− 竹内洋輔君 パート3 オリンピック直前インタビュー −

洋輔君

竹内 洋輔君


2001年12月に行なわれた全日本選手権でみごと優勝し、念願のソルトレークシティーオリンピックの代表選手に決定した竹内洋輔君に、全日本までの心境と五輪での抱負などについてお聞きしました。

貴重な五輪選手用のユニフォーム画像などもおりまぜてお送りいたします。



まずは全日本優勝おめでとうございます。
は、ありがとうございます。

それからオリンピック出場おめでとうございます。
はい、ありがとうございます。

(顔を見合わせて吹き出す)

あはは、なんか変な感じぃ〜!
洋輔君と話してるとスケートの話はほとんど出ないものね〜。120分話して20分くらいかなぁ。

うん!(^-^)そんなもんでしょ。

(あいかわらず和やかというかフレンドリーに始まったインタビューですが、ここは真面目モードに戻って)

オリンピック選手認定賞

オリンピック選手認定賞

まず、今シーズンの調子からお聞きしたいんですが。どうでしたか最初。
そうですねぇ、ジャンプに関しては4回転以外はまずまずでしたね。

アメリカにいってたときには凄く調子が良かったって聞いてますけど。
うん、まあ、そうですね。
ジャンプはリンクの氷の質とかで、特にトウジャンプはね、変わってくるのでそのときによって違いますけど。
今は神宮で滑っていますけど、神宮の氷はけっこう合っているっていうか、回転するという事に関しては問題ないですね。

ジャンプは好調だったと。
まあ、そうですね。

で、今年はその上にフリーの『ターザン』のプログラムを手に入れたわけですが・・・
どうですか、あのプログラムは?

大変だった!作ってる時から・・・

公式ユニフォーム

公式ユニフォーム

えっ、どう大変だったの?
えっ、マジこれやるの?って感じ。

あの振り付けのコミカルな動きとかが?
そう。ニコライも作る時、笑いながら作ってるしね。
でも、だんだん、やっていくうちに脳みそが麻痺してきたって言うか・・・

やってるうちに恥ずかしさがなくなってきたの?
それは、やってるうちに慣れてきて恥ずかしさが薄れたんじゃなくて、ある時期から脳みそが麻痺して 感じなくなったっていうか・・・

キレた?
そう、キレて感じなくなった。(笑)

あはは
あげくのはてに、作ってるニコライとかがリンクサイドで腹抱えてゲラゲラ笑ってるんだもん。自分で作っててそりゃないでしょ!って感じ。(笑)

公式ウエア

公式ウエア

タラソワさんも?
いや、作ったのは4月だったから、タラソワさんはいなかったんだけどね。
でも、話はそれるけど、タラソワさんすごいよ、見てないようでもちゃんと見てるんだよね。見てないなーと思ってサボってたら、「ちょっとこいっ」て。だから、どうやって見てるんだろうと思って観察してたら、僕の曲がけの時にタラソワさんヤグディンを見てて後ろ向いてたのね。で、こっちも横目で見ながら滑ってたら、ジャンプのところだけピッってこっち向くんだ。

ちゃんと曲の中のジャンプの個所を覚えてるんだ。
そう、すごいよね。それに実際自分で滑って見せてくたりしてもすんごく上手なんですよ!ニコライとタラソワさんと上手く分業して教えてるしね。勉強になりますよ。

なるほどねー。で、プログラムの話題に戻りますが、結果的にやってみて正解だったでしょ?
まぁ、これは絶対に点数が出るプログラムだなぁと思ったし・・・まぁその分いろいろ大変でしたけどね。

で、実際に試合でかけてみて観客への手ごたえとかはどうでした。
シーズンに入る前からけっこう手ごたえはあったんですよ。えーっとなんかでやったんだっけ?あっ、そうそう キャンデローロのショーでやったんだ!その時とか、夏にアメリカでやったときとか、けっこう感触がよかったんで、これはいけるなぁ、とは思っていたんですよ。このプログラムで問題ない、あとはやることやれば不安な要素はないなと思いましたけどね。

ベスト姿

上着を脱いでベスト姿に

じゃあ、全日本へ向かって公式の試合が始まってもかなり自信はあった?
そう、まぁ。ショートもね変えようか?って話はあったんですけど。で、実際作ってみたんだけど、今までのとどっちを選ぶ?っていうとやっぱりこっち(禿山の一夜)がいいと。

フリーも、ショートもタイプは全然違うけどドラマチックなプログラムですよね。
そうですね。ストーリー性があってね。

そういう意味では今までの日本人の選手にないタイプの演技が出来たと。
というか、むしろ今までの日本人の選手のプログラムの方が、他のところより遅れてるだけであって、僕が特別だとは・・・確かに『ターザン』は特徴的ではあるけど、あれくらい(の表現力)は当たり前であって、それはコミカルではないにしても、表現力という意味では当たり前だと思う。

どうしても日本選手はジャンプに重きを置いてる感じがしますよね。跳んで何ぼみたいな。
そう、ジャンプ、ジャンプ!

ソルトレーク五輪のマーク

ソルトレーク五輪のマーク

さて、いよいよシーズンに入って、グランプリシリーズ(カナダ)8位、(ロシア)6位としり上がりに順位を上げてきて、いよいよ全日本という前にNHK杯がありましたけど、他の選手の結果とかは気になりましたか?
えーっとね、僕はスケートカナダはもっと順位上にいきたかったんですよ。カナダは凄く感触も良かったし、4回転も(練習では)ばしばし降りてたから・・・でも本番になるとちょっと・・・

本番ではダメだった?ショート2ミスでしたよね。
そう、ショートで腰骨打って足が動かなくなった・・・ だけど、ほんとはカナダで5番とか6番くらいには入りたかったし、やることをちゃんとやってれば入れたと思う。
N杯のほうは(田村君の)ショート2位とかはあのメンバーなら当たり前だろうなぁと思ってた。ほかに上に行く人がいないから。そんなに気にはなりませんでしたね。順当な結果だったんじゃないですか?

で、いよいよオリンピック代表の座をかけた全日本になるわけですが、どうでしたか?勝算はありましたか?
勝算?こればっかりはやってみなければわからないし・・・まぁ自分自身には不安はなかったけど、何より怖いのは岳斗は試合に強いので。それが怖かった。

開会式用コート

開会式に着用するコート

『ターザン』のプログラムを日本のジャッジがどう評価するか、とかは気にならなかった?
まあ『ターザン』は一目瞭然の分かりやすいプログラムだから。むしろ『禿山の一夜』のほうはストーリーを知らないと、王子と悪魔の関係とか知らないといまいち分かりにくいかもしれないけど、『ターザン』は一目瞭然なのでちゃんと評価してもらえると思ってました。
それより、ショート!

なに?
ショートの前の晩、一睡も出来なかった!

プレッシャーで?
そう。いゃー、普段あんまり緊張とかしないんだけど、寝ようと思っても寝れないの。

ここで結果を出せば・・・とか思って?
いや、それよりもショートだからっていうのがあった。ショートは失敗したら容赦なく落ちるし、もっとも『禿山の一夜』なら安全策というわけでもないけど、ルッツ・トゥに落としても3番以内にはいけるだろうし。3番以内に入っていれば、フリーで自力優勝できるじゃないですか。だけど、逆に2ミスしたらもう終わり!4番以下か、もっと下になるかもしれない。(フリーで)絶対上に上がれないから。そう思うとねぇ・・・
練習ではぜんぜん失敗した事ないし、不安はなかったんだけど、なんか嫌な感じがして。それで眠れなかった。

でも、ルッツ失敗したと・・・
そう、案の定本番はやっちゃった!(苦笑)でも無理だって!睡眠時間ゼロじゃきついって!1時間半くらい寝れたかもしれないけど、寝た気がしなくって。

気持ちが昂ぶってるからねぇ。
あれ(ルッツの失敗)をやった後は絶対にアクセル失敗できないと思った!(笑)

今まで試合でそんな事あった?
ないない!初めて。だって、かかってるものがデカ過ぎるもん。
ショートが終わったら凄く気が楽になった。

開会式用スーツ

開会式でコートの下に着用するスーツ

3位以内につけたものね。自力優勝の範囲につけたからね。
そうそう、あとは自分のやることをやれば、他人に惑わされず、自分がやることをやれば結果はおのずとついて来ると思ってたから。気が楽になりました。フリーは減点方式じゃないしね。プログラムの内容では引けを取らないと思ってたので。
でも、フリーはすっごく雑だった!(と反省)もう、しょうがないけど、あの状況では。でもあの時の演技は自分では二度と見たくないですね。スケートカナダの時が一番出来が良かったと思う。

(4回転のあとの)アクセルがすっぽ抜けたのは?
あれはねぇー、まさか4回転が降りると思わなかったから!頭の中が真っ白け!(笑)
これで、4回転とアクセル入ったらほとんど勝ち同然だから・・・

そう思うと力が入った?
これでアクセル降りれば・・・やりー!とか思ったらやっぱりねぇ・・・

4回転やってすぐあとに3アクセルってしんどくないですか?
いや、それは別に練習ではやっていることだから・・・でも、あの時の状況はやってる本人にしかわかんないと思う。もちろん普段は出来ているんだけど、でも多少は不確定要素があって、だけど、これ降りたら勝ちよ!っていう状況でのプレッシャーといったら・・・
2回目のアクセルも、確実に降りられる体勢だったんだけど、なぜか気が引けちゃった。
1回目がパンクしちゃったからこれでこけられないって思っちゃって・・・

トレーニングウエア

トレーニングウエア

で、演技が終わって・・・
だって、ガッツポーズできないじゃないですか。

そう、曖昧〜な笑顔だったよね。知ってるものだけが分かる。分かる人しか分からない。(笑)
あれでアクセルまで降りてたらガッツポーズしたんだけど・・・まだあとに岳斗も岡崎君もいたからまだ分からないじゃないですか。
その点、女子は素晴らしかった。

そうですね。章枝ちゃん立派でしたね。見習わなきゃね。
うん、見習わなきゃ。

甘い物好きの洋輔君

甘い物好きの洋輔君

で、終わってからはどうしてたの?結果を知って。
いや、その時は、現実逃避してた。(笑)ウォークマン聞きながら。

えっ、見てなかったの?
見てない、見てない。

えっ、何で?
とりあえず総司が、終わるたびに岳斗は何位だった・・・って報告してくれてたんだけど、そのあと岡崎君が終わってインタビューを受けてるのを見て、周りの雰囲気で結果を知った。

直接じゃなく?
そう、だって、嫌じゃないですか、人が失敗すれば、そりゃ上にいけるかもしれないけど、あんまりそんな事は思いたくないから。なんか、(演技を)見たらそういう事を願っちゃうのも嫌だし。だから基本的にシャットアウトしてた。

そうなんだー。じゃあ直接知ったわけじゃなかったんですね。
で、無良先生のところへ行ったと。

そう。

トレーニングジャケット

トレーニングジャケット

無良先生泣いちゃってたよね。
あのシーン、なを画伯とテレビで見てもらい泣きしちゃったんだけど、無良先生の涙を初めて見ました。

そうねー。なんか、僕が先生の生え抜きの初めての生徒なんだってね。

そう、で、なを画伯と『泣かされた事はいっぱいあったけどさぁ、無良先生を泣かしたのは洋輔君がただ一人だね』って言ってたんですよ。
そうですかね。

洋輔君としても夢が叶っただろうけど、先生としても夢が叶ったんですよね。自分も果たせなくて、直樹君でも果たせなかったのがやっと叶ったという。
ああ、そうか・・・長野のときは岳斗、直樹君、僕だったんだよね。あの時はアクセルが間に合わなかったんだよね。

さて、いよいよ五輪へ向けての抱負なんですが・・・目標とか意気込みとかを聞かせてください。
いままで世界選手権も出たことないし、グランプリファイナルとかっていうのも全員出るわけじゃないでしょ。世界中の選手が一堂に会してやる試合って出たことがないので、何位になれるのか全然わかんないし、どのくらいのできるのかも分からないから、かえって楽しみかな。気も楽だし。
メディア関係は武史君にお願いして。武史君!頑張って下さい。(笑)

おいおい!(笑)
だって、プレッシャーはないし、むしろ楽しんで出来そう。

Tシャツ

Tシャツ

具体的に目標とかは?
具体的に何位とかはないんですけど、まあ、今までの集大成としてしっかりやりたいと。それにまだ世界選手権決まってないから。頑張んないと。

そうですね。
だって、今まで、全日本勝ってて世界選手権出てないって僕ぐらいのもんじゃない?しかも2度取ってるのに。今回出られなかったらシャレになんないでしょう。だからしっかり頑張っていい結果を出したいですね。

そうですね。では、ソルトレークではリラックスして楽しんできてください。そして、素晴らしい演技を期待しています。
はい、頑張ります。



年末でリンクが閉鎖になるということで、ちょっぴり悲しくて辛い気持ちになっていましたが、洋輔くんの全日本優勝と五輪出場のニュースは、新松戸の選手達にとって、素晴らしい励みになる出来事でした。
頑張っていればいつかは夢が叶うんだ!と希望の火をともしてくれました。
スケートだけじゃなく、学業でもきちんと結果を出している洋輔君。あとは卒論だけだと聞きます。ハードな練習の合間にきちんとゼミにも出て、頭の下がる思いです。
いろいろなクラブへと散り散りになっていく選手達が、どんなに勇気づけられたことでしょう。
最後の練習のあと、しょんぼりしないで、笑顔でお別れできたのも、五輪選手を送り出したクラブだよ!という自負を持って新天地へむかえるからだと思います。
有終の美を飾ってくれた洋輔君に感謝!
みんなの分の夢をのせて、楽しんで滑ってきてください。ソルトレークのリンクに『チームダイエー』スピリットを刻み付けてきてくれると嬉しいな。



  おまけ画像

  小物類



ボストンバッグ。このバッグは優れもので、ハンドルが内蔵されていて引き出せばキャリー(所謂コロコロ)に早変わり!



ディパック。これもなかなか優れもの。ウエストポーチが取り外してつかえます。(右の図)



靴。何と4足も!(全部持っていくの?) スニーカーにはサイドにジャパンのロゴと五輪マークが入っています。



帽子、マフラー、手袋、ネクタイ、靴下。 小物もいろいろ充実しています。代表選手団ハンドブックは選手、コーチ等のデータが満載。 写真入りですからイケメンや美女の選手を探すのも簡単?!いやいや、選手村での選手同士のコミュニケーションのために必需品となるでしょう。(笑)


前のページに戻る 最初のページに戻る