学習スタイル(事例)

          
  
  定年後のライフプランは、定年の1年前から本格的に取組み、3ケ月前に完成させた。

  第二の人生を「仕上げの期間」と捉え、「経済」・「健康」・「生きがい」・「全体」と
  いう構成で、15年
を大きく4区分した。総合的なライフプランである。
  
  期間は、健康と資金という面と展望の
可能性という理由から設定した。

  ライフワークの目標は「熟年ライフプランナーとして
学習社会づくりに貢献する」こと、
  そして、日々の生活のモットーは、「明るく、元気に、
生き活きと」とした。

  生きがいのメインテーマを何にするかは相当悩んだ。
  絵画・書道や俳句等の趣味は、
芸術的素養のない小生には向かない。
  これまでやったこともない。

  何かを調べたり、纏めたりしている時に、愉しさや安らぎを感じていた自分を再発見し、
  この学習好きを生かして新しい分野で新しい人生を築こうということで、メインテーマを
  「高齢者を対象
とした、生きがい開発の指導とカウンセリング」とすることに決めた。

   本年で7年を経過したが、今日の充実した生活はこのプランと日々気概をもって実践
  してきたお蔭だと思っている。これまでの7年は本当に貴重であった。

   日々の行動や習慣などの生活の中味とプランの管理や時間活用などの生活技術が充実・
  向上したことは当然であるが、一番大きなことは、人生や生活に対する考え方や
心構え、
  生活の価値観と態度が変わったことである。


   これにはこれまでの学習と学習による行動の変化が大きく貢献している。

  学習の対象は、心理学やカウンセリングなどの専門知識と技術だけに止まらず、高齢期と
  生活の経営という視点からの多角的な学習や哲学・宗教・文化など教養講座の学習まで、
  多岐に亘った。

   一から勉強するという考えで新分野の学習に取り組んだので、
何を学習しても別の世界
  に行ったような、新鮮な感じがした。

  放送大学や関西カウンセリングセンターは良い学習機会を提供してくれた。
  学習仲間
とのやりとりは、愉しくて有意義で、かつ励みになった。

   しかし、学習はそう簡単なものではなかった。少しくらいの勉強はすぐ忘れてしまう。

  自分の血肉になるのには時間もかかる。

   最初は始めての取組みだからとノートで整理を続けながら、都度の新しい知識や視野に
  感動していたが、5年程過ぎると見えてこない
成果が心配になり出した。
  こんなことで目標に近づけるのかという不安である。

   そんなある日、会報に投稿した旅行記を一緒に行った友人がよく書けていると誉めて
  
くれた。
  親友のその一言で、表現や言葉使いの変化から自分の考え方や態度が少し変わってきて
  いることに気づいた。
上手いとか下手というのではなく少し味が出てきたようだ。
  心の奥底の何かが変わって
きた様な感じである。
  
学習の成果は、例えばすぐ金に結びつくと言った短絡的なものでなく、じっくり効いて
  来るものだ。
  学習の効果は漢方薬のように、気付かない内にゆっくり効いて来る。


   この年になって、少しずつ考え方や行動が変化することが確認できた喜びは大きい。

  高齢期の学習は、若い時のような机上の学習ではない。
  人生経験という貴重な体験
に基づき、色々な経験を通じて学んだことを関連づけることが
  出来る。

   1個人は長い歴史と広い宇宙の中では小さな点でしかないが、その全世界の存在を自分
  と言う個人で認識し、自己の中に再構築していくことは何と素晴らしいことか。

   また、我々の時代の特徴は、技術の高度化の急進と急速な人口の高齢化とであるが、
  
このことは、我々に時代の変化についての学習と先行きの模索とを要請している。

  哲学にしても心理学にしても大学時代のそれとは比較にならない位に進歩している。

  また、高齢化につての事例や研究が日進月歩でどんどん行われている。

  急激な時代の変化の中を生きる為には、学習は欠かせない事柄である実感している。

  高齢期だから出来る学習と高齢期だからしなければならない学習があると思う。

   プランになかったテーマにインターネットへの挑戦がある。
  3年前から学習を始めたが、仲間とのコミュニケーションのツールだけでなく、今では
  日常生活の情報基盤として
欠かせないものになっている。
  これから先も内外で色々な革新や変化が押し寄せて
くるもの思うが、今後に向けての
  自信が出来た。この意味でパソコンを克服した成果は
大きい。

   これからの7年はライフプランとこれまでに培ってきた生活技術を活用し、
日々学んで
  いく姿を大切に、のんびり・ゆったり・じっくりの姿勢で人生を愉しみ、更に
幸せに生きて
  いきたいと思う。

  人格の円熟化と学習社会への貢献を通した自己実現で
人生の仕上げをしたいと思う。

               講談社編「定年学」投稿原稿  平成14年6月作成