雷について(1997年06月20日作成)






『雷はどうして起こるの?』

冷たい空気は下に、暖かい空気は上に存在するのが、本来の安定した自然の姿です.
ところが、上空に寒気が入り込んだり、夏のきびしい日射で地表付近が暖められたりすると、上に冷たい空気・下に暖かい空気となり大気は不安定となります.
その結果、水蒸気を含んだ空気はドンドン上昇し、積雲→雄大積雲→積乱雲へと発達していきます.
(豆知識!:水蒸気を多く含んだ空気ほど上昇しやすい.)

積乱雲へと発達していく過程で、雲の中にはものすごい量の電気がたまり、これを地上との間で中和させる現象が『雷』となります.



『雷の起きやすい時って?』

要は大気が不安定(上に冷たい空気・下に暖かい空気)で、積乱雲のもとになる激しい上昇気流の発生しやすい場合を考えれば良いわけです.

ヌ 上空に寒気が進入した時

気象通報の富士山の気温に注目するか、700ヘクトパスカル 高層天気図を作成して、寒気塊を見つけます.
べつのやり方として、故・山本三郎氏(元河口湖測候所勤務)の経験則もあります.
☆ 当日の午前6時の富士山と御前崎の気温差が、25℃以上あったら90%発雷
20℃以上あったら60〜70%発雷
15℃以下なら雷なし
また寒気塊が日本の上空を抜けるのに2〜3日かかるため、これに伴う雷も2〜3日続くケースがあり、これを『雷三日』と言います.

ネ 風のない蒸し暑い日の午後

風がないと熱がこもりやすく、蒸し暑いとそれだけ水蒸気が多くなり、空気が上昇気流を作りやすいからです.夏山で一般的に見られる雷で、分類上『熱雷』と呼びます.

ノ 地上天気図を書いてみて、日本海を寒冷前線が南下してくる時

寒冷前線の背後にある寒気塊が暖かい空気の下にもぐり込み、強制的に暖かい空気を上昇させる為です.この結果生じた雷を分類上『界雷』と呼びます.

(備考:『熱雷』が発生している時に、偶然にも、寒冷前線による『界雷』がミックスした場合を『熱界雷』と呼びます.非常に強力な雷です.)



『雷はどんな所に落ちやすいの?』

雷の注目すべき習性として、雷は高いものに落ちやすいというのがあります.
ですから山の頂上・尾根といった周りより高い所は危険です.
昔から雷は金属に落ちやすいとされていましたが、現在では必ずしも正しいとは考えられていません.
雷電流は、本来絶縁体である空気の絶縁を数キロメトルにわたって破壊し、地面に流れ込む威力を持っています.
このため、金属を外すといった絶縁対策は効果が非常に小さいようです.
実験的にも、「金属をつけない背の高い像」と、「金属をつけた背の低い像」を一緒に並べ、人工的に落雷させたところ、なんと「金属をつけない背の高い像」に落ちることが確認されています.
大切なポイントは高さで、やはり姿勢を低くすることが一番大切です.



『雷に遭遇したら?』

現状では、落雷の地点を前もって予測することは出来ません.
ここでは、雷に遭遇した時の対処法を述べたいと思います.

雷鳴の聞こえる範囲は約10キロメートルです.
もうこの時点で、自分への落雷の可能性はあります.
雷雲が近づく時は、冷たい下降気流が吹き、やがてアラレや激しい雨にみまわれます.
この時すでに雷雲は頭上にあります.
直ちに山の頂上・尾根といった周りより高い所から遠ざかり、できるだけ姿勢を低くします.
近くに大きな木があれば、その木の『保護範囲』に入ります.

『保護範囲』とは、その木から2メートル以上離れた所から、その木の頂点を45度の角度で見上げる所までの範囲のことを言います.
この2メートル以上の距離をとらないと木に落雷した時、木から人体に放電が起こり、落雷電流が人体に流れ込み、死亡・重症という事故になります.
(側撃という.)

側撃に関して言うと、テントの中も危険ということになります.
これはテントのポールが落雷を受けた場合に、ポールから人体に放電が起こるからです.
また、雷から避難している時は、パーティを分散させましょう.
大勢かたまっていると落雷があった場合に、被害が大きくなる為です.

最後に.
雷に遭遇した時に、すぐに安全な場所に避難できるとは限りません.
「落雷と落雷の間隔は1〜3分程度ある」とされていますから、落ち着いてこの時間を利用して、現地点より、『より』安全な場所へ避難するよう心がけましょう.



『山の中で実際に出来る雷対策は何があるの?』

・上空に寒気塊が入ってきたことは、地上天気図、高層天気図、ラジオの気象情報等から知ることが出来ます.
夏山で一般的な『熱雷』がより起こりやすくなる可能性があります.
「今日は午後から雷になる可能性が高いな」という気持ちを持つことで、すでに安全性は高まってきます.
具体的には『早出早着』という行動を選択できます.

・実際に岩に登っている場合、岩に対して集中している為、気づいたら積乱雲が頭上にやってきていた、なんてことがあります.

94年の7月下旬に屏風のトリプルジョーカにつれていってもらった時もそうでした.
なんか冷たい下降気流が吹くな〜と思っていたら、すぐに土砂降りの雨.たまたま、このピッチの終わりが大きなテラスで、しかも上はハングになっていたので、なんとか難を逃れることが出来ました.

しかし、いつもこうとは限りません.
「今日は午後から雷になる可能性が高いな」と判断できたら、やれることは、、、

ヌいつでもツエルトを出せるようにしておく.
ネルートのどこに避難できるテラスがあるか意識しておく.
ノテラスについたら、セルフビレーを取り、壁から離れ(側撃防止の為)、ツエルトをかぶってじっとしていましょう.
・雷雨になっても登り続けることは危険です.
雷が自分に落ちない場合でも、濡れた岩は雷電流が走りやすく、側撃を受ける可能性があるからです.
なるべくより安全な場所に避難しましょう.



『参考文献』

・「雷から身を守るには」 日本大気電気学会




あら川しゅう一<gn2s-arkw@asahi-net.or.jp>
Last modified: 1998/12/23