インドネシア軍援助について:米国議会への手紙

インドネシア人権NGO
2002年10月9日

私たちは、最近インドネシア軍(TNI)に対し、 米国が訓練を提供する動きを見せていることについて、 大きな危機感を持ってこの手紙を書いています。私たちは、とりわけ、 最近、上院下院両院の予算委員会が、 長年にわたり、インドネシア軍教育訓練(IMET) は適切に制限されていたにもかからわらず、 IMET再会を可決したことを憂慮しています。 インドネシア市民として、そしてNGOの活動を行うものちして、 私たちの、米国のインドネシアとの軍事関係を考えるにあたり、 よりきちんとした情報に基づく決定を皆さんが行えるよう、 私たちの見解を表明したいと思います。 私たちは、TNIが改革を拒絶し、 メガワティ大統領のもとで権力を大幅に強め、 東チモールとインドネシアでTNIが犯した重大犯罪についてほとんど責任を負わず、 また、アチェとパプアで人権侵害を大幅に増大させている現在において、 米国予算委員会がTNIへの支持を表明したことに対し 極めて大きく失望しています。

私たちは、皆さんに、 IMET及び2002年の海外作戦予算法案で可決された海外軍事予算制限を更新するこ とを求めます。 私たちは、両院の予算委員会の委員として、IMETの再会に賛成した議員が、 その立場を変更し、議会での投票のときには制限を再会することへの期待を維持していま す。そうでないならば、米国の援助停止がもたらした良い効果が、 確実に台無しになってしまうことでしょう。 インドネシア軍が示す、 東チモールや他の場所で過去に軍が犯した犯罪に対する調査と訴追へのわずかばかりの忍 耐は、 インドネシア軍が米国の支援を再び得ようとする絶望的な試みから来ている部分が大きい のです。 今年提供される予定という対テロ作戦といわれるTNIへの訓練のための400万ドルは 、 TNIのこの僅かばかりの忍耐を完全になくしてしまうことでしょう。 IMETを提供することでTNIに対し米国議会がさらに大きな賛意をしめすならば、 改革に対して我々が行ってきた努力は、修復不可能なまでに破壊されてしまうでしょう。 TNIがその古いやり方を変えようとする試みは、確実に終わってしまうことでしょう。

現在ジャカルタで行われている裁判は、 東チモールで犯された犯罪を明らかにすることに向けての進歩を表しているどころか、 司法的正義を出鱈目にねじ曲げたものであり、 インドネシアの司法制度と国際法に対する侮辱です。 8月の最初の判決では、6名のインドネシア兵士と警官が無罪となりました。 唯一の東チモール人被告は、人道に対する罪で、3年の禁固判決を受けました。 この裁判は、不処罰に終止符を打つどころか、それを促進する可能性が大きいものです。 とりわけ、検事総長のもとでの検察団は、 人権と法の適用に対して、全く配慮しない態度を示しています。 暴力を計画し支持した上級将校を訴追せず、また、 一般市民に対する広範かつ体系的な作戦であることを示す証拠を提示しませんでした。 検察団は、また、事件を、東チモールの対立する二派の内戦と偽って提示し、 インドネシア治安部隊は、そこで第三者であり、 国連はインドネシアに対して不正な態度を示したと誤ったかたちで事件を描いています。

私たちは、もしかすると、 TNIが東チモールで行ったとして広く知られているたぐいの暴力が、 インドネシアで今も続いていることを、米国議会の議員が、恐らくは、 知らないのではないかと思います。TNIは、東チモールで採用したと同じ作戦を、 現在、アチェとパプアで用いています。その作戦には、 殺人的な民兵と村落部隊を創生し資金を提供して、 独立派に共感を示す人々を、子供を含めて、それが誰であれ、 軍事暴力の標的とすることも含まれます。 平和活動家や人権活動家も、日常的に攻撃の対象となりますが、 実行者への処罰はありません。超法規的処刑、拷問、強姦も、 非常に頻繁に起きています。

アチェでは、インドネシア政府は、膨大な部隊を投下して、 対立を軍事的に解決しようとしており、 スイスを本拠地とするハンリ・デュナン・センターが仲介する対話を妨害しようとし、 メガワティ大統領は、武力抵抗勢力を「粉砕」すると約束しています。 その結果、膨大な死者が出ています。現在、1月に100名以上の犠牲者が出ていますが 、 そのほとんどは一般市民です。そして、軍の人権侵害が全く責任を問われないため、 犠牲は広範にわたっています。1999年、大統領委員会は、 1989年から1998年、アチェが軍事作戦地域(DOM)に指定されていた時代に、 7000の人権侵害が犯されたと結論しました。委員会は、とりわけ悪辣な5つの犯罪を 、 調査と訴追の対象としましたが、それはほとんど進んでいません。 同様に、当局は、「拷問犠牲者のリハビリ行動」という組織で働いていた3名の虐殺につ いても、 2000年12月の4名の虐殺、 そして、2001年8月東アチェのPT・ブニ・フロラ・プランテーションで行われた、 31名の虐殺に対しても、 何ら実効性のある対応をしていません。 これらの場合、軍が関与していると疑われています。そして、これらは、 実行者が処罰を免れた何百もの事件のほんのわずかな例に過ぎないのです。

不処罰はパプアでも蔓延しています。とりわけそれは、 昨年11月のテイス・エルワイ暗殺に顕著です。エルワイは、 パプア・プレシディアム委員会の委員長で、この委員会は、 ハビビ及びワヒド元インドネシア大統領に対する平和的交渉相手でした。 警察の拘置所で1名の学生が撃たれ、さらに2名が死亡した、アベプラ事件の調査は、 現在、1年にわたり、検察庁で停止状態にあります。インドネシア人権委員会が、 この事件において重大な人権侵害がなされたことを調査したにもかかわらずです。 当局はまた、警察機動隊(Brimob)の作戦で、10名が集団処刑され、 多数の人々が失踪し、多くの家が焼かれた、 ワシオル郡の人権侵害事件に対する調査要求にも、応えていません。

私たちは、米国の議員が、 政治的目的を果たすためにインドネシア軍はしばしば民兵を利用することに気づいていな いのではと想像するばかりです。 例えば、イスラム原理主義民兵ラスカル・ジハドが特に問題なくインドネシア中を移動で きるのは、 TNI及び警察の有力メンバーの後押しがあるからです。 マルクでは、ラスカル・ジハドのメンバー及びキリスト教徒民兵ラスカル・クリスタスの メンバーの双方が、 マルクでの宗教対立の多くを煽ってきました。 そのとき、それぞれの側に、何十名もの警察官や軍人が参加していました。 軍によるこの過激派への公の支援が終わらない限り、和解のチャンスはありません。 米国が、これらの暴力や非人道的行為の実行者を直接支援しているということを知るなら ば、米国議会議員は立ち止まるに違いありません。

米国政府と同様、私たちも、インドネシアでのイスラム過激派の存在に憂慮しています。 けれども、インドネシアではほんの少数の人だけが、そうした組織に関与しており、 それも、国際テロリスト・ネットワークと関係があることはほとんど全く証されていませ ん。そうではなく、国内的な拠点と目標をもっています。さらに、 こうしたグループは、頻繁に、軍や警察、政府の内部からの秘密の、 あるいはしばしば公の、支援を得て活動しているのです。 インドネシアが直面している最大の脅威は、そして、 真の民主主義への最大の障害は、軍なのです。 標準的な「テロリズム」の定義をインドネシアの事件に適用するならば、 真のテロリストは、インドネシア軍です。

インドネシア軍が国家防衛と国内警察行為(これらはすべて「国家安全保障」とされます )を区別していない状況で、 米国政府は、軍へのいかなる訓練も支援も、外部の敵に対してと同様に、 インドネシアの市民に対して向けられることがあり得ると理解すべきです。 インドネシア軍の公式ドクトリンである「二重機能」によれば、 インドネシア軍は単なる軍ではなく、国内の政治勢力でもあります。 米国国防総省は、TNIとの関係は純粋に軍対軍関係だと主張することはできません。 というのも、TNIは通常の軍隊ではないからです。さらに、1997年の経済危機以来 、 TNIは、経済領域でもますます支配的な役割を果たすようになり、 その結果軍の三重機能ドクトリンが生まれました。これは、特に、 アチェやパプア、マルクのような紛争地域であからさまです。これらの地域では、 軍や警察が大きな役割を果たす戦争経済が出現しています。不幸にして、 TNIの経済追求で犠牲になっているのは、インドネシアの環境です。 軍は、インドネシア天然資源の不法搾取に大規模に関与しており、 それにより、非常に貴重な雨林を破壊する伐採をはじめ、 環境破壊を大きく促しているのです。

私たちは、 米国攻防総称がTNIとの関係を再会しようとするための正当化の理由付けは、 米国の戦略的利益という狭隘な概念に基づいた決定を合法化しようとするシニカルな試み であると考えます。 インドネシア軍の問題は政治的なものであり技術的なものではありません。 この問題は、米国からの援助やドルによって救済できるものではありません。 インドネシアの影の政府である軍が米国からの援助を −スハルト独裁政権の暗黒時代の33年間、受けてきたように− 受け続けるならば、 軍は、人々による軍の権力を縮小すべしという要求を受け入れないことになるでしょう。

私たちは、米国政府に対して、 インドネシアの民主派勢力を積極的に支援するよう求めはしません。 私たちは、そうではなく、米国政府に対して、TNIへの支援をしないことにより、 私たちの仕事を容易にするよう求めます。TNIへの援助は、 インドネシア中の改革を求める運動に対するTNIの攻撃を強化することになります。

上院・下院議員の皆さん、私たちは、皆さんが私たちの言葉を噛みしめ、 TNIに対するIMETを支持することを取り下げることを求めます。 そのかわりに、この秋に海外作戦法案の投票を行うときに、 昨年の法案で盛り込まれていた全ての軍事援助制限を更新することを求めます。 さらに、私たちは、「地域対テロ訓練基金」と呼ばれるところのものによる、 400万ドル相当のTNIへの訓練提供計画も撤回することを求めます。

ご注目ありがとう。

Ori Rahman
Presidium of Kontras (Commission for Disappearances and Victims of Violence)

Agung Putri
ELSAM-Institute for Policy Research and Advocacy

Hendardi
PBHI (Indonesian Legal Aid and Human Rights Association)

Emmy Sahertian
National Solidarity for Papua

Bonar Tigor Naipospos
Solidamor

Rachland Nashidik
Imparsial, Indonesian Human Rights Watch

Winston Neil Rondo
Centre for Internally Displaced People's Services

Yeni Rosa Damayant
Women's Solidarity for Human Rights


翻訳:益岡賢