読書メモ

・「福島原発の真実
(佐藤栄佐久:著、平凡社新書 \740) : 2012.04.15

東日本大震災直後の6月に出た本。
著者は前福島県知事。知事時代には相次ぐ原発事故に対して、県民の命を預かる者として、 原子力行政と戦ってきた。そして、2006年には汚職という濡れ衣を着せられ、知事を辞職させられてしまう。 その裏には国策に抵抗する著者を排除せんがための、国策逮捕という言葉が浮かぶ。 自らも、知事時代には原発の「安全性の確認や原発対策の透明化を求める私に対する陰口や恫喝」が経産省から聞こえてきた、 と述べている。
今回の福島第一原発の大事故を受けて、日本には国の原子力行政に対する不安感や不信感が高まっている。 もともと長らくエネルギー政策を進めてきたのは自民党であり、政権交代して経験も浅い民主党政権には被害者意識すらあるのかも知れない。
我々は今後、原発をどうしていくべきなのか。安心して生きていけるのだろうか。 「これまでの原子力長期計画は原子力委員会の決定後、閣議報告のみで決められて」きたという。
著者は第7章で次のように述べている。 「安心とは民主主義プロセスの保証によって、初めてもたらされる」と。 それは原発のデータや原子力政策のプロセスが透明化され、国民が賛成・反対の意見を言うといった民主的なプロセスによって実現される。 何よりも必要なのはいかに国民の関心を高め、コンセンサスを得ていくかだ。原発事故やエネルギー政策は他人事ではない。 単に原発反対を訴える候補者を選挙で選べば済むわけでもない。

○印象的な言葉
・炭鉱の廃坑に産廃の不法投棄
・タコツボ化している原子力委員会
・高経年化対策
・原発は地域振興になっていない。地元経済への波及効果は意外と少ない
・「難民」になった福島県民
・常磐ハワイアンセンター:60年代に廃坑が進んだ常磐炭田。石炭掘りで悩みの種だった温泉を利用
・県には原発を止めたり、立ち入り検査をしたり、という監督権限がない
・原発立地自治体には巨額の固定資産税が30年間保証されていた。電源三法交付金も得られる。補助金頼みの自治体は「麻薬中毒患者」
・世代の連続性
・過去の原発事故の情報が他の原発に共有されてこなかった
・「もんじゅ事故」で行き場がなくなったプルトニウムをプルサーマルで消費するという「国策の変更」
・MOX燃料はウラン燃料より融点が低く、制御棒の効きが悪い
・市民社会の成熟化。自己決定に責任をもつ
・国民が本当に原発のリスクを分け合う覚悟があるのか
・原子力事故は国際問題である
・昭和30年代初めの「昭和の大合併」の失敗
・遊園地的な「東京の代替物」としてのショッピングモールのニーズ
・核燃料税:ウラン燃料の価格が低落傾向で自治体の税収は落ち込んでいる
・エネルギー関連の補助金は使途が限定された「ひも付き」ばかり。自治体の自由にならない
・嘘ばかりの原発行政とトラブルを見続けてきたはずの福島のメディア
・2002年5月、石原都知事は「東京湾に原発を作ってもいい。それくらい日本の原発は安全だ」と発言
・21世紀における科学技術と人間社会のあり方、エネルギー政策、原子力政策、地域振興
・国民が自己責任を全うするだけの情報を与えられていない。安全学(国際基督教大・村上陽一郎)
・安全は工学を超えて、倫理学や哲学の領域に踏み込まなければ実現できない
・使用済み核燃料の再処理技術進歩の予想と現実が大きく食い違っており、それを正しく評価できないことが最大の問題。 簡単にはやめられないから続けてきた(吉岡斉)。
・あまり議論をせず、対症療法で場当たり的にやってきた(中村政雄)
・原発の発電単価を計算するときに無視されている間接コスト。見えない費用、リスク
・核燃料サイクルは大きなリスクがあり、自由市場ではまったく値段がつかない(山地憲治)
・熱疲労で割れる配管
・国が最終処分場を決めていない
・わが国は一度、エネルギー政策の転換を経験している。「石炭から石油へ」。炭鉱地帯の相次ぐ閉山で地域は急速に過疎化した
・原発政策は官僚のもの。政治家のコントロールには絶対に服さないという決意でやっている
・2003年4月、東電は17基の原発すべての運転を停止したことがあった。福島第一原発の点検記録改竄が原因。
・2003年7月、当時の平沼赳夫経産相は平山・新潟県知事が求める「保安院分離」に対して、原発政策のガバナンスを前進させる気を見せなかった
・原子力政策に対する地方の権限確保
・高速増殖炉計画の旗振り役の児嶋眞平・福井大学学長
・責任者の顔が見えず、誰も責任を取らない日本型社会。みなで破局に向かって全力で走っていく国民性。そうして敗戦を迎えた。「日本病」
・事故処理にあたる作業員の過労による大きな人災、事故
・2010年8月、佐藤雄平・福島県知事はプルサーマル計画を認めた。県議会は2002年8月に「プルサーマルを行わない」意見書を採択していたが、 それを「なかったこと」にしてしまった。
・日本の統治機構の最大の問題点はチェック機能が働かなくなっていること。メディアも機能していない

<その他>
・未熟な技術、ノウハウで十分なテストもせず、運用してきた恐ろしさ

-目次-
プロローグ 福島が壊れる
第1章 事故は隠されていた
第2章 まぼろしの核燃料サイクル
第3章 安全神話の失墜
第4章 核燃料税の攻防
第5章 国との全面対決
第6章 握りつぶされた内部告発
第7章 大停電が来る
第8章 「日本病」と原発政策
第9章 止まらない内部告発
エピローグ 「嘘」を超えての再生