拝啓 森総理大臣殿

 「天皇を中心とする神の国」のご発言にはちょっと驚きましたが、総理のその後の釈明で、「我が国では昔から山や川や海などの自然の中に、人々を超えるものを見て自然に対する畏敬の念を抱いてきた。そういう生活文化を大切にしたい。と申し上げたかった。」というのが真意であると分かり、逆に大変嬉しく感じました。
 ひるがえって、我が故郷(ふるさと)の箱根山は、最高峰の神山(標高1,437M)を神体山と仰ぐ古代からの山岳信仰の霊場です。
 今も箱根神社の神官たちは、毎年10月24日早朝、駒ヶ岳山頂に登り古代そのままに木製の「火切り」で神に供える斎火(いむび)を切り出します。この火でかがり火を焚き、宮司は松明に点火して目の前の神山に捧げ祝詞を奏上します。神官たちは松明の周りを廻りながら、大祓の詞を朗々と喝えます。
 この頃、神山の木々は錦に染まり、左斜めに霊峰富士がそびえる。芦ノ湖から時折上ってくる霧が大自然の限りない美を演出する。・・・まさに神々の舞台と言えましょう。そのような山岳信仰を今に伝えているのです。
 箱根で最も自然が豊かに残ってきたのは、神山に連なる七つの中央火口丘です。その一つ小塚山では今、美しい自然林が破壊され、日本の国立公園では最大規模と言われる美術館建設のため、直径77メートル。深さ23メートルに及ぶ大穴が開けられています。
 私たちは「箱根山を神として敬い、このような自然破壊は止めてほしい」と、美術館建設に当たっているポーラ美術振興財団にお願いしましたが一蹴されてしまいました。
 総理大臣殿。・・・少なくても国が開発許可権をもつ国立公園や国定公園の中で、このような大破壊が行われていないかどうか・・・早急に調査を命じて下さい。そして、総理の意に反する開発が行われていたら、即時、工事の中止を命じて下さい。
 その時初めて、国民は総理の真意を理解し喝采するでしょう。

                                      (2000.5.30)

(Toshiyuki. Katou)