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 どこにもいそうな若者が、いとも簡単にムスリムになる。異文化への興味から、アラビア語を学んだ延長で、欧米中心主義への義憤から・・・・。

 十年ほど前、ムスリムになった日本人の若者数人に取材をしたことがある。日本ではなじみのない宗教に、親の反対を押し切って入信するのだから、その背景には何か特殊な理由があるに違いないと、私は想像していた。
 だが、予想は見事に裏切られた。イスラームを「野蛮で遅れた第三世界の宗教」と思い込んでいる親は、確かに猛反対だ。当の若者たちも、親と口論したり、勘当状態になったり、それなりの葛藤はある。ところが、拍子抜けするほど気負いがないのである。
 当時、私が話を聞いた若者たちは、欧米やアジアを旅行したあと、次の旅行先としてイスラーム圏を選んだり、日本国内で外国人ムスレムと知り合ったことで、イスラームへの関心を深めていた。入信はその延長上に「自然にあった」と、口をそろえて言う。
 こうした若者たちが登場するまで、イスラーム世界と接点を持っていたのは、前回登場いただいた樋口美作さんやジャミーラ高橋さん、澤田達一さんのように、仕事の関わりを持つ人や研究者など、一部に限られていた。しかし、八〇年代を通じて日本の国際化が進んだ結果、海外旅行のような個人的な体験を通じて、新しい衣服をまとうような軽やかさで、若者たちがムスリムになるケースが増えているらしい。
 今後、こうした若者がさらに多くなるのではないか。そんな予感を持ったのだが、さて・・・。
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