『あとがき』

 

 天候に晴れの日や雨の日があるように、小説も調子よく進む日ばかりではない。一行も進まない日があったりする。
『締切が近くなると、枚数がゼロって日がないんだから、それって怠けてるだけじゃないの?』
 内容の問題なのか、体調の問題なのか、はたまた「小説の神様」なるものがおりて来ないのが原因なのか、僕にはわからない。
『だから気迫の問題。怠けてるだけよ!』
 書けない日はつらい。うんうんとうなっているだけで、とても疲労する。うんうと、うなりながらなにを考えているかのというと、あまりろくなことを考えていない。
『ろくなこと考えてないのはいつもじゃないの?』
 たとえば、朝日ソノラマのソノラマってなに? とかである。辞書で調べてもそんな言葉はない。英語の辞書にもない。
『あんたそれで何年、ソノラマで食べさせてもらってるわけ?』
 造語だろうか? 文庫の扉ページなどを見ると、羽のある馬のマークがある。ソノラマとは、空の馬が訛って、ソノラマとなったのではあるまいか?
『どうして訛るのよ? 社名よ、社名!』
 辞書には「ソノシート」という言葉が載っていた。CD世代の若い読者の方は御存知ないかもしれないが、ペラペラに薄い簡易レコードのことである。
『そのうちレコードも知らない世代があらわれるわよね』
 筆者が幼い頃は、様々な雑誌の付録にこのソノシートがついていた。ソノラマが開発したからソノシートだと思っていたが、逆なのかもしれない。ソノシートを売る目的で作られたのがソノラマではないのか? とすると、ソノラマのソノは、ソノシートを開発した方の名前かもしれない。「曽野」もしくは「園」ではないかと推測する。
『ラマは?』
 開発者の曽野さんはラマ教の信者であったことから、ソノラマ。
『なんでラマ教なわけ?』
 もしくは、曽野さんは一頭のラバを飼っており、ラバが訛って、ソノラマ。
『だから訛らないってば』
 ソノラマのホームページを見てみたが、その意味は書かれていなかった。しかし、ソノシートがフランスで開発されたことが書かれている。すると開発者はフランス人か? 園さんではなくソノボンヌ?
『さっさと担当さんに電話して聞いたらどうなの?』
 友達に意見を聞いたところ、ソノラマの語感がパノラマに似ているということから
「ソノさんのつくったソノシートを聞くと、ぱーっ、とパノラマのようにイメージが広がるから」と、のたまった。
『だからさー……』
 確かに担当さんに聞けば事は早い。しかし、これがもし朝日ソノラマの最重要機密事項だったりした場合――
 担当はぶるぶると体をふるわせ、たらーりたらりと大粒の脂汗を流し「ついに、ついてに聞いてしまったなー。それを聞かれてしまったからには、生かしてはおけぬ。ぬおーっ!」と、額がバリバリと割れ――
『……一生やってれば』
 ソノラマの謎は、インターネットの様々な検索サイトを駆使して、やっとあきらかになった。世の中には関係者でもないのに、ちゃんと知っている人がいるんだなー、と関心した。
『で、ソノラマってどういう意味だったわけ?』
 ……などということをしているため、原稿が進まないのである。
『だから、ソノラマってなによ?』
 困ったものである。ふーっ。
『ふーっ、じゃないわよ。いらつくから、やめなさいよ。それとも、このネタでこのまま次回へひっぱる魂胆なわけ?』
 さて、今回のグランド、いかがだっただろうか?
『ちょっと! 人の話を聞きなさいよ!』
 グランドとリマンズのラブストーリー、担当さんの受けもたいへんよかった。これほど受けが良かったのディアスの3以来ではなかろうか?
『どこがラブストーリーなのよ。読んでない人が本気にするじゃないの』
 そして、次回――
『え? 次回の宣伝するの? 打ち切りでしょ、打ち切り! 一巻めの売りあげ悪かったんだから』
 ネットを感染原にして、世界に蔓延する電脳ウイルスの話である。
『だいだい、ヤングアダルトの隠れ三十代をターゲットにするところから、まちがいなのよね。普通しないって』
 ウイルスに冒され次々と暴走する傭兵たち。ウイルスの魔手は、我らがグランドにまで――
『出るかどうかわかんないけど、とりあえず最終回とか言っておいた方がいいんじゃないの?』
 気になるあの人物も再登場。
『それは当然よね。ところで、前回のあとがきで言ってた、私の謎ってどうなったわけ?』
 そして――、エレン暁に死す!
『なんで殺すのよ! 暁ってなに! そうやって、いい加減なあおりでひっぱるのやめなさいよ!』
 2001年、秋、発売(か?)
『勝手に出版告知までして、ウイルスに冒されてるのはあんたの頭の方じゃないの? 担当さーん、作者が暴走してますよー』
 乞う、ご期待!
『ソノラマの意味だけでも教えなさいよ! キーッ!』

 ――よしなに。