ルポ アメリカ先住民の今(2) “インディアン・カジノ”の光と影




 アリゾナとニュー・メキシコ州を中心とする“サウスウエスト(南西部)”は、別名“インディアン・カントリー”と呼ばれるほど、先住民居留地の多い地域だ。コロラド南部を含む三州には、全米最大の居留地を持つナヴァホ族、この地に一〇〇〇年以上根づいてきたホピ族と十九のプエブロ族、アパッチ族、ユート族など、四五の居留地が点在する。
 先住民文化の香りと、グランド・キャニオンに代表される先史の壮大な風景を求めて、サウスウエストには年間七〇〇万人の観光客が世界中から訪れる。なかでも、陶器づくりを伝統としてきたプエブロ族の小さな居留地が続く、ニュー・メキシコ州アルバカーキーとサンタフェを中心にした地域は、最大の観光ルートとなっている。
 一八〇度の空が広がる半砂漠から、美しい山なみを見せる峡谷へと至るアリゾナ州境からタオスへの道。脇道を少し入れば、数百年前のたたずまいを残すプエブロ族の村々がひっそりと息づいている。ところが五年ほど前から、この道沿いの風景に大きな異変が起こってきた。“インディアン・カジノ”の大ラッシュである。
 車で数十分走るごとに出現するのは、巨大な体育館のような建物だ。きらびやかな看板にはカジノの名前が燦然と輝いている。内部はまさにラスヴェガスの小型版。数百台のスロットやビデオ・ポーカーのマシンがずらりと並び、ルーレットやブラックジャックのテーブルがひしめいている。
 規模と営業年数によって違うが、四〇〇人から八〇〇人の従業員の八〇%は先住民。なかにはホテルやゴルフ・コースを含む“カジノ・リゾート”や、美術館、病院、住宅群などを備えたニュータウンを隣接するカジノ、従業員数一三〇〇人を想定した新装大型カジノを、その脇に建設中のところもある。ニュー・メキシコ州では、一九九五年に州政府との協議が成立して以来、十一のプエブロ族と二つのアパッチ族がカジノをオープンした。サウスウエスト三州全体で、カジノを持つ部族は四五中三四。年間数百万ドルにものぼるその収益をもとに、各部族は居留地の生活改善と経済開発を進めている。>>


Page 1 グランド・キャニオンへの道はカジノの大ラッシュ
Page 2 経済開発と伝統の融合を求めて
Page 3 自治権をめぐる州と部族政府の闘い
Page 4 豊かさか人心の荒廃か揺れる人々の心



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