ウィリス・オブライエン


1933年、すべてはここから始まったといっても過言ではないだろう。公開後60年以上経った現在でも映画『キングコング』は世界で最も支持されているモンスタームービーの一つである。

この映画の主役はヒロイン役のフェイ・レイでもなくロバート・アームストロングでもなくラバー製のミニチュア・モデル、キングコングだった。そのモデルに生命を吹き込んだのは、遡ること8年前にコナン・ドイル原作のサイレント映画『The Lost World』で見事な特撮を担当した、ウィリス・H・オブライエンであった。

この中でオブライエンは少しづつモデルを動かし、1秒につき24コマ撮影されたスチールをライブ・アクション(実写)と組み合わせて驚くべきリアルな映像を作り出した。この映画は当前のように興行的に大成功し、当時大不況にあえいでいたRKOスタジオ破産の危機を救ったといわれている(結局潰れたけど)。また本作によってレイ・ハリーハウゼンを始めとするストップモーション界を担う逸材たちを目覚めさせたのも重要なことである。

しかし、その後のオブライエンは『ウォー・イーグル』や『グワンジ』といった自身の企画が次々と潰れてしまい、『The Lost World』と『キングコング』以外は『コングの復讐』と『猿人ジョー・ヤング』程度しか印象的な仕事を残せなかったのは残念である。しかし『猿人ジョー・ヤング』では念願だったアカデミー賞を受賞している(ほとんどレイ・ハリーハウゼンの仕事だが……)。