水俣市から車で一時間足らずの所、鹿児島県大口市に日本のナイヤガラといわれる滝のある観光名所があります。私は季節の折々にここを訪ね、美しい景色を楽しんでいます。この滝は「曽木の滝」と呼ばれ、九州山地の白髪岳南麓に源を発し、宮崎県えびの市を経て、鹿児島県内を流れ下り、川内平野から東シナ海に注ぐ九州第二の大河川内川のほぼ中央に位置します。幅120メートル、高さ12メートルの瀑布で付近一帯は曽木の滝公園となっています。公園内は春には桜、つつじ、秋には紅葉や銀杏が彩りを添え、ちょっと出かけてひと時を過ごすには最適の場所です。
 この滝と水俣は深い関係にあります。1907年この滝の下流に発電所が建設され、近隣の鉱山に電力が供給されるようになりましたが、剰余の電力を使うためのカーバイト工場が水俣の地に建設され、水俣が産業都市として発展する契機になりました。しかし今ではこれらの発電所等は下流にできた鶴田ダムによるダム湖に水没してしまっています。
 今年の春にもドライブで出かけましたが、つつじは昨年の秋に剪定が行われたためか、美しい花は一部分にしか見られず残念でした。

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 自然の作った景観は素晴らしいのですが、それを美しく保つためにはある程度の人の手、それが必要なのでしょう。でもバランスの問題ですね。ここで欲を言えば滝の上流側の橋はもっと離れた位置に建設されていれば、滝の景観はずいぶん違ったものになったのでしょう。発展途上にあった日本では「景観では腹は膨れない」と景観より効率一辺倒になったのだと反省させられます。ヨーロッパに行くと感心するのですが、都市に電柱がほとんど見られない、これなど歴史の違いをつくづく感じさせられるものです。景観は文化そのものという感覚なのだと思います。