対称群${S_n}$は、${n}$コの文字${\{1, \ 2, \ 3, \ \cdots, \ n \} }$の置換全体からなる群である。
群の要素(元)の数は、${\displaystyle n! }$である。これらは互換の積で表すことができる。
この中で偶数個の互換の積(偶置換)の集合の作る部分群が交代群${A_n}$で、その要素の数は
${\displaystyle \frac{n!}{2}}$である。
全ての${A_n}$の要素を用いて互換のペアを作ることができる。2つのペアの積は、あみだくじを用いて図示すると、
同じ数を含む場合(図 1)と全ての数が異なる場合(図 2)の二通りがある。
交代群${A_n}$は、${n \ge 3}$の場合、3サイクル(3次巡回置換)で生成されることを示す。そのためには、
互換の積は3サイクル(3次巡回置換)、またはそれらの積で表されることを示せば十分である。
置換の演算には、2通りの流儀があるが、ここでは、
置換${\pi_1}$を施してから置換${\pi_2}$を行う操作を
${
\pi_2 \pi_1
}$
と書くことにしよう。
- 2つの互換が同じ数${a}$を含む場合
2つの互換を
\begin{equation}
\tau_1 = (a \ b), \ \
\tau_2 = (a \ c)
\end{equation}
とおこう。
この時、
\begin{eqnarray*}
\tau_2 \tau_1 &=& (a \ c)(a \ b) \\
&=&(a \ b \ c)
\end{eqnarray*}
- 2つの互換が同じ数を含まない場合
この場合、
${
\tau_3 = (c \ d)
}$
とおいて${\tau_3\tau_1}$を調べよう。図 2 の結果は、図 3においても再現できるので、
\begin{eqnarray*}
\tau_3\tau_1 &=& \tau_5\tau_4\tau_2\tau_1 \\
&=& (a \ c)(a \ d) (a \ c)(a \ b) \\
&=& \big\{(a \ c)(a \ d)\big\}\big\{ (a \ c)(a \ b)\big\} \\
&=& (a \ d \ c)(a \ b \ c)
\end{eqnarray*}
\[
\therefore \ (c \ d)(a \ b) = (a \ d \ c)(a \ b \ c)
\]
以上により、全ての互換の積は3サイクル、または、3サイクルの積で表されることが分かった。ゆえに、${n \ge 3}$
の場合に全ての${A_n}$は3サイクルから生成される。