解析:藁夫と略夫とわりゃ人形 by 舟

第一章

第一節 「森鳩と山鳩」

は藁夫と過した秋の情景を思い出す。

うすら笑いを浮かべた藁夫が
「森鳩はパロンブ、山鳩はペロンボと鳴く。なぜだかわかるかい」
と俺に謎をかけた。

・山鳩が俺達めがけて急降下してくると、藁夫は、けらけら笑いながら立ち上がり、俺を突き飛ばして逃げていった。

・藁夫の笑いと謎かけは、「藁夫が知っていてが知らないこと」を示唆している。それが何かを知りたくて、は藁夫を探そうとする。

第二節 「湖 畔」

・ポロロッの力を感じてシモーヌの指先から抜け出した空豆は、丘を懸命に駆け降りていて足をもつらせ、黒い大きな影にぶつかる。

「り、り、略夫!」
「けっ」
 略夫は、空豆をむんずと掴み、放り投げる。

・空豆は略夫を知っていた。
・略夫は暴力的である。

第三節 「心の旅路」

・俺の目の前から餅が消えて藁人形が現れる。それを携えて、うどん屋から出ようとすると

「ケケケケッ」
藁人形だ。
「笑っちゃうぜ。お前さ、俺のこと藁夫だと思ってるだろ」
「えっ…いや別に」
「隠さなくていいんだよ。どうせ藁人形だから藁夫だとかなんとか思ってるんだろ。ケケケケ」
ムッとしたがしかし図星であった。
「藁夫じゃないのか」
「違うよ。俺、藁人形じゃねーもん。俺はさ、わりゃ人形なんだよ」
「わりゃ?」
「藁夫のわ、略夫のりゃ、で、わりゃ人形ってわけさ。ケケケケ・・・」
 何だよ、それは。ひどく感じのわるいヤツだと思いながら、俺は藁夫の手懸りを見つけようとわりゃ人形を見詰めながら藁夫の謎かけを口ずさんだ。
「バロンブ、べロンボ、ポロロッカ・・・」
最後まで聞かないうちにわりゃ人形は突然、
「悪りィーや!わりーや!」
と恐縮しながらオオオニバスのうえで気持ちよく一服していた海豆に跨って、飛んでいってしまった。

・俺は藁夫を探している。手懸かりを見つけようとする「藁をも掴む気持ち」が、藁人形を出現させたのだろう。しかし現れた人形は、藁夫と略夫の両方を象徴するわりゃ人形だった。

・藁夫と略夫の関係も「2つに引き裂かれた魂」かもしれない。

・わりゃ人形が恐縮したのは、なぜだろうか。

・海豆とわりゃ人形の関係は?

第四節 「夢の濁流」

・「藁夫に会いたい」と思っている俺は、白日夢のなかで見た草履のような顔の石像に問いかける。

「お前らは、何だ?」
「ワシが何者か?そんなもの見りゃわか…(略)。貴様に説明す…(略)」

(略)

ううむ。そうだ駄目モトで一応聞いておこう。
「藁夫は何処にいる?」
「藁夫?そんなヤツは知らんが…ワシならここじゃ!!!」

・石像に亀裂が入り崩壊した後に黒い姿が現れ、足元の石顔をけとばす。

「けっ」
「り、り、略夫!」。(略)だから略夫の登場とは、夢の中とはいえ余りにベタな展開に驚く俺。
「けっ、、略夫で悪かったな、オレって存在感薄いからな、ここで一発ガツンとーーー」、略夫が石頭をむんずと掴み放り投げると、一直線に俺の頭へ突き刺さった。

・略夫は、自己主張のために暴力を揮うのか。俺に対しても容赦はない。略夫は厳しい現実を表現しているようだ。
・このあと胴体夫などというものも登場するが、たとえ後に解析する機会があっても解析したくない。

第五節 「迷走航路」

・藁夫の叔父の招待により、俺、シモーヌ、藁夫と、もう一人が、ブラジル行き豪華客船に乗っている(藁夫の叔父も乗船していたことが後に判明する)。

・「もう一人」は誰だろうか。存在感の薄い略夫かもしれない。

第七節 「揺らめく風景」

・いろいろ出てくるが、解析不要。理由は読めば分かる。

第九節 「知るも知らぬも有耶無耶の関」

・俺は、山鳩と森鳩を従えて「実のところ」へ行くが、たどりついたのはチキチキ山クリニック寺だった。本堂の中で座禅している無数の僧をよく見れば、略夫、わりゃ人形、石像、新旧夫軍団、河童など、知っている顔ばかりだった。

・それは夢だった。目覚めた俺は、「ずいぶん長く眠っていたのね」と、シモーヌに笑われる(俺と藁夫とシモーヌの関係は、後に明らかになるだろう)。

・俺は、思わず言う。

「藁夫はどこにいるんだろう」

・この言葉は、藁夫の長い失踪を伺わせる。

 すると突撃ラッパが湖の向うから響いてきた。シモーヌが答えて
「ああ、あの音のするところに藁夫はいるわ。藁夫は常に現実に挑戦することで自分を確かめているの。あなたの夢の中でもいろんな役割をしていたわね。」

・シモーヌの言葉は、藁夫がどこかで現実に挑戦していることを示唆するとともに、ここが虚構の世界であることを読者に思い出させる。