東チモールで犯された犯罪は不処罰のまま

ジェームズ・ダン
キャンベラ・タイムズ
2003年1月7日
> ジェームズ・ダンがインドネシアの法廷で、東チモールにおける殺害と破壊の責任者が処 罰されなかったことを批判する。
>

東チモールで1999年に起きた事件をめぐり、インドネシア軍士官たちと東チモールの 民兵とに対しての起訴を扱っているインドネシアの人権法廷で、またもや無罪判決が下さ れたことに心穏やかでいることは難しい。

同法廷は、インドネシア軍特殊部隊(コパスス)の士官に対する告訴を却下した。 この士官が、東チモールで何百人もの人名を奪い、村や町をほとんど完全に破壊した人道 に対する罪にもっとも大きな責任を負う人物の一人であることは確実にもかかわらずであ る。 同法廷はこれまでに10名のインドネシア軍士官を、証拠不充分として却下してきた。 インドネシア軍で有罪となったのは、元ディリのインドネシア軍司令官スジャルウォ中佐 だけであり、罪状は、暴力を阻止しなかったということだけである。 本当になされなくてはならない起訴は、民兵団の創設と自分たちの残虐行為であるが、そ れについては、どの士官についても起訴内容に含まれなかった。 これまでの結果は(そして同法廷が今後変わる理由はほとんどない)、TNI(インドネ シア軍)は国家テロリズム行為への責任を逃れることになることを示している。 クリスマスの週にヤヤト・スドラジャト中佐に対して下された無罪判決はその最たるもの である。 スドラジャトは、国連主導の自決権行使を暴力と脅迫で妨害し東チモールを「失う」こと を阻止するためのコパススによる陰謀の中で、中心的役割を果たした人物である。

ワヒド大統領が設置したインドネシアの人権委員会(KPP−HAM)の報告で、スドラ ジャトは訴追すべきTNI士官の一人とされていた。 私が東チモール国連暫定統治機構(UNTAET)に向けて2001年に作成した報告 でも、彼を、破壊作戦の中心人物として名を挙げた。 この破壊作戦で、1000人以上の人名が失われ、東チモールの物理インフラがほとんど 完全に破壊され、25万人もの人々がインドネシアに実質的な強制移送をさせられたので ある。 TNI士官に対する基本的罪状は、暴力を阻止しなかったというものではなく、この国家 テロリズム作戦を計画し実行したことにある。 その立案者はザッキー・アンワル・マカリム少将とシャフリ・シャムスディン少将である 。 これらの将軍たちは、当時のインドネシア大統領ハビビの提案が、東チモールの「喪失」 につながることが明らかになったときに1998年半ばに民兵設立を計画した。 このTNIによる策動がなければ、民兵によるテロも起こり得なかったものと私は信じる 。 スドラジャトはそれ以来、インドネシア軍の将軍たちと民兵との情報伝達において中心的 な役割を果たしてきた。 民兵の目撃者によると、彼は民兵の指導者にお金を提供し、「民兵を勇敢にする」ための ドラッグを提供し、作戦指示を与えた。 実際、少なくとも1度、スドラジャトは、民兵に対して教会関係者等への暴力行為を激化 させるよう強く勧告したのである。

重大な残虐行為となった作戦においてTNIの士官たちが主導的役割を果たしたことにつ いても強力な証拠がある。 たとえば、スアイやマリアナにおいてである。 これらの場所では、TNIの面目をつぶしたことに対する復讐で何十人もの東チモール人 が殺された。 これら2つの事件では、コパスス士官たちが残虐な虐殺を引き起こした作戦を実質上指揮 したのである。 それにもかかわらず、これに関与した士官たちの一人は無罪判決を下され、ほかの士官た ちはそもそも起訴さえされていない。 これらの士官たちに対する証拠は十分にある。 ただ単に、インドネシアの検察は、1999年の4月と9月という制限のもとでことを行 い、民兵の創設とその責任をみなかったのである。

アイタラク民兵の司令官で異彩を放つエウリコ・グテレスへの判決には大きな注目が集ま ったが、彼はたんなる手先の道具であった。 首謀者たちはコパススの司令官たちであり、起訴から守られていた。 法廷に起訴された将校たちは、アダム・ダミリ少将やマヒディン・シンボロン准将、トノ ・スラトマン准将などの地域部隊の司令官であるが、彼らもすでに無罪判決を受けた。

これら3名は実際、中心的な作戦関与者であり、東チモール破壊指令と人々の西チモール への移送指令で中核を担った。 この作戦は、TNIの士官たち自身が「焦土作戦」と述べたものであり、重大な人道に対 する罪を構成するにもかかわらず、法廷では扱われていない。 国際的な圧力によりインドネシアが設置に合意したこの法廷が東チモール破壊と1000 名以上の東チモール人の殺害をめぐりインドネシア軍の責任を問わないことは今や明らか である。 法廷に提出された訴追のポイントは、士官たちが暴力をとめるために十分努力をしなかっ たということにされており、しかもこの暴力は、弁護側によると、ファリンティル(東チ モール民族解放軍)と併合支持派との間の戦いとされている。

これは全くの嘘である。ファリンティルは、インドネシア支配の最終段階で投票準備と投 票が行われていた間、合意に従って一定の場所にいたのである。

法廷ではまた、被告側弁護人が、繰り返し、国際的な介入が暴力に結びつく扇動の原因だ ったと述べている。 東チモールでコパススが先導したテロリズムを暴くことは、バリ島爆破事件のテロリスト を裁くことと同じくらいオーストラリアにとっても重要である。

東チモールでの犯罪を裁くことにキャンベラもワシントンもほとんど関心を持っていない ようであるが、今や国際法廷を真剣に考えなくてはならない。 事態を今のママにしておくことは、インドネシアとオーストラリアの関係を苦いものにし たままにすることであり、また、私たちが支援している国連使節の正当性を失わせること である。

東チモールにおけるこうした犯罪に責任を負うTNI士官の中で唯一有罪となったスジャ ルウォは、最も責任が小さい人物である。 もっと上級の士官たちは昇進している。 アダム・ダミリ少将はその後、アチェでTNIの作戦司令の地位についた。 また、彼の副官だったマヒディン・シンボロンは今や焦燥であり、西パプアの司令官とな っている。 西パプアでは、現在、コパスス士官が暗殺の罪で捜査対象とされている。 スドラジャトは、チモールののちに大佐に昇進し、汚い仕事を担当することで悪名高いコ パスス第4団の副司令官である。 民兵をリクルートしたこうした士官たちがジャカルタやほかの場所で自由に特権的な生活 を送っている一方、東チモールでは、たくさんの下級民兵たちが、投獄されているのであ る。

ジェームズ・ダンは東チモールにおける人道に対する罪の国連専門家