平成12年6月5日に申し立てたポーラ箱根美術館工事中止等請求事件は、1年11ヶ月におよぶものとなり、この間に、国立公園箱根にとって最も貴重とされた小塚山に、美術館と言う美名に隠れた私権の濫用による巨大な建物が出来上がってしまいました。
本調停をとおし、相手方(財)ポーラ美術振興財団からは、環境負荷軽減に対し、何一つ満足な対応を見ることができませんでした。また、広く国民に話し合いの機会を与えるべき立場にある調停委員会、および、その上級機関である横浜地裁は、「自然の権利」、すなわち「ブナ林とそこに生息する生きものたち」による申立の却下を決定しました。これらの事実と、二年におよぶ時の重みを深く受け止め、まことに遺憾ながら「不調」と言う形で終了致します。
ところで、ポーラ美術館は9月6日オープンされる予定になっています。しかし私達は、今後ともポーラ美術館を監視して、自然を守っていく所存です。箱根に温泉と豊かな自然があるかぎり、都会の人々は心の潤いを求めて箱根に来ます。植物も動物も虫も鳥も生息できる環境こそ、箱根の魅力であり、先賢から守り残してきたものであります。
私達は、美しい箱根を、21世紀を担う若い世代に伝えることこそ、私達の責務であると考え、本調停を申し立てました。箱根が、これからも長く「世界の箱根」として存続していくには、今後とも自然環境を守る運動を続けるしかありません。公害調停を終わるにあたり、このことを改めて確信し、ここに声明いたします。
平成14年5月16日
箱根を守る会会長 信濃一男