読書メモ

・「いまアメリカで起きている本当のこと
(日高義樹:著、PHP研究所 \1,400) : 2012.01.04

 東日本大震災直後の4月に出た本。特に震災については触れられていない。
 本書は最近のアメリカの国内問題や、日本や中国などとの外交関係などをテーマに書かれている。 日本の民主党政権との関係や、日米安保の問題、経済の問題、世界の安全保障、2012年の大統領選挙、エネルギー問題など、私も関心ある事柄に触れられていて勉強になった。 日本で読む新聞や、見るテレビからでは報じられないことが(気付いていないだけかもしれないが)、たくさん出てきて驚かされることも多い。
 米国でも新年早々、大統領選挙に向けた共和党の候補者選びが始まったようだが、選挙については、著者は「次は共和党の大統領が選ばれる」だろうとしている。 前回の選挙でも著者は共和党だと言っていたと記憶しているが、今回は果たしてどうか?
 本書で一番気になったのは中国の状況。軍部の力が強くなっていると指摘しており、何か日本の戦前の姿に似てきたと感じた。米中対決は起きるのか? 著者は「このままいけば衝突は避けられない」と述べている。そうなれば日本も打撃を受けることになる。日本は米中の間で今後も揺れ動き続けるのだろうか。

○印象的な言葉
・米中、このままいけば衝突は避けられない。日本も打撃を受ける
・オバマは中国を甘やかし、増長させた
・中国共産党の影響力低下、人民解放軍の勢力拡大
・アメリカは軍事力以外の手段で(経済で)中国と戦いを始める。安い人民元問題、知的所有権侵害、輸入制限、中国労働者への非人道的扱い、環境問題など。中国投資の規制。 アメリカが本気で対決すれば中国の将来はない。
・アメリカはTPPでアジアを自分のものにする。民主党政権がアメリカ抜きでアジア諸国をまとめようとしているのを阻止するのがアメリカのTPPの目的
・核戦争の危機。世界は核兵器であふれている。核テロの危険性。米国は核兵器拡散を阻止できなくなっている
・日米関係の最大の対立は核兵器に対する考え方。普天間問題は米国は深刻に考えていない。民主党政権が核兵器持込の秘密協定を暴露したことに腹を立てている。信義にもとる。 アメリカの不信は、日本の民主党が中国の西太平洋戦略の一部に組み込まれていると見ていること。
・日本が核兵器をもつ場合、それをめぐって起きる問題を(国内外で)政治的にどう解決するかが難しい
・中国にとっては日本に軍事力をもたせないまま、中国の影響下に抱え込むのが望ましい
・日米安保条約とは核の傘のこと。アメリカが核兵器で日本を助けること
・日本の軍事的能力は優れているが、それを実際に実施できるのは、ある一定の拠点内にすぎない。日本には補給や支援体制がない
・米国のマスコミはほとんどがリベラル。最近は保守系のFOXニュースの影響力が大きくなった
・アメリカの財政赤字、15兆ドル
・アメリカはオイルシェールをガス化する技術開発に成功。国内のエネルギー事情が大きく変わった。一般化すれば原発コストより安くなる。向こう数十年は大丈夫。 オイルシェールはスウェーデンやブラジルなど石炭が埋蔵されている地域で多量に見つかっている。日本列島、環太平洋や中国の不毛地帯の地下にも。
・アメリカの一部の州では独自通貨発行を検討しようとしている。物を買うのに労働時間で交換しあうという地域もある。
・専門家は金は1トロイオンス=1,650ドルを超すと予想。米国が金を中心とする通貨体制を作ることもありうる。金に裏付けされた新しい紙幣を発行する。米国は世界最大の金保有国。
・スペインの銀行の株のほとんどは、古いカソリック教会が所有
・アメリカが増刷しているドルは安い製品と引き換えに中国、インドなどに吸い取られている。世界がこれ以上ドルを受け取らないと言い出したら、米国は一挙にインフレになる
・米国議会は景気回復資金はどこへ消えたのかと騒ぎ始めている。不正に使われた疑いが強まっている。FRBはウォール街によって動かされている
・人口が増え続ける米国。間もなく4億人
・米国人にすれば、保険を持つも持たないも個人の自由。政府が保険を国民に強制するのは憲法違反だという者も
・オバマは減税政策の継続を決め、労組とも距離を置くようになった
・オバマは北朝鮮問題には飽き飽きしている。中国に預けたいと考えている。在韓米軍を北朝鮮との取引に使おうとしている
・オフショア戦略:敵地から離れた沖合いから攻撃。アジアの陸地から米軍は離れようとしている
・米空母は通信能力やレーダー、レーダー攪乱能力に優れ、多くの護衛艦艇を必要としない。海兵隊を乗せて敵前上陸するための護衛艦隊も必要でなくなった。 500隻以上あった艦艇を200以下に減らそうとしている。
・米国議会は防衛予算削減を求めている
・オバマが中国や欧州に軽い扱いを受けたことが、アメリカ人に心理的な打撃を与えた
・アメリカに黒人大統領が誕生した背景には白人の強い贖罪意識がある。黒人を差別していないことを世界に証明しようとした
・オバマには政治的な哲学がない。カメレオンのように変わることができる(⇒まさに、change!)
・クリントン夫妻は民主党保守勢力の中心
・米国周辺のカナダ、メキシコ、ベネズエラ、コロンビアなどから石油が掘り出され、米国に運び込まれている
・東京大学は企業との結び付きを強め、国家の枠を超えたものになりつつある
・米国は中東全域に戦闘を拡大しつつある。
・中国は三挟ダムで追い出された数百万の農民をアフリカに送り込んだ。タンザニア・ザンビア鉄道の周りでは、土地を奪われたアフリカ人が反対運動。 アフリカ援助として始めた経済進出が帝国主義型侵略と同じような状況になっている
・胡錦濤首席は何の決定権がないとするCIA。軍部に抑えられている。後任の習近平が選ばれたのも、軍が傀儡を求めていることを示す。 資源不足が深刻など、人民解放軍の軍人たちの危機意識が強くなっている。軍事力の増強もあり、軍人の政治的な役割が強くなってくる。 地方では共産党が嫌われ、軍人への期待が高まっている。軍人たちは民族主義的で排他的。(⇒戦前の日本のような状況だ)
・中国軍は十分な情報収集能力がなく、補給体制も完備していない。外洋型の艦隊にはなれない
・日本は地上波デジタルという電波資源の浪費をやっている。地上電波をテレビに使っているのは発展途上国だけ

<その他>
・米国は環境保護のために国内の石油開発をやめたのに、シェールガスならいいのか?
・新興国が日本の原発輸出を求めているのは、核開発も目的かも?

-目次-
第1章 アメリカは日本が核武装してもかまわない
第2章 アメリカは日本を信用できなくなった
第3章 アメリカは「金本位制」に動いている
第4章 アメリカ経済はもう一度悪くなる
第5章 アメリカの新しいオフショア戦略が始まる
第6章 二〇一二年は保守勢力がさらに大勝する
第7章 次は共和党の大統領が選ばれる
第8章 オイルシェールを地下深くで天然ガス化した
第9章 アフガニスタンはアメリカの全面戦争になった
第10章 中国とアメリカが衝突する
第11章 中国の軍事力には重大な欠陥がある