読書メモ

・「日本をもう一度やり直しませんか
(榊原 英資:著、日経プレミアシリーズ \850) : 2012.01.03

東日本大震災直後の4月に出た本。

○印象的な言葉
・市場が主導する形で経済統合が進む東アジア。東アジア13カ国の域内貿易比率は58%。80年代後半、円高で日本企業が東南アジアに進出したのが一つのきっかけ。
・道州制の問題:日本のような同質的な国を数個の半独立国的なものに分割する意味はない。分割の線引きや首都の決定は恣意的にならざるをえず、政治的に困難。
・デフレを問題にする必要はない。日本の緩やかなデフレは物価安定と呼ぶべき。経済停滞の結果ではない
・貨幣的現象ではない日本の構造的デフレ
・インドの電化製品の6割以上はサムソンとLG製。日本企業は浸透できていない。インド以西も中韓の企業に多くの業種で席巻されている
・韓国は1997-98年の経済危機を契機に経済の構造改革が進んだ。企業や財閥が淘汰された。
・ゴールドマン・サックスは2045年には中国のGDPは米国を上回り、世界一になるとしている。関志雄は人民元の切り上げなどを考慮すると、それは2026年に早まるとする
・いずれインドもGDPで日本を抜いてナンバー3となり、2050年までには米国を抜き、ナンバー2になる。面積は西ヨーロッパに等しく、人口はその2倍。民族・言語・宗教の複雑さは欧州以上。
・日本は若者だけでなく、政府も企業もマスメディアも内向きになっている
・6-7世紀に日本に漢字が伝わるまで、喋り言語である大和言葉しかなかった(⇒日本にはそれまで文字は存在しなかったのか?古代文字は?)
・日本人は学校で英語を習っているのでなく、翻訳を習っている
・移民国家であり、アメリカン・ドリームが持たれ続けている米国は、ある意味で特殊な国
・フランスは女性が働きながら、出産・育児がほとんど無料でできるシステムが完備。その分、国民負担率は高い
・日本の地方議員は国会議員と違い、フルタイムの仕事ではないにもかかわらず、フルタイムと同程度の報酬が払われている。他国には存在しない地方議会議員年金制度。 独仏では地方議員は兼職が圧倒的で歳費も少なく、ボランティア的。日本の地方議員には政務調査費がかなりの額を配布。その大きさと不透明性は大きな問題
・日本の地方自治体は、首長は公選制。大統領制に似る。地方議会の役割は自治体の行政を監視すること
・官僚は各分野の専門家。必ずしも国民目線をもつとは限らない。政治家が役人にとって代われるわけもない
・米国は社会保障関係の保険料は社会保障税として歳入庁が徴収。日本の年金・医療も税方式にするのが望ましい。税に置き換えれば、社会保険庁の役割は年金等の給付だけになる。 社会保険庁を解体して、給付を自治体に任せることも可能。
・廃県置藩:かつての藩の地域にはそれなりの文化、伝統が残る。小選挙区も300。江戸時代的二層構造に戻す。
・明治維新では、コネや家柄だけでなく、能力により全国から人材を集めるというシステムが透明な形で作られた。立身出世の基本的前提は学問だった。
・英仏の教育システムはエリート主義的。基本的に上流階級の人々しか入れない
・日本国内の生産性の格差:自動車・家電など生産性の高い分野、流通・卸売り、物流、建設、医療サービスなど生産性の低い分野。
・バブル崩壊以降、企業活力を奪う制度改革が繰り返された(加護野忠男):株主代表訴訟制度、四半期決算の導入、コンプライアンス、時価会計。 リスクを取ることに慎重な日本企業がますますリスクを回避し、本業以外にエネルギーを使うようになった

<その他>
・日米同盟が続き、相互依存が深まっているのに、いまだに日本人の英語力は向上しない。日本人は米国を真に理解しようとしていない証拠かも知れない。 根深い拒否感があるということか。

-目次-
プロローグ 日本の進むべき道
第1章 内向き日本の衰亡
第2章 大きな政府で世界を目指す
第3章 脱欧入亜のススメ
第4章 選ばれた「素人」としての政治家
第5章 官の能力をどう使うのか
第6章 教育こそ市場化する
第7章 失われる国際競争力
第8章 成熟国家の新しい開国