花様年華(原題)

僕の点数:5.0
見た日:00.10.30

2000
Country: 香港
サスペンス ドラマ
映画館で見た


キャスト トニー・レオン
マギー・チャン
監督 ウォン・カーウァイ
音楽
備考 東京国際映画祭で見てきた。待ちに待ってたウォンカーウァイの「ブエノス・アイレス」以来の新作である。
 1962年の香港。夫の出張の多い妻リーゼンと、妻の夜勤が長い夫チョウ。両夫婦が、同時にアパートに越してくる。やがて、リーゼンとチョウはたがいのつれあいがいない合間に密会するようになる。しかし決して一線は越えず、ただ近所のウワサだけを恐れるだけ・・・。そのうち、互いの相方が不倫していることが発覚し、二人は愛し合うべきか、この関係を続けるべきか、微妙な状態になっていく・・・。
 狭い狭い迷路のような60年代の香港。屋台と薄暗い紅や黄色のライトの元で、男女の恋模様が、オシャレでコミカルにそして耽美的に描き出される。クリストファー・ドイルの映像は、これまでの感情的な用い方とは異なり、計算に基づく極めて的確な演出が施されている(冒頭10分ほどはこれがドイルのキャメラと思えなかったほど)。
 チョウのタバコの煙。すれ違い。リーゼンの首筋。雨。数多くの食べ物(本作品は特に食べるシーンが多い)。セリフ(というよりおしゃべり)も多いが、ストーリーはもちろん映像で語られる。舞台も、香港、シンガポール、カンボジアと転々と変わる。今回、ホウ・シャオフェンの映画で撮影していたリー・ピンビンが加わるなど、ウォン・カーウァイはアジア映画の代表を早くも自負し始めたのだろうか。時代設定も60年代という挑戦。また、時を同じくして「御法度」のように、所々にサイレント映画のような背景黒の字幕をはさみこんだのも興味深い。ラストも字幕で終わるなど、これまでの作風へのアンチテーゼすら感じられる。ある意味で、ドイルという荒馬をようやく乗りこなした、とも言える。
 演技で特筆すべきはやはり、本作でカンヌ主演男優賞を受賞したトニー・レオン。40を過ぎて、なお若々しさを残し、ダンディさを増したそのシルエットは、それだけで立派な演技。タバコの煙だけで感情を表すという芸当までやってのける。
 ともかくも、ウォン・カーウァイが繰り広げるファッショナブルな「オトナの映画」。映像の斬新さばかりでなく、ドラマ性も重視した、洗練された映画。次回作「2046」(本作にはそれを予見するショットが登場!)がおおいに楽しみである。

written by Hideto Miyai's "映画スタック"


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