日本軍性奴隷制被害者の名誉回復と権利実現を求める声明
私たちは、第二次世界大戦中に日本軍が東ティモールを占領した際、全土で展開された「性奴隷制」の真相究明と被害者救済を求める市民である。
1942年2月20日、日本軍は当時中立であったポルトガル領ティモールに侵攻し、その後約3年半にわたり占領を続けた。その間日本軍は、リウライ(伝統的な首長)や村長などに命じて女性たちを差し出させ、全土の駐屯地周辺に慰安所を建設した。命令に従わないリウライは処刑され、女性を守ろうとした家族や隣人は暴力を受けた。女性の徴用には年齢による配慮もなく、まだ月経が始まっていない幼い少女さえ「慰安婦」にされた。
性暴力の被害は一時のものではない。日本軍が東ティモールを去った後、ある者は夫と別れ、ある者は不妊に苦しみ、ある者は日本人の子どもを残され、ある者は周囲の無理解と差別に苦しんだ。しかし、この重大な犯罪は、戦後東ティモールがポルトガルとインドネシアの支配下にあったため歴史の闇に隠されてきた。その間、被害者たちは放置され、自国の軍隊の行動に責任をとるべき日本政府も、日本軍から女性たちを守れなかったポルトガル政府も、日本軍に女性を引き渡したティモール人も、戦後被害者を侮辱した人々も、被害者たちに対して謝罪さえしていない。
一方、2000年に開始された両国の市民団体による合同調査によって被害の実態が明らかになってきた。この調査において自身の被害に関する証言を行なった16名の女性たちは日本政府に対し謝罪と補償を求めている。日本の市民団体は毎年外務省と会見し被害者の願いを日本政府に伝えてきた。しかし日本政府は「東ティモール政府とは国交樹立時に両国の関係は未来志向で進めていくことを確認した」と述べ、「東ティモール政府からの要請がない」ことを理由に、これまで何の行動も取ろうとしてこなかった。
現在、被害者は高齢化し、残された時間はわずかである。一昨年は被害者のエスメラルダ・ボエさんが、昨年はマルタ・アブ・ベレさんとクレメンティーナ・カルドゾさんが逝去された。私たちは、被害者の名誉を回復しその権利を実現するために、日本政府と東ティモール政府に対し、以下の要請を行なう。
- 日本政府は、「東ティモール政府からの要請がない」ことを不作為の理由にしてはならない。自国の軍隊の犯罪行為に対する謝罪と補償は自ら決定すべき事柄である。
- 日本政府は、利用可能な全てのデータを動員し、一刻も早く被害の認定を行なうこと。
- 日本政府は、被害者の尊厳回復のため、一刻も早く公式な謝罪を行うこと。
- 日本政府は、被害者に対する補償の方法を検討するため、東ティモールの新政権、被害者、関連団体との協議を開始すること。
- 東ティモール人の中には、日本の戦争責任問題に触れると日本政府による対東ティモール経済援助に悪影響を及ぼすと心配する声もある。日本の経済力は小国東ティモールにとっては脅威であり、日本政府は、東ティモールへの開発援助と戦後賠償の問題をリンクさせないと明言すべきである。
- 東ティモール政府には他国に対して自国民の人権を守る義務がある。東ティモールは独立を果たし国家としての主権を得た。日本政府は、戦後、インドネシアを含むアジアの被害国に国家賠償を行なってきた。東ティモールの新政権は、早急に被害者や関係団体と協議を行ない、日本政府との交渉を開始すべきである。
18年にわたるアジア各国の被害者たちの告発は、アジア地域での社会運動を育て、かつ世界の世論をも動かしてきた。昨年は、7月31日に米国議会下院が、11月18日にオランダ下院が、11月28日にカナダ下院が、12月13日に 欧州議会が「慰安婦」問題に関する決議を採択し、日本政府に政策の変更を求めた。私たちは、日本政府と東ティモール政府がこれらの動きを真摯に受けとめ、問題の正義ある解決に踏み出すことを願ってやまない。
2008年2月20日 (日本軍侵攻から66年目の日に)
東ティモール全国協議会
札幌東ティモール協会
カトリック正義と平和仙台協議会
東京東チモール協会
東ティモール支援・信州
名古屋YWCA東チモールを考える会
大阪東ティモール協会
岡山・東ティモールの声を聞く会
下関・東チモールの会
大分・アジアと日本の関わりを見つめる会
東ティモールと連帯する長崎の会
長崎東ティモール協会
日本カトリック正義と平和協議会
賛同団体:日本32団体・海外4団体・合計36団体
賛同個人:日本267人・海外45人・合計312人