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 | 「埼玉県古墳詳細分布調査報告書」(2001年3月20日)
さきたま資料館で出会った一冊の書物、それがこの長い題の本であった。
同資料館では受付で各種報告書を実費で頒布しているが、それらのうちの一つとして置かれていたもので、当時5,000円ぐらいだった。現在は同資料館で販売している資料は極めて種類が少なくなり、資料館の年報ぐらいしか無い状態である。同報告書も在庫が切れているようで、当時たまたま訪れた我々が入手できたのは非常に幸運であった。
この「報告書」は1994年に埼玉県教育委員会が発行したものである。その主旨は「古墳の基礎資料を一層充実させるとともに、今後の開発事業等との調整を図るため、国の助成を得て、平成元年度から5か年計画で、埼玉県古墳古墳詳細分布調査を実施」した結果を「今後の保存整備や開発との調整の基礎資料として、また学術研究や教育普及に資するため」に活用することを目的としている。
約300頁のうち、約120頁が表形式の4700基あまりの古墳データ、約70頁が35000分の1地形図による分布図、約13頁が15000分の1地形図による主要古墳群の拡大詳細分布図、残りの頁がピックアップされた17箇所の古墳の詳細調査報告、で構成されている。
分布調査は、昭和30年代の調査を基本に、各市町村担当の調査員を委嘱し、地元の伝承、地籍図などあらゆる情報源から行われ、数千基におよぶ古墳ひとつひとつをすべて確認するという大変な事業であったようだ。
おそらく「辛亥銘鉄剣」を出した埼玉だからこそ国から予算が付いてできた調査であろうが、そのおかげで我々のような素人でもほぼピンポイントで各古墳に到達することができる、非常に貴重な資料であり、苦労して作成に当たられた皆さんには全く頭の下がる思いである。
もっとも、膨大なデータを人間が処理するゆえに、完全とは言えないようで、我々が追踏査する過程でも、消滅のはずが墳丘が残っている、分布地図に無い古墳がある、など若干の過誤らしき記載もあるようであるが。
何はともあれ、この報告書との出会いから前人未到(?)の埼玉県古墳全踏査の旅は始まった。そして、この報告書に無い、新しい(?)古墳を発見すること、それが我々のささやかな夢である。
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