あれらの古いLPども

Rel. 1.0.2 (10-January-2002)
今年、2002年の正月から、プレイヤーにかけたLPについて書くことにします。今年最初のLPはBrian Enoの"Before and after Science"でした。たまたま、オトもだちのAQ!さんが「息子の部屋とかいう映画の宣伝でかかってる、これ、なんだっけ?」と言ってたのが、このLPのB-3だったのです。そのあと、"Another Green World"聞いて、また別の日にペンギンカフェ聞いて。

1:「科学前後」

つうわけで、Brian EnoBefore and after Science。初回なのでゴージャスに、AQ!さんとkneoの対談形式でやってみます(ちょい圧縮しました)。

AQ!:「息子の部屋」とか言う映画の宣伝でかかってる、これ、なんだっけ? ピンクフロイドかな
 … 
AQ!: 何かプログレの曲だった気がする〜 ってぇかゆーめー曲だな、これ
 このCM見てわかったら教えれ ┐('〜;)┌
 … 
AQ!: 今もやってた 見れ〜 なんだっけなぁ、これ
 You and I sitting by ocean ? かな、underneath the skyでever fallin down とかそんなの
 … 
AQ!:Here were stopped by river you and I underneath the sky thats ever fallin down down down ever fallin down
かな
うう、誰の声じゃこれ 気持ちわる わからんかにぃ
Before and After Science kneo:eno ?
kneo:それとも、シド・バレット?
AQ!: えらい! さすがじゃー
 シドバレットみたいだけど違うな〜 と 思ってたのだ〜
 エノじゃ、エノ \(@▽@)/
 どれだっけな、アナザグリンかサイエンスか
AQ!: ああ、すっきり
kneo:お、当たったか ヽ(^o^)ノ
 CFは見たことないけど、最後のダウン、ダウンでわかた。
AQ!: そーそーそー、そのダウンダウンダウンが耳に残る奴〜 \(@▽@)/
kneo:【LP箱を掘り返してタイトルで見当を付け、ターンテーブルに乗せて確認している】
AQ!: 前後科学 の8曲目の 川辺 だな
 しかし、エノさんのこの2枚はおそろしい傑作だなぁ
kneo:うん、別緑世界と科学前後は凄盤だねー。耳に残りまくり。
AQ!: しかし耳に残るなぁ サウンドもさることながら、エノさんはなかなかのメロディメーカーだなぁ 大して残してないけど
kneo:ほんまに。ひさびさにeno順繰りに聞いてみようかナー。LPばっかだけど。
 … 
kneo:つーわけで、科学前後のA面
このへんはフィル・マンザネラと相互影響的か。
フィル・コリンズ、パーシー・ジョーンズでBrandはXじゃが。
AQ!: すごいメンツだなぁ
 Dave Mattacks、Paul Rudolphってどの辺りの人だろ
kneo:マタックスはenoの他のLPにもいたような。近所に住んでる人、とかかのぉ ^^;
AQ!: イギリスの奴って大概近所の奴、だからなぁ ┐('〜;)┌
kneo:【A-5の"King's Lead Hat"に入って】おお、王様の鉛の帽子 ヽ(^o^)ノ
これ、好きだなー。残る残る。
 … 
kneo:この曲の、ギャウ、とか、ビョーオ、とかいうヘンなベースがポール・ルドルフさんであったか。ただものでない ^^;
 … 
kneo:あ、B-2のJulie with... という長い曲。ここで必ずうたたね したもんだなー。うたたねの曲。
AQ!: 静かなB面 思えば独特な並べ方だ
kneo:ちょっとアビーロードがかってるかなー
Here Comes the Sunでちょっと空気を変えて、おもむろに深く静かに潜っていくあたりが、Here he comes 以降に対応、とか。
 … 
【といいつつB面を聴き終わる】
January 7, 2002, Monday evening.

2:「別緑世界」

1の続きで、Brian EnoAnother Green Worldに行ってきました。

A-1の"Sky Saw"はイントロ当てクイズなら0.3秒。こんなに特徴的なイントロもないもんだ。John Caleの"viola section"は、最後に出てくるのがそうか。モゴモゴいってるギター(だかなんだか)も妙で、これが蛇ギターか。

A-2はPercy Jonesのフレットレス・ベースとPhil Collinsが刻む熱帯風リズム。途中で切り張られたりするフリッパトロの握り。

A-3は「ブル〜ウ〜オーガストム〜ン」てぇのが耳に残る。フリップ先生も飛んで、翼よあれがセントエルモの灯だぜ、という。
A-4はジャングルと都会が共存。ビルの屋上に森があったり、地下鉄が来たり、ハエがとまったりする。

Before and After Science A-5はC調。ハ長調。ドミソ、ラドミ、ドファラ。enoにC調はよく似合う。

A-6は"I'll Come Running"っていうポップな曲で、温気流路線ていうか、元祖ロキシー調?「僕は君のクツを縛りに走ってくからね」とかいう、別の意味でC調な愛のリフレインです。このノンビリしたムードも好き。ベースは「科学前後」のPaul Rudolph氏。

A-7は、ちょい中国入った"Another Green World"で終わります。

B-1で、またジャングル入ります。この手の曲調はPhil Manzaneraとの同類項でもありましょうか。爬虫類的にウネウネするコード進行。

B-2は「ちっこい魚たち」って曲で、実に可愛いです。ドミソシb的。

B-3も、ドミソ・ミソシ的なシンプル展開だけど、たぶん忘れられないゴールデン・アワーズ。フリップ氏のチマチマしたアルペ塩ギターが利く。

B-4は、いっぷくの涼風。静かです。濡縁で抹茶をいただく緑別世界。

B-5で日本入りました。ここらはもう禅で、シシオドシがカコーンと鳴るに到る。

B-6でヨーロッパに戻ってきました。昼寝の後、ゆ〜っくり醒めていく感じ。A-1のイントロの音が、ゆるやかに再現されて「ああ一戻ってきたなー」と、サスガ的緑別世界ワンラウンド構成。

で終わるかと思ったら、最後のB-7で、また別の、妙なものが現れます。どこか懐かしい、ちょっと怖い、寂しいような、切ないような、ぼんやりとしたものです。揺れ動く魂たち。
January 7, 2002, Monday night.

3:「ペンギン・カフェからの音楽:ペンギン・カフェ・オーケストラの団員たちによる演奏」

そのBrian EnoがExecutive Productionした、obscureレーベル7番目のLP、"Music From The Penguine Café - performed by members of the Penguin Café Orchestra"を、たいへん久しぶりに聞きました。

作曲はSimon Jeffes、プロデュースはJeffesとSteve Nye。ViolinがGavyn Wrightで、CelloがHelen Leibmann、作詞とウクレレにNeil Rennie、ヴォーカルEmily Youngというようなメンツですが、三部構成になってて、それぞれ構成が異なります。

Music From The Penguine Cafe A面1曲目は"Penguin Café Single"という曲で、いかにもシングルカットされそうなオシャレで軽快な四重奏(Cello, Violin, Electric Piano, Electric Guitar)で始まります。これがPenguin Café Quartetの演奏(1974年)。そのオシャレで軽快なのが、フリーっぽく、アヴァンギャルドっぽく崩れます。だいたい、この曲の出だしは例のあの「太陽と戦慄」みたような、スタッカートのボウイングでviolinが短三度の重音を刻むというスリリングなイントロで、それがまた今度は本当に少し怖くなって戦慄の世界へ、と思いきや、なんだかジャムセッション風になって、また元のオシャレで軽快に、知らん顔して戻ってしまう。まあ洒脱なものですわ。

で、A面の残りがZOPFといいまして、Steve Nyeはミキシングにまわり、たいがいの楽器をSimon Jeffesがやって、ときどきHelenやGavynが入り、曲によってはNeilのウクレレやEmilyのヴォーカルが加わる、という、そんな7曲構成になります。

1: "From the Colonies"は、Simon Jeffesの多重録音で、ウクレレとスピネットなどという、ヘンな感じのアンサンブルで、コードを繰り返す短い曲。

2: "In a Sydney Motel"は、うってかわったマトモな曲ですが、でもなんとなくシド・バレットやイーノを思わせる、ヘンな雰囲気があり、Simon Jeffesの音程がおかしい不器用なチェロなどが、妙な味を作ります。

3: "Surface Tension"で、チェロがうまくなった! と思ったら、Helenが弾いていました。この曲は無条件に気持ちいい。キレイにクラシックしてます。

4: "Milk"。かあいい。み、みうくっ。可愛いのだけれど、ビミョーに歪んだリング・モジュレーションで、ちょっと本物の動物っぽい所も出てます。なんかドーブツの臭いがするんですよ、これ。み、みうくっ、と鳴く。

5: "Coronation"は、美しい女性ヴォーカルで"The Queen is dead"と始まる歌と弦楽合奏で、かなり厳かにクラシック。

6: "Giles Farneby's Dream"は、そのファーナビーさん(1560-1640)の曲なんでしょうか、スピネットによるルネサンス世界と、ウクレレ、ベースのモダンなサウンドをチェロが取り持つ古今音楽ですが、そのモダンも今では少し古色がついて懐かしいのです。

7: "Pigtail"は、エレピにまたリングモジュレーションかかって、ちょい「あの世系」の世界に入ります。風の音もするし。でもオドロオドロまで行かないんですね。ちょっと怖いけど楽しそうな。オバケは死な〜ない、的な。

さて、B面です。B面は1974年の長い曲、"The sound of someone you love who's going away and it doesn't matter"っていう、なんだか別れが惜しいのに強がってるような題名の曲。これはスリーフィンガーだかなんだかのフォーク調のギターで始まりまして、この歌メロのギターに、霞むようなフェイジングがかかります。そこにviolinとcelloが交互に入ってソロをやる。しばらくエレピが入ったマトモ風の演奏ですが、それがだんだん崩れて、不条理っぽい無調音楽に突入。ここはかなりアヴァンギャルドです。心の中は大荒れってヤツでしょうか。で、また元に戻るんですが、violinは平気の平左に戻りきれなくて、ちょっと男泣きに泣きます。それをcelloが慰めるとでも申しましょうか。チェロにはときどき、何かのエフェクトがかかってるかな。で、こんどはジャムセッション風になって、またリズムが崩れて、また戻るというのをやって、割にだらーっと終わります。そういう曲。

B-2は"Hugebaby"っていって、なんか7th系のコードとエレピで、けっこう複雑なコード進行にCelloがからんだりする。よくわからない曲。

B-3は"Chartered Flight"で、これはわかります。Celloの音に、なんか水っぽい効果が入って、スタッカートで同じ音を擦り続けるのがエンジン音ぽく不安な感じで、これが離陸前でしょう。で、Gavyn Writeが、いかにも彼が好きそうなメロディを、violinの凄く高いところでやって、上空へ。すると6/8のリズム、エレピはちょっとチックコリアで、なんだか曲らしくなる。仲良く楽しく浮かれてる感じ。でも、循環コードのR&B調と、Celloとviolinのパートは微妙に油と水で、Steve Nyeがヘンなコードを弾き始める。乱気流っていうか、不調和ってゆーか、でもそれが個性ってもんだから尊重しようね、みたいなアレで元に戻って、という、ま、そんなよーなアルバムなのでした。

って、なにげなくPenguin Cafe Orchestraデータベース見たら、Simon Jeffes氏ってば、1997年12月11日、脳腫瘍で死んでたか。涙腺じわり。
January 9, 2002, Wednesday night.

Copyright(c) 2002 吉川邦夫(Kunio Yoshikawa)

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背景はBrian EnoAnother Green Worldジャケ裏からサンプリングしました。