C1400L活用術

デジタルカメラにおける
「偏光(PL)フィルター」の活用


実験画像はすべてオリンパスC1400Lで撮影


・デジタルカメラにおける「偏光(PL)フィルター」の活用

偏光フィルター(以下PLフィルターとする)はフィルターの中でも特殊な構造を持っています。
その秘密は「偏光」という現象にあるのです。


「偏光」とは何なのか?

光は波の性質を持っています。普通の状態の光の振動方向は、進行方向に直角で、その個々の光が集まっている為にあらゆる方向に無秩序に向いた光の集合体です。
この光がガラスやプラスチックなどの非金属の平面に特定の角度で当たり反射すると、反射した光の性質が大きく変化し、一方向にのみ振動する偏った光になるのです(理論上)。面白い現象です。
この振動方向が偏った光を「偏光」と呼んでいます。
偏光現象の特徴として「偏光」が起きるのは反射した光のみで、ガラスを透過した光には偏光現象は起きません。また金属面への反射も偏光現象は起きません。
ただし、ガラス面などに反射した光がごく一般的な撮影環境では完全な偏光になるわけではなく、弱いながらも様々な角度に振動している光も一緒に含まれてはいます。

PLフィルターの構造は、ガラスとガラスの間に「偏光膜」と言う特殊な膜を挟み、ある特定の偏光の方向を持った光と偏光特性を持たない光を通すようになっています。
ですから、ガラス面で反射された偏光に対してPLフィルターの偏光方向を90度ずらして取り付けてやればガラス面からの反射光のみをカット出来他の偏光特性を持っていない光やPLフィルターの偏光方向と同じ向きの光に対してはそのまま通過すると言う仕組みになります。

この様に反射光の偏光方向(除去したい光)とPLフィルターの偏光膜の向きを90度ずらす必要が生じるため、PLフィルターはカメラに装着した際にフィルター先端部が360度クルクルと自由な方向に回転できる仕組みになっています。
使用する時はカメラのレンズを通してみた構図(なので一眼レフ型カメラが望ましい)を確認しながら偏光をカットする向きにフィルター先端部を微調整して動かします。

液晶モニターでは微妙な加減は確認できないかも知れませんが、C1400Lのファインダーで確認する際には偏光をカット出来る位置やコントラストの出る位置、色彩の変化する位置が肉眼ではっきりと分かります。


なお、PLフィルターの種類には2種類有り、偏光膜の後に1/4位相差板を挟んだ「円偏光(サーキュラー)PL」と言うのもあって、カメラのオートフォーカス機構の種類によってはサーキュラー型でないとうまく動かなくなってしまうカメラが存在します。
デジタルカメラの場合、CCDのコントラスト検知式のオートフォーカスシステムをほとんどのカメラで使っています。この場合はノーマルなPLフィルターで十分なのですが、今後発売される機種の仕様変更や露出計に偏光膜を使った機種では円偏光型PLフィルターの方を必要とする場合も出てくるかと思います。
値段的に言うと円偏光型PLフィルターはノーマルな物に比べ1.5倍程値段が高い(5000円程度)のですが、すべてのカメラに使えると言う意味では多少の投資を保険の意味で考え、円偏光型PLフィルターを私はお勧めします。


「PLフィルターの使い道」

理論的な事はこの辺にしまして、実際の撮影におけるPLフィルターの効果と用途について説明していきます。

〜〜 ショーウィンドウの反射を取り除く 〜〜

PLフィルターを使って最も劇的な効果を発揮するのがガラス面の反射除去です。例えばデパートのショーウィンドウ越しに中の陳列物を覗いたとき、ガラス面が邪魔をして周りの光が反射してガラス面が白っぽくなるか、ガラス面に模様が映り込んでしまいます。その為、中の陳列物をまともに写そうとするには難しい事です。

この時PLフィルターを使って撮影すると、ガラス面の不要な反射光をほとんど取り除き、中の物が手前のガラスの存在を介さずにクリアーに見る事が可能になります。
「ほんとなの?」
と疑う程に奇麗に余分な反射がカットされます。


通常撮影


PLフィルター使用
窓の反射が無くなっています
応用としては

・ガラス越しの被写体を、ガラス面による映り込み無く撮れる
・都心のビル群を撮影する際にビルの窓に反射される光をカットし、ビルその物 のメリハリを高める
・被写体表面の反射を押さえ、照かりや色飛びを押さえる
・池に泳ぐ魚や鯉を撮影する際に水面に反射する太陽の光をカットし、水中の様 子を奇麗に写す
(水面反射を取り除く)



通常撮影
光の反射が写っている水面に注目



PLフィルター使用
反射はほとんど抑えられ、水の中の様子を見ることが出来るようになった

〜〜 青空のコントラストを高める 〜〜

これまでの35万画素デジタルカメラ時代では解像度が低かったり、CCDの感度的な問題で「空」を写しても白く飛んでしまったり、ごく薄い青色になっていました。特に人物などの被写体を中心において撮影すると、露出値が被写体に固定され、背景の空は露出オーバーで白飛びしてしまいがちです。
最近ではCCDも130万画素以上になり細かな色の変化を表現できるようになって来たため、空の色も微妙なグラディエーションで写せるようになっています。
そうなって来ると同じ空でもコントラストを付けて濃い青から白い雲までを表現したくなる場面も出てくるでしょう。特に真夏のビーチで空と海、そして白い砂浜、緑の濃い木々を撮影する際には少しオーバー気味の発色の方がインパクトが強くなって良い場合が有ります。
こんな時にもPLフィルターは効果を発揮します。



通常撮影
空の「青」と建物の「白」に注目して、、


PLフィルター使用
深い青になった空
白はより白く
コントラストが高くなっている
応用としては
・空の余分な偏光をカットし、青はより深い青にしてくれる。
・木々の葉っぱに反射した太陽光をカットし、本来の緑色にしてくれる。
・余分な偏光のカットで白をより白くみせる




PLフィルターはフィルター部を回転する仕組みのため、取り付ける際にはカメラにしっかり固定させねばならず、また微妙な変化を液晶モニターでは確認するのが難しいため、最も適したカメラは一眼レフ型デジタルカメラになります。
私はオリンパスのC1400Lで問題なく使っていますが、液晶モニターしか備わっていない機種でも撮影時に液晶モニターでリアルタイムに確認出来る機種であれば使う事は可能です。その際はフィルターをレンズ前に固定する工夫が必要になります。

PLフィルター使用
偏光の向きによっては効果を発揮しない


PLフィルター使用
偏光をピッタリ合わせた時

PLフィルター装着時の注意


PLフィルターを装着したからと言って、すべての条件でその効果を発揮する訳ではありません。

まず左の2つの写真を見てください。
どちらもPLフィルターを装着しての撮影ですが、全く別物になってしまっています。上側の写真はPLフィルターを未装着の時と同じ色彩になってしまっています。
よってPLフィルターを使うときは「ファインダーでの確認」が重要で、C1400Lの様な一眼レフ型以外のデジタルカメラでは液晶モニターを注意深く見ながら、もっともコントラストがはっきり出る位置にPLフィルターを回転させて合わせなくてはなりません。
最初はその変化が分かりづらいかと思いますが、デジタルカメラの特徴を生かし、何度も撮ってはその場で確認し、コツをつかんでください。

逆光での注意


PLフィルターを使用する上での注意として太陽の位置が問題になってきます。
右の写真をみてください。

一番上の写真は太陽に向かって空を撮影したものです。この場合、どんなに偏光調整しようと、PLフィルターの効果は発揮できません。

真ん中の写真は左側面から太陽の光が当たっています。なので、太陽のある左側が白くなっており、太陽と反対側の右側はコントラストが出ています。

一番下の写真は太陽を背にしての撮影です。この場合は問題無くPLフィルターの効果が出ています。


よっと、PLフィルターを使う際は「太陽の位置」にも気を付けてください。
撮影方向に太陽が見えていると、PLフィルターは効果を発揮できません。

逆光
PLフィルターの効果はまったく出ない



側光
左側に太陽が有ります
よって太陽と反対側の右側のみに
PLフィルターの効果が出ています



順光
PLフィルターの効果が最も出ている

フィルターを使った活用例
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99/02/09