一線を越えて


 ドイツの居酒屋でビールを頼んだら、縁に横線と0.5Lの表示があるグラスで出てきました。おもしろいものを使う店だなと思っていたら、別の店でも見ました。おみやげに買ったビアマグにもその表示があります。計量カップにもなる便利グッズ? ビール早飲み競技用? 違いました。ちゃんと法的根拠のある横線だったのであります。






 ミュンヘンのいかにもな土産物店で買ったビアマグ。真ん中にビールと大根を高々と掲げたお坊さん、周りにはホーフブロイハウスやニュンフェンブルク城などの観光名所。








 問題の部分を拡大。ぼけちゃったけど、横線が何とか見えるでしょう? Fuellstrich(容量マーク)といいますが、俗にEichstrich(検定マーク)とも呼ばれます。上には「0.25L」と容量が示されています。下の「W」はマグの製造者をあらわすようです。



 「計量制度及び計量器検定制度に関する法律」というのがそれで、商品の重さや大きさをきちんと計量して表示することによって消費者を守り、計量器自体もちゃんと検査して信用を保つのが目的です。そして、飲料用容器について書かれているのは第9条ですが、ここには大まかにしか触れられていません。もっと細かいことは、この法律の施行規則や附属文書に規定されています。

 では、それらを全部まとめて、主なものを箇条書きにしてみましょう。

◎対象になるのは、レストランやビアホールといった飲食店等で使われる飲料用容器。

◎ただし、コーヒー、茶、ココアなどの容器は除外。

◎容量を数字と線で示し、容器製造者を明示したものでなければ、使用してはいけない。

◎容量は、1、2、3、4、5または10センチリットル、あるいは0.1、0.2、0.25、0.3、0.4、0.5、1、1.5、2、3、4、5リットルであらわす。

◎線は、水平で、10ミリ以上の長さがなければならない。

◎線は、容量に応じ、容器の縁からそれぞれ次の距離以上離れたところにつける。

 a)ビールと発砲ワイン用は、0.5リットル未満で20ミリ、0.5リットルで30ミリ、1リットル以上で40ミリ。

 b)それ以外の飲料用なら、0.1リットル未満で5ミリ、0.1リットル以上で10ミリ。

 ずいぶん細かく決まってるでしょ。そして、容量などを表示しなかったり、しても不適切だったりすると、バチが当たるんですよ。なんと1万ユーロ以下の罰金です。135万円くらいかな。ただし、この法律が及ぶのは容器そのものに関してだけで、注文した飲み物が表示された容量に達していなくても、それはまた別の話。そんな場合は、客は自分で店の責任者に苦情を言わなければなりません。ザクセン州の公報にはそう書いてあります。

 それでは、飲み物が横線まで、あるいはそれを越えてしっかり入っているのを確認して、いただきます♪

(2004年5月29日)


【参考文献等】

★Gesetz ueber das Mess- und Eichwesen(Eichgesetz)§9 Schankgefaesse
 計量制度及び計量器検定制度に関する法律第9条 小売飲料容器の条件

★Eichordnung(EO)1988 §44 Abwendungsbereich
 計量制度及び計量器検定制度に関する法律施行規則第44条 適用範囲

★EO 1988 Anhang C (zu §46) Technischen Anforderungen an Schankgefaesse
 計量制度及び計量器検定制度に関する法律施行規則第46条関係附属C 小売飲料容器の容量等表示方法

★Informationsblatt 13.Oktober 2003(Saechsisches Landesamt fuer Mess- und Eichwesen)
 ザクセン州計量局の公報(2003年10月13日)

【おまけ】
★Mass- und Eichgesetz(MEG)
  オーストリアにも同じような仕組みがあります。それが、この単位及び計量器検定法。第19条から第23条までが容器についての規定で、第63条が罰則。こちらの罰金は1万900ユーロ。何だろ、この半端な900ユーロは。
 「半端な900ユーロ」は通貨単位がユーロに移行したせいでした。もとは15万シリングだったのです。官報(Bundesgesetzblatt 27.November 2001)にありました。(2004年5月31日追記)



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