアタックで3連続得点で8-7まで迫る。中国、たまらずタイムアウト。しかしこの後、ブルガリアに最も心配されたサーブレシーブの乱れが出てしまい、中国のほぼ一方的な展開となる。

第3セットは完全に中国ペースとなった。序盤になんと6連続得点。前半明らかに本来の力を越える抵抗をしていたブルガリア、このセットは完全に力尽きていた。アタックがことごとく中国のブロックにシャットされた。最後はLAI Yawenのサービスエースで15-2。

結果としては順当な中国のストレート勝ち。しかし内容的には、ストレートで片づけられないものを含む試合だった。ブルガリアはこの試合の前半、中国とほぼ互角に近い戦いを展開した。これだけの試合ができれば、イタリア、クロアチア、韓国くらいなら押し切れる。(もちろん、日本相手にこんな試合をやられた日にはひとたまりもないだろう。)このチームをじっくり見ることができたのは、福岡まで行った最大の収穫の一つだった。
中国にとっては、苦しい苦しいベスト4への道のりだった。クロアチアにフルセットまで粘られたのみならず、韓国にはフルセットの末まさかの敗戦。ベスト4のためには、キューバ以外のどこかが韓国を負かしてくれるのを待つしかないという状況になってしまった。そしてこの試合でも、前半は予想外の抵抗にあった。

スタメンおよびサーブ順
中国: 11 SUN Yue → 1 LAI Yawen → 12 QIU Aihua → 5 WU Yongmei → 7 HE Qi → 2 LI Yan
ブルガリア: 7 マリノバ → 9 ベチェバ → 10 ニコディモバ → 3 ゼトバ → 8 ウズノバ → 4 ソコロバ

1998/11/9 15:30-
Marine Messe Fukuoka

      CHN - BUL
        3 - 0
1st    15 - 12       34 min.  5-2 9-10 12-11
2nd    15 -  8       25 min.  5-2 10-7 12-7
3rd    15 -  2       16 min.  5-0 10-2 12-2
Total  45 - 22  1 h. 15 min.

会場には在日の中国人の方が相当数中国の応援に駆けつけていた。それに対し、ブルガリアの応援は、皆無同然。ブルガリアにとっては完全なアウエーで、これは少しかわいそうだった。昨日もアウエー同然の同じ会場で韓国を破ったわけだが。

この試合が終了した時点で、中国のベスト4(グループ2位)、ブルガリアの11位(グループ最下位)が確定。この時点で、このグループからベスト8に進出するチームとしては、次のような場合が考えられた。
韓国が勝った場合: セットカウントに関わりなく、韓国3位、クロアチア4位
イタリアがストレートで勝った場合: イタリア3位、クロアチア4位
イタリアが3-1またはフルセットで勝った場合: クロアチア3位、イタリア4位

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「最後のチャンスはどちらに」(11/9第3試合)

昨日、ほぼ確実に勝てたと思われた試合を落とし、ベスト8の望みも消えてしまったかと思われたイタリアに、今一度のチャンスが訪れた。福岡の準決勝ラウンド最後のこの試合は、勝ったほうがベスト8で負けたほうが9位確定というデスマッチとなった。

第1,2セットは、どちらのチームもサーブがきっちり返れば速攻で簡単にサイドアウトをとってしまうため、サイドアウトが極端に多く1点1点が非常に重い展開となった。自力で得点することが非常に難しいので、得点の多くが相手のサーブレシーブのミスかアタックのミスによるものだった。

第1セットは、序盤はジョン・ウンスンのアタックなどで韓国が6-2とリード。6-4の場面からは、長いサイドアウトの繰り返しの中で、イタリアのアタックミスがことごとく韓国の得点となった。韓国のリードは一時11-5まで広がる。粘って相手のミスを待つという韓国のペースになっていた。しかし、イタリアにアタックのミスが出なくなると、徐々にイタリアに追い上げられる。ミフコバの連続アタック得点により、ついに13-14とイタリアが逆転、同時にセットポイントを握る。しかし韓国も3度のセットポイントをしのぎ、さらにサービスエースでデュースに持ち込む。この後、トグットにブロックが出てイタリアが再度セットポイント。韓国はなおもしのぎ続ける。18番ブラガリアのアタックが決まり、イタリアのセットポイントは実に6度目。ローテーションでセッターカッチャトーリが前に出た。ここで、カッチャトーリに代えてワンポイントブロッカーの1番ジョーリを起用。そのジョーリのところに相手のアタックがきて、見事にブロックでシャット。イタリアがこのセットを逆転でものにした。(実際には二人でとんだうちもう一人の手に当たってブロックポイント。)

第2セット、序盤はイタリアのアタックのミスなどで韓国が5-3とリード。しかし、ここからは逆に、韓国のアタックのミス、サーブレシーブのミスがことごとくイタリアの得点になる。サイドアウトを繰り返しながら、イタリアが12-5と大きくリードを奪った。この間のイタリアの9点のうち、サービスエースが4点、韓国のアタックミスが3点。韓国としてはあるまじき事態である。ここからピッチニーニ、ブラガリアなどのアタックミスで4点を返すものの、韓国のフェイントがトグットに立ちはだかられ韓国コートに落ち、14-9でイタリアのセットポイント。しかしここから韓国はやはり粘る。ミフコバのアタックがミスして1点返した後、この日初めて(?)ブラガリアのアタックを拾うことに成功。最後は9番ジョン・ウンスンのアタックが決まり11点目。ジョン・ウンスンのアタックでさらに1点。さらに、ブラガリアとピッチニーニのアタックがアウトし、韓国が奇跡的な5連続得点でまたしてもデュースにもつれ込んだ。しかし、ブラガリアもそうそうミスを続けてくれるわけはない。今度こそきっちり決めた後、逆に韓国ジョン・ウンスンのアタックがミスしてイタリアにまたしてもセットポイント。韓国もなおも粘るけれども、このセット通算6回目のセットポイントで、ついにサーブレシーブが乱れ、ダイレクトでイタリアコートに返ってしまいそれをピッチニーニに沈められた。韓国は窮地に追い込まれた。

第3セット、開始早々イタリアが3連続得点。韓国は1点返すものの、アタックミス、反則、サーブレシーブミスなどが相次ぎ4連続失点。あっという間にイタリアが7-1とリード。しかし韓国は徐々に追い上げる。レッジェーリ、ブラガリアのアタックミスで7-4。さらに、8番チョン・ソンヘのサーブで珍しくイタリアが崩れ、サービスエースとジョン・ウンスンのアタック2発で3連続得点。この後8-8の同点にまで追い上げる。しかしここで韓国にネットタッチ。この後もアタックのミス、ホールディングなど、韓国にミスが出て、すぐにイタリアが3点差と再度突き放す。サイドアウトを繰り返した後、イタリアがさらに3連続得点。ついにベスト8を決めるマッチポイントを迎えた。イタリアのブロックが立ちはだかり、韓国はフェイントに出たが・・・
アウトだよ!?
私の目にもはっきりと見えた。ボールはイタリアコートの外へ。審判が旗を上にあげた。

その瞬間、悲鳴にも似た歓声が上がり、イタリアの選手は飛び上がって輪になり、コーチもコートの中に飛び込み抱き合った。その後記念撮影まで行われた。
まさに喜び大爆発。優勝したかのような大騒ぎとなった。

イタリア女子、三大大会初のベスト8おめでとう!!

この日のイタリアは、18番ブラガリア、4番レッジェーリの決定率が極めて高かった。この二人はサーブカットがきっちり返ればほぼ100%サイドアウトを取っていた。これは、カッチャトーリの速いトス回しに韓国守備陣が完全に翻弄されていたということでもある。イタリアはサーブレシーブで崩れることはまずない。韓国としては自力で得点することが非常に難しくなり、ほとんど相手のミスを待つしかなくなってしまった。さらに、サーブレシーブをミスすれば、エースとならなくてもほぼ確実に失点につながってしまった。韓国36点のうち実に半分の18点が相手のミスでもらった得点。韓国はもともと粘って相手のミスを待つバレーなので、この割合は多くなるけれども、それでも半分はあまりにも多すぎる。要するに、自力で効果的に得点することが最後までできなかったということである。

試合展開としてみると、第1,2セットはデュースになり、韓国は何度もセットポイントを逃れた。しかし、韓国は一度もセットポイントを握ることはできなかった。この試合を通じて、先手を取ることは一度もできなかった。

この日明暗を分けた一つの要因として、監督の選手交代がある。第1セットを決めたイタリアの得点の際の、ワンポイントブロッカーの起用がその一つ。もう一つは、この日大活躍の18番ブラガリアはスタメンではなく、第1セット途中9番ガラストリとの交代出場だったのである。また、イタリアが第1セット5-11とリードされた場面で、メロからトグットに交代したのも大当たり。高さを生かしブロックを決める場面が少なからずあった。個人的には、このあたりだけで賞をやってもよいと思うくらいである。

この試合、両チームの関係者とおぼしき人々がアリーナにやってきて、自分のチームに激しく声援を送っていた。この福岡の会場はブロック指定のため、セットが変わりサイドチェンジが行われるたびに、彼らもそれにあわせて移動した。私は、第1,3セットはイタリアの、第2セットは韓国の関係者に取り巻かれての観戦となった。イタリア勝利の瞬間、私の席の近くからも何人かがコートに飛び出していった。

スタメンおよびサーブ順
韓国: 15 チャン・ソヨン → 8 チョン・ソンヘ → 10 パク・スジョン → 11 ホン・ジヨン → 9 ジョン・ウンスン → 3 カン・ヘミ
イタリア: 7 カッチャトーリ → 2 リニエーリ → 4 レッジェーリ → 16 メロ → 12 ピッチニーニ → 9 ガラストリ

1998/11/9 18:30-
Marine Messe Fukuoka

      KOR - ITA
        0 - 3
1st    14 - 16       37 min.  5-2 10-5 12-10
2nd    14 - 16       39 min.  5-3 5-10 5-12
3rd     8 - 15       20 min.  1-5 8-10 8-12
Total  36 - 47  1 h. 36 min.

それにしても、韓国、中国をフルセットで振り切ったのは何だったのか・・・。
三大大会史上最悪の9位タイという成績に終わってしまった。こうなるとやはり、監督あるいはバレーボール協会上層部の責任問題になるのだろうか。
しかし、この組分けは韓国の恨みを買いかねない。ロシアとブラジルが予選ラウンドで同じ組に入った*のは、実はそれほど問題ではない。予選ラウンドと準決勝ラウンドは一続き(対戦結果が持ち越される)なので、どのみち準決勝ラウンドでロシア・ブラジルの両方と当たることになるからである。問題は、3位枠・4位枠のチームの割り振りである。日本と同じ側(予選A組・C組)の3位枠・4位枠が、ペルー・ケニア・ドイツ・ドミニカ。本当にちゃんと抽選したのかなと思うくらい、3位枠・4位枠でも強いところは一つもない。B組・D組の3位枠・4位枠はイタリア・ブルガリア・クロアチア・タイ。タイ以外は全部「隠れシード」と言ってよい力のあるチームで、あまりのアンバランスさに笑ってしまいそうである。準決勝ラウンドまでにイタリア・クロアチアのどちらかが日本と対戦しないと明らかに不公平だし、公平を期すなら4位枠のチームについてもケニア・ドミニカのどちらかとブルガリア・タイのどちらかを入れ替えるべきであろう。しかし、そうなると日本が決勝ラウンド前で敗退する可能性が出てくるので、そのような無謀なことができるはずはないのだが。
* これは、ブラジルがワールドグランプリ不参加の年があったため、組分け決定時点でのランキングが韓国を下回ったため起きたことである。つまり、本来ならブラジルと韓国が入れ替わっていたことになる。しかし、もしそうなっていたらもっと爆笑に不公平である。

そもそも、クロアチアに勝った試合、そして中国に勝ちファンを驚かせた試合でも、攻撃面だけを見れば韓国は圧倒的に負けていた。そして、相手のミスによる得点が多かった。競り合いになったときに粘って相手のミスを待ち、そして2〜3点差の僅差、あるいはデュースでセットをとり、フルセットに持ち込んで勝った試合だった。勝負所の集中力で勝った試合と言うべきか。第1セット、第2セットは、その意味では同じパターンになりかかっていたのかもしれない。しかし、その集中力はこの試合では残っていなかった。このようなアクロバットのような勝ち方が、何試合も続けてできるものではないだろう。
韓国は初戦のクロアチア戦、予選ラウンド最終戦の中国戦と、おそらく全てをぶつけてきた。そして2試合とも勝った。本来大当たりも大外れもないチームが、100点満点の120点の試合をした。その反動は避けられなかった。この意味では日本も同じである。予選ラウンドの3試合、特にオランダ戦は全力を集中して戦っていた。しかし、韓国も日本も、4試合めを過ぎたあたりからがくんとペースダウンをした。結局はそこに世界との差が出てしまった。このような長丁場の世界大会では、手を抜くべきところでは手を抜いて勝てるようでないと、途中で疲れ果てて力が出なくなってしまう。韓国も日本も、それにはまったのだと思う。(さらに言えば、これは女子だけでなく、日本男子も同じことだろう。)しかし、日本は幸運にも、全力が出なくても勝てる相手が残っていた。さらに、日本のグループでは、予選ラウンド3位で上がってきたチームが強くなかったから、日本は準決勝ラウンドでよしんば全敗してもベスト8に入ることができた。韓国の入ったグループには、楽をして勝てる相手は一つとしてなかった。また、予選ラウンド3位のクロアチアが準決勝ラウンドで連勝、セット率の争いで不利に立たされてしまった。


福岡の試合は非常に面白かった。名古屋は番狂わせもなく、1日を残し事実上ベスト8が決まってしまったのに対し、熱戦も多くベスト8をめぐる争いが最後の最後まで続いた。福岡の準決勝ラウンドは極端にレベルの低いチームがなく、キューバ・中国は別格としても、それ以外の4チームには、日本と同程度ないし少し上くらいのところで大きな力の差はなかった。(私の見たところでは、この組最下位のブルガリアさえ、日本と同程度の力はある。)そのため競り合った試合が多くなった。日本以外の試合はほとんど放送されない。遠くて疲れたしとんでもない費用がかかったけれども、それでも行ったかいは十分にあった。放送局は、全日本の試合だけではなく、このような試合をどんどん放送するべきである。日本戦だけ放送していればよいというのはあまりにもお粗末である。「本日の見どころ」という時間帯もあるけれども、その内容はやはり日本の試合ばかり、それも古い大会の使い回しも多い。1時間も枠をとっておきながら、いったい何をやっているのか。前回のワールドカップを放送した放送局は、アイドルで客寄せ・絶叫アナウンサーなどの悪しき伝統を作り上げた張本人ではあるけれども、昼間や夕方を利用し日本以外のチームの試合を放送していたという。

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