東ティモール受容真実和解委員会

ラオ・ハムツク会報
第4巻5号
2003年11月

東ティモール受容真実和解委員会(CAVR)を検証する

受容真実和解委員会(CAVR)は、暫定的なものではあれ、東ティモール最大の機関の ひとつである。CAVRが、他の正規の司法システムとともに東ティモールの戦争から平 和、外国の支配から独立した民主国家への変遷において重要な役割を果たすことを、 少なからぬ人々が望んでいる。すべての委員は東ティモール人ではあるが、多くの主 要スタッフ、すべての資金それに基本構造や方法論は海外からもたらされたものだ。 CAVRは1974年から1999年のあいだに発生した事件の真相をつきとめ、被害者と軽度の 犯罪を犯した者との和解を仲介し、1975年の内戦からそれに続くインドネシア占領期 間に犠牲となった人々の苦悩を理解、認識するためのメカニズムを提供することをそ の目的としている。すでにかなりの進展をみせており、2004年10月には任務を終了す る予定だ。

ラオ・ハムトゥクのマンデートは国際機関について報じることであり、CAVRは委員の すべてとスタッフの90%以上が東ティモール人で構成されている東ティモールの機関 だ。しかしながら、CAVRは海外からのコンサルタントやアドバイザー、指導に大きく 依存している。さらに、その資金は援助諸国によって拠出され、インドネシア軍が幅 広い国際的な支援を受けて実行した犯罪を取り扱うのがその任務である。以前我々が 主張したように、東ティモールで犯された人道に対する罪を裁くことは、国際社会の 責務なのだ。この記事ではその構造や任務、マンデートとともに、CAVRが下すべき決 断や対処すべき反論について解説する。ラオ・ハムトゥクでは以前にもCAVRについて 報じたことがあり(会報Vol.2、No.6-7)、国際社会や東ティモールの人々からの期 待にCAVRがどれだけ応えているかを検証するにはちょうどいい機会であろう。

CAVRの背景

CAVRは2001年7月13日に発布されたUNTAET規約No.10/2001によって設立された。東 ティモールの人権向上という目的のもと、その活動範囲は3つに分かれている。当初2 年の予定だったその任期は、半年間延長された。2004年に任務を終了し、政府に勧告 を行なうことになっている。考えられる勧告のひとつは、我々はそれを支持するのだ が、CAVR自身が使った地域社会における和解プロセスとおそらくは同様の、軽度の犯 罪やその被害者の苦しみを解決するための代替的なシステムの創設である。

CAVRのマンデートには以下のことが含まれる

  1. 真実の探求:CAVRは、1974年4月25日から1999年10月25日までのあいだに、東ティ モールにおいて政争という文脈の中で発生した人権侵害について、その真相を突き止 める。CAVRは、被害者や加害者が過去の人権侵害について真実を語り、それを認識し 記録するためのメカニズムを創設する。
  2. 地域社会における和解:CAVRは略奪や放火、軽度の暴行といった軽度の犯罪に対 処することで地域社会での和解を促進する。それぞれのケースでは、地区委員と地域 社会の指導者で構成されるパネルが犠牲者と加害者のあいだに立ち、罪を償うために どのような行為がなされるべきかで双方が合意に至れるよう仲介する。
  3. 政府への勧告:調査結果を報告し、和解や人権向上のためさらになすべきことを 政府に勧告する。

      CAVR設置については2000年のCNRT評議会で論議され、当時は受容和解委員会と呼ばれ ていた。国連でもすでに東ティモールでの真実和解委員会の設置が話し合われてお り、国連は当初から国際暫定司法センターその他の協力を仰ぐなど積極的に関与して いた。CNRTのワークショップには、元政治囚の同盟(ASEPOL)やET-ウェーブ、フォ クペルス、ヤヤサンハク、PASジャスティス、UNHCR、UNTAETの法務、人権両部門、そ してCNRTの代表が参加した。

      全国委員のジャシント・アルベスによれば、CAVRは地域社会での和解プロセスをとお して軽度な犯罪の解決を手助けするという点で重要である。裁判所にはすべての犯罪 を取り扱う余力がなく、CAVRがなければこうした犯罪の解決はみられないであろう。

      真実委員会は複数の紛争後社会で和解を進める手法として評価が高まっており、東 ティモールのCAVRはその種のものとしては21番目となる。7月、CAVRのスタッフと委 員がペルーでの会議に参加、ペルーやシェラレオーネ、ガーナの委員らとその経験を 語り合うことで東ティモールCAVRの運営の向上を図った。

      多くの他の委員会での結果はこもごもだったが、それは加害者からの全面的な協力が 得られなかったり、調査結果が政府関係者にとって不快なものであったため報告が握 りつぶされたり勧告が実行に移されなかったりしたためである。幾つかの国では、委 員やスタッフが暴行やテロの標的にされその業務が妨害された。東ティモールCAVR は、幸いなことにそうした脅威にさらされることはなく、我々はCAVRがその仕事を まっとうしその調査結果が広く公表されることを期待するものである。

      東ティモールCAVR設立に携わった国際アドバイザーやコンサルタントの多くが他国で の委員会の経験がなかった。中には南アフリカの真実和解委員会(TRC)での経験を 持つ者もいたが、それぞれの国の状況は特異なものであり、南アフリカは以下の点で 東ティモールと違っている。

      • 重大犯罪を犯した者の多くはいまだ南アフリカにおり、権力は剥奪されている。東 ティモールでは、重大犯罪の首謀者はインドネシアの庇護のもとにあり、多くは現在 も政府や軍で高い地位を保持している。
      • TRCは、かつての支配層であった白人と解放運動のあいだですでに合意された恩赦プ ログラムを遂行するために設立された。TRCでは、その罪をすべて正直に告白した者 には、重大犯を含め誰にでも恩赦が与えられる。CAVRには重大犯罪を犯した者への司 法権はない。
      • 南アフリカの人口は東ティモールのそれの約50倍、領土はさらに広大である。しか しながら、両委員会の任期や規模は、2〜3年間から300名とほぼ同じである。

      東ティモールCAVRの設立は、誰が誰に対してどのような重大人権侵害を犯したかを明 らかにすることが、戦争や大規模な人権侵害から回復しつつある地域社会において長 期的な和解の土台となり得るとの想定に基づいている。

      委員会の機能としてもっとも重要なもののひとつは、過去の人権侵害を調査し、個人 の行為のみならずそうした行為の根底にあったパターンやポリシーを解明した詳細な 報告をまとめることだ。こうした報告は被害者の証言や東ティモールでの調査が基礎 となり、他国での調査によって補完される。CAVRはインドネシアの軍や政府から情報 を収集しようと努めているが、これまで協力は得られていない。ゆえに報告は有益で はあるが、重大犯罪の実行者やそれを司令したものの情報や視点へのアクセスがない ため完全な真実は明らかにはならないだろう。

      この報告に加え、CAVRは犯罪の実行者から被害者への謝罪--個人に対するものと社会 全体に対するものの両方--を促している。こうした方法で正義の回復を実現し、かつ ての敵同士が肩を並べて平和に暮らせるよう援助しているのだ。

      CAVRの構造と業務プロセス

      政治的性質を持った問題などは、最高意志決定機関である7名の全国委員会で扱われ る。アニセト・グテレス・ロペス(委員長)、ジョビト・デ・アラウジョ神父(副委 員長)、ジャシント・アルベス(真実探求)、オランディア・カエイロ(財務)、イ ザベル・グテレス(受容/被害者支援)、ジョゼ・エステバオ・ソアレス(真実探 求)、アグスティンホ・デ・バスコンセロス牧師(和解)の7名である。ある者はフ ルタイムで、ある者はパートタイムで働いている。それぞれの委員はさらに2県の CAVR活動に責任を負っているため、しばしばディリの外に出かけている。

      委員会が意思決定をするには、7名のうち5名の出席が必要だ。何人かの委員は、ある 種の問題については政治的方針のみを扱うよう求められ、プログラムの遂行に関して 知ることが困難になっていると述べた。しかしながら、CAVRのスタッフには、委員た ちの中にはフィールドでのプログラム遂行を理解するためもっと積極的になるべきと 感じている者もいる。複数の地方スタッフからはさらに、全国委員がしばしば賃上げ の承認をためらったり、公聴会に関する意思決定が遅かったりするとの声も聞かれ た。

      決定事項の遂行とフィールドでの活動調整は、各部門のコーディネーターとエグゼク ティブディレクターのルシオ・ドス・サントス、それにプログラムマネージャーのガ ルー・ワンディタで構成されるシニアマネジメントチーム(SMT)が行なう。

      地域社会和解部門(CRP)

      この部門を通じてCAVRは、窃盗や軽度の暴行、家畜の殺害といった非重大犯罪を犯し て地域社会に損害を及ぼした者たちの受け入れ、再統合を進めることで、地域社会に おける和解を促している。こうして被害者に対する正義の回復という形で、この種の 犯罪を犯した者たちにその罪を認めさせる。CAVRはCRPを通じ、それら加害者が被害 者や地域社会に何か有益な行為をすることで賠償を望んでいるかどうかを確認する。 例えば、家を焼かれた場合は、その犯人に家の再建を求めることで解決され得る。和 解プロセスの遂行、その罰が犯された罪に準じるかまたは同等の程度であること、ま たその罰が人権を侵害しないことを保証するため、地裁に「地域社会での和解に関す る合意」というものが登録された。CAVRには、重大犯罪(殺人、強姦、大規模な破壊 やそれらの実行計画)については裁判のため検事総長に報告する義務がある。

      重大犯罪部(SCU)はCAVRが受け付けた宣誓証言を、SCUが持つ1999年に重大犯罪を犯 したと見られる容疑者のリストと照らし合わせている。10月までにCAVRはSCUに1115 件の宣誓供述を送り、SCUはうち69件について排他的司法権を行使した。SCUはラオ・ ハムトゥクに、これら重大犯罪者の中で起訴されたりあるいは厳重な取り調べを受け ている者がいるかどうかを明らかにせず、すべてのケースが「現在捜査中」とだけ答 えた。

      軽度の犯罪についてCRPは、加害者を被害者や地域社会との和解合意に持ち込むこと を試みている。2003年10月半ばまでに、CRP部門は軽度の犯罪を犯した者1100名以上 からのリクエストを受け付けた。このうち454名が82の公聴会に参加、その89%が地 域社会での和解合意による解決を見た。すべてのCRPのプロセスは、CAVRのデータ ベースに記録として保存されている。短期間としては相当な数ではあるが、東ティ モールで犯された政治犯罪としては氷山の一角にすぎない。四半世紀におよぶインド ネシア支配の最後のひと月だけでさえ、TNIと民兵は何万もの家々を焼き払い、何十 万人もの人々を強制移送させたのである。

      加害者が証言を行なう動機のひとつとして、CRPの合意がなされれば起訴免除となる ことが保証されるからだが、原則として証言は自発的に行なわれる。しかし被害者の 中には、法的な安全が感じられないとして証言を望まない者もいる。これは被害者や 加害者が、CAVRはその保有する情報を裁判所に提供することがあり、もしそのケース が重大犯罪と分類されれば起訴につながると知っているからだ。元統合派支持者たち も、古い傷口を開くだけではなく独立派の地域社会の中では危険でもあるとして、証 言することに恐怖を感じている。また、もしそうしなければ警察に逮捕されると誤解 して証言した加害者もいることを、ラオ・ハムトゥクは知った。多くの人は混乱して おり、たとえCRPに協力しなくても司法システムにはこれらの犯罪をすべて取り扱う 余力のないことを理解できていない。

      スタッフが不足しており、また地方での作業は困難を伴うことが、CRPの懸念となっ ている。CRPのスタッフは、しばしば十分な後方支援を受けていないと不満を漏らし た。たとえば地方では車両などの輸送手段がなく、スタッフは徒歩で村から村を訪問 しなければならない。さらにバウカウでは、スタッフの人間関係が原因のひとつと なってCRPプロセスに多くの問題が生じていることを、我々は知った。

      真実探求部門

      この部門は1974年から1999年にかけて発生した人権侵害を調査し、それらの原因と なった要素とともに報告書を提出することになっている。こうした観点から、CAVRは 個々のケースを調査するだけではなく、それらが体系的なパターンの一部であったか どうかを検証する。したがって、戦争犯罪や人道に対する罪の疑いの濃いケースの調 査は、CAVRが担当する。

      この部門の証言記録課は、被害者や目撃者にインタビューし、8000件もの証言を収集 することを計画している。すでに65の郡のうち51郡で、およそ5900件の証言を得た。

      各県には男女2名ずつ、計4名の証言記録係がいる。それぞれのスタッフは証言記録用 紙とテープレコーダーを与えられ、聞き取った内容を調書にもまとめる。CAVRの役割 についての情報を広めるとともに証言希望者を探すのは、広報課の仕事だ。証言は強 制ではない。

      真実探求部門にはまた調査課とデータ処理課があり、後者はさらに2つのチームに分 かれている。証言読取係は証言を読み取ってそれにコードナンバーを割り当て、デー タ入力係は情報データベースに入力する。調査対象は10の項目に分かれている。強制 移送と飢饉、虐殺、殺人と失踪、政治的投獄と拷問、女性と紛争、子供と紛争、政党 間の紛争、TNI、フレテリン/ファリンティルそれに外国関係である。

      これまで集められた5900の証言のうち、データベースへの入力が済んだのは2000ほ ど。入力の遅れやその他の問題で、真実探求部門の調査担当者が傾向やパターンの分 析に証言を使うことが困難となっている。似たような問題は世界各国の真実委員会で 発生している。

      この部門を通じ、CAVRは1974年から1999年にかけて犯された大量殺人やジェノサイ ド、その他政治的動機に基づいた殺人の調査を行なっている。東ティモールに直接、 間接に関わった海外関係者は、軍と民間とを問わず調査の対象になるが、多くの証言 では海外の関与について詳細な供述が行なわれることはないだろう。海外関係者から の情報収集のため、CAVRの調査課では外国政府に対し情報や記録文書の提供を求めて いるが、反応は鈍い。こうした調査プロセスは現在も継続されており、そのデータは 極秘扱いとなっている。調査を行なっているのは、学術機関やNGOの調査員たちだ。

      調査の目的のひとつは、24年におよんだインドネシア支配中に殺された人の数を正確 に推定することにある。これらは「遡及的死亡者数計測」という、墓地の調査やイン タビュー、人口分布データその他の情報源からの情報を組み合わせる方法で行なわれ ている。生データの正確さについてや、こうした困難な仕事を適切に行なうために要 求される財源についても、他の必要性を考慮すれば、疑念が生じつつある。殺された 人の数を数えるよりも、彼らの命を奪った者やその黒幕、戦略やポリシーを明らかに することの方が重要と考える人もいるのだ。

      CAVRはこれまで東ティモールで、「政治的投獄」、「女性と紛争」、「飢饉と強制移 送」といったテーマで公聴会を開催してきた。被害者や専門家が証言し、それらはテ レビや他のメディアで広く報道され、そうした事実や経験をつなぎ合わせることでイ ンドネシア占領中東ティモールの人々が直面した現実をより多くの人々が理解するこ とに役立った。来年には、「1974〜76年にかけての政治的紛争」、「国際関係者」、 「虐殺」その他のテーマでさらなる公聴会が計画されている。

      CAVRでは、海外(米国やオーストラリアそれにおそらくはインドネシア)での公聴会 も検討されていた。国連やそれらの国々の政策担当者や専門家に、彼らや彼らの政府 が1974年から1999年の東ティモールでの人権侵害に果たした役割を証言する機会を与 えるために、である。残念ながらこのプロジェクトは、表向きは人材や財源の不足と いう理由から中止となった。しかしCAVRの優先事項が、CAVR自身やその他がインドネ シア支配を支持した各国の面目を損なうことに乗り気ではなかったことも含めた政治 的な理由に影響されたとの指摘もなされている。

      さらには、真実探求調査の全体的な結果や、最終報告が国内外の政治的要求に会うよ う編集されるのではとの懸念も挙がっている。CAVRの仕事を可能にしている多くの国 際ドナーや機関が、能動的であれ受動的であれインドネシアによる東ティモール支配 の共犯であり、すべての真実が明らかにされるのを望んではいないようだ。いくつか の犯罪実行者、特にインドネシア軍などは、独立派の調査員や証人のみに基づいたも のとして拒絶するだろうが、それでもできる限り客観的かつ正確にするため努力する ことは重要である。こうした調査には多額の金がかかっており、正義や認知といった 被害者の要求を満たすことなしに報告書がファイルキャビネットやゴミ箱に投げ込ま れることがあってはならないのだ。

      財務部門

      CAVRはこれまで2度、東ティモールの監察長官を招き監査を実施した。全体的には問 題はなかったものの、2、3の技術上の問題が見られた。将来におけるこうした問題を 防ぐため、CAVRは大小に関わらずすべての資産のリスト化を開始した。これとは別 に、財務部門は最近、テレフォンカードや車両への給油を制限することで支出を削減 することを決定した。加えて、2名のバウカウスタッフが、1145ドルがどこかに消え たあと契約を解除されている。

      この部門が抱えるもうひとつの問題は、地方スタッフに財務管理の十分な経験がない ことだ。最近では、国際スタッフから地方スタッフへの技能の伝達に改善が見られて いる。

      CAVRの2年半の任期における推定費用

      給与            $1,685,669
      準備費用          $31,770
      事務所とプログラム     $836,703
      不動産           $80,000
      車両経費          $214,000
      研修と公共教育       $250,130
      調査            $102,800
      建物(殆どが刑務所の修復) $426,000
      車両            $302,000
      家具と備品         $238,000
      被害者支援         $166,400
      最終報告          $96,300
      臨時費           $120,900
      合計            $4,550,672
      出典:CAVR

      これらの費用には、国連やその機関から配属された11名のフルタイム国際スタッフの コストは含まれていない。もしこれらの人たちが平均して、UNMISETの国際文民ス タッフと同額の給与を受けるとすれば、彼らの支援はおよそ200万ドルに相当する。 またUSAIDのような二国間ドナーによって給与を支払われているコンサルタントやス タッフの経費も、遡及的死亡者数計測のような新しく着手されたプログラムに関する 費用も、この中には入っていない。

      すでに支払われた基金

      ドナー             額
      オーストラリア         $160,711
      英国(4つの交付金)      $516,347
      カナダ             $190,076
      欧州委員会(UNHCRを通じて)$316,982
      フィンランド          $19,995
      ドイツ(2つの交付金)     $218,956
      ヒボス             $34,249
      アイルランド(3つの交付金)  $311,829
      日本(2つの交付金)      $764,681
      ニュージーランド        $292,091
      ノルウェー           $252,838
      UNDP/スウェーデン     $191,250
      USAID           $5,191
      USAID(現物で)      $117,547
      米国平和研究所(2つの交付金) $40,000
      世界銀行コミュニティエンパワメントプロジェクト $80,000
      合計              $3,512,743
      出典:CAVR

      約束されたがいまだ支払われていない基金

      ドナー             額
      アイルランド          $136,300
      日本              $235,000
      UNDP/スウェーデン     $100,295
      USAID           $12,009
      USAID(現物)       $99,661
      世界銀行コミュニティエンパワメントプロジェクト $86,400
      合計              $669,665
      出典:CAVR

      CAVRがすでに受け取った350万ドルのうち、約63%が特定のプロジェクトのために割 り当てられたものである。またいまだ支払われていない67万ドルのうちでは、72%が そうである。CAVRがどのようなプロジェクトにも自由に使える援助金の殆どは、オー ストラリア、カナダ、アイルランド、ニュージーランド、ノルウェーそしてスウェー デンからのものである。

      被害者支援部門

      被害者支援部門は、人権侵害の被害者のリハビリに役立つような活動を促進してい る。証言をしたり地域社会での和解に参加した人たちを村レベルで支援するほか、僻 地での被害者の公聴会や、暴力のインパクトを地域社会全体で論議したり、重大な人 権侵害の生存者の癒しのためのワークショップの開催などの活動を行なっている。こ の部門ではまた、早急な援助を必要とする生存者と、それを提供できる組織--コミュ ニティエンパワメントプロジェクト(CEP)も含め--を結びつけるプログラムも行 なっている。このプログラムを実行しているのは、フォクペルスやCarmelite Nuns、 ハクアソシエーションのメンバーで構成される作業グループである。

      被害者の直面するさまざまな困難を緩和するため、CAVRはCEPからおよそ16万6000ド ルを受け取り、被害者に給付している。ラオ・ハムトゥクが入手した情報によると、 すでに給付を受けた被害者は、1人あたり200ドルを支給されているが、この資金の割 り当てが不透明であるとの批判が高まっている。CAVRは給付を受けた被害者に、他の 人たちには口外しないよう求めており、給付の仕方が差別的かつ情実的であるとの声 も聞かれている。

      マンデートが終了するころにはCAVRは、被害者への補償やリハビリといった問題につ いて勧告をまとめるだろう。

      プログラム支援部門(以前の対外/PR部門)

      この部門には、メディアとパブリックインフォメーション、PR、組織開発の3つの課 がある。最初の課では、以下のことも含めた宣伝活動に携わっている。

      • ティモールレステラジオや他の局で放送される、CAVR Dalan ba Dame(平和への 道)というラジオ番組
      • CAVRの任務やビジョン、活動を解説したチラシやポスター
      • 記者会見やプレスリリース、その他国内外のメディアとの関係

      PR課では、東ティモール人社会のNGOや政党、教会、若者、女性団体といったさまざ まなグループとの関係構築を行なっている。各県に1人PR課のスタッフが駐在して CAVRの仕事を広めるとともに、証言、公聴会や和解プロセスへの参加に協力を得られ そうな被害者や加害者の特定も援助している。

      組織開発課の仕事は、CAVR内の問題やニーズを発見することで、能力開発や研修、ス タッフの能力や業績評価の支援を専門に行なっている。  

      国際スタッフの役割

      2000年下旬公開協議のため配布されたCAVR提案では、「すべての常任スタッフは東 ティモール人で、国際コンサルタント若干名が比較的短期間、特に技術的な問題につ いて委員会を支援するため契約されることになるだろう」とあった。現在委員会に は、他の機関から給与を支払われている11名を含み15名の国際スタッフがおり、さら に数名の国際コンサルタントが1ヵ月から2ヵ月といった期間で契約されている。CAVR が直接雇用している国際スタッフは、2名の通訳、1名の調査員、1名のアドバイザー である。

      東ティモールで働いている他の多くの国際スタッフやアドバイザーとは違い、CAVRの それは、国際連帯運動を通じてボランティア活動家として東ティモールの独立闘争を 長く支援してきた。彼らの東ティモールの歴史に関する知識や人々への共感、テトン 語やインドネシア語の能力は、他の国際スタッフをはるかに凌駕している、それ故 に、CAVRが他の組織と同じような、東ティモール人と国際スタッフ間の多くの問題を 抱えていることは驚きに値する。これは、給与や経験の水準、期待用件や条件が異な る人々が集まったときに平等な職場環境を作ることがいかに難しいかの証左でもあろ う。

      現在CAVRで働いている国際スタッフの大多数が、UNDPが政府運営や公務員の能力開発 の分野で指定した200の開発”ポスト”のために拠出した基金の中から給与を受けて いる。そのため、CAVRの職務規定の対象とはならず、委員を含めた東ティモール人同 僚からの憤慨を買っている。新しく作られた国際スタッフ採用チームには2名の全国 委員が含まれているにも関わらず、何人かの委員は新人の国際スタッフを知らなかっ た。このチームが作られたあとも、国際アドバイザーのほうが応募者をすでに知って いるため新しい国際スタッフ採用の決定権を握っていると感じている者は多い。

      プログラムマネージャーはUNDPと契約を交わした国際アドバイザーである。従って、 多くのCAVRが国際スタッフの機能について理解していない。彼らは意志決定者なの か、それとも東ティモール人スタッフや委員のアドバイザーなのか?

      UNDPと解約した国際アドバイザーの評価プロセスには、評価用紙を時折り被評価者に 見せるなど問題が多いことが、ラオ・ハムトゥクの調査で判明した。これでは独立的 かつ透明な評価を行なうことは困難であろう。

      我々がこの記事を書くため接触した東ティモール人CAVRスタッフの多くが、国際アド バイザーの中には意思決定を東ティモール人である関連部門のコーディネーターとの 協議なしに行なう者もいると語った。その結果、東ティモール人CAVRスタッフのあい だで委員会が外国人に支配されているとの感情が蔓延しているようでもある。UNDPの 規約で定められた助言者としてではなく上司のごとくふるまう者もいるが、一方で は、国際機関から高給を支給されていることを考えれば彼らがより困難な上級の役職 に就くべきと思っている東ティモール人スタッフもいる。

      東ティモール人スタッフが自分たちで仕事をこなしていけるようになるにはアドバイ ザーがどのような支援をすればよいか、双方で十分な話し合いが必要なことは明白 だ。多くの東ティモール人スタッフが、自分たちの仕事が干渉されていると感じてい る現状では、こうしたコミュニケーションは重要である。委員会の国際スタッフの語 学力が他の組織の国際スタッフのそれよりも優っていることは事実だが、東ティモー ル人スタッフは、国際スタッフの流暢な英語がドナーや国際機関との関係上非常に有 益であることは認めこそすれ、彼らとのコミュニケーションがうまくいかないとの不 満を抱えている。

      国際スタッフの役割は、CAVRの暫定的な性質を考慮すれば、さらに混乱する。すべて のスタッフは、CAVRの任務が終了する2004年には、職を失うことになる。オン・ザ・ ジョブ・トレーニングは東ティモール人スタッフや東ティモール全体にとって有益で はあろうが、限られた期間中でそれほど効率性を向上させられるとは思えない。

      また東ティモール人スタッフが、国際スタッフが持っている技能を修得することにあ まり積極的でなかったり、あるいはその能力に欠けるという者もいれば、東ティモー ル人スタッフ、とりわけエグゼクティブを採用するさい、もっと経験豊富な人たちを 選べたはずだったのにという声も聞かれた。

      結論

      ラオ・ハムトゥクがCAVR関係者のインタビューを開始したさい、CAVR上層部が各部門 の責任者以下の東ティモール人スタッフに、我々とは話をしないよう指示したことは 明らかだ。CAVRスタッフが自分たちの仕事に専念する必要があることは認めるが、こ うした指示は透明性と公開性に関して疑念を生じさせるものである。我々はこれが組 織的な隠蔽性の表れではなく、あらゆる情報や人材を駆使して東ティモールの人々、 とりわけ人権侵害の被害者を支援するというCAVRの仕事の障害にならぬよう望むもの である。

      CAVRが1年後最終報告をまとめるさいには、多様かつときには主観的な情報や多数の 言語あるいは潜在的、顕在的な政治的圧力など多くの困難な問題に取り組まねばなら ない。報告書が十分に吟味されたものであり、1974年から1999年までのあいだに東 ティモール人に何がなされたかだけでなく、どうやって、何故、誰によってなされた かを明白にしてくれることを、我々は望んでいる。また、フォローアップのための行 動やポリシーとともに、正義、和解、補償、真実探求を継続させるよう勧告すること も期待している。CAVRの報告書の筆者には、大胆かつ広範に考え、勧告案を東ティ モールのさまざまな階層の人々と協議してもらいたいと思う。結局はそれが、もっと も貴重で重要なCAVRの業績となるだろう。

      CAVRはいままで、そしてこれからも、被害者の体験を認知し、地域レベルでの正義の 回復を遂行し、1974年以降に東ティモールで犯された人権侵害についての新たな情報 を発掘し公開するという貴重な仕事を続けていくだろう。しかし、CAVRが真に東ティ モール人によって指揮されているか、この国の必要性に対し適切なものであるか、東 ティモールの人々のことを優先に考えているか、疑念は残る。そしてこの国は、重大 犯罪を犯した者たちを裁く機会を逸したことで、どれだけの犠牲を強いられたであろ うか。

      論説:CAVRと正義

      元UNTAETの人権担当ディレクターで現在はCAVR東ティモール人委員の法務アドバイ ザーを務めているパトリック・バージェスは、「我々は過去に東ティモールで犯され た人権侵害に、可能な場所であればどこででも正義を追求しなければならない。その ための方法はいくらでもある。国際法廷の設立やジャカルタ臨時法廷、重大犯罪部や CAVRなどだ。個人的見解としては、我々の望む正義を達成するには、あらゆる方法を 模索する必要があると考えている」と述べた。パトリックは、国際法廷の設立には政 治的困難がともない、ジャカルタ臨時法廷は茶番に過ぎないことが露呈された。問題 のあった重大犯罪部は現在ははるかに効率的になったが、インドネシアにいる重大犯 罪の首謀者たちへのアクセスがない。これらに対し、CAVRの地域社会での和解プロセ スは、軽度の犯罪を犯した者にのみ対処するものではあるが、その被害者たちもまた 尊厳を回復する機会を与えられることが必要であり、比較的成功していると指摘す る。CAVRの真実探求部門は他の人権侵害とともに重大犯罪も調査しており、パトリッ クは最終報告の勧告が、これらの侵害や国際法違反、そしてそれらの責任を問うもの になることを願っている。

      ラオ・ハムトゥクは現在も、東ティモールで犯された人道に対する罪を裁くための国 際法廷の設置が必要であると考えている(会報Vol.4、No.2の論説を参照)。問題 は、国連の加盟国にその意志があるかどうかだ。国際法廷は東ティモールのみの責任 ではなく、国際社会、とりわけ国連の責任でもある。なぜなら、人道に対する罪とい うのは普遍的人権を犯すものであるし、1999年の住民投票時に行なわれた犯罪はイン ドネシアが国連と結んだ合意の直接的な違反であるからだ。

      2000年、CAVRの設置が提案、論議されていたさなか、国際法廷の設立には今よりも もっと強い支持があったが、CAVRとインドネシアの臨時人権法廷の実現が国際社会の 動きを鈍らせた。政治家や外交官たちは、これらのプロセスがある程度は正義を求め る声に対応していると主張した。それから3年、重大犯罪の首謀者たちの多くはいま だインドネシアで自由を謳歌しているにも関わらず、国際法廷の可能性は日ごとに小 さくなっている。

      多くの人が、CAVRの軽度の犯罪に対する和解プロセスが、人道に対する罪への正義を 求める被害者の要求をそらすものだと感じている。CAVRの和解プロセスも大事だが、 それは重大犯罪を実行あるいは指揮した者の処罰にはつながらない。そしてそれらの 多くが、アチェや西パプアやその他インドネシアのいたる所で犯罪行為を繰り返して いるのだ。

      国連や各国政府そして東ティモールの政治的指導者がこれまで、そしてこれからも、 CAVRを重大犯罪の首謀者たちへの法的措置を推し進めないことの言い訳として使うこ とを、そうした重大犯罪がCAVRの管轄外ではあっても、我々は懸念している。予算と の関係や国内外の圧力にさらされた新政府が、特に人材や経験不足から、型にはまっ た正義は二の次にするよう丸め込まれることもあり得る。

      2001年の正義に関する報告書で、アムネスティ・インターナショナルは、重大犯罪の ケースを検事総長に送付するCAVRの権限を称賛した。しかしアムネスティは、「現在 これらのケースを効率的に適切な時間の枠内で処理する能力があるかは、大きな疑問 である」とした。この意味で、裁判所の負担を軽減することがその設立の理由のひと つであったにも関わらず、CAVRが本来なら司法システムに割り当てられたであろう政 治的、財政的資源を使っているとの懸念もある(会報Vol.2、No.6-7)。

      CAVRの最終報告が、新しい情報を提供し国際社会に重大犯罪を犯した者を裁くという 法的、倫理的責務をまっとうするよう新たな圧力をかけることで正義の実現を強く支 持し、それにより何万人という被害者にいくらかでも癒しになることを、ラオ・ハム トゥクは望むものである。