読書メモ

・「FUKUSHIMA 福島原発メルトダウン
(広瀬 隆:著、朝日新書 \740) : 2012.04.21

東日本大震災直後の5月に出た本。
作家である著者は、震災と津波と同時に起きた福島原発の事故に対して、様々なメディアを通じて、 発言を続けてきた。本書でも、地震多発地帯、日本列島に建設された原発の危険性を指摘し、全ての原発を停止・廃炉にするよう訴えている。 賢明な日本人は既にほとんどの原発は停止させた。
しかし、政府はここにきて、再稼動を目指している。産業界など既得権者から猛烈な圧力を受けているのだろう。 日本人の生命よりも、経済的利益のほうが重要と考えている者が確実に存在する。 そんな人たちに限って、自分だけは安全だと思っているのかも知れない。安全対策が完了したわけでもないのに。
震災から1年。皆、もう安心しているのではないか。考えたくないのかも知れない。 しかし、いつ次が来るかも分からないのだ。原発は停止したから即、安全なのではないことは、本書を読めば分かるだろう。
終章では「これから原発をどうするか、決めるのは日本の国民」だと著者は述べている。 「原発と生きる不安で暗鬱な社会を、これからも選択しますか?」と最後を締めくくっている。 原発をどうするのか、今後のエネルギー源をどう確保するのか、生活水準を下げるのかどうか、 我々には選択が迫られている。なし崩し的に原発再稼動を決めたら、世界中から日本人は笑われることだろう。

○印象的な言葉
・日本列島は桁違いに若い土地。4つのプレートがぶつかりあいながら沈み込んでいく、非常に複雑で、大きな力がかかる場所。 激しい火山活動と造山運動によって生まれたのが日本列島。
・中小地震の頻発は巨大地震の前触れ
・若狭・原発銀座。無数の断層群の上に14基が林立
・原発事故後には、原子力推進の学者ばかりが専門家として解説。災害を警告もできなかったような人たち。楽観論を垂れ流す。対策も打てない。 専門家なら国民の命を守るための行動をとるべき。信用できない。
・事故発生当初から数時間にわたり、大量の放射性物質を放出。国家はそれを国民に隠し続け、大量の被曝を強要した
・チェルノブイリ事故では被爆者320万人
・プレート境界型の地震に連動した「活断層」による内陸直下型の地震
・パニックは人々が本当のことを知らされていないから起こる
・核燃料を核分裂させた後に出るのが放射性物質「死の灰」
・主に東日本で使われている「沸騰水型」原子炉、西日本の「加圧水型」
・原発の膨大な温排水により海水温度は上がり、沿岸の生物に甚大な影響を与える。(→原発が安全というなら、 温排水を温泉やプールに利用してみろ!)
・原発一基で広島原爆3、4発分のウランを毎日燃やしている
・制御棒で燃料の核分裂を止められても、大量の「崩壊熱」は半永久的に発生
・2010.06.17、福島第一原発の2号機で電源喪失事故が起きていたが、無報道だった。原因も特定できていない
・福島第一原発は大規模事故に耐えられない設計。冷却システムがぎりぎりの容量
・水素爆発の原因:燃料棒を包んでいるジルカロイが水と反応し酸化、水から酸素を奪うことで水素が発生
・地震による配管破損
・福島第一原発3号機では「プルサーマル」が行われていた。MOX燃料(プルトニウムとウランの混合物)はウランより大量の放射能を出す。 毒性の強いプルトニウム
・半減期の短い放射性物質はその短い期間に大量のエネルギーを出す。安全なわけではない
・体内被曝:限りなく近いところから放射能を浴びる
・放射線は細胞分裂の過程で遺伝子を損傷する。細胞分裂が活発で、新陳代謝の激しい子供や退治は影響を受けやすい。 激しい運動をする人は放射性物質を体内に取り込みやすい。体内の放射能測定は不可能。
・放射線の被曝量が安全値以下だから安全といえる医学的な根拠はない
・日本の海岸線の多くは堅牢な岩盤でなく、脆い。日本の原発はその沿岸部に建設されている
・断層は過去の造山運動の名残。歪みがたまりやすい。歪みが限界に達すると地震になる
・周期的なプレート境界型、予測できない内陸直下型
・浜岡原発はトヨタなど名古屋経済圏のために建設された
・1978年に福島第一原発で、1999年には石川・志賀原発で制御棒の落下で臨界事故が発生
・地震で重力加速度1,000ガルの上下動が起きれば、原子炉の建屋も地盤から離れる。2008年、岩手・宮城内陸地震では3,866ガルを観測。
・地震の衝撃を受けた原発の部品は表面的には異常がなくても、金属内部に変形や欠損が生じている可能性がある(→非破壊検査が必要)
・津波は湾が入り組んだリアス式海岸では高さを増す
・トヨタが浜岡原発廃絶を後押ししないなら、批判されるべき
・原発の深夜電力に依存する電気自動車の未来は、オール電化住宅とともに消滅した
・柏崎刈羽原発では中越沖地震で痛めつけられた設備を十分な検査もせず、使い続けてきた
・原発運転差し止め訴訟:裁判官が国の原発政策を放任・容認して、国民の生命を危機にさらしてきた責任は重大。司法の独立が問われる
・原子炉の分厚い鋼鉄が毎日、中性子を浴びて脆くなる
・21世紀に入り、先進国の原発は続々と寿命に達し、廃炉の時代に突入している
・十分な発電能力を持つ天然ガス火力発電所がありながら、稼働率を5〜6割に意図的に抑えてきた。石油火力の稼働率は1〜2割。
・独立系発電事業者をフルに活用すれば、停電は起こりえない。大企業は大量の発電能力は潜在的にもつ
・原発の恐怖からの解放
・真夏の、ほんの一時的な大量のピーク電力需要を賄うために、原発推進することは不条理。ピーク時の電気代を高くすればいい
・日本最大の危険性は、六ヶ所再処理工場の巨大な使用済み核燃料プール。電源を消失すれば冷却できなくなる。 再処理の試験運転さえ終わっていない。再処理されないままの核燃料でほぼ満杯。
・何の責任もない将来の世代に対する罪

<その他>
・日本人のDNAの記憶。自然災害の恐怖と適応能力を刻んできた。頭でしか考えなくなり、遠い記憶を忘れた
・原発立地自治体にとって、原発による税収や補助金は麻薬のようなもの
・原発を技術力で完全に制御できるという驕り。事故発生後の膨大な対策コスト
・放射能被曝によるプラスの影響はありえるか?特殊能力
・何かあれば、日本人は海外へ集団移民しなければならない日が来る

-目次-
原発震災がまた襲って来る
第1部 福島第一原発事故の「真相」
 津波に暴かれた人災
 東電・メディアに隠された真実
 放射能との長期戦
第2部 原発震災、ここで阻止せよ
 巨大地震の激動期に入った日本
 「浜岡原発」破局の恐怖
 活断層におびえる「原発列島」
完全崩壊した日本の原子力政策