生涯学習の意義と特徴

 1.学習の意義
  「学習をする」とは、知識や技能を詰め込むことではない。
  心理学では、「経験によって行動が変容する」ことを「学習」といい、
  「うちに隠されていたものが現れてくる」ことを「発達」という。

  経験によって新しい反応様式を獲得したり、自らの能力を高めたり、
  認知構造を改変したりすることはすべて学習であり、学習による発達である。

  これまでは、肉体的な成熟や社会的地位の向上意欲が発達の原動力であった。
  肉体的に衰退し、これまでの社会的役割から離脱するなど、エイジングの現象が
  顕著になる高齢期では、学習が自己を変え発達を可能にしていく原動力となる。
 
 2.知力・知恵と生きる力

  キャッテルとホーンは、知的能力の変化について、
  「成人期は、流動性知力が低下し、結晶性知力が上昇する」という。

  高齢期における知力の問題は、「年をとったからからこそ伸びる」というプラスの
  視点で、見ていくことが大事である。

  スターンバーグとワグナーは、
  「実際の状況の中で環境に適応しつつ自分の目標を達成していく力」を「知力」と
  いい、
  職業生活や日常生活の中で活性化されていく「知力」(=生きる力)に注目した。

  また、スミスとバルテスは、
  「人生の基本的な実際的な領域(人生設計、人生管理や振り返りなど)についての
  熟成した知識」が知恵であるという。

  更に、バルテスは、
  「知識の内容やその運用面は年をとっても深まりが期待される」という。

 3.経験は貴重な学習資源

  ジョン・デューイは、
  「現在の経験が過去の経験から生まれ、それが未来の経験へと流れていく」という
  経験の連続性と経験の再構成の教育原理を説いた。

  本当の経験は、本来的に未来に向かって開かれたものであり、また、自分だけが
  責任のもてる厳しい世界でもある。

  この意味で経験は高齢期における重要な学習の糧(学習の資源)となる。
  即ち、経験⇒学習⇒発達という流れが重要である。

 4.人格の円熟化

  ライチャードは、高齢期の適応状態のパターンを、下記の5つに区分した。
   「円熟型」・「安楽椅子型」・「装甲型」・「憤慨型」・「自責型」
  円熟型の人は、高齢になっても、統合されたパーソナリティを持続しており、
  柔軟性・融通性・弾力性を保ち、社会によく適応しているという。

               「円熟型の人の特徴」

   1.知性的で、よく統合された人格の持ち主である。
   2.自分の人生を実り多いものであったと感じている。
   3.現実を受容し、現在に対し積極的な態度で臨む。
   4.家庭や社会での人間関係に満足している。
   5.多くのことに関心を持つ未来志向者、将来の生活にも苦悩なし。
   6.自適型の老人、老齢という事実を最終的な死まで含めて受容。